これからも引き続き頑張っていきたいと思います。
「さあ、今日はとことん食べてやるぞぉ!」
ヘスティアがメニューを見ながらはりきって言う。ラムザもメニューを見ながら何を食べるか悩む。そして一つ気になったことがあった。
(…高いな)
そう、どれもこれも値段が高いのだ。無難なパスタでさえ、三百ヴァリスする。ラムザはイヴァリース中を旅していたので、このような店にも慣れているのだが、それでも金額を気にしてしまう。旅をしていて節約家なっていたのだ。もっとも出すときは、出すのだが。主に武器や防具に。
暫くして四人のメニューが決まる。ヘスティアはチーズ入りハンバーグとライスとステーキとビーフシチューと食後にアイスを、アルマはオムライスを、ラムザはカットステーキ、ベルは金額を気にしたのだろう。無難にパスタを注文した。
一人やたらと注文が多いのだが、そこは気にしてはいけない。
「何か飲むかい?」
カウンターから女将が聞いてくる。
「…そうだな。じゃあ、ミルクを」
ラムザのその言葉を聞いた女将は目を丸くした。その後大笑いする。
「ハハハハ! 珍しいね! 酒場で酒を飲まない奴なんてさ!」
そう言って女将はミルクを注ぎラムザに渡した。
「アンタだろ? シルが声をかけたって奴は。なんでもジャンジャン金を使ってくれるそうじゃないかい!」
「おうともさ! そのつもりだぜ! 女将!! あ、あとエール追加で!」
ヘスティアが笑顔でそう言う。そんなヘスティアを見たラムザは苦笑いする。ジャンジャン金を使うなんて、勧誘された時、そんなこと一言も言ってないのだが、それでも勧誘された身なので誇張されたのだろう。出来れば節約もしたいんだけどな。今後のために、とラムザは心の中でそんなことを思った。
しばらくすると料理が並べられる。ヘスティアは大衆の目など気にすることなく、ハンバーグを貪る。その後エールを飲み、旨い!! と叫んだ。ベルはそんなヘスティアに若干引きつきながらもパスタを食べる。ラムザとアルマは貴族育ちだからなのだろう、静かに上品に食べ物を食べていた。
「ラムザ君とアルマ君は、上品に食べるんだねぇ…」
ヘスティアがハンバーグを貪りながら言う。
「ヘスティア様は、もっと気品を大事にしてください」
アルマが遠慮がちにそう言う。
「何を言っているんだい! そんなもの、下界に降りた時に捨てちゃったよ!! 今の僕は明日をどう生きるかしか、考えていないのさ!!」
貧乏生活が長いヘスティアは、堂々と大声でそう言った。
「…神様。なんだかカッコ悪いです…」
ベルは周りを気にしながら、恥ずかしそうに小さく呟いた。そんなヘスティアを見てラムザとアルマは苦笑いする。
その後、食事はヘスティアを残し、皆食べ終える。
「……うっぷ。まだまだ、僕の胃袋は…こんなものじゃないぞ…!」
明らかに食べるペースが落ちたヘスティアはそんなことを呟きながらビーフシチューを食べる。
「ヘスティア様。無理をなさらないでください」
アルマはヘスティアに言う。
「大丈夫…。僕はまだまだイケる…! イケるんだ…!!」
これは時間がかかりそうだ。そう思ったラムザは、ふと夜風を浴びたくなった。
酒場の熱気や賑わいに身体が少しまいったのだろう。
「ちょっと、夜風を浴びにいく」
そう言ってラムザは席を立ち、店の外に出た。
ラムザは店の入り口の前で、暫く空を眺める。あたり一面綺麗な星空であった。どこの世界でも星空は変わらない。ラムザがそう思っていると――――。
「この店を気に入ってくれましたか? ラムザさん」
シルが声をかけてきた。
「君は…、シル。だったね」
「はい」
そう言ってシルは微笑んだ。
「うん。とても賑やかで良いところだよ」
「このお店、冒険者さん達に人気があって繁盛しているんですよ。ラムザさんも冒険者なんですか?」
ラムザはうなずく。
「やっぱり、そうだと思ったんですよ。それに…普通の冒険者とはなんだか違う。そんな感じがするんです」
「…………」
「あっ! ゴメンなさい。失礼なことを言って」
「いや、気にしないでくれ」
辺りは夜だというのに、人々の賑わいはとまることはない。
そんな光景を見たシルはこう言う。
「沢山の人がいると、沢山の発見があって…私、目を輝かせちゃうんです」
ラムザはシルの言葉を黙って聞く。
「知らない人と触れ合うのが、ちょっと趣味になってきているというか……心が疼いてしまうんです」
「だから僕にも声をかけたのかい?」
「はい」
「でも、女将さんが言っていたけど、お金をジャンジャン使うってのは頂けないな」
「こちらも商売ですから」
そう言ってシルは微笑んだ。
「コラ! シル~!! サボッてニャいで手伝うニャ!!」
キャットピープルの店員がシルに言う。
シルは慌てて「今行きます!! じゃあラムザさん。ゆっくりして行ってくださいね」と言って店の中へと入っていった。
シルを見送ったラムザはもう暫く夜風を浴びることにした。
夜風を浴び終わったラムザは店に入り、ヘスティア達の元へと戻った。
ヘスティアはテーブルに伏せ唸っていた。
「アルマ君…僕の頼みを聞いてくれるかい…?」
「なんでしょうか?」
「ここにタッパがある…。これに残っている料理を詰めておくれ…おなかがすいたらまた食べるから…」
「いくらヘスティア様の頼みでも、そんなはしたないことは出来ません」
アルマの言葉を聞き、ヘスティアは力つきたように、再びテーブルに伏せた。
その後、タッパ詰めを断念したが、それでもアイスを何とか食べ終えたヘスティアをつれ、会計を済ませ四人は店を出る。そして廃教会に戻ってきた。
「さあ、今日のステイタス更新をやろうじゃないか!」
ヘスティアがそう言った。
「はい!」
「わかりました」
ベルとアルマが続けざまに言う。
「僕は遠慮しておきます。あまり上がってないと思うので」
ラムザが言った。
「むう…。では、アルマ君からステイタスの更新をしようじゃないか!」
その言葉を聞き、ラムザとベルは部屋の外にでる。
ラムザは壁に背をつけながら、ベルは朽ちた女神像を見ながらアルマのステイタス更新を待つ。
「あの…ラムザさん」
ふとベルがラムザにとある質問をする。
「アルマさんが言ってましたけど、ラムザさんはLv9なのですか?」
「ああ、ヘスティア様が言うには、普通ではないようだけどね」
「…そんな!? 凄いことですよ!! 世界中探しても、きっと、ラムザさんのような人はいませんよ!」
ベルがまくし立てる。
「ベル。そんなことはないよ。世界は広い。それこそ僕より凄い人は沢山いるはずさ」
「ラムザさん…」
「それに、僕はそこまで強い人間じゃない。臆病で、戦うことも嫌いな男さ。でも―――――誰かを守るためなら、僕は迷わず剣を振るう。正義のためなんて言い訳はしないけどね」
ベルは謙遜するラムザを見て、あることを思った。まるで自分の好きな迷宮神聖譚に登場する物語の英雄のようだと。
「そう言えばベル。君はなんで冒険者なんかになろうと思ったんだい?」
ラムザがベルに言う。
「…! 僕、英雄に憧れているんです。怪物を倒し、人々を救い、囚われのお姫様を助け出す、最高に格好良い英雄に、自分もなりたい、と――――」
「…………」
「それと、英雄になれば可愛い女の子の出会いもあるじゃないですか!!」
「…で、出会い!?」
「はい! ハーレムです!! 男ならハーレムを目指さなくてはならないんです!! 男の浪漫です!」
「……もしかして、ベルが冒険者になりたい理由は――――――」
「はい! 出会いを求めてやってきました!!」
それを聞いた瞬間、ラムザは気が抜けそうになった。なんとまあ素直な性格だ。だが、これがベルの良いところなのだろう。
「…でも、話していて、わかったことがあります! やっぱりラムザさんは凄い人です! そんなに強いのに自分を謙遜して…。まるで迷宮神聖譚に登場する物語の英雄みたいです!」
ベルは自分が思っていたことを言った。
そんなベルにラムザはこう言う。
「英雄か…。買いかぶりすぎだよ。僕はそんなに立派な人間じゃない。ただ……」
「ただ…?」
「目の前の不正や悪事は見捨てておけないだけさ」
ラムザはそう呟いた。その呟きは自分の信念に基づくものであった。