その土曜日は、私の心情を表すかのように雨が降っていた。
その雨の中、私は公園のベンチに傘も差さずにうずくまる。
家にいてもひとりぼっち。両親は顔も知らないし、唯一の肉親のお姉ちゃんは日本にいない。
一緒に遊ぶ友達もいない。むしろ私をいじめて遊ぶ者がいる始末だ。
「何故お姉さんは出来てあなたは出来ないの」とか「やっぱ出来損ないのあんたにお姉さまはもったいない」とか。
いつもいつも、かけられる言葉はこんな冷たいものばかりで。
暖かい言葉なんて、私はもう数年聞いてない。
お姉ちゃんは嫌いじゃない。むしろ大好きだ。一週間に2回、必ず電話してくれるし、四季が変わるあたりになると短い期間だけど帰ってきてくれるしお風呂も入ってくれる。
私がお姉ちゃんを嫌いになるなんてありえない。
それにそんな言葉はいつも聞きなれてるから、心を押し殺して無でいれば平気だった。
だったんだ。けど、元気いっぱいのあの子がいなくなってから、いじめに暴力が加わるようになった。
私は守られていたんだ、見えない迷惑をかけていたんだ、あの子に。それに気づかなかった罰なのだろう。
痛かった。苦しかった。空っぽになった気持ちだった。幸いまだ犯されていないけどそれも時間の問題だろう。
死にたい
死にたい
死にたいよ。
雨に打たれていれば、死ねるわけじゃない、けど、死んだ気持ちに、なれるのかな。そう考えたのは正しかったらしい。
寒いし、冷たいし、孤独。でもね、どこか楽になってきてる感じもするの。
お姉ちゃんやあの子には裏切る行為だとわかってる。
けれど
ごめんなさい。つかれちゃった。
「眠ったらもっと楽になるのかな⋯⋯」
そんなことを言ったら本当にうとうと眠くなってきた。
身体を横にして、雨に打たれる感覚に身を任せ、優しい微睡みに身を委ねて、
ふっと雨に打たれる感覚が消えた。
顔を上げると傘差している人がいた。
ぼんやりしてたから朧気だったけどそれはわかった。
大きい人が傘を私に差して、自分が濡れているのも。
なんでこの人は自分が濡れるのに、なんでこの人は私に傘をかざしているのだろう。
なんで、この人は悲しそうなのだろう。
「なん……で……?」
「あ?」
思わず問いかける言葉が口から出る。答えはすぐに返ってきた。
「そこに人の形をしたボロ雑巾があった。誰の目にも留められそうにねぇ、誰のものでもねぇボロボロのな。だったら俺がそれをどう扱おうが勝手だろうが」
ボロ雑巾。
心も身体もボロボロな今の私を表すなら最高の表現だろう。
でも、その言葉は、今までかけられたどの言葉よりも酷くて、どの言葉よりも最悪で、
「俺が拾ってやる。ボロ雑巾はゴミみてぇな俺の居場所がお似合いだ」
どの言葉よりも、そしてなにより悲しげな眼が、暖かかった。
だからだろうか。
迷惑をかけるとわかっているのに。
私がどうなるのかもわからないのに。
「…………はいっ」
私は出来る限りの不出来な笑顔でうなずいてしまったのです。
「んじゃ、名前を教えろボロ雑巾。でなけりゃあずっとそう呼ぶぞ」
この人がいたから。
「織斑……織斑一夏……です」
私は人になれたのです。
ちなみに原作は旧版を昔友人に借りて読んだくらいなので、時系列その他諸々や最新の展開は知らないので独自にやっていこうと思います。
感想批評等があれば感想をもらえるとありがたいです。