ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ 」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ 」シリーズのネタバレ(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


ダンガンロンパ・フラワーズ プロローグ

 

 

 

ダンガンロンパ・フラワーズ プロローグ

「彼女は始まりの楽園で眠っていた」

 

 

 

 

その学園は人々にとって、まさに「希望」の学園だった。

 

私立塞翁ヶ馬学園。

全国からあらゆる分野で一流とされる「超高校級」と呼ばれる生徒だけを集めた、政府公認の超特権的な教育機関。

そこを卒業すれば、将来を約束されたも当然…と言われるほどの学園だ。

実際、この学園の卒業生たちは各業界において超一流の人材になっている。

 

塞翁ヶ馬学園に入学する条件は2つ。

前も言った通り、あらゆる分野で一流であること。

一般的な入学試験ではなく、学園からスカウトされること。それだけだ。

もっとも、「幸運枠」と呼ばれる普通の高校生の枠もあるみたいだけど…。

わたしは、そんな学園の門の前に立っている。

 

わたしの名前は、鈴原椿(すずはら つばき)。

この塞翁ヶ馬学園に「超高校級の天文学者」として入学することになった学生だ。

「超高校級の天文学者」といっても、実際には天文学者であり大学教授でもある父の仕事を手伝っていただけだ。

望遠鏡の整備をしたり、流星を観測してスケッチしたり…

最近は、お父さんとは喧嘩ばかりでやってないんだけどな。正直、市営の天文台のレストランのアルバイトの方が楽しいし。

 

この前調べてみたら、学園には他にも「超高校級の映画監督」「超高校級の科学者」「超高校級のラグビー選手」みたいな才能を持った人間の他に、

「超高校級のネットアイドル」「超高校級の提督」「超高校級の神父」みたいな人間たちも入学しているらしい。

はたして、そんな個性的な生徒たちとわたしなんかがやっていけるのか…不安になってくる。

 

「一緒に行こう、椿ちゃん」

隣で女の子の声がした。

わたしは彼女と共に塞翁ヶ馬学園の校門を抜け…あれ?

 

 

 

 

この子、なんでわたしの名前を知っているの?

 

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

大きく目眩がした。目の前に白と黒が広がる。

そしてわたしはうしないなきさけびくるしみきゅうさいされあんねいをえてまたうばわれいかりくるい

そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして

 

わたしは…黒へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「あのー…」

声が聞こえる。

「あのー生きていますか?大丈夫…ですか?」

高い少年の声が聞こえる。どうやらわたしを軽く揺すっているのも彼らしい。

ゆっくり目を開けると…バスの中が見えた。要するにわたしは先程まで、バスの一番後ろの窓側の席で寝ていたらしい。

童顔で和装の少年がわたしの顔を覗く。わたしを起こしたのは恐らく彼だ。バスの窓は内側から黒いテープによって封鎖されている。辛うじてオレンジ色の明かりのおかげで、バスの中を見渡すことはできる。

「良かった、生きてるみたいだね」

「…ここは…バスの中かな?」

「そうみたいだね。でも、みんなさっき起きたばかりみたい。ほら」

 

 

わたしと少年以外にも乗客はいるようだ。

彼らも起きたばかりなのか、バスの中を見渡すもの、ここはどこなんだと疑問の声をあげるもの、怯えるものなどがいる。

そういえば、わたしは塞翁ヶ馬学園の校門をくぐろうとした瞬間に意識を失って、なぜかバスの中にいるんだった。

しかしなんでこんなところに。お気に入りの赤いコートの中に入れたはずのスマートフォンを探してみる。

しかし…スマートフォンがない。ということは、ここが何処なのか知ることもできない。

と思った瞬間。

 

乗客の一人…一番前に座っていた長い銀髪の男性が、窓の黒いガムテープを剥がす。

「うっ…あの…いきなり剥がしても大丈夫でしょうか?」

男性の隣の通路側の席に座っていた、お団子頭の少女が声を掛けた。

それを気に留めることなく、銀髪の男性はガムテープを剥がした跡から漏れる外の光を見つめる。そして、口を開いた。

「このバスは、どこかのテーマパークの中に停まっているようです」

 

…テーマパーク?わたしたちは修学旅行にでも来ていたのか?

わたしも気になったので、窓のガムテープをゆっくりと剥がす。

観覧車、ジェットコースター…などの遊園地によくあるアトラクションが見える。

 

乗客の一人、ツーサイドアップの水色の髪の少女は立ち上がる。

「どんな所か、見てきてもいいかしら?」

ツーサイドアップの少女は可憐な外見からは想像もつかない大胆さで、バスの中を歩いていく。そして、ドアの前に立った瞬間…。なぜかドアは開いた。

自動ドアなのか?どんな所に停まっているのかわからないのに、何をされるかわからないのに、ツーサイドアップの少女はバスの外に出た。…そして、すぐに帰ってきた。

「地雷とか、侵入者を攻撃するマシンガンもないのね。つまらないわ」

「あの、自分の命…惜しくないのですか…?」

大きなリボンのピンク髪の少女が突っ込んだ。

「惜しくないわよ。あと、ここは日本にある遊園地…ヒストリヱランドの園内みたい」

「…ヒストリヱランドって?」和装の少年が訪ねた。

「えーと…ヒストリヱランドってのは日本にある所謂『ハイカラロマン』をテーマにした有名な遊園地なんだよね。わたしは行ったことないし名前しか聞いたことないんだ」

「…ハイカラロマンって?」

「明治とか大正とかに流行ったスタイル…と言った方がいいかな」

和装の少年はどうやら、ハイカラロマンを知らないらしい…。わたしも詳しくないけど。

それよりも…外のことだ。スマートフォンをなくした今、ここでじっとしていても多分飢え死にしてしまう。

「ねえ、外に出た方がいいかな?」わたしは和装の少年に語りかける。

「うん、遊園地は初めてなんだ」

…遊園地は初めて?厳格な親だったんだろうか。

という訳で、わたしと和装の少年はバスの外に出ることにした。

他の乗客も立ち上がり、外へ向かおうとしている。

 

バスの外は、まさしくハイカラロマンな世界が広がっていた。

立ち並ぶのは、20世紀初頭のギムナジウムのようなレンガの建物。

クラシカルな噴水、ブリキの看板、遠くに見えるのは青藍と海老色の観覧車…

異質なのは、園内は高いレンガの壁のようなもので囲まれていることだ。まるでどこかの漫画みたい。

ここは遊園地のエントランスのようで、天使たちの彫刻が集う白い大きな噴水がそそり立っている。

彫刻の天使の一人が、2時半を指す八角形の時計を持っている。

天候は晴れており、雲ひとつない…。ということは、今は午後2時半か。

 

バスの乗客が全員出たようだ。わたし含めて16人はいる。

「…でもさ、ヒストリヱランドって…数年前に老朽化と経営不振で閉園になってたよな?」バスの乗客だった、ヘッドフォンの少年が呟く。

「その時のノリと自己顕示で建てられた遊園地にはよくあることですわ」長い黒髪の赤い和服の女性が返す。

「まさか、ハイジャック犯がデスゲームをさせようとしてるんじゃないでしょうね?」

また、ツーサイドアップの少女が物騒なことを言った。

「で、デスゲーム?まさか、鉄骨渡ったりするアレ?なら施設に爆弾とか仕込まれていたりしないよね!?」お団子頭の少女が怯えている。

「…あの、すまない」

紺色の帽子を被った緑色の髪の青年が手を上げ、口を開いた。

「皆は…塞翁ヶ馬学園の生徒ではないのか?」

「…そうだ。わたしは塞翁ヶ馬学園に入学しようとして、校門をくぐろうとしたその瞬間に目眩がして…」

「アタシもだよ。母ちゃんにバイクで学園まで送ってもらって、校門をくぐろうとしてからの記憶がないんだよ」

「オレもじゃ…」「わたくしもですわ」「アテクシもなのです」皆の声が上がる。

誰もが動揺したその時。

 

「皆、落ち着いて聞いてください」

銀髪の男性がなだめるように言った。周りが静かになる。

「このテーマパークは、恐らく封鎖されているようです」銀髪の男性が指差した先はヒストリヱランドの出口…だったものがレンガで閉ざされている。

「ですが出口がここ以外にないとは限りません。まずはテーマパークを探索しましょう。一人ではなく必ず二人以上で行動するように。では、噴水前の時計が4時を指す前にはここに戻ってきてください」

銀髪の男性は踵を返すと、ゴーグルを付けた茶髪の少年の方向へと向かった。

「いっちゃん、相変わらず冷静だな」

「はい。私は貴族の部品ですので」

ゴーグルの少年は銀髪の男性と共にどこかへと向かっていく。

 

「ミーくん!この子怯えてカバン漁ってんだけどさ、ちょっと一緒に行動した方がいいかな?」

「大丈夫!梨々もこの子も僕が守るさ!」

「あ、ありがとうございます…」

派手な格好の小さな少女と勇ましげな少年のカップルと思わしき二人の男女と、弱気なお団子で白衣の少女も。 

 

「よっしゃ!ジェットコースター乗ろうかな!USJのジュラシックのやつは楽しいけどあそこのはもっと楽しそうやな!」

「さっきの男がここは古いって言ってたよな!?やめとけよ!事故ったらゴミも散らかるだろうし!」

日に焼けた活発そうな少年も、箒と竹刀が合わさったような得物を背負った少女も。

 

「ふん、随分と南蛮好みの場所じゃのう…気に入った。後でオレがモノにしてやろう」

「モノにするって?買収でもするつもり?」

マントを翻す髪を後ろに纏めた学生も、中性的な風貌の女性も。

 

みな、探索へと向かう。

 

「あの、探索…しますか?」

和装の少年が話しかけてきた。

「まあね。出口もきっと見つかるだろうし」

少年の手を引き、歩こうとした瞬間、首あたりに違和感を感じた。思わず首元をさわる。

 

わたしは、ペンダントを付けているらしい。

しかも、3cmほどの大きさの、銅色の丸いロケットが特徴的なペンダント。なんで今まで気づかなかったのか。

中に出口の鍵でもあるかもしれないと期待し、ロケットの中を開けてみる。普段は写真が飾られている場所には何もなく、オルゴールの『きらきら星』の音色が鳴り響く。

 

きらきら星は、子供の頃から聞いてきた曲だ。

でも何だろう。この、とても落ち着くような感覚は。

届かないものに手を伸ばすような感覚は…

 

「きらきら星って、モーツァルトが作曲したんだよね?」和装の少年が訪ねた。わたしは我に返る。

「そうなんだ。わたし、知らなかったよ」

私はきらきら星を流すロケットを閉じ、少年と共に園内を歩き出した。

 

 

まずは、噴水近くに立てられていたヒストリヱランドの地図看板を見てみよう。

左上には「第一エリア」と書かれてある…扇型の中には地図が描かれている。

地図によると、ここからはホテルが近い。まずは遠出よりも近所から攻略してみるべきか。

 

ホテルへ向かおうとしたその時。

「…あの」和装の少年が声を上げた。

「どうしたの?」

「あなたのお名前は?」

そういや、自己紹介がまだだった。

「私は鈴原椿。『超高校級の天文学者』なんだ」

「いい名前だね。改めて初めまして。ボクの名前は絹川蓮慈(きぬかわれんじ)。『超高校級の人形師』なんだ。」

「人形師?」

「人形は操ることもできるけど、作るのがメインかな?西洋のお人形から日本人形まで作れるよ。

ボクの家は関東でも名高い人形作りの名家なんだ。

人間にほとんどサイズも形も近い人形を作ったから『超高校級の人形師』として塞翁ヶ馬学園に入学することになったんだ。

という訳で…鈴原さん、よろしくお願いします」

絹川くんは、ぺこりとお辞儀をしてくる。どうやら礼儀正しい少年のようだ。名家の人間だし。

 

それにしても、あちらこちらには監視カメラがついている。防犯目的だろうか?

しかし、廃遊園地なのに動かしておく必要はあるのか?歩道は誰も歩いてないし。

 

 

ホテルのエントランスの中に入る。ちょうどエレベーターからリーダー格と思わしき銀髪の男性と、ゴーグルを付けた少年が出てきた。

「まさか16部屋しか使えないとはな…早く休みてえ」

「もう少しの辛抱です、マユミくん。部屋には何もトラップは仕込まれていなかったので大丈夫ですよ」

「あの…すいません、自己紹介しませんか…?」思わず敬語を使ってしまった。

「いいでしょう。マユミくん、この女性に自己紹介を」

「…はーい。いいよ。」ゴーグルの少年は面倒臭そうに言う。

「俺は檀十兵衛(まゆみじゅうべえ)。『超高校級の提督』って呼ばれてるよ。で、あんたの名前は?」

「わたしは鈴原椿…『超高校級の天文学者』だけど」

「ボクは絹川蓮慈です。『超高校級の人形師』だよ」

「そっか。じゃああんたはツバ吉で、そっちはレンきゅんでいいや」

「つ、ツバ吉!?」随分とおみくじみたいなあだ名だ。

「失礼、マユミくんは少し面倒くさがりな所がありまして。では、改めて私から挨拶を。初めまして。

私はイヴァン・ユグドラシルソン。アウリンコ共和国の由緒正しき貴族の部品。『超高校級の外科医師』です」

アウリンコ共和国?たしか北欧の、チーズとオーロラで有名な雪の小国…だったよね?

「いっちゃんはアウリンコから来た留学生なんだ。俺もアウリンコへ留学した。で、いっちゃんからペンフレンドにならないかって誘われた訳」

「マユミくんはいつも戦艦ゲームの話題を書いてくれます。とても良い友人です。あとは、スナック菓子の長門エビセンや、今期のアニメは何を追うかとかの話題です」

「あ、長門エビセンはボクも好きだよ!」

絹川くんは嬉しそうに言った。

「あのさ、外科医師は大体予想つくんだけど、提督ってのは…?」わたしは二人に訪ねる。

「マユミくんは留学中に、領海侵犯した海賊たちを駆逐艦1隻で撃墜したことがあるのです」

「…駆逐艦って、小型の軍艦だよね?それ1隻で?」

「駆逐艦ってもさ、今のモデルのはフリゲートよりは大きいやつがあるけど。駆逐艦適当に操ってたら撃墜したんだよね。」

「適当に!?」

「うん。『蒼海皇帝』ってゲームで覚えた。イージス艦とか操作しながら戦えるの。あれ、軍艦の操作のリアルさが売りなんだよね」

ゲームで操作を覚えるって…もしかして、所謂天才肌ってやつなのかな?

「私は外科医師でもあり、皆さんの救急箱でもあります。何か怪我をした時は是非私を使ってくださいね」

「うん!」

イヴァンくんは、絹川くんと仲良さげだ。でも、『私を使って欲しい』という、自分を道具としか見ていない発言に頷いていいのかな…?

 

その後は絹川くんとホテルのエレベーターに乗り、2階と3階を探索した。

使える部屋は2階と3階にある16部屋しかなく、どちらの階にも誰かしらの名前と似顔絵、植物の絵が描かれてあった。

例えば2階にある絹川くんの部屋のものと思わしきドアにはハスの絵が描かれていたし、3階にはツバキの絵のドアがある。

わたしたちの名前にちなんだ植物の絵を描いているんだろうか?

一瞬部屋の鍵がないことに驚いたけど、絹川くんがドアノブ下の黒い部分に触れると開いた。どうやら指紋認証らしい。

中身は何の変哲もないホテルの部屋である。けっこう広いし、机もテレビもケトルも置いてあった。

ここの遊園地がどうなっているのか知りたいので休むのは後にしておこう。

わたしたちはホテルのカウンターに載っていたパンフレットをそれぞれ一枚ずつ頂戴した。

 

 

ホテル近くのレンガ建てのレストランに入る。

ステンドグラスの窓とレコードプレーヤーから流れるジャズ。そして、会計下の食品サンプルを見つめている褐色肌に赤いマフラーを付けた小柄な少年は…。

「このオムライス、ヒヨコ何人分使ってるんやろうな!ビーフカレーも牛何頭なんやろ?

あーお腹空いてきた…シェフはいないんやろうか?ハンバーグもエビフライも食いてえなぁ。で、そこの姉ちゃんと男の子は何が食べたいんや?」

「いや、今はお腹空いてないので…それより自己紹介しましょう」

わたしと絹川くんは少年に名前を告げる。

「自己紹介がしたいって?変やなー。レストランに来てご飯よりも自己紹介だなんて。

君が言いたいならいいや。僕は灰寺蘭丸(はいでららんまる)。『超高校級の探検家』やね!」

灰寺くんは親指を立てながら自慢げに笑う。

「僕は世界で一番大きい山・エベレストを最年少12歳で最速で登りきったんや。それからずっと探検家しとるんやで。

洞窟の中で迷ったときはいつでも助けを呼んでほしいけんよろしくな!…なあ鈴原姉ちゃんと絹川、ところでこのレストランの従業員さん知らへん?」

「ボクたち以外には誰もいなさそうなんだ」

「そっかー…なら、あそこにジェットコースターあるやん?僕、一度ジェットコースターの路線を歩いてみたかったんや。絶対楽しいと思うんやけど…ダメ?」

「だ、ダメだってば!落ちたら死んじゃうよ…!」わたしは灰寺くんを阻止しようとする。

「大丈夫や!あそこのお土産屋には多分ロープとか売ってそうやからそれを使えば安全やし!」

「…お土産屋にロープ、あるのかな?」

 

レストラン内を竹刀と箒が合わさったようなもので掃く、黒髪のショートに赤と黄色のエクステの女の子も気になる…。

とりあえず、二人で自己紹介すると女の子に鋭い眼光で睨まれた。

「あ?二人とも随分キレイで身なりの良さそうな服着てんなぁ?オメーもこの遊園地にさらわれてきたのかァ?」

「!?」絹川くんが軽く怯える。

「あっ…ごめん。いつもの癖で…アタシは『超高校級の美化委員』二階堂(にかいどう)つつじ!よろしくな!」

「美化委員…わたしの学校にはなかったな」

「え?美化委員知らないの?まあ地味で真面目な生徒の役割らしいからね。アタシの学校、チンピラがワンサカいるところだったから。

教室から建物の壁までゴミと落書きだらけ、授業中は罵り声が響き、弱肉強食でいじめられてる奴は人権すらない…

そんな学校の落書きを消したりしてるうちに『超高校級の美化委員』呼ばれるようになったんだよね。

アタシの父ちゃんと母ちゃん、どっちもワルなもんで。ヤクザとレディースやってたんだよ。

でも汚い部屋とか見るのなぜか嫌でさ、小さい頃からゴミ拾って掃除してた。

自分の部屋の掃除してえなら呼んでくれよ。この改造箒と『媚歌鬼奸』でマジキレイにしてやるからな!」

二階堂さんは改造箒を振り回す…と、あたりにほこりが舞った。思わず咳き込みそうだ。

「うぎゃあ!またやらかしちまった!いつものチンピラどもと戦う時の癖で…!」

…一応、悪い子ではないと信じたい。

 

 

レストランより北の方角のアスレチックへと辿り着く。普通のテーマパークと違わない普遍的なアスレチックだ。

「…ワンピースの女がゾンビに襲われて、アスレチックに登る。いい絵になりそうね。

ちょっと経験してみようかしら」

先ほどの大胆なツーサイドテールの少女。彼女は縄でできたタワーの階段を登ろうとする。

「や、やめとけよー…そこに登ったらパンツ見えるだろー?健全な子供もいるんだしー?」

それを不安そうに見つめるヘッドフォンの少年。健全な子供とは絹川のことらしい。

「…あの、自己紹介しませんか?」絹川が二人に告げる。子供扱いされたことは別に気にしてないのかな。

それを聞いた少女が縄の階段から戻ってきた。右目は青い髪で隠されている。

「あっ、鈴原椿です。『超高校級の天文学者』」

「絹川蓮慈です。『超高校級の人形師』です」

わたしたちが答えた後、二人はわたしたちに名前を告げた。

「私は黒木小百合(くろきさゆり)。『超高校級の映画監督』よ」

「オレの名前は梅田純九郎(うめだじゅんくろう)。あだ名はスイカ言われてるけど梅だ。こう見えても『超高校級の図書委員』なんだよなー」

うん。梅田くんが着ているシャツは、明らかにスイカ模様だ。

「…ところで貴方たち、『灰色のフレデリカ』は当然知ってるのよね?」

「名前は知ってるけど詳細までは」

「なら教えてあげるわ。低予算で作られたラブコメホラーというニッチなジャンルでありながら邦画興行250億円の大ヒットを売り上げた、映画史に残る傑作よ。

貴女も今度見てみたらどうかしら?主人公がヒロインのためにチェーンソーを縛り付けたバイクで特攻するシーンは…天才的なカットと言われてるわ。全ての人間は私の映画にひざまづくのよ!」

随分と高飛車な人だ。で、梅田くんは…

「君たち、オレの本知らないかな?『僕と私の異世界探訪』ってライトノベル」

「…あの、ライトノベルってなに?」

…え?絹川くん、ライトノベルの意味も知らないの!?

「…漫画みたいな表紙の小説のことだ。知らないならいいや。オレ、いつもツイてなくて本無くすんだよなー。図書委員なのに。本探しの才能ならあるのに。

図書館や本屋に置いてある本ならすぐに見つけ出せるんだけどさー、自分が持ってる本はかなりの確率で無くすんだよなー。

お爺ちゃんからはいつも鞄に入れろって言われてるけど。なぜか無くす。鞄の底に入れても無くす。

転んだ時にどっか飛んでいくんだろうなー…さて、本探すか。見つけたら教えてなー」

黒木さんは梅田くんをじっと見つめる。

「不運な図書委員ねえ。そういえば、塞翁ヶ馬学園は『幸運枠』と呼ばれる一般的な生徒を入れるらしいけど。

いい映画の題材になると思わない?」

「…なるんじゃないかな」

 

アスレチックで遊んでいる暇はないので、次は少し東の場所にある洋館へ向かおう。

 

 

洋館。二階建ての建物は白く塗られ、まるで西洋の小さな宮殿のようだ。

「…うう…洋館自体は綺麗だけど…殺人事件とか起きないよね…」

この大きなショルダーバッグをぶら下げた白衣で青いお団子髪の少女と。

「大丈夫だって!いざとなったらミー君が助けてくれるって!」

「集団で行動すれば君は大丈夫さ!安心したまえ!」

大柄な金髪の男性と、彼に抱きつく同じく金髪のツインテールの小柄な少女。ギャップが激しい。

とりあえず三人に話しかけ、自己紹介を終える。

「えーと、あなたが鈴原ちゃん?えーと、メモ帳メモ帳…ポケットに入ってないな…。

あ、はじめまして!あたしは『超高校級のモデル』雨崎梨々(あまざきりり)って名前なの!」

小柄なツインテールの少女、雨崎梨々の名前は聞いたことがある。確か、『Alice』ってモデル雑誌の読者モデルだったよね?テレビに出てたし。

そして大柄な男性は…

「初めまして!鈴原椿さんだね。僕は未隅実(みすみみのる)。『超高校級のラグビー部』さ!」

絹川くんがそんな雨崎さんと未隅くんをじっと見つめる。

「あの…ふたりは仲良しなんですか?」

わたしと白衣の少女が凍りついた。しかし…

「梨々は僕の恋人だ!同じ高校で出会ってきて、付き合った時からいつも一緒にいる。いつも僕を支えてくれる可愛い子だ!」

未隅くんは自慢するような大きな声で言った。どうやら恥ずかしくないらしい。

 

「あ、あの…私も自己紹介いいかな…?私は『超高校級の科学者』藍葉美郷(あいばみさと)…って名前なの。

えーと、何話したらいいのかな…まず、私の出身校の話とか?

いや、それじゃ自慢扱いされちゃうかな…?じゃあ天気の話題とか?自己紹介じゃなくなっちゃうよね?」

藍葉さんは怯えるように言う。

「いや、どんな研究をしているのか知りたいんだ。科学者だから、やっぱり薬品とか作ったりするの?」

「わ、私の発明品ってことなのかな…?巨大戦車が踏んでも絶対割れないガラスちゃんとか、繊維だけを溶かすスライムちゃんとか、動くチョコレートちゃんとか…

色々作ってるよ。」

藍葉さんはカバンを漁る。

「鈴原さんが好きそうなのは…あった!超小型プラネタリウムちゃん!」

…出てきたのは青汁の缶だった。

「ま、また間違えちゃった!?昨夜持ち物リスト何回も確認したのに!?ひいぃ!のど飴ちゃんあげるから…これで許してぇ!」

藍葉さんはわたしに泣きついてきた。ものすごく弱気な子だ…。

 

白い洋館のドアは開かない。

仕方ないので、東のウォーターライドに行こう。

 

 

更に東のウォーターライドの前にたどり着く。丸太の急流すべり…ではなくブリキ色のドラム缶の急流すべりのようだ。こんなところまで徹底している。

入り口付近のベンチにはパンフレットをじっくりと読む紺色のショートヘアの女性が座っていて、

その近くでは笑顔の神父さんのような格好の青年が彼女に語りかけている。

「水は天の作りし神聖なもの。全てを流すが砂漠の水は旅人の救いにもなるのです」

「…あなた、鬱陶しいよ。似たような奴に街角でよく絡まれるんだよね」

話しかけてもいいんだろうか…?

「あの、あなたの名前を聞きたいんだけど、今は大丈夫かな?」

わたしが女性に語りかけると、女性はパンフレットから目を離し、ため息をつきながら告げた。

「…紅葉留架(もみじるか)。『超高校級のバスケ選手』。ポジションはポイントガードをやってる。よろしく。」

そして、神父風の青年も…

「新しき友よ、今日は。僕は蒲生公英(がもうこうえい)。『超高校級の神父』と呼ばれる者です」

 

わたしと絹川くんが後に自己紹介する。

「貴女の名前は…鈴原椿と言うのか。いい名前だ。大切にしなさい。

鈴原嬢は『超高校級の天文学者』なのですね。天は全てを良き方向へと導きになられる。

例えば、ステラマリス…北極星は人々に北の方角をお教えするように。八芒星が賢者に救世主の誕生をお告げになられるように。

天が善をお救いするように、僕も天を愛しています。しかし…悪しき者には天はお怒りになられる。

貴女も罪深き言動には気を付けるように。さもなければ…天の裁きが下るだろう」

蒲生くんは整った顔立ちを持っていて、立ち振る舞いもまさしく神聖なものだ。

でも、どこか怪しい雰囲気も持っている。

一方、紅葉さんは…

「言っとくけど私、バスケ以外で他人と関わるの苦手なんだよね。あと、ファンサービスとか愛想振り撒くのも苦手。

試合の時以外でパーソナルスペースに入られるのも正直嫌だからさ…今は話しかけないで。うん。」

…紅葉さんは、パンフレットを持ってどこかへ去っていった。

「…いつか彼女も、天の加護について知れるといいのですが」

蒲生くんは悲しそうに呟いた。

 

 

マップ最北端の時計塔。ロンドンのそれほどではないが大きい。

ここの最上階に上がれば、いい眺めを展望できそうだ…

 

「ぎゃああああああっ!?」

女性の悲鳴だ。悲鳴の方角を向くと、和服エプロンで黒髪の女性が、ピンク髪にリボンの眼鏡女性に追いかけ回されている異様な光景が…!

「うふふ…観念してくださいね?女嫌いな女ほどゆりんゆりんなんですよ〜?」

「こ、来ないでぇ!私、女に触れると蕁麻疹が出てしまいますのぉぉぉぉ!」

「やかましい!貴様は死体慣れしてねえ兵卒か!?」

必死に逃げる二人にキレているのは、灰色の髪を後ろにまとめた黒マントの青年。

「あ、あの。自己紹介よろしいでしょうか…?」

「あ?」「は?」「初めまして~!アテクシはバニラ・キャンディ!あめだま星のプリンセスであり…『超高校級のネットアイドル』なのです!」

名前を言ってくれたのは、眼鏡の女性だけだった。

「あめだま星はソンブレロ銀河の隣に存在する、その名の通り建物の全てが飴でできた天然平和な国なのです。

そこから訳あってこの地球にやってきたのです!

あめだま星へ帰る為の資金稼ぎとして、動画投稿サイトに踊ってみた動画とか投稿してるのです。

動画は大好評でなんと100万PV越え!あぁ~…かわいい女の子たちが見てくれてるお陰なのです!」

アニメのキャラクターのような声で名乗るバニラさん。本当に本名なんだろうか?

一方黒髪の女性は…絹川くんと仲良さそうに会話している。

「あらあら初めまして、私は『超高校級の大和撫子』であり『超高校級の女将』…一ノ瀬秋穂(いちのせあきほ)と申しますわ。どうぞご贔屓に」

「初めまして。わたしは鈴原椿。超こ…」

「あら、貴女はどうやら女なのですね?ズボンを履いているから殿方様だと思いましたが」

言葉を遮られた。

「ちなみに殿方様とは男性方のことですわ。私、女に触れると蕁麻疹が出てしまいますの。だから近寄らないで…!」

本当に女性が嫌いなんだな。で、そこのマントの青年は…

「貴様の名前は鈴原椿か。…首をポトリと落とされそうな名前じゃ。美しい名前でもあるがな。

オレは湖林右京(こばやしうきょう)…と名乗っておるがそれは仮の名前じゃ。本名は織田信長。あの天下人本人なんじゃ!

昔は大うつけそして第六天魔王、現代では『超高校級の歴史学者』と呼ばれておる!」

え?首を落とされそうな名前…?すごく落ち込む…以前に、織田信長?

「織田信長って、本能寺の変で死んだんじゃないの?あ、ボクは絹川蓮慈と言います」

「フン。かつて織田信長は本能寺の変で自害したと思われた。しかし実際はこの現代にタイムスリップして赤ちゃんの姿になった。

そして湖林右京として生きている…それが実際の歴史じゃ。現代では信長としての力を取り戻す為に歴史を学んだり茶器を集めたりしとる。その結果、ある歴史人物の遺産を見事見つけたのじゃ」

「そうなんだね!湖林くん、凄いや!」絹川くんは目をキラキラと輝かせている。

「あ、あのさ。もしかして、変な思い込みとかじゃな」

「あ?」湖林くんは凄い剣幕で睨んできた。

「貴様、オレを信長じゃないと疑うんか?どうやら強制的に切腹されたいらしいなぁ。それとも一銭切かぁ?」

「す、すいませんでした」

「今回は許す。だが次に疑った時は容赦はせん。オレは本物の信長じゃ。いいな?」

ものすごく唯我独尊な人だ。話しかける時は気をつけよう。

 

それにしても、立派な時計塔だが…入れるのかな?ドアはレトロな自動ドアのようだ。

入ろうと必死に開けたが、ビクともしなかった。

 

 

ウォーターライド近くのステージ。

レンガ色をしたそこは野外ライブやヒーローショーができそうな広さだ。

それ以外には何もないので後にしよう。

広場近くにあるのはお土産屋…だが、簡単なホームセンターのような場所だった。

お土産はなぜかない。代わりにロープや仮面、ハンマーが置いてある。

レジ台には『モノモノマシーン』と書かれたガチャガチャがある。

回すにしてもお金はない。わたしたちを拉致した人間に奪われたんだろうか?

 

 

全て見回ったので噴水広場に集まることにした。

「このテーマパークにいるのは全て塞翁ヶ馬学園の16人の新入生のようです。

他には従業員も来客もいませんでした。そして、ホテルの指紋認証はここにいる16人全員が登録されているようです」

すっかりリーダー格になったイヴァンくんが言う。

「そういやここ、廃園になったんだよね?なぜか設備はボロボロ…じゃなくて綺麗だよね」

「僕たちはきっとヒストリヱランドの一日チケットをプレゼントされたんだろうね!多分!」

「もー!ミー君と遊園地行くの3回目なのにー!と言うか懸賞応募してないしー!」

雨崎さんと未隅くんは相変わらずイチャついてる。

「なあ…僕たちさ、なんか監視されてるような気がしない?この遊園地のあちらこちらに監視カメラみたいなのがあるし…」

灰寺くんが言う。防犯目的だと思っていたが、そうでもないのか?

それを仕組んだ人達は、何が目的なのか?

 

そう思った瞬間。

 

「あー、マイクテスト。マイクテスト。園内放送。園内放送でーす。

ボクは一人と一輪で寂しいのでオマエラは園内のステージに集まってください。クマは寂しいと死んじゃうんだよねー。」

「くひひ…楽しい楽しいショーが始まる予定なのだ。アナタラのご来場をお待ちしてますのだ。」

 

園内放送が流れた。特徴的な声と、微妙に明るい声の二種類の声が聞こえる。

 

「まさか、ここに連れてきた首謀者が?」

「いっちんも行くのか?めんどくせえな…何もイベントのない場所でずっと閉じ込められるのとどっちがマシなんだろうな。」

一体、何が起ころうとしているのか?

わたしたちは、確かめるためにステージへと向かった…。

 

 

ステージにたどり着く。その上には、大きな演台のようなものが置かれていて…。

 

「うぷぷぷぷ。全員来たようだね。」

「アナタラ、お待たせしましたのだ!」

 

声が二つ響く。その瞬間…

 

演台から何かが、飛び出してきた。

右は白く、左は黒い不気味なクマのぬいぐるみと、クマが持っている、植木鉢に植えられた花。

 

「ボクはモノクマ。荒んだ現代に蘇った一筋の闇であり…塞翁ヶ馬学園の学園長なのです!」

「そしてわーはカラフラなのだ!絶世の絶対運命美少女であり、塞翁ヶ馬学園の理事長なのだ!」

 

学園長の威厳など全然なさそうな生き物と、美少女でもなんでもない花びらが5色のカラフルな人面花。

それが出現して、喋った。異様な光景に皆は動揺する。

「な、なんじゃあ…!?あんなもん戦国でも見たことねえ!?」

「ひいい…クマや花が喋るわけないし夢だよね!?こう言うのは、催涙スプレーちゃんで…」

「落ち着け。こういうのは高度なAIを持ったロボットだと思えばいい。最近はペットロボットとか流行りでしょ?」

紅葉が、藍葉をなだめている。

 

「さて、早速オマエラにプレゼントがあります。これは『電子生徒手帳』だよ。」

 

学園長を名乗るそれ…モノクマは、白黒の箱を演台から取り出す。そして、箱の中身を取り出す。

中身は…モノクマと同じカラーリングの薄いスマートフォンのようなものだった。

「これ、アタシのスマホじゃん!返して…って違う?」

 

「ナウでヤングな若者はスマホなんてオサレなもの持ってないで、もう少しこういうハイカラなもの持ちなよ」

 

モノクマはわたしたちに『電子生徒手帳』と呼ばれたスマートフォンを投げてきた。

電子生徒手帳には星の形のストラップが付けられ、画面にはわたしの名前が写っている。

 

『超高校級の天文学者 鈴原椿』

 

どうやら電子生徒手帳には才能に合ったストラップがそれぞれ付けられているようだ。

「モノクマ殿、貴方は一体何がしたいのですか?何か不埒なことを行おうとするのなら、天が罰を与えます!」

「そうですわ!陰湿な行為は警察の殿方様がお捕まえになられますわ!」

モノクマは、落ち込んだ様子で言った。

 

「あのね、オマエラは一生このヒストリヱランドから出られないの。一生共同生活なの」

「警察も動かない。政府もすっとぼけ。でもね。アナタラがもし出たいんなら…」

 

モノクマとカラフラは、声を合わせて言った。

 

「「ここにいる16名のうち誰かを殺してください。そして、学級裁判を生き延びてね!」」

 

16人のうち誰かを殺す。

そして、学級裁判を生き延びる。

それは、予想もつかないワードだった。

 

「ねえ、その学級裁判って…どういう意味?」

「まさか…アタシらは殺し合わなきゃなんねーのか!?そんな漫画みてえな設定ありかよ!」

 

 

「それがアリなのだ!例えばピサの斜塔のような不思議。例えばバタフライエフェクトのような偶然。それがコロシアイ遠足なのだ!」

 

 

「コロシアイ…遠足?」

わたしは、立って聞くことしかできない。

 

 

「そうなのだ!では、わーから説明するのだ。

アナタラの間で殺人が起きた場合、生存しているメンバー全員には、必ず学級裁判に参加して貰う事になるのだ。

学級裁判では殺人を犯した『クロ』とそれ以外の『シロ』に分かれて、クロが誰かを議論してもらい…

その後の投票でアナタラが一番多く投票したクロが正解だった場合は殺人を犯したクロだけが『オシオキ』され、

遠足は続行されます。ただし、アナタラが間違った生徒をクロとして投票した場合は…

クロ以外の全員が『オシオキ』されてしまいますが、クロは見事このヒストリヱランドから出られるのだ!」

 

「オシオキ?どういう意味なのでしょうか?」

 

「オシオキ?つまり処刑だよ。なんちゃらタワーから転落死とか、なんちゃらノートで心臓麻痺とかそんなところかな?」

 

…処刑?

まさか、人の命を懸けたデスゲームなのか?

 

「殺し方は問わないのだ。射殺や撲殺、爆殺や斬殺、毒殺感電殺溺殺墜落殺憤殺呪殺…

まあ、クロがバレなければなんでもいいですよ。死のバーゲンセールですからね。コロシアイってのは」

 

「い、嫌だよ殺し合いなんて…たすけてミー君…」

「梨々、きっと殺し合い以外にも助かる方法はあるはずだ」

 

「ねえ、一つ質問があるわ」

前に出た黒木さんが、モノクマに問う。

「貴方達の目的はどういうものなの?なぜ塞翁ヶ馬学園の新入生ばかりが集められているの?」

 

「どうだろうね。今のところはお伝えできません。

まあ、これだけはボクから伝えておくよ。

 

 

ボクは、絶望と希望が見たい。それだけなんだ」

 

 

モノクマの尖った右目が光る。

それでも黒木さんは…冷静だった。

「そう。このコロシアイとやらが起こればわかるという事ね」

しかし、それでも生徒たちの動揺は収まらない。

「巫山戯んなこのクマぁ!コロシアイ?学級裁判?そんなんあやつをブチ壊せばいい話じゃあ!」

激怒した様子の湖林くんが、ステージ目掛けて突進しようとする。

 

 

しかし…

 

 

湖林くんの手を、握った少年がいた。

 

 

 

「待って!」

「な、何するんじゃ!?痛いんじゃが!?モノクマをやらんとあかんのじゃが!」

絹川くんだった。彼は、手首をわたしが見ていても痛いほど強く握りしめている。

「今は何が起こるかわからないけど…モノクマは多分、ボクたちが何もしなければ諦めると思う。

だから…今は静かにしてようよ」

湖林くんは、絹川くんの手を振り払う。モノクマに突撃するのは諦めたようだ。

その様子を、呆れた目で見ていたクマと人面花がいた。

 

「あーあ、まあ見せしめなんてツマラナイからね。

絶望と希望を共に作り上げるのがコロシアイ遠足。まあ、やりたくなければやらなくていいのだ。

一生授業もなんにもない遊園地から出られないのもある種の希望かもしれないのだ。さて、アナタの希望はどこまで絶望に勝てるのかな?くひひ…!」

 

カラフラは植木鉢ごとどこかへと消えていく。

 

「はぁ…カラフラったらまたボクの台詞取っちゃってるよ…やっぱりガーデニング始めるなら近所のホームセンターだね。人面花なんて置いてない寂れた場所だし」

 

モノクマもどこかへと消えていった。

 

困惑する生徒たち。コロシアイ遠足。

それぞれが目を合わせる。まるで、誰かを疑うように。

現実を見たくない。疲れた。辛い。苦しい。理不尽。

負の感情が巻き起こっているのに、この場から去るものは誰一人としていない。

 

 

この時わたしたちは、これ以上の絶望が待っていることを知るよしもなかった。

 

 

 

 

ダンガンロンパ・フラワーズ プロローグ

「彼女は始まりの楽園で眠っていた」

END

 

生き残りメンバー

残り16人

 

 

・「オルゴールペンダント」を入手しました。

プロローグをクリアした証。

ロケットを開けるとモーツァルトの「きらきら星」が流れるペンダント。

鈴原がなぜかつけていた。銅色の丸い形がシンプルながらも美しい。

 

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