異端者が英雄になるのは間違っているだろうか?   作:もち米

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一部キャラ崩壊がありますので注意してごらんください。



11話 ダークナイト ガフ・ガフガリオン

 怪物祭。様々な出店がある中、ヘスティアとアルマはクレープ店でクレープを買った。

 二人は買ったクレープを見終わると、今度は互いの顔を見て微笑む。そしてベルの元へと向かった。

 

「ベル君、ベル君」

 

「何ですか?」

 

「あーん」

 

「ええッ!?」

 

 ヘスティアが先程買ったクレープをベルに食べさせようとする。するとベルは目を見開いて驚きうろたえる。

 

「神様、一体何を!?」

 

「あーん、だよ。あーん。一回やってみたかったんだ! だから、はい、あーん」

 

「あ、あーん……」

 

 ベルは恥ずかしさからか、おそるおそるヘスティアからクレープを食べる。クレープは甘くてとても美味しかった。

 

「じゃあ、今度は私の番ね。ベル、あーん」

 

 今度はアルマがベルにクレープを差し出してきた。

 

「ア、アルマさんッ!?」

 

「ほら、あーん」

 

 ベルはアルマから差し出されたクレープを食べる。

 

「おいしい?」

 

「は、はい…!?」

 

 恥ずかしいのか、ベルは顔を真っ赤にさせながらそう言った。その恥ずかしさのせいなのか、クレープの味がよくわからなかった。

 

「ふふ、よかった!」

 

 そんなベルの心の状態など露知らず、アルマはベルに微笑むのであった。

 その微笑を見たベルは更に顔を赤くさせた。

 

 

 

 それから三人は辺りを目的もなくふらふらと歩き回る。といっても、出店で買い食いをしたりして、祭りを堪能しているのだ。

 目的がなくても穏やかな時間を過ごす。それは実に有意義であった。周りの人達も楽しそうに祭りを堪能している。親子連れは子供に出店の食べ物を買ってあげたり、また、友達同士でぶらぶらと付近を歩いている人達も見かけた。

 そんな有意義な時間を過ごしていると―――――。

 突然、咆哮と人々の叫び声が聞こえてくる。

 

「なんだ…?」

 

 ベルは咆哮と人々の叫び声が聞こえてくる方面を見る。そこには絶叫を放ってバラバラに散っていく人々の姿があった。

 

「……?」

 

「あれって…!」

 

 逃げ惑う人々の後ろには魔物のシルバーバッグが咆哮をあげた。

 シルバーバッグ――――十一階層に出現するモンスター。大型で全身真っ白な体毛に覆われている野猿のモンスターだ。

 それが何故街の中に―――――考える暇もなく、シルバーバッグはベル達を見つけると、突然向かってきたのだ。

 

「うわッ!」

 

「逃げるよ! ベル、ヘスティア様!!」

 

 三人は向かってくるシルバーバッグを背にしながら、祭りの会場から逃げていった。

 

 

 

 

 

 

 

(……騒がしいな)

 

 ラムザは遠くから聞こえてくる人の喧騒を聞き、なにやら胸騒ぎがした。遠くで何かあったのだろうか? そうしていると、近くで人を誘導しているエイナ・チュールを見かけた。

 ラムザはエイナに駆け寄る。

 

「エイナさん。なにかあったのですか?」

 

「ラムザ君! ガネーシャ・ファミリアが捕らえていたモンスターが脱走したのよ!」

 

「なんだって…!」

 

 すると遠くから魔物の咆哮が聞こえてきた。

 

「エイナさん、逃げたモンスターは何匹ですか!」

 

「確か…九匹よ!」

 

 ラムザは咆哮が聞こえた方面を見つめ、そして駆け出した。

 

「気をつけてね! ラムザ君!」

 

 エイナは走り去っていくラムザの背を見ながらそう大声で言った。

 

 

 

 

 

 

「ロキ!」

 

「おっ!」

 

 闘技場で怪物祭を観戦に来ていたロキ・ファミリアのティオナと、レフィーヤ、ティオネは外の様子がおかしい事に気がつくと、闘技場を出る。そして偶々運良くロキを発見し声をかけて来たのだ。

 

「簡単に言うと、モンスターが逃げおった。ここらへん一帯をさまよっとる」

 

「えっ、不味いじゃん、それ!?」

 

 驚くティオナに対しロキは平然とした態度を崩さない。それに文句を言おうとした彼女であったが、ロキは苦笑いしながらこう言った。

 

「ティオナ達は、アイズがモンスターを討ち漏らしたら叩いてくれへんか?」

 

「アイズさんはもう、モンスターのもとに向かったんですか?」

 

 レフィーヤがロキにそう聞く。するとロキは――――――。

 

「いや、まだ行っとらん。あそこ」

 

 ロキは頭上高い闘技場の一角を指差す。アイズは闘技場の上から街の光景を高いところから見下ろしていた。  

 

「……見つけた」

 

 魔法の一部を乗せ咆哮の震動を感知したアイズは瞬く間にモンスターの位置を割り出す。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 風の気流を纏い、闘技場から一直線にモンスター目掛けて弾丸のように地上へと飛び降り、街路の中心にいた『トロール』を背後から粉砕した。

 その粉砕を皮切りにアイズは次々とモンスターを倒していく。

 

「ほんじゃあ、うちはこの辺で退散しておくわ」

 

 アイズがモンスターを倒していくのを確認したロキはそう言った。神とはいえ下界に降りたら人間と同じ非力になっている。

 彼女は此処にいたらただ邪魔になるというのを理解しているからだ。

 

「気をつけて、ロキ」

 

 ティオネはそう言ってロキと別れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイズが次々モンスターを倒していく…どうやら私達の出番なさそうだね」

 

 アイズがモンスターを次々と倒していくその光景を見ていたティオネ達は自分の出番がないのではと思った。

 しかし突然―――――不意に地面が揺れる。

 

「あれ? 地面…揺れてない?」

 

「地震…じゃないですよね」

 

 瞬間、爆発したような轟音が響き、膨大な土煙が立ち込む。

 

「………!?」

 

 地中から出現したのは蛇のような巨大なモンスターだった。

 その姿は細長い胴体。頭部には器官が存在せず膨らみを帯びた形状であった。

 

「あいつ…やばい!!」

 

 そのモンスターの姿を見たティオネは瞬時に悟る。ダンジョンで培われた感覚が、そう告げるのだ。

 

「ティオナ! やるわよ。レフィーヤは詠唱を始めてちょうだい!!」

 

 ティオナとティオネはモンスターへと駆ける。そして拳と蹴りを叩き込む、が――――――。

 

「ツ……!?」

 

「かったぁー!?」

 

 モンスターの硬度は凄まじかった。素手とはいえ、第一級冒険者の強撃をものともしないのだ。痛がる二人。するとそれを隙と見たのか、モンスターが勢いにまかせに二人を薙ぎ払おうとした。

 

「……ッ!」

 

 二人はその攻撃を避けながら再び打撃を行う。しかし、モンスターはビクともしなかった。

 

「~ッ! これじゃあ埒が明かない! 武器用意しておけばよかったっ!」

 

 愚痴を言いつつ、二人はヒット&アウェイを繰り返す。モンスターにはダメージを与えられないが、モンスターの攻撃は動きが単調な為、避けることは容易かった。

 そんな中、レフィーヤは魔法の詠唱を進める。二人が時間を稼いでいるので、魔法を解き放つ時間は十分にある。そう思っていたのだが、突然――――――。

 

「―――――え」

 

 地面から這い上がってきた尾のようなものがレフィーヤの腹部に強打する。

 

「―――――かふ」

 

その強打によって、レフィーヤは吐血しながら地面に崩れ落ちた。

 

「レフィーヤ!!」

 

 ティオナが叫ぶ。レフィーヤは致命的なダメージを負い立ち上がることが出来ない。

 するとモンスターにも変化が訪れる。頭上の抑えられていた先端部分が花開いたのだ。

 その姿は蛇ではなく、巨大な花であった。そして尾のようなものも茎であった。

 

「レフィーヤ起きなさいッ!」

 

「あーもう邪魔ッ!」

 

 駆け寄ろうとするティオナ達に無数の触手が襲い掛かる。それを何とか払いのけようとするが、効果はなかった。

 ティオネの呼びかけも虚しく、モンスターは倒れこむレフィーヤの眼前に迫る。

 レフィーヤは必死に動こうとする。しかし身体がまったく動かない。

 

「…うッ…」

 

 モンスターがレフィーヤを飲み込もうと大きな口を近づける。誰もが絶体絶命だと思ったその時――――――。

 一人の男が装備していた剣で敵の首を切り飛ばした。

 

 

 

 

 アイズは脱走したモンスターを討った際、全く情報にない謎のモンスターの姿を遠方から確認した。

 突き動かされる形で向かった先には、モンスターに食われようとするレフィーヤの姿。

 

「……!」

 

 アイズは駆ける。しかし間に合いそうにない。そこで魔法(かぜ)を使おうとするが―――――。

 瞬間、一人の男が持っている剣でモンスターの頭を切り落としたのだ。

 アイズは見る。

 その男の姿を。

 それはヘスティア・ファミリアに所属するオラリオ屈指のLv9、ラムザ・ベオルブであった。

 

 

 

 

「レフィーヤ!」

 

 頭部を切断され、茎が地面にしずむ。モンスターを倒した事を確認したティオナ達はレフィーヤに駆け寄る。そしてティオネは倒れているレフィーヤを抱きかかえた。

 吐血している彼女は悶え苦しんでいる。

 それを見たラムザはレフィーヤに向けて手をかざす。するとラムザの体から紫色をした光の渦が生じ、その光がレフィーヤを包み込む。するとレフィーヤの傷がみるみる癒えていった。

 

「あれ…? 私…」

 

「レフィーヤ!」

 

「よかった~!!」

 

 傷が癒えたレフィーヤは起き上がる。それを見たティオネとティオナは安心の表情をした。そして後ろにいたアイズも安心していた。

 

「あのLv9の人が助けてくれたんだよー!」

 

 ティオナがラムザ指差しながら天真爛漫に言った。

 

(Lv9……)

 

 ラムザは口には出さなかったが、心の中でそう呟く。せめて名前で言ってもらいたいものだと思った。

 

「あの…ありがとうございます」

 

 レフィーヤは立ち上がりラムザに向かってお辞儀する。

 

「いや、無事でなによりだよ」

 

 ラムザはレフィーヤにそう言ってふと笑みを浮かべた。そんなラムザの表情を見たレフィーヤは頬を少し紅く染める。

 

「ねえねえ! さっきやったのって回復魔法?」

 

 ティオナがラムザに聞く。

 

「…まあ、そんなものかな」

 

 ラムザはそう言った。しかし、ラムザがレフィーヤの傷を癒したのは回復魔法ではない。《スキル》【おまじない】の効果だ。

 ラムザの【おまじない】は精霊に自分の体力を捧げて対象の傷を癒すことができる効果がある。それでレフィーヤの傷を癒したのだ。

 

「へえ! 流石Lv9! 万能なんだぁ!」

 

「…そのLv9というのは止めてくれないかな。僕の名前はラムザ・ベオルブ。ラムザと呼んでくれ」

 

「私はティオナ・ヒリュテ! よろしくラムザ!」

 

「姉のティオネ・ヒリュテよ」

 

「私はレフィーヤ・ウィリディスです」

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン…」

 

 互いにそれぞれ自己紹介を済ます。

 事が済んだのか皆安心しているようすだ。

 笑うティオナとレフィーヤ。

 冷静であるがどこか安心している様子のティオネ。

 アイズはどこかぼんやりしている。

 そしてラムザは―――――。

 

「…………!!」

 

 ラムザは殺気を感じ、鋭い目つきでその方面を見た。

 とても邪悪な気だ。まるで悪魔ルカヴィが放つような――――。

 それに合わせたように各々殺気に感づき、殺気が放たれている方面を見る。

 そこには胴色の鎧に覆われた一人の男がいた。

 そして、彼の手には血で濡れた剣が握られている。

 まるでさっきまで戦闘でも行っていたかのようだ。

 

「おまえは…バカな…!」

 

 ラムザは胴色の鎧を装備した男を見て、ありえないものを見たかのようにとても驚いていた。

 

「久しぶりだな…。小僧!」

 

 男がそう言った瞬間、微細な地面の揺れが訪れる。そして――――――。

 

「………!」

 

 地面の揺れを大きくなり、先程のモンスターが三対も地面から出現した。

 

「ちょっとっ」

 

「ま、まだくるの!?」 

  

 ティオナ、ティオネ、レフィーヤは地面から出現したモンスターに対応するためにモンスターの元に向かっていく。

 一方ラムザは動けずにいた。そして胴色の鎧を装備した男に向かってこう言う。

 

「なぜ…なぜ生きているんだ! ガフガリオン!!」

 

 男の名はガフ・ガフガリオン。ラムザの世界―――――イヴァリースでの戦争―――――五十年戦争時代では東天騎士団の分隊長として活躍した男。

 勝利のためには手段を選ばぬ残忍な戦い方をとったことから終戦後、騎士団から追走された者でもある。そしてラムザの傭兵時代の先輩でもあった男だ。

 そんな彼だが、ラムザと決別したのは、王女オヴェリア・アトカーシャの誘拐または口封じの仕事を受け持ったため。

 誘拐された王女オヴェリアをゼイレキレの滝で彼女を殺そうとしたのがきっかけであった。その後、何度かラムザとガフガリオンは戦うことになる。そして最後の戦い―――――ライオネル城、城門前でラムザに討たれ、この世を去ったのだ。

 その死んだ男、ガフガリオンが何故このオラリオに生きて現れたのだろうか。

 

「この俺が生きているのが信じられンようだな。まあ、俺も生き返るとは思わなかったンだがな!」

 

「どういうことだ!」

 

「知りたいか? だったらこの俺を倒してからにするンだな!」

 

 ラムザとガフガリオンが対峙しようとしたその時、アイズがガフガリオンに向かってこんなことを言ってきた。

 

「…あなたがこの街にモンスターを解き放ったの?」

 

「……なんのことだかさっぱりわからンな! しかしどこの誰だか知らンが、モンスターを解き放ってくれた事には感謝しているぜ! こうして人間の血を集められるンだからな(・・・・・・・・・・・・・・)!」

 

「…………!」

 

 アイズは瞬時にガフガリオンに詰めより、彼目掛けて剣を振るう。

 

「…………!」

 

 その速さは凄まじく、ガフガリオンは持っていた剣で防ぐが、咄嗟の判断だったのだろう、勢いに負け、ガフガリオンは吹っ飛ばされ、壁に激突した。

 

「……! ほう…女だがなかなかやるじゃないか! ならばこちらも本気でやらンとな! お遊びは終わりだ! お礼に良いもの見せてやる!」

 

 崩れていく壁を背にガフガリオンは言う。

 傷を負ったが、それでもお構いなしのようだ。

 そしてガフガリオンは不敵に笑うと剣を構え、そしてこう言った。

 

 

「神に背きし剣の極意 その目で見るがいい… 闇の剣!」

 

 

 するとアイズの頭上に空間が亀裂し、大きな目のようなものが現れる。そこからドロドロとした血液のようなものが滴り落ちた瞬間、真下から凄まじい剣気がアイズを貫く。

 

「クウッ…!」

 

 アイズは思いのほかダメージ大きいのか地面に膝をつく。するとガフガリオンの傷がみるみる癒えていった。

 

 闇の剣――――ダークナイトで暗黒剣の使い手であるガフガリオンの技。闇の力で傷つけた相手の命を吸い、自分は傷を癒すことが出来る技だ。

 

「驚いたか? だが、まだまだこんなもンじゃないぞ!」

 

 ガフガリオンが再び闇の剣をしようと剣を構える。すると今度はラムザがガフガリオンに駆けていく。

 ガフガリオンは狙いをラムザに定め、闇の剣をラムザに振るった。

 凄まじい剣気がラムザを貫く。だが―――――。

 

「…………!」

 

 ラムザは怯むことなく、ガフガリオンの前に立ち、そして剣を振るった。

 ガフガリオンは持っている剣でラムザの攻撃を防ぐ。

 そして互いに剣を弾き、一定の距離を保ち対峙した。

 

 

「この感じ…ガフガリオン。貴様人間ではないな…!」

 

 ラムザはガフガリオンを睨みながらある結論を言った。

 

「…ほう、そこに気付くとはな! 少しは成長したみたいだ。たしかに俺は人間ではない。人間を超越した者だからな! あのお方の力(・・・・・・・・・・・・・・)によって俺はこの地に蘇ることが出来た!」

 

 ガフガリオンは嬉しそうに言う。

 

「あのお方…? それはいったい誰だ! 何が望みだ!」

 

「知りたければお前も来いラムザ! この力は素晴らしいぞ! あのときよりも圧倒的な力を手に入れ、永遠の命も手に入れた! この喜びを共に分かち合おうじゃないか!!」

 

「断る! 僕は悪事に荷担するつもりはない! ガフガリオン、悪魔に魂を売ってまでして蘇り、それでもしたいことが争いか! 哀れだな!」

 

「何とでも言うがいい! この地では血がたりないンだよ! 俺はそれをするためなら何でもしてやる!」

 

「そんなことさせるものか!」

 

「だったら力ずくで止めてみるンだな! あの時は不覚をとったが、今度はそうはいかンぞ!!」

 

 ガフガリオンは闇の剣を放つ。

 するとラムザの真下から剣気が貫く。

 

「クッ……!」

 

 ラムザは傷を負い一歩引き下がる。その隙をガフガリオンが突き、ラムザ目掛けて重い拳で殴りつけた。

 その威力は凄まじく。ラムザは後方へと吹っ飛ばされる。

 明らかにその力は人間の放つ力ではなかった。

 ラムザは壁に激突した。そして壁が崩れ下敷きになる。

 

「ラムザ…!」

 

 アイズは下敷きになったラムザを見て思わずそう口ずさんだ。

 だがラムザは無事であった。

 瓦礫を払いのけ、何食わぬ顔で立ち上がったからだ。

 鋭い目つきでガフガリオンを睨みつける。

 そしてラムザは何かを決したかのように大声で叫んだ。

 それは彼の反撃の合図でもあった。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  

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