拾われ少女   作:月蛇神社

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どんどんと書いてるうちに想定外の設定が生えてくるわ文章はどんどん薄っぺらくなるわで自分に「お前そろそろいい加減にしろよ」と言いたくなる今日この頃。嘘みたいだろ、IS二次なんだぜこれ……。

見てくださる皆様、謝謝。


そろそろ転生要素を出さないと怒られそう。今回出ないけど。


7

 それじゃあ私はこの辺りで、コーヒーごちそうさまでした。

 

 そう言って知らない女が玄関へと向かい、京也もそれに伴って行った。

 

 私は呆然と立ち尽くす。ふわさっと頭からバスタオルがかけられる。

 

「ちゃんと拭かないとダメだよ~」

 

 全身クマの着ぐるみに戻った本音ちゃんが優しい手つきで身体を拭いた。そばには猫パジャマもある。

 

 やがて京也が戻って来たので、押し倒す勢いで抱き着く。倒れなかったけど。

 

「着替えろって言っただろうが」

 

 ため息交じりの声が上からかけられる。けど、そんなこと今はどうでもいい。

 

「誰、あの女」

「……着替えたら教えてやる。ついでに髪も乾かしてこい」

 

 そういうことなら早く着替えよう。ちょっと困った様子の本音ちゃんからパジャマをひったくる勢いで受け取り、素早く着替え、走ってドライヤーを取ってくる。あとは京也に差し出すだけ。

 

「かけて」

 

 京也は呆れ顔だったが、ドライヤーはかけてくれた。昼と同じく、強い手つきだけど心地よかった。

 

 

 

「昔の同僚だよ」

 

 また昼と同じく、椅子に座った私の後ろでドライヤーをかけて、少ししてから京也は語る。

 

「互いに、仕事でヘマして生き残っちまった関係だよ」

「……元カノ?」

 

 そう探りを入れてみる。ただの同僚にしては、あれは距離が近すぎるのではないだろうか。

 

「ちげーよ」

 

 すぐに否定する答えが返ってきた。

 

「じゃあ身体だけ?」

「……お前どこからんな知識仕入れたんだ?」

 

 将来を心配するような声でそう言われる。

 

「……否定しないの?」

「普通に違うわ」

 

 これも違うらしい。あと残る線は片思い……?

 

「それはないと考えさせてくれ」

 

 考えを読まれてしまった。でも京也も確証がないみたいで強く否定してこない。

 

「おら、終わったぞ。ついでに質問タイムもな」

 

 京也に頭を軽く叩かれ、ドライヤーが終わる。目の前では、壁に背もたれて座る、クマの頭が前後左右に不規則に揺れていた。

 

「歯ぁ磨いて寝ろ。お前もあと少しは起きろ子熊」

 

 クマの頭がはたかれ、やがてゆっくりと立ち上がり部屋の隅の荷物をごそごそと探り、歯ブラシを2本取り出す。だが、全体的にふらついていてちょっと……いや、かなり危なっかしい。

 

 確かに眠くなってきたし、揺れクマの放置は大変なことになりそうなので、私もついていくことにした。寝るところの相談をしていなかったけれど、仕度を終えた本音ちゃんが勝手にベッドを占領してしまったので、もふもふのそれを抱き枕にして寝る事にした。

 

 ちなみに、歯を磨くときでも本音ちゃんの素顔は見えなかった。というか着ぐるみで歯ブラシを握って隙間に差し込んでしゃこしゃこ動かしてた。あの女よりもそっちの方が気になってしまった。

 

 

 

 次の日の朝、日曜日。窓から差し込む光で目が覚める。外は昨日の雨と違い、よく晴れたいい天気となっていた。

 

 いつもなら悪夢を見てすぐに起きてしまい、寝起きは悪いのだが、今回はもふもふな動く抱き枕のおかげか夢を見ることはなく、目をつむって、次に開けたら朝になっていたという体験が出来た。

 

 起き上がって隣を見てみる。

 

 

 クマの首から上がなくなっており、その上に別の色のクマが覆いかぶさりこっちを見ている、という光景が目に入った。

 

 

 クマの捕食と勘違いした私は、また意識を落とすのだった。

 

 あとで聞いた話しによれば、起きたらがっちりとしがみついていて動けなかったので、着ぐるみから抜け出して着替えてから、元着ていた方を回収しようとした瞬間だったらしい。

 

 何とも恥ずかしい話しだった。

 

 

 

 

 私が気絶からの二度寝から目が覚めたあと。

 

 今度は隣に何も無く、部屋にもだれもいないので顔を洗いに洗面所に向かうことにした。

 

 扉を開けてリビングに入ると、京也がテーブルをずらし、そこに布団を敷いて寝ていた。

 

 時計を見てみると時間は9時を過ぎた辺りだった。そして、キッチンでは昨日とは違う色のクマの本音ちゃんが何かいじっていた。とてもいい匂いがする。

 

「おーはーよー」

 

 そんな気の抜けた声と共に本音ちゃんがこちらに振り向く。

 

「きょーさん起こしてくれない?朝ごはん出来たよ」

「……わかった。でも顔洗う」

 

 まだ寝ぼけが取れない返事をし、顔を洗ったが、寝すぎたのだろうか。まだ眠気が少し取れない。

 

 本音ちゃんはお皿に盛り付けているところなのでまだ動けそうになかった。

 

 京也の身体を揺らして起こそうとする。しかし、起きる気配がない。

 

「むぅ……とりゃあ!」

 

 仕方がないのでお姉ちゃんを起こすときにやる、布団ひっぺがしをする。しかしまだ起きない。

 

 ここまでダメなら腹ダイブで起こすか。京也なら頑丈だと思うし(多分)大丈夫だよね。

 

 という訳で実行。その場で飛び上がり、京也のお腹に狙いを定め、

 

 瞬時に視界が反転し、腕を押さえつけられ押し倒される形になった。

 

「はえ……?……!?」

 

 起きてたの、とか、今朝だよ、とか、突然押し倒されて眠気が完全に飛び、混乱と期待が入り交じり、心臓が破裂しそうで、

 

 

 遅れて、首に添えられた貫手と感情の無い目に気づき恐怖で顔が青ざめる。

 

 

「……お前か、悪かったな」

 

 そう言って京也は私の拘束を解く。だけど、私はしばらく動けなかった。

 

「いつもの癖でな。寝込みを襲われるとつい反撃しちまうんだ」

 

 怖がらせて悪かった、と京也が私を起こして撫でたところでようやく私の身体が再起動する。

 

 再起動して私が最初に取った行動は、目の前の存在に顔をうずめることだった。

 

 

 

 そんな事件があっても本音ちゃんは変わらない様子でご飯を運んできた。

 

 何故か、朝から豚肉の塩焼きだった。

 

「……朝から肉とはどういうことだ、飢え子熊」

「私が食べたいから~誰も朝ごはん作らないから作ってあげたのだ~」

 

 なんとなく予想出来てた答えをどや顔?言った肉食獣は、さっそく家主に絞められていた。

 

「だったらてめぇの分だけ焼けやぁ!何で全員分あるんだよ!」

「大丈夫!食べないなら私が食べるから!」

「それお前が食いてぇだけじゃねぇか!」

 

 そんな「肉食獣VS肉食獣もどき」の様子を見ながら、私はごはんの上にお肉を乗せ、口に入れる。

 

 そんなに強くない絶妙な塩気の中に、少し感じる胡椒のピリ辛さ。そしてなにより、この味と肉の焼き加減がとても白米とあっている。

 

 とてもおいしかった。

 

 ただ。

 

「これは晩御飯に食べたかったなぁ……」

 

 本当に、この一言につきる。いくらおいしくても、朝からお肉は重たいよ……

 

 ちなみに、味噌汁はなかったのであとで作った。

 

 

 

 久しぶりに賑やかだった朝が終わり、一息ついたところでインターホンが鳴り、京也が玄関へと向かう。

 

「おはようございます。本音の回収に来ました」

 

 出てきたのは眼鏡をかけた女の人だった……また知らない女だった。しかし、今度は簪ちゃんも一緒だったのでまた更識の人かと考える。

 

「……貴方が織斑一夏さんですね。初めまして、本音の姉の布仏 虚です」

 

 そう言って女の人……虚さんが頭を下げる。反射的に私も頭を下げて自己紹介を終える。

 

「あ~お姉ちゃんだ~」

「……京也さん、本音がご迷惑かけて申し訳ありません」

「刀奈が残るよりはましだ」

「お姉ちゃんは屋敷で仕事させてるから、今日は安心できるよ」

 

 簪ちゃんがものすごくいい笑顔でそう言った。……刀奈ちゃん、頑張って。

 

「コーヒー淹れてやるから少し待ってろ」

「いえ、いいですよ。このあともやることはたくさんあるので」

 

 そう笑って椅子に座る虚さん。4人かけのテーブルだが、今回は空きがあるので京也の隣に座る。

 

 空きがある、というのも。

 

「ごろごろ~」

 

 すぐそばに、簀巻にされ、転がって遊ぶクマがあるからだ。

 

 朝にお肉を焼いた本音ちゃん、実は昨日京也さんが買ってきたお肉を全部焼いてしまったのだ。そして家主がキレて簀巻にしたのだ。

 

 ちなみに、部屋に入ってから簪ちゃんの目がきらついてるのは気にしないことにした。

 

 椅子に座る京也と、隣の私、私の目の前の虚さん、簀巻の上に腰掛ける簪ちゃん。

 

 この状態で、昨日から何度目かの話し合いが開かれた。

 

 

 

 

「まず、一夏さんの今後についての報告を」

 

 最初は虚さんか切り出した。

 

「一夏さんの転校手続きや引っ越し作業についてはこちらでやっている最中です。流石にすぐにどうとなる訳ではありませんので、苦しいと思いますが、学校は2・3日は同じところに通ってもらうことをご了承願います」

「……わかりました」

 

 まあ、そう早くはあそこから離れることは出来ないよね。

 

 明日からまた違う世界になることを少し期待していたからか、気分が落ち込む。でも頑張ろう。

 

 私をみた虚さんの顔は少し申し訳なさそうにしていたけれど、話しはまだ終わりではない。

 

「次に引っ越しついてですが、これは一夏さんに私達、更識家に住んでもらおうと考えています荷物も運んでいる最中です。もちろん女集でやってますよ」

 

 事後承諾の形になってしまい、申し訳ありません。そういって虚さんが頭を下げた。

 

「い、いえ!全然いいです!私もそれで大丈夫です!あ……でも」

 

 思わず京也を見る。更識家に行く、ということは京也と一緒にいられなくなるということだ。

 

 会えない訳じゃないのはわかっている。だけど、たった1日一緒にいただけなのに離れたくない、と思っている自分がいるのだ。

 

 ころころと変わる私の表情を見て、虚さんはおかしそうに笑う。

 

「それについては大丈夫ですよ」

「え……?」

「……どういうことだ」

 

 大丈夫、つまり一緒にいられるという言葉に二人がそれぞれ反応する。

 

「つまりですね」

「京さんには戻ってきてもらうってこと。更識家分家、石上家に当主代理として」

 

 簪ちゃんがそう引き継いだ。

 

 ……え?分家?分家ってあの分家?更識家ってそんなすごいところなの?というか当主?

 

「おいこら待て」

 

 私がその言葉に混乱する中、京也が待ったをかける。

 

「石上家には跡取り息子が二人いるだろ。そいつらはどうした」

 

「先代当主、石上白夜氏が逝去なされました」

 

 その言葉を聞いて京也の動きが完全に止まった。

 

「……おいおい、嘘だろ。タチの悪い冗談だろ?」

 

 ……京也のこんな声、初めて聴いた。

 

「事実だよ」

 

 そう告げる簪さんの声も悲しげだった。

 

「……何があった」

 

 京也がそう問いただす。だけどその顔は、この先を聞きたくない、そう言っているようだった。

 

「病が悪化しました。さらに、それを悟られないように、もし気づかれても当主命令で口外しないようにしていたらしいです」

 

 それを聞いた京也が崩れ落ちた。私は、それを見ていられなくて、その頭を胸に抱いた。

 

 その白夜さんは京也の大切な人だったのだろう。私はその人が誰なのか知らない。だから何も言えない。そのことがもどかしい。

 

「……続けてくれ」

 

 しばらくして落ち着いたらしく、私を離した京也は続きを促す。

 

「……わかりました。では、続けます。石上家次期当主は長男の健一氏。ですが、歳は私と同じの未成年です。それまでは奥様の春様が当主代理ですが、その春様が京也さんを当主代理に指名しました」

 

 そこまで言うと虚さんは一息入れる。

 

「みんな、戻ってきてほしいんだよ。それはお父さんも、従者のみんなも。それにさ」

「お母さんにも、たまには会いに来てよ。きっと喜ぶから」

 

 簪ちゃんが後押しするかのように言う。それを聞いて京也さんは観念したらしい。

 

「……健一が成人するまでだ。それ以上はいられねぇぞ」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 そう言って虚さんは頭を下げた。




予定ではあと2話巻いて原作に入る予定。風呂敷広げすぎて回収できるかすげー不安だけどもう走って衝突して砕けにいこうと思います。

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