あと新キャラも出ます。と言っても彼女はしばらくはちょい役、といったポジションですが。
毎度読んでくださる皆様、謝謝。
騒乱のHRが終わり、授業が始まる前の休み時間に入った教室は少しずつにぎやかさが出てきている。
そこにいる唯一の男性、大川光輝は身体にどっと疲れがかかるのを感じ、机に突っ伏していた。
(山田先生ってあんなに怖い人だったか?なんかこう……優しさいっぱいのイメージが……)
誤解なきように言うと山田先生はちゃんとやさしい人だ。それはこの世界でも変わらない。
しかし、彼女があそこまで荒れた原因は彼にある。
突然見つかった男性操縦者。それを受け入れる体制とクラスへの編入作業。寮の部屋を確保するための移動作業。IS委員会への電話対応、etc,etc……
電話対応は職員全員がやっていたので、それはまだいい。だが1年1組副担任として、また書類作業が出来ない
そりゃあブラックな一面の一つや二つが生まれてしまうのも無理はない。
ちなみに書類作業の出来ない某世界最強は完全にコーヒー運搬係となっていた。
それを知る由もない彼は、自分のイメージとの違いにただ落胆するのだった。
そんな彼の目の前を横切り廊下へと向かう二人の人影。篠ノ之箒と更識一夏である。
(織斑一夏……やっぱりこの場所にいたか。今までどこに隠れていたんだ?まあいい、殺す機会はうってつけのタイミングがある)
今はヒロイン攻略に専念しよう。その時を待つだけだ。そう考える彼は確信できるイベントがあることを知っている。
(もうそろそろだよな……にしても)
意識から意図的に外していた存在に彼は目を向ける。
そこには、顔全体を包帯でぐるぐると覆っている女子生徒がかがんで、机の下側からこちらを覗いている状況だった。はっきりいうと気味が悪い。
(こんなキャラいたっけ?)
そう考えていた大川に話しかける声が聞こえてきた。
「ちょっとよろしくて?」
(きた!)
自分が期待していた声に笑いそうな顔をポーカーフェイスで隠し、そちらへと顔を向ける。
そこには彼の予想通り、金髪ロールのお嬢様スタイル全開の女子生徒。
セシリア・オルコットが立っていた。
「何ですか?セシリア・オルコットさん」
悪印象を与えないように、顔を見ながら明るい声で言葉を返す。
原作のセシリアといえば女尊男卑思考に染まったキャラだ。つまりこちらへの好感度は最悪な値からスタートすることになる。最初から友好的に接するのが正しいだろう。
(あとは原作通りに戦う展開をやんわりと作り、落とす。簡単だな)
そう考えていた彼だが、ふと違和感を感じた。
それはセシリアの「目」である。嫌悪感が感じられなく、値踏みしている感じ。彼はその目に見おぼえがあった。
それはまるで企業の面接官がこちらを観ている眼だ、と。
「ふうん……へぇ、そうですの」
「へ?あの、何か……?」
「いえ、何でもありませんわ。男性がISを動かしたというから、どんな人か気になりましてね」
「そ、そうだったのか……で、どんな印象だった?」
「あまり頼りにならなさそう、ですわね」
「ははは……イギリス代表候補生の貴女に言われると確かに」
「あら、私のことを知っていますの」
「そりゃあまあ。ほら、事前情報って必要でしょ?」
そこで彼女の目線が少し弱まる。少しは見直した、ということだろうか。
そうしてカンコーンと鳴る予鈴。
「では私はこれで」
「ええ、また話しましょう」
そういって彼女は席へ戻っていった。
(……ちっ、あの値踏みするような眼は前世を思い出して嫌になるな。まあいいや、チョロインとしての落ちる速さをこの目で見せてもらおうじゃねぇか)
とりあえず悪印象は避けられた。そう彼は考えていた。
「さて、全員そろっているな。早速授業にはいる……といいたいところだがその前にクラス代表を決めてもらう」
「クラス代表といっても簡単なことしかしません。そう身構えなくても大丈夫ですよ」
予鈴と共に入ってきた教師二人がそういうとクラスは騒がしくなる。クラス代表、というものは誰だってやりたがるものではない。
「自薦他薦は問わん。とにかく決めろ」
「じゃあ大川君で!」
千冬の他薦でもいいとの言葉にさっそく大川の名前が出される。
「え、お、俺!?」
まあこれも彼は想定内だ。だから今はただ戸惑う振りをする、あとは話しが勝手に進んでいくだろう。ついでにやることもある。
「だって唯一の男子だし!」
「そりゃあ持ち上げないとねぇ~」
「あんたわかってるじゃん!あ、今夜空いてる?いや、ちょっと親交を深めにね……」
自分が持ち上げられる。前世では一切無かったのでかなり新鮮な気分だ。一応この世界でも小中と体験したが女子だけ、というのも悪くはない。
演技は続けられる。
「待ってくれよ!俺はクラス代表なんてやる気は……」
「大川、お前は選ばれたのだ。推薦した者の意思を無駄にする気か?」
「ぐ……え、えーと……だ、だったら!俺は更識さんを推薦します!」
「へ?私!?」
推されて焦る姿でクラス全体を見まわし、織斑一夏をたまたま目が合ったから、という風に指名する。
彼の計画はこうだ。
まず、セシリアのプライドを焚きつける。原作通りなら、あの高慢お嬢様は自分を抜いて話しを進められることを許さないだろう。そして口論、とまではいかないが戦う状況をつくる。わざわざ悪印象スタートを避けたのだ、やわらかくいくのが大事だろう。
次に、話しを進める過程で織斑一夏を引きずり出す。戦いで織斑一夏を叩きのめし、自分が上にいるのだと知らしめるのだ。
「あーと、えーと……」
彼女が今あたふたして困っている様子が見られたのは嬉しい誤算である。先ほどのセシリアの目線でいらだった心が晴れてゆく気分だ。
「じ、じゃあ!」
「では、私は自薦します」
「へ?」
意を決した彼女の声を遮るように「自薦」するセシリアの声。彼の口から誰にも聞こえないくらいに小さな疑問の声が漏れる。おかしい、予想通りなら「納得いきませんわっ!」と怒り男性、そして日本をけなしてくるはずなのだ。
「まあ……理由としてはそこの男がトップなど気に入らない、といったところでしょうか。あとは実力を加味してのもの。私はイギリス代表候補生。実力もIS稼働時間もクラスで一番あると思っているのですが?」
「オルコットの言葉にも一理あるが、他薦されたものもいる。さて、どうしたものか……」
「……ISで決める、というのはどうでしょう」
大丈夫、少し修正するだけでおおむね上手くいっている。彼は自分にそう暗示をかける。
「もちろん、ここがIS学園だから、という理由ではありません。ISの稼働に少しでも慣れるためです。それに、イギリス代表候補生と戦える機会はそうそう無いと思いましたので」
「アリーナには使用申請が必要だからすぐにはできないぞ。出来て……ふむ、一週間後だな」
大川の意見を受けて手元のパッドを操作し、アリーナの予約状況を確認する千冬。彼の予想通り一週間後というのは変わらないようだ。
「だが問題はもう一つあるぞ。機体はどうする気だ?オルコットは専用機を所持している。試合にならないと思うが?」
「実は俺の専用機を極秘裏に作ってくれているところがあります。これでいいと思いますが」
「……まあいい。更識はどうだ?このままでは完全に負け戦だ。流石に差が付きすぎているから特別に辞退する権利を与えるが」
その言葉に内心で焦る大川。せっかく叩きのめすために引きずり出したのだ。辞退されては目的が半分しか達成されない。
しかし、彼の焦りは杞憂だった。
「……打鉄1機の改造許可そして」
「明日来る予定の人物に、試合まで
彼女はそう言って不敵に笑った。まるで願ってもないことだというように。
「ふ……ははは!そうかそうか、そうきたか!」
その答えを聞いた千冬は笑いだした。答えが自分の予想を超えていたのだ。
明日来る予定の人物、そして千冬の突然の笑いだした姿に困惑する生徒達。真耶の方を見てみると、彼女も「こんな織斑先生は初めて見た」といった表情だ。
まるで訳がわからない。
「ははは……すまないな。いいだろう、こちらでなんとかしよう。さて最後にオルコット、お前が一番強いと考えて今まで何も言わなかったが、これでもいいか?」
笑いが収まった千冬は最後の確認だとセシリアへと話しかける。
彼女の答えは決まっていた。
「問題ありません。勝つのは私ですから」
そう冷静にセシリア・オルコットは言い放つ。
「よし、話しがまとまったところで授業を開始する。山田先生、頼むぞ」
千冬のその言葉で授業が開始されるのだった。
今日が入学式ということで短めな午前授業も終わり、放課後。
一夏は寮の自室探し兼学校探索をしていた。
ちなみに箒は剣道部を見に行くと言っていたので別行動。簪はクラスが別だし、
「それにしてもよく受けたなぁ……」
廊下を歩き、適当に進みながら今日の出来事を思い出す。
唐突に決まったクラス代表決定戦。一夏は最初は辞退するつもりだったのだ。どう考えても勝ち目はない。
しかし閃いてしまったのだ。これを利用すれば京也と一週間近く一緒にいられる、ということに。
多分信二君は寂しがると思うが、そこは我慢してもらおう。
「ふへへ……」
思わず顔がにやけてしまう。
京也と一緒の部屋、京也を独り占めできる優越感、そして自分がめいっぱい甘えて困る京也の表情……
「ふへへへへ……」
ダメだ、想像するだけでこれなのだ。明日、京也に会ったらどうなるかが自分でもわからない。
「ふへへへへへへ……」
「あの……更識さん、大丈夫?」
「へひゃい!?」
突然前から声をかけられ、意識が戻った一夏は焦る。どう考えても女の子が出してはいけない声が出てしまっていたが。
「なななんでしょうか!?」
「いや、そんなに動揺しなくていいから落ち着いて……?」
「う、うんそうだよね!?落ち着かないとね!?」
「いやだから……」
約5分後。
「ごめんなさいでした……」
「うん、落ち着いてもらってよかったよ」
食堂の一角。そこには椅子に座りどんよりとして己の醜態を恥じる一夏と、それを落ち着かせた少女の姿があった。
「迷惑かけてごめんね、えーと……」
「月島瑠璃です。同じクラスだよ」
そういって目の前の少女は名前を言う。小柄な体躯に、左右で分けた黒い髪。ここにはいないが背格好だけなら中国にいるはずのあの子と同じくらいで、後ろ姿だけなら双子に見間違えそうだ。
「……私より小さいのに大きい」
「え?どうしたの?」
「ううん!なんでもないよ!?」
もっともあの子と違うのはその大きな装甲くらいだろう。思わず揉みたくなるが我慢する。
そういえば、あの子は成長したのだろうか。
「そういえば何であんなににやけていたの?」
どうでもいいことに考えを巡らせる
「ああ……あれね」
「すごい顔してたよ。まるで思い人に会える乙女…とはちょっと違う気もするけど似たような?」
「それについては忘れてください……」
「あはは……で、実際どうなの?」
ずい、とこちらに詰め寄ってくる瑠璃の圧に圧倒されつつも、一夏はなんとか答えた。出来る限り隠すところは隠して、だが。
「うわぁ~いいなぁ…かっこいいなぁ…」
「色目使ったらコロコロするよ?するからね?」
「うん、使わないから。ていうか付け入るスキがなさそうだから。だから落ち着こう?目が完全にダメだよ?」
「あ、ごめんごめん。じゃあそういう瑠璃ちゃんはどうなの?」
また暴走しかけた思考を止められ戻った一夏は瑠璃に聞き返す。
自分だけ話して話さない、なんてことは許されないのだ。
「私は……うん、一言で言うなら」
そう言って彼女は言葉を切り、
「叶わぬ恋ってやつかな……」
そんな、悲しげな顔をして呟く彼女に、一夏はそれ以上追及する気になれなかった。
その後、瑠璃と連絡先を交換した一夏は自分の部屋へ向かうために瑠璃と一旦別れた。
ただ、瑠璃は相当な方向音痴だったらしく。一緒に部屋を探すために3分後に再会するのだった。
ちなみに、ルームメイトは箒で、彼女のシャワー上がりに直面し、双方暴走したのだがそれはまた別の話し。
そのころの大川君はさっそく自室へと向かい、同居人が来るのを心待ちにしていました。
まあ、来ないんですけどね。
そりゃあ嫁入り前(または確定)の娘を男と同居させるほどここの職員は鬼ではないです。原作の危険人物を纏めて管理する思考はわからなくはないけど。
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次回、設定がどんどん生える人。