異端者が英雄になるのは間違っているだろうか?   作:もち米

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7話 スキル

 咆哮を上げながらミノタウロスがベルとアルマを襲う。

 ミノタウロス――――――牛頭人体モンスター。Lv2にカテゴライズされるこのモンスターは、並のLv1冒険者では到底太刀打ち出来ない。十五階層に出現するこのモンスターが、何故五階層に現れたのだろうか。

 

「うわぁあああああッ!?」

 

「ベル! 退くよ!!」

 

 アルマは驚くベルを無理矢理引っ張り、ミノタウロスから逃げる。

 

「あ、ア、アルマさん! なんでミノタウロスがこんなところにッ!?」

 

「わからない!」

 

 逃げるベルとアルマ。しかしミノタウロスは追いかけてくる。

 

「お、追ってきますよ! アルマさんッ!!」

 

「せめて魔法を詠唱する時間さえあれば…!」

 

 走りながら、アルマはそう言う。アルマ唯一の攻撃魔法アルテマは、絶対的なエネルギーでダメージを与える魔法。ミノタウロスにも通用するかもしれない。

 

「…ッ! だったら僕が囮になって時間を稼ぎます!! アルマさんはその内に魔法を!!」

 

「ベル!? 無茶よ!!」

 

 アルマの言葉を聞かず、ベルはナイフを手に持ち、ミノタウロス相手に突っ走る。そして一定の距離まで来ると、ベルは立ち止まる。ベルとミノタウロスはじっとにらみ合って対立した。

 ベルの全身が震える。しかし、ここで逃げる訳にはいかない。自分が立ち向かわなければならないのだ。でないと、アルマに危険が及ぶ。

 

「…………ッ!」

 

 アルマはアルテマを放つために魔力を込める。はやく、ベルを助けなければ。確実に命にかかわる。 

 

「…………クッ!」

 

 そして次の瞬間。ミノタウロスが咆哮を上げながらベルに突進してきた。

 

「…………ッ!!」

 

 ベルは全身を研ぎ澄ませ、迫り来るミノタウロスの攻撃を避けようとする。だが、それはしなくて済んだ。何故なら――――――。

 ミノタウロスの背後から、蒼色の軽装を装備した少女が現れ、装備している剣で、ミノタウロスを一刀両断したからだ。その際にベルは、ミノタウロスの返り血を浴び、全身が真っ赤になった。

 突然の出来事にぽかんとする、ベルとアルマ。事が終わった少女は二人に向かってこう言う。

 

「あの……大丈夫、ですか?」

 

 彼女の名前は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。ロキ・ファミリアに所属する第一級冒険者だ。

 アイズに声をかけられたベルは見る見る顔を真っ赤にさせる。

 動揺しながらもベルは何とかお礼を言おうとするが、アイズにベルが手を差し伸べられた瞬間――――――。

 

「う、うわあああああーーーー!!」

 

 ベルは全速力で逃げてしまった。

 

「ちょ、ちょっとベル!?」

 

 突然の出来事に慌てるアルマ。一方アイズは逃げられたことにショックだったのだろうか。唖然としていた。 

 

「…っ、……っっ、……くくっ!」

 

 するとアイズの背後から笑いを堪える一人の狼人がいた。その男はロキ・ファミリアに所属するベート・ローガであった。 

 アイズは笑いを堪えるベートを睨みつける。

 

「あの…、助けてくれてありがとうございました」

 

 そんなアイズ達にアルマは礼を言う。

 

「…ううん。逃がしたのは、こっちの責任だから…」

 

 アイズはアルマに向けて言った。

 

「ハッハッハッハ! あのトマト野朗の仲間か! てめえも情けない奴を仲間にしたもんだなあ!! まさか仲間を置いて逃げちまうなんてよぉ!!」

 

 ベートの言葉を聞いたアルマはムッとする。

 

「…それじゃ! 私はこれで!」

 

 何か言いたいことがあるが、アルマは堪えた。そして、この場にいたくなかったのだろう。アルマは駆け足でベルを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンの一階層にベルはいた。恥ずかしさで逃げ出したベルだが、アルマを置いていってしまったことに気がつき、後悔していた。そして引き返そうとした時。

 

「ベル!」

 

 アルマがベルの元に駆け寄った。

 

「逃げるなんてひどいじゃない」

 

「すいません……」

 

 ベルはアルマに謝る。

 

「…それで、なんであんな行動を?」

 

「…それは」

 

 アルマの問いにベルは頬を赤らませ、もじもじとする。

 

「あの…さっきの、アイズ・ヴァレンシュタインさんですよね。凄い綺麗というか、美しいというか…」

 

「まさか一目惚れ?」

 

 アルマの言葉にベルは顔を真っ赤になり、うつむく。全身が返り血で真っ赤になっているのだが、とにかく、真っ赤になったのだ。

 

「まあ、いいわ。それよりベル。その格好は酷いから、早くダンジョンを出てシャワーでも浴びましょう。それからギルドに行ってエイナさんに、アイズさんのこと聞いてみたら良いじゃない」

 

 ミノタウロスの返り血で真っ赤になっているベルは、アルマの言葉でようやく自分の身体の状態を知る。ここまで全身が真っ赤になっていることに、気がついていなかった。

 

「わかりました!」

 

 二人はダンジョンの外に出る。そしてベルは公共施設でシャワーをすませた。

 それから二人は冒険者ギルドへと向かう。

 

「エイナさぁあああああん!!」

 

「ん?」

 

 エイナ・チュールは片手に持った小冊子から顔を上げた。そこには駆けてくるベルの姿と、その後ろでなにやら少々呆れた表情のアルマの姿があった。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださああああああいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで……アイズ・ヴァレンシュタイン氏、の情報だったっけ? どうしてまた?」

 

「えっと、その…」

 

 ベルは赤くなりながら先程あった一部始終を語った。五階層でミノタウロスに遭遇したこと。

 寸前のところで、アイズ・ヴァレンシュタインに救われたこと。

 お礼を言おうとしたけど、頭が真っ白になって全速力で逃げてしまったこと。

 耳を傾けていたエイナは、話が進んでいく内に表情を険しくしていく。

 

「もぉ、どうして君達は私の言いつけを守らないの! ダンジョンは危険なところなんだから、不用意に下層へ行っちゃあダメ! 冒険なんかしちゃいけないっていつも口を酸っぱくして言っているでしょう!」

 

「は、はい……」

 

「アルマちゃんも、貴方はしっかりしていると思ったんだけど、無茶なことしちゃダメよ!」

 

「ごめんなさい。でも、五階層でミノタウロスに遭遇するとは思わなかったから…」

 

「ダンジョンは何が起こるかわからないんだから、気をつけてよ」

 

 その後、エイナからアイズ・ヴァレンシュタインの情報を聞く。もっともそれは公開されている一般情報だったので、ベルにとっては少々ガッカリしたものであった。その後、二人は魔石を換金し、廃教会へと帰った。

 廃教会にはラムザとバイトを終えたヘスティアがいた。

 

「ただいま」

 

「神様、ラムザさん。ただいま帰ってきました!」

 

 二人はそう言って部屋へと入る。

 ヘスティアは返ってきたベルとアルマに駆け寄る。

 

「お帰り! 今日はいつもより早かったね?」

 

「ちょっと、ダンジョンでミノタウロスに遭遇して…」

 

 ベルの言葉を聞いたラムザがピクッと反応する。

 

「ミノタウロス…? ベル、アルマ。まさか無茶をしたんじゃないだろうな?」

 

「兄さん。五階層にミノタウロスが出てきたのよ」

 

 アルマがラムザに言う。

 

「五階層に? 確かミノタウロスは十五階層以下に出現するはずだが…」

 

「どうやら、ロキ・ファミリアが取り逃がしたみたいね」

 

「ロキ・ファミリアか…」

 

 アルマの言葉を聞いたラムザはそう呟く。ラムザもロキ・ファミリアの存在を知っていた。オラリオ屈指の探索ファミリアで、高レベルな冒険者が多数存在するファミリアだ。

 

「ラムザさん。アイズさんのこと知っていますか?」

 

 ベルがラムザに聞く。

 

「【剣姫】か。いや、噂でしか知らないな…。どうしてそんなことを?」

 

「どうやら一目惚れしたみたいよ」

 

 アルマが面白くなさそうに言う。それを聞いたヘスティアはベルに詰め寄る。

 

「む…! ベル君。どういうことだい!? 僕という神がいながら他の女の子に浮気でもするのかい!?」

 

「か、神様!? 浮気だなんて、そんな大げさな!」

 

「むむむむ~!」

 

 ヘスティアは頬を膨らませる。

 

「ヘスティア様。その辺にしておいた方が…。それにベル。ステイタスを更新したいだろ?」

 

 ラムザがそう言う。

 

「…はい! お願いします。神様!」

 

 ベルはそう言ってヘスティアに頭を下げる。

 

「むぅ…。色々言いたいことはあるけど、今度にしよう。それじゃベル君! アルマ君! ステイタスを更新しよう!!」

 

 先にアルマからステイタスを更新することになった。アルマのステイタス更新をするので、ラムザとベルは部屋の外に出る。

 そして『神の恩恵』を刻みアルマのステイタスが更新される。

 

 

アルマ・ベオルブ

 

 

Lv1

 

力 :I14

 

耐久:I9

 

器用:H120

 

俊敏:I90

 

魔力:E490

 

 

《魔法》

 

 

マバリア

 

 

デスペナ

 

 

アルテマ

 

 

《スキル》

 

 

 

 アルマのステイタス更新が終わる。

 

「相変わらず魔力の上昇が尋常じゃないねぇ…」

 

 ヘスティアはステイタスを紙に書き上着を着たアルマに手渡した。そうアルマの魔力の伸びが良すぎるのだ。これは備えもった才能と、聖天使アルテマの器だった影響だろう。

 

「魔力はとにかく、他のステイタスはなかなか伸びませんね」

 

 アルマは渡された紙を見ながら呟く。

 

「でも魔力は凄いよ! これからもどんどん更新していってよ!」

 

 アルマのステイタス更新が終えると、今度はベルのステイタスを更新する。

 

 

 

ベル・クラネル

 

Lv1

 

力 :I82

 

耐久:I13

 

器用:I96

 

俊敏:H172

 

魔力:I0

 

 

《魔法》

 

 

《スキル》

 

 

【憧憬一途】

 

 

 早熟する。

 

 懸想が続く限り効果持続。

 

 懸想の丈により効果向上。

 

 

【破邪顕正】

 

 

 自分のためではなく、他人のために戦う時、全ステイタスが上昇する

 

 

 

 

「…………」

 ヘスティアは難しい表情をした。ベルにスキルが更新されたのだ。しかも二つも。【破邪顕正】の特定条件でのステイタスの上昇はまだ良い。問題は【憧憬一途】の方だ。

 特定条件下における成長速度の超強化。間違いなく未確認だ。

 他の神々にばれるとまずい。なぜなら神々は娯楽に飢えているから。全力を持ってちょっかいをかけるだろう。中には契約済みだというのに、自分のファミリアに勧誘してくる者も。それはラムザで実証済みだ。

 

(バレちゃ不味い…絶対不味い…)

 

 ヘスティアは【憧憬一途】の項目だけを消して、紙をベルに渡した。

 

「わあッ!! 神様! 僕にも《スキル》が出たんですね!!」

 

 ヘスティアの苦悩も知らずにベルがはしゃぐ。そんなベルのステイタスを見ながらアルマは良いなあっと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

  

 

 

 

 

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