ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter2「廻リ空転スル黙祷ノ薔薇」
ダンガンロンパ・フラワーズ Chapter2「廻リ空転スル黙祷ノ薔薇」 6日目(探索編)


 

 

ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter2

「廻リ空転スル黙祷ノ薔薇」

 

 

 

(非)日常編

 

「椿。よく聞きなさい。ここにいられるのは……と…お父さんとお母さんのおかげなんだ。

毎日真面目に勉強して、友達と仲良くして、大人になったらちゃんと働いて。そうやって生きているからこそ、お前の日常は守られているんだ」

 

お父さんから聞いた、昔話。

この世界の成り立ち。どうして平和な世界なのかの仕組み。

 

「そんな人間の居場所なんて、この世界のどこにもないんだ」

 

流石に心の中に留めておいたけど、納得いかなかった。

世界が平和なら、なぜ彼女はあんな危険に晒される必要があったのか。

 

「クラスメイトのあの子は、仕方なかったんだよ」

 

…仕方なかった?

なら…あんな仕打ちを許してもいいのか?

 

わたしは、怒ることもできない。

だって、この世界は…

 

 

『退屈なほど平和な世界』だから…

 

 

「ううっ…」

 

目を開けると、白い天井が映る。…どうやら、夢を見ていたようだ。

ヒストリヱランド、いや、塞翁ヶ馬学園に来る前の記憶の夢を見ていたようだ。

体を起こし、あたりを見回す。もう何日も泊まっているホテルの一室だった。

 

「昨日と、変わらないんだな」

 

起こってしまった殺人。皆を守るために行動して、無残にも散った導き人。

学級裁判。それぞれが疑い合い、絶望の真実を追い求めた戦い。

処刑。大切な人に会うために人の命を奪って、黒幕に惨殺された悲しき少女。

これらは全て、残酷な現実。二人の命が失われたという真実。

 

わたしたちは今、このヒストリヱランドでコロシアイをさせられている。

 

「イヴァンくんも…バニラさんも、死んでしまった」

 

一瞬、目が虚ろになる。

身体が固まって、震えそうになった時…さっきの夢のことが頭に浮かび。

 

朝の放送が流れる。

 

 

「塞翁ヶ馬学園遠足実行委員会がお知らせします。

オマエラ、おはようございます!今日も絶望ハイカライフを楽しんで下さいね!」

「第一エリアのレストランでパンのバイキングを用意してあるのだ!

パンはパンでもフライパンはないから安心してね!」

 

もう7時か。

お腹が空いてきた。色々考えるよりも、まずレストランへ向かうことにした。

外に出てみる。雲が太陽を覆い隠し、少し空気が湿っている…。

 

 

フランスパン、食パン、クロワッサン、アンパン、クリームパン…

テーブルには様々なパンやドリンクが並んでいる。しかし、それを喜んで手に取ろうとするものはいない。皆は黙々と朝食を食べているようだ。

わたしは並べてあったトングとトレイ、コップを手に取ると、クロワッサン2つを掴み、 コップに麦茶を注ぎ、皆の座っているテーブルへと向かう。

 

「檀くん、パンを何個か袋に入れてどこかへ行ったけど…何かやらかす気かしら」

狂気の豹変は何処へやら、黒木さんは平然とした態度でパンを口に運んでいる。

「蒸しパンかー…ばーちゃんからは好き嫌いなく食べろって言われてるけど、今は食う気になれねー…」

トングを持ちながら、バイキングを眺めている梅田くん。

無数の虫たちに喰い殺されるという、バニラさんの惨たらしい処刑を思い出す…。

 

絹川くんと藍葉さんの座るテーブルの席に座る。

コーヒーと共にかぼちゃのパンを皿に置いたまま…うつむいている藍葉さん。

小さく千切られた食パンに、ナイフでバターを塗る絹川くん。

机の上には、鳥かごの中の人形…彼の動機のプレゼントであったものが置いてある。

この前と違うのは、人形が服を着せられ、髪の毛の整った西洋人形になっていることだ。

「絹川くん…それ、動機の人形を自分で修復したのか?」

「うん。材料集めは大変だったけど…揃えばなんとかなったよ。人形は綺麗にしなきゃね」

「みんなは…昨夜は眠れたのか?」

「ううん…全然眠れなかった。昨日のうどんも、食べられなかったし…」

藍葉さんはふるふると震えながら呟く。

2人の死を見た、しかもそのうち1人は自分にすがり付きながら連行されていったのなら、弱ってしまうのも当然だ。

 

「やり方は簡単ですよ。1日に1回、この像を頭に乗せ、このカードを引くだけでいいのです。」

「悪いけどさ…像を乗せながらカードを引くって、普通に考えて難易度高くない…?」

わたしたち3人を横目に、セールスの如く怪しい占いを困惑する雨崎さんに教えているのは…蒲生くんだ。

「アヒルの像では駄目でしょうか?では、このエメラルドの原石を転がして…」

「蒲生君!梨々が困っているからやめた方がいいと思うぞ。梨々は普通のタロット占い以外は信じないからな!」

雨崎さんを庇うようにして未隅くんが告げる。強目だがまだ優しい口調だ。

「今はそのタロットカードも持ってないんだけどね…とりあえず、今は占いはいいかな」

「そうですか。啓示を貴方たちにも経験して欲しかったのですが…いつか天の奇跡をご覧になられることを願っています」

引き下がった時も蒲生くんは笑顔だ。どうしたら彼みたいにいつでも笑えるようになるんだろう。

 

「雨崎、未隅。よく断った。蒲生の優しさには裏があるかもしれん」

 

そう言って彼らの会話に割り込んできたのは…湖林くんだった。わたしたちや雨崎さんたちとは違う席で、緑茶と焼きそばパン3つを食べている。

「占いなんてのは、ハッタリじゃ」

焼きそばパンを頬張りながら雨崎さんたちの方へと目線を向ける湖林くん。

「運命はその時その時に必然的に決まる。矢が飛んでこようが、毒殺されようが、本人の行動自体で自由に決まるのじゃ。尤も、それを信じることは否定せんがな。」

「えーと、いきなりどうしたの?」

目をパチクリさせる雨崎さんの横を通り過ぎ、湖林くんは蒲生くんに語りかける。

 

「…蒲生。幸福の結末でも最悪の未来でも結果を盲信し、何も行動を起こさないないのなら…それは愚行じゃ」

「湖林殿は…定めというものを信じないのですね。哀れな」

席に座っていた蒲生くんは、目の前の灰色の髪の男に告げる。

「哀れじゃと?人間の結末なんてのはその人間個人でどうとでも変えられる」

「…では、悪しき者に洗脳され、鎖を付けられ、支配から逃れられないまま…殺される罪なき者がいるとしたら?彼らと彼女らに手を差し伸べるのが…天の定めなのです」

「その者自身が立ち上がるか…強き者が道を示せばいい。それに人間は強弱の差はあるが全員が心の底から愚かではない」

「…人の弱さを否定するのに、自分を含めた人というものを過信するとは…かえって同情してしまいますね」

ため息をつくも、いつもの笑顔で返す蒲生くん。

「すべての人間は、救われなければならないのです」

 

湖林くんは無表情だ。しかし、蒲生くんが気に食わないのはわたしでもわかる。

「…蒲生、貴様は…人の可能性とやらは信じておらんのじゃな?」

「ち、ちょっと待ってよ二人とも!朝から喧嘩はやめてってば!」

お互いを睨みつける二人を仲裁しようとする雨崎さん。

「一ノ瀬!あいつら一緒に止めた方がいいってよー!」

梅田くんはパニック状態なのか、隣の席の一ノ瀬さんに語りかけるも…

「止めませんわ」

「…え?」

「だって…あの『覇権』の中に混ざり込むなんて…そんな愚行はいたしませんもの!」

 

…よく見たら、一ノ瀬さんは顔を赤くしながら、目を輝かせている…

「一ノ瀬ねーちゃん…どうしたん?」

灰寺くんは全く理解できていないようだ。いや、理解しない方がいい。

「灰寺様…あなたにもいずれわかりましてよ。女同士の喧嘩はただの薄っぺらいマウント争い。

ただし殿方様同士の喧嘩はそのうちつきあう証拠なのですわ。御覧なさい。あのベッドの上で口論しそうな二人…!」

要するに、腐っているのか。そうか。

「男に大きな感情を向ける男。それを笑顔であしらう男。まさにこれは覇権…!」

「…だから覇権って何!?」

 

「アナタラ、グッドモーニングなのだ!」

「オマエラ!アオハル繰り広げてる途中悪いんだけど、ちょっとボクの話を聞いてくれないかな!」

 

レストランに入り込んできたのは…モノクマと、台車に載せられたカラフラだ。

「モノクマ!?何をしにきた!」

 

「鈴原さん…いきなり大きな声をあげてどうかしたの?クマのぬいぐるみを見るってそんなに驚くこと?」

 

「自分の意思を持って動くクマのぬいぐるみと、喋るカラフルな花を見たら、誰でも驚くでしょうね」

黒木さんが1匹と一輪の方面をじっと見つめながら言う。

 

「ボクとカラフラが出てきた以上の驚きをオマエラに教えてあげようと思ったのにさ…例えば…

 

『第二エリアに行けるようになった』とかね!」

 

「…第二エリア?このヒストリヱランドの…?」

わたしは、目を見開いた。

 

「第二エリアも相変わらず壁に囲まれているけど、設備とかは綺麗だから安心してね!使えるようになるまでの『整備』には結構時間がかかったのだ!」

 

「…『整備』ってのはどう言うことなんだ?」

 

「ほら、ヒストリヱランドって廃園からもう何年も経ってるでしょ?アナタラが仲良くコロシアイをするためには安全が必要なのだ!」

「コロシアイに安全も何もないって意見は認めないからね!設備が錆びてて事故死とか正直つまんないし!

ってことで、オマエラの捜査頑張ってね!」

 

モノクマはカラフラの載る台車を後ろ手で引きながら素早く去っていった。

…ポケットの中からパンフレットを引き抜き、それを開く。

扇型が六つに分けられた地図。一番南の第一エリアの右にある第二エリア。確か、各エリアは巨大な壁で隔てられていたはずだ。そこへの扉が開いたと言うことかな。

 

「脱出の手がかりが見つかるかもしれないし、皆で行ってみるかい?」

「うん。朝食が終わったら行こうよ!気分転換にもなるだろうしね!」

「檀もあそこでだらけてるかもしれねーからな!探してみようぜ!」

未隅くんに雨崎さんと二階堂さんが賛同する。

 

わたしたちは、雨崎さんの提案で第二エリアへ行くことになった。

これを考えるのは不謹慎かもしれないけど、きっと自由への道があるのかもしれない。

 

 

第二エリア。そこは、樹や花々が生い茂る街のエリアの中心に大きなメリーゴーランドが置いてあるエリアだった。

地図看板には「自然に触れて癒されるエリア」と書かれている。

メリーゴーランドはアコーディオン演奏をBGMにしながら、様々な色の馬や馬車をゆっくりと廻し続けている。

その中心部分は鏡張りだが、よく見ると人が一人入れそうな扉がある。

「脱出したら一ノ瀬旅館の庭に置きたいですわ。お兄様に頼むべきかしら…」

「それはただのリゾートホテルなのではないでしょうか?」

悩む一ノ瀬さんに、先ほどの彼女のセクハラなど忘れたかのように蒲生くんが突っ込む。

 

そうしていると、メリーゴーランドの中心部分の扉が開き、中から檀くんが出てきた。

「あ、檀くん?無事でよかったけど何をして…」

しかし、檀くんはわたしたちを無視し、どこかへと走っていく。

「む、無視された…」

あの扉は、普通に入れたのかな?わたしは馬たちを避けながらメリーゴーランドの中心の扉へと向かう。

中心に辿りつき、扉のハンドルを握り、ドアを押そうとするが開かない。

「一体、何の部屋なのかな、ここ…」

よくみると、扉の近くには四角い枠がある。何かマスターキーがあるのかな?

 

 

メリーゴーランドより少し西南の牧場。動物はおらず、植物は整えられてはいるが寂しげな草原が広がっている。

牧場はトゲのついた鉄の柵で囲まれていて、柵の近くの看板には「感電注意」と書かれた看板がかけられている。

隅には扉の開かれたログハウスの納屋が建ててある。

 

納屋の中を覗いてみてもやはり牛や馬、鶏などの動物はいない。農具や固められた牧草などが置いてあるだけだ。

しかし、鍬もスコップも全部木製なんだな、ここの農具、腐らないんだろうか…。

 

「鈴原、何してるの?納屋には脱出の手がかりなんて無かったよ」

振り返ってみる。声の主は…紅葉さんだった。バスケットボールを脇に抱えている。

「…紅葉さん?あなたは一体何を…」

「ドリブルの練習だよ。お土産屋からボールを頂戴したし、じっとしてたら体が鈍る。電気柵にさえ気をつければ好きなだけ走れるし、水飲み場もカラフラに聞いたら安全だって言ってたからね」

そう言うと、彼女はどこかへと去っていった。

…しかし、雨の日はどうするんだろう?

 

 

牧場のすぐ北には、屋根の丸い大きなガラス張りの温室があった。扉を開け、入ってみると様々な草花が栽培されていた。

ここは植物園か。中央には白い石造の噴水が置かれてある。

バジルやシソなどのハーブや、ブーゲンビリア、ランといったものが育っている温室。天井にはスプリンクラーが設置され、用具を入れるロッカーが存在し、その近くの長方形のガラス容器の中には3本の赤いバラが植えてあるプランターが入っていた。

ガラス容器を見つめているのは…黒木さんだ。

「黒木さん。そのバラがどうかしたのか?」

「触らないでね。下に注意書きが書いてあるでしょう?」

「そうだね…なんて書いてあるんだろう」

ガラス容器の下の注意書きを見てみると…

 

『このバラはケルブレムという品種のバラです。摘まれてしまうと数分ほどで周囲の人間の脳に幻覚作用が引き起こされます。依存性はありませんが、大変危険なので栽培係以外は絶対に容器に触らないでください』

 

と書かれている。

「美しいものにはトゲがあるというけれど、トゲだけじゃなくて幻覚作用まであるんだね」

「何かのアニメ映画みたいね。ミュージカルシーン、あなたも知ってるでしょ?」

「…流石に割られたら危険だから、どこか人目につかないところに置かない?」

「どうせモノクマたちが元の場所に戻すわよ。あと、質問を質問で返すのはやめた方がいいわよ?」

黒木さんは、どこかへと去っていった。こういう時でも冷静だ…。

 

温室にあるもう一つの扉に気づく。開けて外に出てみると、レンガ製の1mほどの井戸がぽつん、と置いてあった。

井戸に近づき覗いてみるが、梯子のようなものが内側についてある以外は真っ暗で何も見えなかった。ライト、持って来ればよかった。

 

 

植物園より北東のゲームセンター。

対戦格闘ゲーム、リズムゲーム、UFOキャッチャー、エアホッケー…本格的なアーケードの作品からメダルゲームまで置いてある。

「ミーくん…折角だからこれで遊んでいこうよ!」

雨崎さんが指差したのは、『ホッケーマニアセカンドメロディ』の筐体だ。二人でリズムに合わせてパックを打ち合うゲームだ。

わたしはやった記憶がないんだよね…。

「探索も終わったし、一回ならやってみてもいいな!エアホッケーなら僕は負けないぞ!」

「終わったって…結構早いな」

「結果は後で教えてあげるね!皆がいるところで教えたいから…」

…何かを見つけたんだろうか?とりあえず、後で聞こう…。

 

 

東の釣り堀へ向かう。牧場には動物がいなかったのに、大きな四角の池にはなぜか魚が泳いでいる。

近くの看板には子供がクレヨンで書いたような文字で「ブラックバスやブルーギルなどのがいらいしゅしかおよいでません! モノクマ」とある。

…その看板を、二階堂さんと絹川くんが見つめている。

「ブラックバスか。腕が鳴るな。釣りなら父ちゃんに教えてらったことがある。父ちゃん、マグロやらタイやらをよく釣り上げてたな。鈴原、絹川。今度釣りに行くか?」

「マグロやタイって…海の魚じゃないの?ボク、釣りはよく分からないんだけど」

「あーそうだったな!でも外来種を自然に放つような真似はやめろよ!「媚歌鬼奸」でぶっ飛ばしてやるからな!」

「…確か、この国古来の魚たちを食い荒らしてしまうんだっけ?」わたしは二階堂さんに質問する。

「その通りだ!ここで捕まえたらこの釣り堀へリリース!が基本だな!外来種に罪はねえんだしさ!」

「うん。みんなを誘って釣りに行こうね。サメがいないから落ちても大丈夫だし」

 

…そういや、サメは人間を餌として認識するんじゃなくて、イルカやウミガメとかの大きな獲物だと勘違いして襲うことが多いんだったよな。

この知識、どこで覚えたんだっけ…?

 

 

メリーゴーランドより東、釣り堀より南の小さな二階建ての建物。

錆びたブリキの看板にはそれぞれ赤い文字と青い文字で

 

『1F-喫茶店・アザミ』

『2F-写真館・八輪咲きのピオニー』

 

と書いてある。

一階はともかく、二階は店名にセンスがないような…?

 

喫茶店に入館すると、コーヒーの香りと共にシックな光景が広まっていた。

焦げ茶色の丸いテーブルとふわふわの椅子。テーブルに置かれた湯気を立てるコーヒー。

アールヌーボーの模様の壁。レストランにはない、大量のレコードが置かれた棚。吊り下げられた、べっこうのシャンデリア。

 

よくみるとテーブルの上に紙が置いてある。

 

『コーヒー2はいぶん先ちゃく2名さま きけんぶつ/Zero モノクマ』

 

相変わらずクレヨンで書いたような字だ…。

ここにいるのは藍葉さんと湖林くんだが、二人ともコーヒーは飲んでいないようだ。

「…やっぱり飲まないんだね」

「コーヒーか。嫌いではないが、麦茶の方がオレの口には合うのじゃよ」

「美味しいけれど、水分補給にはちょっとね…脱水症状を起こすんだよ…?」

それ以前に、わたしはモノクマの注いだコーヒーというのが信用できない。

 

 

 

二階に上がる。写真館に入るとスタジオには古めかしいカメラや撮影機材、壁には美少女カラフラの写真が大量に飾られている…。

『更衣室』『現像室』とプレートに書かれた部屋もある。

「エベゴンの写真ってねーんかなぁ…?」

「あるわけねーと思うけどなー…さすがモノクマの仲間、ナルシストの気配がするんだなー」

灰寺くんと梅田くんが、何やら話をしているようだ。

「灰寺くん、エベゴンって何なんだ?」

「鈴原ねーちゃん?、エベゴン知らんと?じゃあ僕が教えてあげるで!

エベゴンってのは…エベレストで僕が発見した四足歩行の犬のようなUMAや!本当はエベレストだけじゃなくて近所の裏山とかアルプスとかにもいるんやけど、一応僕はエベゴンって呼んどる」

「UMAってのは…未確認生命体だっけ」

「そうだなー。ネッシーとかツチノコとかがいい例なんだなー」

「エベゴンは結構頭いいから、モノクマたちもエベゴンと同じUMAやな!間違いないで!」

いや、普通にロボットだと思うけど…

 

更衣室に入ると、ハンガーに沢山のドレスや男性用の正装などが掛けてあるのと、床に並べてあるモノクマコインを7枚ほど見つけた。

これ、やっぱりお土産屋のモノモノマシーンで使った方がいいのかな…

 

フィルムの引き伸ばしのための現像室の中へ。窓は当然黒く遮光されているので暗く、様々な器具や大きな流し台が設置されている。

現像はお父さんがほとんどやってたような気がする…。

 

 

 

二階建ての建物の南には…怪しい建物が建っていた。

屋根も、窓も、壁もピンクのチョコレートで出来た建物。

ハートの看板にはもちろんチョコペンで

 

『chocolate house❤︎』

 

とだけ書かれてある。

ふと、近くのホワイトチョコレートで出来た看板を見てみると…

 

『ここに来た人はあなたを理想の相手だと思って妄想するようです』

『夜のバレンタインをどうぞ』

 

…?どう言う意味なんだ?

中に入ろうとしても、鍵がかかってあるのか開かない。

一体どういうアトラクションなんだ?中に入って仲良くチョコレート菓子を作るのか?

考えても無駄だろうし、ここから去ることにしようかな。

 

 

第二エリアの全ての施設の探索が終わったので、レストランに戻る…前に、お土産屋でモノモノマシーンを回そう。

 

 

モノで溢れかえっているお土産屋。そこのガチャガチャにモノクマコインを一枚ずつ入れ、ゆっくりと回していく…。

 

『塞翁ヶ馬学園のバングル』

塞翁ヶ馬学園の校章と『人生万事塞翁ヶ馬』と言う文字が刻まれた、

黒みのかかったシルバーの腕輪。

 

『超技林 第55版』

様々なゲームの攻略法や裏技が書かれたシリーズ最新作。

最新ハード対応のゲーマー必須の書。

誰かに渡すのもいいが、持っているといい事がある。

 

『超合金イラナイロボ』

いわゆるパチモノのロボットのおもちゃ。大人の商魂で生まれ、

プレゼントした子供には拒絶される悲劇の存在。

 

『サンゴ石』

サンゴの死骸でもあるが、これでも宝石。

3月の誕生石であり、七宝の一つだったりする。

 

『チュロス』

ヨーロッパ生まれの細長い揚げ菓子。遊園地や映画館で食べられる。

プレーン味とココア味の二本が袋の中に入っている。

 

『おにぎるメーカー』

ご飯とのり、具を入れるだけで簡単におにぎりを量産できるマシン。

ピクニックのお供に。

誰かに渡すのもいいが、持っているといい事がある。

 

『シンセ界より』

SF小説の文庫本。シンセサイザーで支配された世界を救う歌姫が主人公。

なぜか数年前に絶版となっている。

 

本から宝石まで、様々なものが出てきた。

お土産屋に置いてあるビニール袋に入れて、レストランへ向かおう。

 

 

「結局、脱出の手がかりはないみたいだねぇ…」

レストランに檀くんと、彼を探しに行った未隅くん以外の皆が集まる。

メリーゴーランドの謎の扉や喫茶店のモノクマの置き手紙とかは気になるが、ただ行動範囲が広がっただけなのかもしれない…

 

「あの…実はゲーセンで、少し気になったのを見つけたんだよね」

雨崎さんが手を挙げる。

「一体何なの?モノクマの動機…とかじゃないよね?」

紅葉さんが腕を組みながら言う。雨崎さんは、テーブルの1つに黒く薄い一冊のファイルをさっと置いた。

ファイルの上中央には、白い文字でこう書かれてあった。

 

『第3次ゴフェル計画会議』

 

「ご…ゴフェル…計画…会議?なんやそれ?」

「ゴフェルという言葉は聖書に出てくるノアの箱舟の素材となった木のことね。ノアの箱舟は知ってるかしら?

地上を滅ぼす洪水の際、ノアと呼ばれた人間の家族や様々な動物のつがいを乗せて生き抜いたとされる話よ」

灰寺くんと黒木さんが『第3次ゴフェル計画会議』のファイルを覗き込む。

ノアの箱舟の話は知っていた。しかしゴフェルという木のことは知らなかった。

「あのさ…このファイル、 他にも気になることがあるんだよね…」

雨崎さんはみんなに見せつけるようにファイルを開く。そこには…切り取られた新聞記事が挟まれていた。

 

『謎の隕石群、ウイルス拡散か』

 

そう書かれた見出しと、隕石に覆われた空の写真。

 

「ウイルス…拡散?そんなニュースを報道していた記憶なかったぞー!?」

「隕石ってさあ…ノストラダムスの予言とか、信じてないよぉ!」

「所詮は新聞記事じゃ。裏を見てみろ。テレビ欄とかくだらん地元のニュースが書いてあるかもしれんぞ?

おい雨崎、ファイルを少し借りるぞ」

怯える梅田くんと藍葉さんを無視し、湖林くんはファイルを雨崎さんから頂戴し、新聞記事を外し、裏をめくる。

 

新聞記事の裏は、真っ黒だった。

流石の湖林くんも、驚きを隠せないのか目を見開いている…。

 

「…マジックで塗りつぶされているのか、黒い広告が載っていたのか。オレにもわからんのだが…これはひどい。

謎を小出しにして何がしたいのじゃ?このコロシアイの黒幕は…」

「でも…モノクマたちが用意した嘘かもしれないよ?ほら、フェイクニュースってあるじゃん?SNSとかで流れる、虚構の報道とか…」

 

「フェイクニュースだがメイクアップだが知らないけど、それは違うよ!」

 

わたしたちの目の前に現れたのは…モノクマだった。

 

「モノクマ…何をしに来た!一体これはどういう事なんだよ!」

モノクマに怒る。しかし、奴は三回転して「クマー!」と言った後に口に手を当て言った。

 

「あのさ、このファイルや新聞記事に書かれてあることは事実なんだよね。

オマエラの住んでいた世界は…謎の隕石をきっかけにすっかり変わってしまったのです!」

 

「…変わった?」

 

「そう。変わったんだよね。動機発表の時に言ったじゃん。オマエラが塞翁ヶ馬学園に入学してからもう何年か経ってるって。

その間に…うぷぷ。後の話を知りたいのなら…『卒業』する事だね!じゃ!」

 

モノクマは手を振ると、どこかへと去っていった。

 

世界の真実を知りたければ『卒業』しろ…。

つまり、生徒たちを犠牲にして生き延びろ。

 

「ふ、ふざけるなよ…」

エリアが解放されても、何も変わらないじゃないか。

私は歯がゆい気分になる。

「…きっと…皆が生き残る方法があるはずだよ。だから希望を信じて生きよう」

絹川くんが心配してくれたようだ。

「あ、ありがとう…」

わたしは、そう言う事しかできなかった…。

 

 

夕食を終え、部屋に戻る。

シャワーの中で考える。

謎の夢。少女と望遠鏡の写真。失われた記憶。

ゴフェル計画。隕石。ウイルス。

考えてる途中で、黒木さんのノアの箱舟の話を思い出す。

 

『地上を滅ぼす洪水の際、ノアと呼ばれた人間の家族や様々な動物のつがいを乗せて生き抜いたとされる話よ』

 

もしかしたら、わたしたち塞翁ヶ馬学園の生徒が閉じ込められているのは…

隕石やウイルスからわたしたちを守るために…?

 

なら…なぜコロシアイなんてことを強いるんだろう。

答えは出ない。出るとしたら…『卒業』後だろう。

いや、人の命は重い。だからこそ、仲間の命を奪うなんてこと絶対したくない。

 

 

シャワーを浴び、体を拭いている途中。ふと鏡を見る。

それを見たとき、体は温かいのに心は一瞬凍りついた。

 

「なんだよ…これ…!」

 

背中あたりに、5cmほどの傷跡があった。

わたしの記憶にはない。まさか、モノクマたちに奪われたのか。

 

 

寝巻きを着て、ベッドに潜り込む。

なかなか寝付けない。考えるのをやめてしまいそうになる。

 

わたしは、一体何者なのだろう。

わたしたちは、なぜこんなことに巻き揉まれたのだろう。

 

 

モノクマ天気予報をお送りします。

今日の朝はとても快適。絶好のピクニック日和です。

でも昼からは実家からお母さんがやってきます。

そこでお母さんは叫ぶのです。

「なんでアンタのサンドイッチはタマゴオンリーなのよ!もっとレタスとか食いなさいよ!」

「でもさ、レタスって水っぽいし栄養価も高くないし誰得だよね。

タマゴのほうが絶対にいいよ。特にマヨネーズと混ぜ合わせた茹でタマゴがさぁ!」

そう言ったらお母さんは少し考え、サンドイッチにハムを挟むんですよ。

オマエはハムは栄養価も高く美味しいけど…なぜタマゴを挟まないのか?ときっと思うでしょう。

以上、モノクマ天気予報をお送りしました。

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