「主人公京也なのに京也視点ないやんけ……」
てことで京也視点です。
毎度みてくださり謝謝でございます。
雨が降る中、傘を差して近所のスーパーへ歩みを進める。
今、家では簪の刀奈への折檻(という名のSMプレイ)が行われているところだ。それはいつものことだが、頼むからたまに家でやる、ではなく毎回屋敷でやれと言いたい。
後で簪に聞いてみたが、本人曰く、
「普段の
とのこと。
いや、混ざらねぇしやらねぇよ。というかいつもやってるのか、どんだけ逃げてるんだ鈍刀。
まあ今はそれはどうでもいい。それよりも、だ。
「……拾っちまったなぁ」
空いた左手が強く握られる。あれはダメだ。あの目はダメだ。あの姿は見るべきじゃなかった。どうしてもあの日を思い出してしまう。
あれは俺と同じ目をしている、あの時俺を拾ってくれたあの人の目に映って見えた死人の目だ。
だからだろうか、手を伸べてしまったのは。あの人ならそうするだろうと思ってしまったからだろうか。
「……もう20年前か」
あの時は手を差し伸べられる側だった。そして今、手を差し伸べる側に俺はいる。
俺に手を伸ばしたあの人はどんな気持ちでいたのだろうか。それをするにはどんな気持ちでいなくてはならなかったのだろうか。
少なくとも「あの姿が見ていられなかった」という気持ちでいた俺は間違っているだろう。
買い物を終えてスーパーを出る。冷蔵庫は中身は空に等しかったため、粥すら作るには微妙という酷さからは脱することが出来るだろう。元々料理なんざしないし、たかられる事はあるが簡単なものしか作れない。
店から出たところでスマホへ着信が入る。どうやら虚に頼んだものが届いたらしい。相変わらず更識暗部は仕事が早くて助かる。
ファイルを開いて確認し、帰路に着く前に向かうことにする。
更識姉妹式折檻はまだ時間がかかると思うし、時間潰しには丁度いいだろう。
「……ここか」
目的地である織斑家前に着いた。
外見は普通の二階建ての一軒家、だがどうにも嫌な気配がする。少し家を観察するとその正体を発見した。
鍵穴に付いた傷跡、ピッキングするときに付いた傷だろう。まだ真新しさを感じる。
ドアノブに手を伸ばし扉を開ける。床には土足の跡がついていた。靴跡から外にでた形跡がないため、まだ家の中にいると判断し荷物を玄関に置いてから、なるべく足音を立てずに入る。
物音を頼りに隠れるように探す。靴跡から人数は4,5人といったところだろう。家の規模から上に2、下に3と仮定する。
それはすぐに見つかった。
棚の引き出しを開けて何かを探る2人の男の姿、恰好から見るにただのチンピラレベルだろう。
「そっち何かありそうか?」
「金目のものは少し、お、通帳と封筒に入った札めっけ」
「よぉし!金ゲットだぜうへへ」
「あとは一番の目玉が見つかればなぁ。どこに隠れてるのやら」
「あーぼっちのかわいこちゃんでしょ?確か織斑…おりむr」
「織斑一夏」
「あ、そうそう!織斑一夏ちゃん……って、え?」
「あ?」
呆けているチンピラ1の服を掴み投げ、外傷が無いよう意識を奪う。
「次」
それをただ見ていたチンピラ2へと滑るように近づき同じものを叩きこむ。
何をしていたのか、何が目的なのか、それを聞き出すのは更識に任せよう。まずはこいつらを片付けることにする。
ゴミによるゴミ掃除の開始だ。
数分後、下手人を全員気絶させ、警察の更識の者へ連絡を入れ事後処理を任せることにした。まあ間違いなく警察沙汰なのだが、その辺りはうまくやってもらうしかないだろう。一夏の部屋らしき場所にいたやつには少々やりすぎてしまった気もするが。
時間もかかってしまったので急いで帰ることにした。
家についてリビングで出迎えたのは、横になった刀奈とその上に座るご満悦顔の簪。一応お仕置きは終わったらしい。カメラ回させたのは簪だが、何に使うかは深く予想しないことにする。
「……終わったか」
「あ、京さんお帰りなさい。長かったね?」
「あとで話す。待てなかったら虚に聞け」
そういって買い物袋の中身を冷蔵庫に詰め込む。これで数日は持つだろう。
「一夏はどうしてる?」
「まだ寝てるよ~」
そういうのはクマの着ぐるみ姿の本音である。
そうか、と言って小さいサイズの鍋を戸棚から出し、粥の準備をする。ネギと卵、あとは塩コショウがあれば十分だろう。
鍋をかき混ぜながら考える。あの侵入者の目的だ。一番の目玉、という言葉から考えるに目的は一夏で間違いない。だが、その後がわからない。何か狙われるような物を持っているようには見えないし、奴らの持ち物を調べてもそんなものは出てこなかった。
身体目当てにしても、それこそ好みの女なら夜の街にいくらでもいるだろう。まさか本当にそれだけなのだろうか、だとしたら動機は何だ?それに、やつらは盗みに入る対象の知り方が中途半端だった。それこそ名前を思い出せないくらいに。だとしたら恐らくだが。
主犯は別にいる。奴らは命令されてやっただけ。
そう考えるのが妥当だろうか?
しかし、そうならますますわからない。一夏はとんでもない知識を知ってしまったとか深淵を覗いてしまったとか、そういったことはしていないだろう。
……昔の悪意を思い出せ。俺と同じ目をしていたなら、俺に向けられていた悪意にヒントがあるかもしれない。
「…………」
……命令したのはいじめの主犯か?
一夏が気に食わないから、目障りだから、消そうとした。しかし、また疑問が生じる。
虚達の調べによると一夏は中学2年。同学年がいじめの主犯だと考えて、どう考えてもピッキングによる家宅侵入までさせることを命令できるくらいに上にいるやつが想像できない。地主の子息という線はありえない。ここら一帯は更識が裏で仕切っているからだ。
となると相応の金持ちにでも目をつけられているのか。
俺の頭ではこの辺りが限界だ。あとは取り調べの結果を待つとしよう。
思考を終えたところで寝室の方から扉の開く音がする。
どうやら一夏が起きたらしい。
振り返って様子をみると顔が引きつっている。まあ誰がどう見ても惨状の一言だからわからなくないのだが。
京也視点の方が一夏ちゃんより書きづらい謎の現象。
感想や指摘等があればぜひ。喜びの逆立ちをします。