・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。
以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。
わたしたちがヒストリヱランドに閉じ込められてから、8日目の朝のレストラン。
今日は鮎の塩焼き定食。お盆の上にはふっくらと焼かれた鮎と半月切りのレモンが載せられた四角い灰色の皿、それぞれ卵焼きとほうれん草のおひたしが載ってある2つの丸いお皿。
白い陶器のお椀には炊かれたごはん、黒い木製のお椀にはワカメの味噌汁。
わりとオーソドックスで豪華な朝食だ。
わたしは紅葉さんと梅田くんと同じテーブル。
紅葉さんはもう朝食を済ませたのか食器は空であり、『夢色のコラール』と表紙に書かれた本を優雅に読んでいる。
梅田くんは…なぜかほうれん草のおひたしに全く箸をつけていない。嫌いなんだろうか。
と思いきや、ほとんど食べ終わった後に食べ始めた。梅田くん、好きなものは最後まで取っておくタイプなのかな。
「湖林ってバイク乗れるんだな。意外じゃん。アタシなんて父ちゃんが免許取らせてくれねーんだよな!
もし乗れたら、日本中ツーリングしながらゴミ拾いすんのにさ!」
「僕はバイクよりも車の免許が欲しいなあ。大きくなったらの話やけど…」
隣のテーブルを見る。湖林くんと一ノ瀬さん、灰寺くんと二階堂さんが喋りながら朝食の時間を過ごしている。
…一ノ瀬さんは二階堂さんから視線をそらしながら、黙々と食べているが。
「なあ、湖林兄ちゃん!一つ質問したいんやけどさ…」
卵焼きを飲み込んだ後、湖林くんが声の方向を向く。
「何かあったんか?ついにオレの家臣となる決意を固めたんか?」
「銅崎吟子ってさ…どんな人なんか?僕、全く知らんのやけど…」
「…名前だけなら知ってるのう。クラスの男たちに人気のアニメの声優と聞いたことがある」
「じゃあ『魔法ハンターエル子』って知ってる?それの主人公の声優なんだけど…その人、彼氏と添い寝フレンドの男がいるってほんとかいな?」
「オレはアニメはあまり見んが、名を轟かせる女は大抵恋人がいると思…って…え?」
湖林くんは何かに気づいたのか、箸の動きを止める。
それと同時に箸を止めたのが…檀くんだった。
「こんな下らないことを、モノクマは真実にしてんのかよ…」
声優・銅崎吟子の秘密。
もしかして、それが漫画で書かれた檀くんの真実なんだろうか…?
「大丈夫。みんなの受け取った真実も、きっと大したものじゃないさ」
未隅くんは俯く檀くんの肩に手を乗せる。慰めているのだろう。しかし、すぐに檀くんは手を払った。
「…そいつにとって大した真実じゃなくても、他の人間にとっては恐ろしいものかもしれない。みのるん、俺が受け取った真実を知りたいか?」
みのるん…おそらく未隅くんの事だろう。
檀くんの言っていることはある意味正しい。わたしたち『超高校級』を16人も集めることのできる巨大な組織が黒幕なら、わたしたちの嗜好や隠し事の重要な情報もわかるのかもしれない。
…コロシアイを起こすための、残酷な真実も。
「待ってくれ檀くん…恐ろしい真実なら、なんで皆に告げるんだ?」
わたしは席から立ち上がり、檀くんに言う。
「たいした情報じゃなくても、誰かが殺されるかもしれないのに…?」
「コロシアイが起きることで、エリア開放されるとしたら?」
立ち上がり、わたしたちの会話に入ってきたのは黒木さんだった。
「もしかしたら、次のエリアに進もうとしているだけかもしれないわね。パンフレットの地図を見る限り、ヒストリヱランドのエリアの数は6つ…
後、檀は…単独行動が多いわ。常に何かを探そうとしているの。まるで黒幕への反撃のチャンスを手に入れたいが為に。
「…さゆりん…」
「それって、イヴァンの為なのよね?コロシアイを止めようとしてたイヴァンの死を…無駄にしたくないのよね?」
一瞬、黒木さんの目がギラギラと輝いたような気がした。
檀くんは拳を握り、黒木さんを睨む。
「…ざけるな…」
「檀くんは友人思いね。報われない彼の分まで、生きようとしているなんて。コロシアイを起こそうとしてるなんて」
「ふざけるなぁっ!」
檀くんは逆上したのか、椅子から立ち上がり黒木さんに手を出そうとする。しかし…
彼を止めたのは…走ってきた絹川くんだった。
絹川くんは見た目からは想像できないほど強い力で、檀くんの腕を掴んでいる。
「は、離せレンきゅん!」
「イヴァンくんは、そんなこと望んでないでしょ…?」
「なんだよ…お前もいっちゃんのことで…」
「違う。ボクの意見だけど…イヴァンくんは…争いが起きることよりも、皆が生きることを願っていたんだと思う…。
だから、誰かに手を出したりなんてことはしないで…」
「…畜生…」
檀くんは、おとなしく椅子に座りなおす。
「それが皆の笑顔に繋がるかもしれないわね。ある意味理想論だけど」
黒木さんは相変わらず微笑んでいる。ちょっとは反省してほしいなと思う。
「ごめん、僕のせいで…みんなギスギスさせちゃったなあ…」
灰寺くんはしゅんとしている。
彼のせいではないと思う。悪いのは…このデスゲームの黒幕だ。
◆
部屋に戻る。軟禁生活にも慣れたのか、いつもと変わらない部屋だなと思ってしまう。
朝食会での騒動…その人にとっては小さな真実でも、最悪の事態につながりかねない。
それを食い止める為にも、まずは情報収集から始めようかなと考える。
わたしは身支度を整え、部屋から出ることにした。
◆
【自由行動3】
様々な植物が生える温室。そこの噴水の石造に座っているのは…紅葉さんだ。
「…鈴原、どうしたの?用がないならなんでここにいるの?」
紅葉さんは顔を上げ、興味なさそうに言う。
こんな紅葉さんだけど、一緒に過ごしてみようかな…?
紅葉さんの隣で、風景を眺めながら過ごした。紅葉さんと仲良くなれたかな…?
そういえば紅葉さんは本が好きだったよな…。
『シンセ界より』をプレゼントすることにした。
「ふーん。結構いいもの持ってるんだ。受け取っておくよ」
それなりに喜んでくれたようだ。
「…」
「…」
紅葉さんは、文庫本をじっと読んでいる。
話を読もうにも邪魔だと思われたらどうしようかな…。
そう考えているうちに、紅葉さんは本を閉じて立ち上がり、どこかへと向かう。
「も、紅葉さん?どこへ行くんだ?」
…紅葉さんを追いかけていく。
辿り着いた先は、お土産屋だった。紅葉さんは遊具のコーナーを物色していく。
「紅葉さん…何を探してるんだ?」
「…ボールだね。できれば固めがいいな。バスケの練習をするの」
彼女はいつも、バスケ熱心で読書熱心なんだな。
「鈴原、一つ言っていいかな?筋トレにランニング、シュートやドリブル、イメージトレーニング…
バスケの練習ってのは…一人でもできるんだよね、正直言って」
それ、それ、遠回しに邪魔って言ってるのかな…。あまり付いていかない方がよかったな…?
固そうな桃色のゴム毬を見つけ、傍に抱えたと思うとわたしの方向を向く。
「でもさ、バスケの『試合』ってのは一人ではできないんだよね」
「…えっ?」
「バスケってのは、自分や味方のチームだけでなく相手の動きを見ていかに勝利を掴むかのスポーツなんだ。
他の球技にだって言える。テニスもゴルフも、相手と点数を競わなければできない。例外はスカッシュやボウリングぐらいだと思うよ。だから、二人以上での練習も必要なんだけど…」
「もしかして…わたしに練習を手伝って欲しい…とか?」
「…別に。正直素人相手に練習なんて時間の無駄だし、一人での練習の方が気楽なんだよね…」
やっぱり、そう返すんだ…
「ってことで、私はどっかでドリブルの練習でもしとくよ。じゃあね」
紅葉さんはゴム毬を抱え、どこかへと去っていく。
本当に一人が好きなんだな、紅葉さん…
『バスケの練習は一人でもできる…と言い張る紅葉。
しかし、バスケの試合は一人ではできない…というのも彼女の持論である。』
心をヘトヘトにしながらも、次の目的地へと向かった…。
◆
【自由行動4】
「…」
黒木さんは、釣り堀を眺めながらじっとしている。
映画のネタでも練っているんだろうか。そんな彼女と一緒に過ごせるかな?
「…鈴原さん、どうしたの?今、精神集中してたのよね」
彼女は無表情で振り返る。とりあえず、一緒に精神集中することにした。
黒木さんと少し仲良くなってしまったようだ…。
映画のお供にいいかなと思い、『チュロス』をプレゼントした。
「あら!鑑賞中に中々いい代物じゃない。ありがとうね♪」
かなり喜んでいるようだ。こっちも嬉しくなるな!
「鈴原さん…一つ質問があるのだけど、いいかしら?」
「どうしたの?」
「…恋人はいる?」
恋バナか。彼氏はいないしいたこともないんだよね…
「いないけど…」
「私も恋人はいないわ。小学生の時に生徒10人くらいに手を出した担任の男や、体格のいい中学生に言い寄られたことはあるんだけどね」
…詳しいことは聞かないでおこう。
「ところで…好みのタイプはどんな人?」
「考えたことはないけど…常識のある人かな」
「じゃあ…その人と純粋に愛し合いたいと思う?」
「恋愛するならやっぱり好きな人としたいなとは思うけど…なんで純粋って強調するんだ?」
「では…『灰色のフレデリカ』は何を描いたか、鈴原さんは覚えているかしら?」
たしか『灰色のフレデリカ』は、冴えない青年とゾンビ化する女性の…
「…純粋な愛だったかな」
「その通りよ!怪物と化していく女を献身的に愛する男。反ゾンビ組織の攻撃にワクチンを探す旅…2人を隔てる様々な壁。
それを乗り越え、『彼や彼女だからこそ愛してる』と一途に想いあってこそ純愛なのよ」
たしかにラブストーリーには幸せな展開だけじゃなくて、色んな障害があった方がいいよな…
「鈴原さんももし好きな人と愛し合うのなら、あらゆる壁を乗り越える感じがいいと思わない?ま、ヒロインに自分を重ねている訳じゃないけどね、ゾンビになったら映画を作れなくなるし」
もしかして、黒木さんは純愛に憧れているのかな。彼女の意外な一面が見れた気がする…
「あと、映画の恋愛要素は飾り程度にしか見ていないわよ。恋愛をメインにするのは好きじゃないのよね。『灰色のフレデリカ』は私の無名時代の作品だから『女の子らしい映画を撮りなさい』ってスタッフの意見を聞いて恋愛要素を強めにしたんだけど。
最低映画賞で有名な『スイス手裏剣』からインスピレーションを得たから、できればゴア要素をもっと入れたかったわ!」
知らない映画だな…ゴア、つまり残虐要素ってことはもしかしてB級映画かな…?
とりあえず、ヒストリヱランドから出たら観てみたいな。『灰色のフレデリカ』…
『純愛に憧れる以外な一面あり?
でも映画の恋愛要素は飾り程度にしか思っていない。』
黒木さんと別れ、部屋に戻ることにした。
◆
ホテルに戻る前に、牧場の近くを通り過ぎる。
ふと牧場側を見ると、紅葉さんと…水筒を持った藍葉さんが一緒にベンチに座っている。
紅葉さん、こんな状況でも自主トレを欠かせないのだろうか。
「大丈夫だよ。この栄養ハーブドリンク、怪しいものは入っていないから…」
そう言って藍葉さんはカバンから取り出したふたつのコップに水筒の中身を注ぎ、片方を紅葉さんの眼の前で試飲する。
…何も起こらない。なんか安心だ。
それを見たのか紅葉さんは別のコップを受け取り、ドリンクを飲み干す。喉が乾いていたのか、それは一気に無くなった。
「味は悪くないね。ありがとう」
「これ、披露回復を早めるハイビスカスが入っているんだよね。ビタミンCやクエン酸が含まれててね…」
ハーブの解説を言いながら紅葉さんの身体をタオルで拭いていく藍葉さん。
「いや、そこまでしなくていいよ」
「汗で身体が濡れてたら風邪を引いちゃうかもしれないから、拭いておいた方がいいよ…」
…わたしは二人の邪魔にならないように、その場から去っていった。
二人の時間がどうか平和に終わりますように。
◆
夕食はビーフシチュー。ごろごろと切られた肉や野菜がルーと共に深めの皿に注がれている。野菜はともかく、肉は薄切りの方が好きなんだけど。
わたしは絹川くん、梅田くん、藍葉さんと同じテーブルに座っている。
「ついてねー…グリーンピース入ってねえタイプなのかよ…」
「グリーンピース、ほくほくしててボクも好きだよ。梅田くんも好きなの?」
「オレも同意見なんだなー…あの食感と苦味が嫌いって奴もいるけど…そういやモノクマが今朝『皆の好き嫌いが多いせいでカラフラに食わせる残飯が増える』って愚痴ってたんだよなー…」
…カラフラに少しだけ同情した。
こうしているうちに食事が終わり、わたしたちがホテルに戻ろうとした瞬間。二階堂さんが話しかけてきた。
「お前ら!明日暇か?一つ集まろうと思うんだけどさ…」
「予定はないけど…」
「明日さ、第二エリアの喫茶店で…『お茶会』しねえか?」
「…お茶会?あのお菓子や紅茶を食べながら、みんなで過ごすお茶会…?」
絹川くんは興味深そうに聞く。
「そうそう!あのお茶会だよ!雨崎と未隅も誘ってるんだ。スコーンってやつ作るんだってさ!
ほら、せっかく喫茶店やハーブが植えてある植物園もあるんだからさ、おしとやかに…紅茶とか飲んで…さ…」
二階堂さんははしゃぎながらも顔を赤くしている。
「参加するよ。ティーカップとかポットとかは用意した方がいいよね?」
「アタシが人数分用意するから手ぶらで来ていいぞ!服装もいつものでOKだ!」
…少し不安だけど、二階堂さんに任せよう。
「じゃあボクも行こうかな。スコーン、どんな味かなあ」
「ハーブティーならオレが協力するぞー。昔モテたくてハーブティーの本読んだことあるんだよなー」
「…私も作ったことあるんだよね、ハーブティー…とりあえず、行きたいな…」
席の全員が参加に同意した。
「よっしゃ、決まりだな!お茶会の時間は午後12時!終わったら釣りタイムだ!」
「釣りタイム!?」
帰ろうとしていた灰寺くんが踵を返し、こっちに向かってきた。
「お茶会ってなんだかよくわからないけど、楽しみやな!僕も参加していい?」
「勿論だ!大物釣りあげて魚拓でもとろうぜ!」
優雅なアフタヌーンティーの後に釣り…?雰囲気が変わりすぎてないか?
「大丈夫かな…釣り堀のお魚、確か外来種だったよね…?」
「今日は雲行きが怪しかったし、雨が降るんじゃ…」
藍葉さんとわたしはあたふたしながら告げる。
「食べるわけねーだろ!モノクマが電気ナマズとかフグとか入れてるだろうしな!あと雨が降ったら釣りはやめとく。あそこの釣り堀屋根とかねーもんな!」
その2匹は一緒の釣り堀に住めるんだろうか…
「うはー、期待してるで、お茶会!僕はレモンティーが好きやな!」
とりあえず、お茶会と釣りタイムの約束を皆でしながら解散した。
こうして、なんでもない時間は過ぎて行く。
わたし、いや、わたし含めた恐らく全ての人間が、これからも『なんでもない』ことを願いながら…。