拾われ少女   作:月蛇神社

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ウールーウールーウールー……はっ(帰還)


あ、連投2話目です。まだ読んでない方は前話へ。


23

「なぁ、俺は本当にここにいていいのか?」

 

 IS学園アリーナの管制室。そこには疑問めいた声を上げる京也の姿があった。視線は強化ガラスの向こうの、まだ選手のいないアリーナへ向けられている。機材を見ないようにしている、というのもあるが。

 

「ここは色々と機密情報満載だと思うんだが?」

「かと言って一般の観客席に行かせるわけにもいかないだろう。女尊男卑だの男性がいるだので生徒が試合に集中できなくなってもそれはそれで困る」

 

 京也の疑問に答えたのは同じくアリーナへ視線を向ける千冬だ。そのすぐそばには機材のコントロールパネルを操作している真耶達少数の教師の姿がある。

 

「それに、(世界最強)がいればどうとでもなるだろうという上の判断もある」

「なるほど、確かにそりゃあ安全だわ」

「ぬかせ。私とやりあえている時点で安全も何もないだろう」

「どうだか。まあ、俺がチーム組んで攻めるならお前の足止めくらいは出来るだろうな」

 

 足止めという言葉にスッ、と千冬の眼が細められる。

 

「足止め、なぁ……。確かに、こんな閉所ではISを展開したとしても動きづらいし、今ここにいる人数では瞬殺されることは覚悟しなければいけないからな。しかし、だとしたらこちらもなりふり構わず行くだろうよ」

「ほぅ?具体的には」

「私がお前をアリーナへここから叩き込む。ろくに身動きのできない空中でレーザーを撃たせたらいくらお前でも無事で済むまい」

「お前外道か」

 

 世界最強の容赦ない対策に襲撃犯は即座につっこみを入れる。

 

「だったら、こっちはこっちで一人二人は巻き込んで足場なり盾なりにすんぞ。時間がかせげりゃいいんだ。それさえしのげば相打ちさせるように動くだけだからな」

「お前が言えたことか。だったら……」

 

 この二人はただやることが無くてアリーナをぼーっと見ていたわけではない。広さ、高さ、何人までならISと人間を投入可能か、さまざまな方面から戦闘することを考えていたのだ。

 

 まあ実際のところ、一応部外者の京也が設備を弄るわけにもいかないし、千冬も設定等の作業は出来るのだが今回は真耶達がその作業を担当しているためやることが無く、暇ではあったのだが。

 

 二人の物騒な議論は続いていく。一番気が気でないのは初っ端から無事で済まないことが前提で話されている教師陣である。京也に敵意が無いのはここまでの生活でわかってはいるのだがどうしてもこういう話は警戒してしまう。

 

 この二人が敵同士でなくて本当に良かった、というのは満場一致の考えだ。ちなみに、考えられる最悪の状況はこの二人がタッグを組んだ場合である。

 

 本当に勘弁していただきたい。

 

「んで、そろそろ教えろ。何で部外者の俺が呼び出されてんだ」

「……ああ」

 

 とりあえずひと段落ついたのか、京也は先ほどから疑問だったことを呼び出した本人に問いただす。この試合は、特に外部に公開されるわけではないので京也がいること自体不自然である。そして、呼び出した本人はというと現実逃避から帰ってきたかのような、どこか苦い顔で答えた。

 

「……昨日の夜に嫌な予感を感じたんだ」

「嫌な予感だぁ?」

「ああ」

 

 嫌な予感という答えに怪訝な声が出る。京也自身も直感でそれを感じたことは何度かあったためにそこに関しては疑う気はないのだが、荒事ならば大体どうにかなる千冬がいる状況で自分が呼ばれる理由がわからなかったのだ。

 もっとも、その理由はすぐにわかったが。

 

「これがただの予感ならばまだいい、だが昨日のは違った。あれはあのバカ()が何かやらかす時にいつも感じていたものだ……!」

「すげぇ納得した。あの(・・)天災絡みなら対応できるやつは多い方がいいわ」

 

 天災の親友の直感だ。ならばこの代表戦が無事に終わることがないことは確定したと言ってもいいだろう。つまり京也に求められているのは千冬の直感という名のレーダーを自身の戦闘経験の勘で補うことだ。

 一応千冬はその自分の直感を学園長に話した。そのとき、戦闘経験は千冬より豊富な京也を参加させてはとの案が上がり、石上家に相談。こうして京也は今ここにいる。

 

 ちなみにそのとき電話応対したのは春であり、そこから半ば命令のような形で京也は送られてきた。

 

 というか、一夏の試合を代わりに見てこいというのが春の本音だった。

 

有名人(天災)の知り合いがいるってのも考えもんだな、ほんと」

「石上家当主のお前が言うか……今度、相手してくれないか」

「ん。あいよ」

「織斑先生、準備が整いました。いつでもいいですよ」

 

 ちょうどシステムの設定、チェックが終わったのか真耶が千冬へと声をかける。

 

「ありがとうございます、山田先生。では今から第一試合を開始します入場のアナウンスを」

 

 はい、と答えた真耶はマイクへ向かいアナウンスを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、IS学園のはるか上空に所属不明の小型貨物機が1機その場で対空していた。

 

「束様、所定位置に着きました。α・β両機いつでも投下可能です」

『オッケーありがとクーちゃーん!そんじゃあとはタイミングを……あ、今カウントダウン始まった。よっし!α落としちゃって!今すぐ!』

「かしこまりました」

 

 操縦席に一人座る少女は、主からの命で持ち込んだ機体を1機投下。

 

『さーて、それじゃあダイナミックにいこっか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[10]

 

「とっとと落としてやるからせいぜいあがきなさい……」

 

[9]

 

「耐えろ、俺は耐えるだけでいい……!」

 

[8]

 

「……え、なによこれ?」

 

[7]

 

「……おい千冬」

 

[6]

 

「何だ更識姉……ああ、備えろ」

 

[5]

 

「ZZzz……」

「本音、起きて。始まるよ」

 

[4]

 

「鈴、頑張れ……!!」

 

[3]

 

 

 

[2]

 

 

 

[1]

 

 

 

 

 

『はいどーーーん!!!』

 

 

 

 

 

 突如、黒いISが陽気な女性の声と共にアリーナのシールドを突き破り乱入した。

 

 スタートの合図はシールドの破壊音によってもたらされた。




 感想、誤字報告あればお願いします。


 ウールー達に負けないよう頑張って書きます。

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