異端者が英雄になるのは間違っているだろうか?   作:もち米

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誤字指摘ありがとうございます。

これからも引き続き頑張っていきたいと思います。


5話 偽らざる気持ち

「さあ、今日はとことん食べてやるぞぉ!」

 

 ヘスティアがメニューを見ながらはりきって言う。ラムザもメニューを見ながら何を食べるか悩む。そして一つ気になったことがあった。

 

(…高いな)

 

 そう、どれもこれも値段が高いのだ。無難なパスタでさえ、三百ヴァリスする。ラムザはイヴァリース中を旅していたので、このような店にも慣れているのだが、それでも金額を気にしてしまう。旅をしていて節約家なっていたのだ。もっとも出すときは、出すのだが。主に武器や防具に。

 暫くして四人のメニューが決まる。ヘスティアはチーズ入りハンバーグとライスとステーキとビーフシチューと食後にアイスを、アルマはオムライスを、ラムザはカットステーキ、ベルは金額を気にしたのだろう。無難にパスタを注文した。

 一人やたらと注文が多いのだが、そこは気にしてはいけない。

 

「何か飲むかい?」

 

 カウンターから女将が聞いてくる。

 

「…そうだな。じゃあ、ミルクを」

 

 ラムザのその言葉を聞いた女将は目を丸くした。その後大笑いする。

 

「ハハハハ! 珍しいね! 酒場で酒を飲まない奴なんてさ!」

 

 そう言って女将はミルクを注ぎラムザに渡した。

 

「アンタだろ? シルが声をかけたって奴は。なんでもジャンジャン金を使ってくれるそうじゃないかい!」

 

「おうともさ! そのつもりだぜ! 女将!! あ、あとエール追加で!」

 

 ヘスティアが笑顔でそう言う。そんなヘスティアを見たラムザは苦笑いする。ジャンジャン金を使うなんて、勧誘された時、そんなこと一言も言ってないのだが、それでも勧誘された身なので誇張されたのだろう。出来れば節約もしたいんだけどな。今後のために、とラムザは心の中でそんなことを思った。

 しばらくすると料理が並べられる。ヘスティアは大衆の目など気にすることなく、ハンバーグを貪る。その後エールを飲み、旨い!! と叫んだ。ベルはそんなヘスティアに若干引きつきながらもパスタを食べる。ラムザとアルマは貴族育ちだからなのだろう、静かに上品に食べ物を食べていた。

 

「ラムザ君とアルマ君は、上品に食べるんだねぇ…」

 

 ヘスティアがハンバーグを貪りながら言う。

 

「ヘスティア様は、もっと気品を大事にしてください」

 

 アルマが遠慮がちにそう言う。

 

「何を言っているんだい! そんなもの、下界に降りた時に捨てちゃったよ!! 今の僕は明日をどう生きるかしか、考えていないのさ!!」

 

 貧乏生活が長いヘスティアは、堂々と大声でそう言った。

 

「…神様。なんだかカッコ悪いです…」

 

 ベルは周りを気にしながら、恥ずかしそうに小さく呟いた。そんなヘスティアを見てラムザとアルマは苦笑いする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、食事はヘスティアを残し、皆食べ終える。

 

「……うっぷ。まだまだ、僕の胃袋は…こんなものじゃないぞ…!」

 

 明らかに食べるペースが落ちたヘスティアはそんなことを呟きながらビーフシチューを食べる。

 

「ヘスティア様。無理をなさらないでください」

 

 アルマはヘスティアに言う。

 

「大丈夫…。僕はまだまだイケる…! イケるんだ…!!」

 

 これは時間がかかりそうだ。そう思ったラムザは、ふと夜風を浴びたくなった。

 酒場の熱気や賑わいに身体が少しまいったのだろう。

 

「ちょっと、夜風を浴びにいく」

 

 そう言ってラムザは席を立ち、店の外に出た。

 ラムザは店の入り口の前で、暫く空を眺める。あたり一面綺麗な星空であった。どこの世界でも星空は変わらない。ラムザがそう思っていると――――。

 

「この店を気に入ってくれましたか? ラムザさん」

 

 シルが声をかけてきた。

 

「君は…、シル。だったね」

 

「はい」

 

 そう言ってシルは微笑んだ。

 

「うん。とても賑やかで良いところだよ」

 

「このお店、冒険者さん達に人気があって繁盛しているんですよ。ラムザさんも冒険者なんですか?」

 

 ラムザはうなずく。

 

「やっぱり、そうだと思ったんですよ。それに…普通の冒険者とはなんだか違う。そんな感じがするんです」

 

「…………」

 

「あっ! ゴメンなさい。失礼なことを言って」

 

「いや、気にしないでくれ」

 

 辺りは夜だというのに、人々の賑わいはとまることはない。

 そんな光景を見たシルはこう言う。

 

「沢山の人がいると、沢山の発見があって…私、目を輝かせちゃうんです」

 

 ラムザはシルの言葉を黙って聞く。

 

「知らない人と触れ合うのが、ちょっと趣味になってきているというか……心が疼いてしまうんです」

 

「だから僕にも声をかけたのかい?」

 

「はい」

 

「でも、女将さんが言っていたけど、お金をジャンジャン使うってのは頂けないな」

 

「こちらも商売ですから」

 

 そう言ってシルは微笑んだ。

 

「コラ! シル~!! サボッてニャいで手伝うニャ!!」

 

 キャットピープルの店員がシルに言う。

 シルは慌てて「今行きます!! じゃあラムザさん。ゆっくりして行ってくださいね」と言って店の中へと入っていった。

 シルを見送ったラムザはもう暫く夜風を浴びることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜風を浴び終わったラムザは店に入り、ヘスティア達の元へと戻った。

 ヘスティアはテーブルに伏せ唸っていた。

 

「アルマ君…僕の頼みを聞いてくれるかい…?」

 

「なんでしょうか?」

 

「ここにタッパがある…。これに残っている料理を詰めておくれ…おなかがすいたらまた食べるから…」

 

「いくらヘスティア様の頼みでも、そんなはしたないことは出来ません」

 

 アルマの言葉を聞き、ヘスティアは力つきたように、再びテーブルに伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、タッパ詰めを断念したが、それでもアイスを何とか食べ終えたヘスティアをつれ、会計を済ませ四人は店を出る。そして廃教会に戻ってきた。

 

「さあ、今日のステイタス更新をやろうじゃないか!」

 

 ヘスティアがそう言った。

 

「はい!」

 

「わかりました」

 

 ベルとアルマが続けざまに言う。

 

「僕は遠慮しておきます。あまり上がってないと思うので」

 

 ラムザが言った。

 

「むう…。では、アルマ君からステイタスの更新をしようじゃないか!」

 

 その言葉を聞き、ラムザとベルは部屋の外にでる。

 ラムザは壁に背をつけながら、ベルは朽ちた女神像を見ながらアルマのステイタス更新を待つ。

 

「あの…ラムザさん」

 

 ふとベルがラムザにとある質問をする。

 

「アルマさんが言ってましたけど、ラムザさんはLv9なのですか?」

 

「ああ、ヘスティア様が言うには、普通ではないようだけどね」

 

「…そんな!? 凄いことですよ!! 世界中探しても、きっと、ラムザさんのような人はいませんよ!」

 

 ベルがまくし立てる。

 

「ベル。そんなことはないよ。世界は広い。それこそ僕より凄い人は沢山いるはずさ」

 

「ラムザさん…」

 

「それに、僕はそこまで強い人間じゃない。臆病で、戦うことも嫌いな男さ。でも―――――誰かを守るためなら、僕は迷わず剣を振るう。正義のためなんて言い訳はしないけどね」

 

 ベルは謙遜するラムザを見て、あることを思った。まるで自分の好きな迷宮神聖譚に登場する物語の英雄のようだと。

 

「そう言えばベル。君はなんで冒険者なんかになろうと思ったんだい?」

 

 ラムザがベルに言う。

 

「…! 僕、英雄に憧れているんです。怪物を倒し、人々を救い、囚われのお姫様を助け出す、最高に格好良い英雄に、自分もなりたい、と――――」

 

「…………」

 

「それと、英雄になれば可愛い女の子の出会いもあるじゃないですか!!」

 

「…で、出会い!?」

 

「はい! ハーレムです!! 男ならハーレムを目指さなくてはならないんです!! 男の浪漫です!」

 

「……もしかして、ベルが冒険者になりたい理由は――――――」

 

「はい! 出会いを求めてやってきました!!」

 

 それを聞いた瞬間、ラムザは気が抜けそうになった。なんとまあ素直な性格だ。だが、これがベルの良いところなのだろう。 

 

「…でも、話していて、わかったことがあります! やっぱりラムザさんは凄い人です! そんなに強いのに自分を謙遜して…。まるで迷宮神聖譚に登場する物語の英雄みたいです!」

 

 ベルは自分が思っていたことを言った。

 そんなベルにラムザはこう言う。

 

「英雄か…。買いかぶりすぎだよ。僕はそんなに立派な人間じゃない。ただ……」

 

「ただ…?」

 

「目の前の不正や悪事は見捨てておけないだけさ」

 

 ラムザはそう呟いた。その呟きは自分の信念に基づくものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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