拾われ少女   作:月蛇神社

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何とか対戦第一回までたどり着きました。
そのため今回もかなり巻きです。

毎度見てくださる皆様、謝謝。

やはり戦闘って難しい。


14

 午後8時30分、IS学園食堂にて。

 

 この時間帯に生徒は誰も来ないらしく、厨房側で食器の音が響くくらいに静かな空間である。

 

 そんな食堂の一角で椅子に座り、テーブルに突っ伏す傷だらけの京也とその上に乗って全体重を彼にかける不満げな一夏の姿があった。

 

「私は怒っています」

「おう」

「今日は希望授業のあとは私と二人きりで訓練のはずでした」

「そうだな」

「でも結局は京也がまた箒ちゃんと暴れてお姉ちゃんにしばかれて何もできませんでした」

「あれはしばかれてのレベルじゃねーだろ。明らかに殺す勢いだったぞ」

 

 そういう京也は傷をさする。

 

「仕方なく整備室で打鉄の改造案を簪ちゃんや本音ちゃんと考えました」

「先に機体いじれる方が良かったんじゃねーの?どう動くか決めれるし」

「しかもなんだか箒ちゃんといい雰囲気でした」

「仕方ねーだろ、いい腕してるやつ見つけちまったんだから。んで、何が言いたいんだ?」

「じゃあ言います。もっと構え」

「お前それが本音か」

 

 そして一夏はさらにぐでーっと体重をかける。

 

「……お前体重増えた?」

「ふんっ!!」

 

 乙女の禁忌をさらっと口にする京也に叩き込まれる肘鉄。傷だらけの身体にこれは効いたらしく、彼はうめき声を上げていた。

 

 そんな二人の前にゴトッと音を立ててどんぶりが大小二つ置かれる。中には親子丼が入っていた。

 

 置いた主を二人が見ると、そこには食堂の厨房で調理をしているおばちゃんが笑顔で立っていた。

 

「二人とも仲がいいねぇ、見ていてつい作っちゃったよ。まだ晩御飯食べてなさそうだし、あたしからのサービスだと思っておくれ」

「あ、ありがとうございます……」

「……いただきます」

 

 

 その返事を聞いたおばちゃんは戻っていった。

 

 とりあえず、乗っかったまま食べるのは行儀が悪いので、背中から降りて京也の横に座ってから二人そろって「いただきます」

 

 二人は黙々と親子丼を食す。元々京也が食事中は無言なので一夏も無言なのだ。

 

 やがて、二人とも同時に食べ終わり「ごちそうさまでした」

 

 それを見計らったおばちゃんが食器を下げ、入れ替わりに熱いお茶が入った湯呑を置いていってくれた。

 

 食後のお茶で一服。満腹感と熱いお茶のコンボで一夏は眠くなるのを感じていた。

 

「ん……」

「おい寝るんじゃねぇぞ。流石に俺はお前の部屋まで運べねぇからな」

「ん~…」

 

 返事にならない返事をしながら、一夏は京也の膝に座って背中を預ける。ここまでくるともう何をやっても無駄だと京也もわかっているので、さっさと寝かしつけることにした。

 

 頭を撫でること約1分。一夏の意識は完全に睡眠の領域へと入っていった。

 

「……おい、そこの暇人共」

「……いつから気づいてたんですか?」

 

 一夏が寝たことを感じ取り、京也は視線を出入り口へと向ける。

 

 そこにいたのは一夏のクラスメイトの面々。偶然食堂の前を通りかかった一人が一夏が暫定危険人物(京也)といるのを見てクラス全員に緊急招集をかけたのだ。

 

 流石に全員はそろわなかったが。

 

「最初からだ。人数が多すぎんだよ」

「あちゃ~…流石に全員は多かったかー」

「でも更識さんが心配だったのは皆同じだしー」

「石上先生最初っから飛ばしてるしー」

「そりゃあ不安にもなるよー」

「わかったからさっさとこいつ回収しろ。動けねぇんだよ」

 

 やけににやけている生徒達の視線を弾き、京也は回収させようとする。しかし、

 

「えー?でも更識さん幸せそうだし」

「先生が運んでよー」

「織斑先生に内緒でさ!」

 

 そういって要求を拒む彼女ら。しかし、後ろの存在には気づかない。

 

「まあ、流石に男をこれ以上入れる訳にもいかないんだがな」

「えぇー!なんでさー!……あれ?」

「げぇ!織斑先生!」

「おう、来たか保護者」

「お前は問題を起こしすぎだまったく……更識は私が運ぶ。お前達も早く戻れ」

 

 千冬が指を食堂の壁にかかる時計に指す。時刻は9時を回っていた。

 

「ちぇー仕方ないや」

「あ、じゃあ最後に一つだけ!先生と更識さんってどんな関係?」

「確かに、それ気になってたんだよね。親子?」

「いやそこまで似てないでしょ」

「じゃあ歳の差カップル!?」

 

 京也と一夏の仲を勘繰る生徒達。それに対する京也の答えはただ一つ。

 

「ボロ雑巾を拾った。それだけだ」

 

 生徒たちが「雑巾?」と首をかしげる中。

 

 その答えが聞こえていたのかいなかったのか。

 

 一夏の寝顔は満足気であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな忙しくも楽しい日々も過ぎるのは早いもので試合当日。

 

 貸し出されたアリーナの観客席は大勢の生徒で埋め尽くされていた。

 

 そこに学年の垣根はない、ここにいるほとんどの者が男性操縦者見たさで来ているのだ。

 

 対戦カードは前もって発表されている通り。

 

 

 第一試合 セシリア・オルコット対大川光輝

 

 第二試合 更識一夏対セシリア・オルコット

 

 第三試合 更識一夏対大川光輝

 

 

 となっている。もちろんこの順番に意味はある。

 

 先にセシリア対大川をするのは唯一専用機ではない一夏に情報アドのハンデを与えるため。

 

 次にセシリアが連続で戦うのは、男性操縦者を休ませ、データを万全の状態で取得するためだ。

 

 戦闘データがある程度そろっている代表候補生と完全に情報が未知数の男性操縦者。

 

 どちらが優先されるかは明白だろう。

 

 多くの生徒はそんなことは気にしていないが、とりに男性操縦者をもってきていることで会場は盛り上がっていた。

 

 セシリアはただ冷静に心をおちつかせ、

 

 一夏は格上に食らいつく覚悟を決め、

 

 大川はこの後のことを考え舌なめずりをする。

 

 各々の思惑が交差するなかで試合は始まった。

 

 

 

 

 

 自身のISを起動させ、大川はピットのカタパルトへと歩く。

 

 その頭にあることはただ一つ。自分の勝利とセシリアを従える己の姿。

 

 そして自分に永久的に逆らえずに這いつくばる一夏の姿だ。

 

 カタパルトへ脚部を固定、発射許可が下りたので射出する体制へ入る。

 

「大川光輝、ストライクフリーダム出ます!」

 

 カタパルトで加速し、空中へ衝撃と共に飛び出し、

 

 

 

 直後、機体は轟音と共にアリーナを覆うシールドへ衝突した。

 

 

 

「が……あ……?」

 

 衝撃と同時に襲い来る疑問。何故自分は激突しているのか、と。

 

 この現象は、別に彼が特別な何かをした、とかそういうことではない。

 

 彼は射出されたから姿勢制御のためにエンジンを噴射させた。それだけだ。

 

 では何故こうなったのかと言われると答えは簡単。

 

 彼の稼働不足と、機体が高性能過ぎた(・・・・・・・・・)のだ。

 

 この一週間、彼はIS関連のことを何もしていなかった。機体スペックの確認すら、である。

 

 自分なら余裕だ。そう慢心して他の女子生徒と友好関係を築きまくっていたのだ。

 

 その結果がこれである。

 

「なんだ……何が起きたんだ……?」

 

 それを言いたいのは客席の生徒達だろう。期待していた男性操縦者がこのざまでこちらも困惑しているのだから。

 

 しかし、それを警戒する者も何人かはいた。

 

 その中にはセシリア・オルコットも入っている。

 

「あの機体は……危険ですわね。セシリア・オルコット、ブルーティアーズ行きます」

 

 彼女はそういうと警戒しながらピットから飛び出し、見事に空中で静止した。

 

「いてて……あ、ごめんねセシリアさん」

「いえ、構いませんわ。ちょっと驚きましたが」

 

 大川の機体は自由落下しながらAIが出力を調整したのか、今度は無事に指定の位置までたどり着き静止する。

 

 そして始まるカウントダウン。

 

「なあ、一つ賭けをしないか?」

「なんですの?」

 

 カウントが0に近づいていくなか、大川は最初のプランを実行しようと提案する。

 

「負けた方が勝者のお願いを一つ何でも叶える。もちろん、出来る範囲でね」

 

 それはよくある命令の権利。彼女は少し考え、

 

「ええ、いいでしょう」

 

 と、了承した。

 

 かかった。思い通りにいったことで内心でほくそ笑む。

 

 それと同時に試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 ブザーと同時にストフリは腰部のレールガンを展開、両手に握るライフルと同時にブルーティアーズへと攻撃する。

 

 しかし、それは機体を掠めるだけで終わり、おかえしにセシリアの狙撃銃からの攻撃がストフリへと直撃した。

 

「ぐっ……なんの!」

「この程度でしたら私の勝ちですわね」

「やってみなくちゃわからないだろ!」

「いいえ、わかりますよ。特に今回は」

 

 セシリアからの交信が遮断されると、今度はセシリアが攻勢に出た。大川は武装を格納、それを回避する。しかしスピードが付きすぎてどうしても壁やシールドへ激突し、その隙に直撃をもらいSEはどんどん削れていった。

 

「このままだとすぐに終わってしまいますね……これでは更識さんへのハンデになりませんわ」

 

 そう呟いて彼女は自身の特殊兵装である4機のBT兵器『ブルーティアーズ』を繰り出した。

 

「では踊ってもらいましょうか……私とブルーティアーズによるワルツを」

 

 さらに激しくなる砲火。しかし、それが大川の狙いだった。

 

(きたかBT兵器!あれを動かしている間はセシリア自身は動けない。チャンスだ!)

 

 自分の予想通り、セシリア自身は動いておらず、BT兵器だけが動いている。機体の動き方にも慣れてきたのでここで大川は接近戦を仕掛ける。

 

 ブルーティアーズへ迫るストフリは両腰のビームサーベルを抜刀。回避できない一撃を叩き込む。

 

 

 はずだった(・・・・・)

 

 

(なん……だと……!?)

 

 彼の表情が驚愕で固まる。躱されたのだ、BT兵器を動かしながら。

 

 そしてその顔を見たセシリアはどこか蔑んだ目で笑う。

 

「あらぁ?まるでプラン通りにいかなかった取引相手(・・・・)のような顔をしていますわよ?確かに事前情報は調べていたのでしょう。ですが」

 

 そういうとセシリアは銃を構える。

 

「これでは調査不足ですわね。出直してくださいまし。ああ、あともう一つ」

 

「私、まだ貴方にはファーストネームで呼ぶ許可は出してなくてよ?」

 

 狙撃銃とBT兵器4機による5方向からの集中砲火。

 

 これにより、第一試合はセシリア・オルコットの勝利で終わった。

 

 

 

 

 

「さて……色々と聞きたいことはたっぷりとありますわね」




今作のセシリアは珍しく重い過去を背負わせていません。そのかわりに若干強化されています。機体面でも人間面でも。
でもやっぱ戦闘って難しい……

感想、指摘、「戦闘シーン雑だなゴラァ!」といった文句がありましたらぜひ感想欄まで。


多分次回で戦闘終了すると思います。
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