・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。
以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。
9日目の朝。窓の外は曇り空。朝食はスープにサラダ、コーヒーにオムレツの定食だ。
わたしは…サラダを真っ先に食べる梅田くん、相変わらず行儀のいい絹川くん、オムレツを食べながら文庫本を読む紅葉さんたちと同じテーブルに座っている。
そうしているうちに食べ終わると、二階堂さんがわたしたちの席に寄ってきた。
「鈴原たちー、今話してもいいか?」
「いいけど…どうしたんだ?」
「藍葉とアタシ、ちょっと用事があるんで遅くなるかもしれない。まあ、出来るだけ早めに来るよ」
「そっか。お茶会の準備、遅くなる?」
「未隅と雨崎に先に話したら『二人で飲食物の用意しとくね』って言ったんだ。だから紅茶とか菓子とかはあいつらに任せて、アタシは食事が終わったら喫茶店の掃除しようと思ってる」
「手伝わなくていい?」
「大丈夫だって。あそこなら2時間ほどでマジキレイにできると思う!じゃあ、12時喫茶店に集合な!」
二階堂さんはその場を立ち去って行った。
「…一体、なんの用事だろう?」
「大丈夫だよ。何かびっくりするようなものを用意してたりして。こういうの…なんだっけ?」
「サプライズだね。でも、藍葉さんがそう言うのを用意するとは思わないな…」
心配するわたしと絹川くんを横目に、紅葉さんは聞いていないのか食器を片付けている。
◆
レストランから立ち去る。今は8時半。まだ時間はある。どこか散策しようかな。
◆
【自由行動5】
レストランで退屈そうにしながら、コーラとスナック菓子を口にしながら、購買部から持ってきたゲーム機で遊ぶ檀くん。器用だ。
「あ、あのさ…一緒に何か話さない?」
「何を?」
…こんな檀くんと…一緒に過ごせるかな?
「…ゲームの邪魔すんなよ」
「…わかったよ」
檀くんがゲームをしているのを、じっと眺めた。
檀くんと多少は仲良くなったかな…?
『超高校級の提督』だから、海のものが好きかなと思い『サンゴ石』をプレゼントした。
「…へー。なかなかいいもの持ってるじゃん。部屋に置いとこうかな」
一応は喜んで、くれたかな…?
「…もぐもぐ」
檀くんは、『ヤングチップス』とパッケージに書かれたスナック菓子を一人で食べている。
「…欲しいの?」
それを眺めてたら、檀くんがチップスを一枚わたしに渡してきた。
「!?あ、ありがとう…」
「一枚だけだよ。これ、お土産屋に一袋しかなかったんだし」
スナック菓子を口に入れる。噛むごとに芋とコンソメの味が広がる…。
そういや檀くん、見かけたときはいつもスナック菓子を食べてるけど健康に悪くないのかな…?
「あのさ、スナック菓子沢山食べて太りそうとか体を壊すとか…思ったことはない?」
「俺、あんま太ったことないんだよね。すごく痩せたこともないけど」
「『超高校級の提督』って、軍人みたいなもんでしょ?体は鍛えたりしてないのか?」
「たまーに筋トレする。月に1ヶ月、やるかやらないかかな」
…た、たまにしか鍛えないのか…彼が『超高校級の提督』と言われるのも、いわゆる天才肌ってやつのおかげなのかな…
「…檀くんは、何か努力したこととかないのか?」
「生まれてこのかたそんなのしたことはない。正直やればなんでもできたし、言えばお袋がなんでも買ってくれた。
駆逐艦の操縦もゲームで似たようなのやってたからできたんだよね。
正直我慢なんてのも嫌なのに、親父がいつも我慢しろだの言ってくるし…そのせいなのかアウリンコへ留学させられたんだけど。
ま、金髪美女いるし飯は美味しいしで結果オーライだったんだけどねー。ツバ吉さ、努力や忍耐なんて正直アホらしいと思わない?」
その時わたしは、檀くんに何かを感じたのか…
「あのさ、世の中には努力をやっても報われない人間や、努力すらできない人間が沢山いる。
努力ができる環境ってすごく大切なんだ。それが本気でできれば、達成感が得られるのも事実だ。
檀くんは、本気で何かをやったことないのか?」
あ、思わず口が開いてしまった。
場に沈黙が流れる。檀くんは心底嫌そうな顔でわたしを見つめる。
「…ツバ吉も親父と似たような説教するんだな。
努力も過程が間違ってたら水の泡になることあるし、達成感なんてのは成功すれば大体得られるもんだよ。じゃ」
檀くんは飲食物を持って、どこかへと消えていった…。
…もっと優しくすべきだったかな。
檀くんの考えが、少しわかった気がする…
『天才肌で努力、我慢といったものが嫌い。また、達成感の過程は彼にとって不要。説教はかなりの地雷。』
一人でじっとしているのもなんだか退屈なので、とりあえず部屋に戻ることにした。
◆
部屋の時計の時刻は午前11時を指している。窓を見ると、大量の雨が降り始めた。
お茶会前に雨、止むといいんだけどな。傘持ってないし。
とりあえず、持ち物の整理でもしておこう。
まず、クローゼットを開ける。私服であるシャツやボトムズ、コートの他に洋服用のブラシが吊り下がっている。
コートでもブラッシングしとこう。
何枚かのコートの埃を払っていくうちに、最後の一着になった。
…しかしこのブラシ、埃が取りやすいな。二階堂さんは使うんだろうか。
そう思ってるうちに、コートのポケットに何かが入ってることに気付く。
ポケットを漁るとチョコレート…ではなく、茶色いプラスチックで出来たような鍵が出てきた。
一体、誰が入れたんだ…?
「鈴原さん、それは『愛の鍵・バレンタインver』ってヤツなんだよ!」
「誰だ!?」
声の方向を向く。白と黒の小さなぬいぐるみ…モノクマだ。どこから入ってきたんだ。
「な、何をしに来たんだ!?まさかこれも動機ってやつじゃ…」
「違う違うよ!これは夢の中で『チョコレートハウス』に入れる不思議な鍵なんだ。
本当はメダルとか集めて手に入れる必要があるんだけど、小説媒体で必死にメダルを集める様を読者に見せてもつまらないでしょ?
まあそのうちあの人の妄想やこの人の色んな妄想が見られるようになるからね!ハァ…ハァ…ファイト!」
モノクマは興奮した様子でクローゼットの中へと入っていった。
「待て!モノクマ!」
クローゼットを覗く。何もない。どこかの物語みたいに異世界へと旅立っていったのか?
異世界へ追放されればいいのにと思いつつ、手のひらの上の『愛の鍵・バレンタインver』を眺める。
ゴミ箱に捨てるのも億劫なので、机の引き出しにしまっておこう。
そうしているうちに午前11時半になった。
ゲリラ豪雨だったのか雨は止み、雲から少しだけ太陽が覗いている。よかった。
遅れないうちに喫茶店へ向かおう。
◆
レンガ造の喫茶店・アザミに辿り着く。
ドアを開けるとレコードからドビュッシーの作曲したクラシック曲『月の光』が流れる。目の前のテーブルには、10人分はあるであろう山盛りのスコーンと人数分の皿とティーカップ、陶器のポットが置かれている。
椅子に座っているのは雨崎さんと未隅くん、絹川くんと梅田くんだ。
「二階堂さんと藍葉さんは遅れるって言ってたけど…これなら待てるな。ところでスコーン、結構多いんじゃ…」
「うふふー、ミーくんさ、誕生日の時はホールケーキを一人で食べるんだよ」
「特注のパイナップルケーキを食べるんだ!ラグビーといえばパイナップルのトロフィーだからね!
ちなみにスコーンの味はプレーン、パイナップル、紅茶、ベリー、抹茶だ。好きなだけ食べていいぞ!」
そうしているうちに誰かが喫茶店のドアを開けてきた。灰寺くんだ。釣り用具が入ってそうな大きなバッグをからっている。
「…これ、全部食べていいんか…!?」
目をキラキラさせ、スコーンを前に固まる。
「今は一個だけならいいんじゃないかな。たくさん食べていいのはお茶会が始まってからだよ。でも、みんなの分も残してあげてね」
「今日はロイヤルミルクティーとハーブティーを淹れてるよ。お砂糖やミルクも沢山あるからね」
「オレがレシピを教えたんだよなー!」
絹川くんと雨崎さんが笑いながら言う。灰寺くんも、もちろん嬉しそうだ。
「あわー!一個だけならいいんやな!じゃ、いただきます!…もぐ…うん…う…
う、うまか…!近所のケーキ屋のショートケーキもビックリや!お菓子の天下一武闘会で優勝できなあ!雨崎!未隅兄ちゃん!」
灰寺くんは満面の笑みでスコーンを味わっている。
「これ、2時間半かけて作ったんだよね。大量に作るの大変だったけど楽しかったよ!」
「はっはっは!梨々の作るスイーツは心が篭ってるからな!レシピ通り作るのも最高だ!」
未隅くんのそれ、褒め言葉になってるのかな…?
12時になった。お茶会がスタート…するはずなのに、二階堂さんと藍葉さんは相変わらず来ない。
「遅くなるって言ってたけど、流石に不安になってくるな…」
わたしたちは椅子に座りながら二人を待っている。
「確かになあ…二人とも時間はきっちり守るタイプだと思うけん心配やな…紅茶、飲んでいいんかな?」
「いいけど、二人が来るまで待っておいたほうがいいよ」
「スコーンは冷めても美味しいお菓子だけど、紅茶は冷めると濁るって本にあったんだよなー…」
…5分経った。流石に来るだろうと思っていたが、音沙汰がない。一体何をしているんだろう。
「…あの子たち、探してきていいかな?」
雨崎さんは青ざめた表情で呟くと、席から立ち上がる。
「ミーくん、一緒に行こう!」
「わかった梨々。他のみんなはこの建物を捜索してくれ」
雨崎さんと未隅くんはドアをあ開け、外へと出て行く。
辺りに沈黙が流れる。
「お、灰寺はオレと二階を探そう!スコーンは後だー!」
梅田くんは焦ったような表情で立ち上がると、スコーンをこっそり食べていた灰寺くんの手を引き二階へと上る。
場に残されたのは、わたしと絹川くんだけだ。絹川くんは素早くキッチンへと向かう。
「絹川くん!」
わたしも後を追うようにキッチンへと向かう。中を見てみると、先ほど未隅くんと雨崎さんが使っていたキッチン用具などが置いてあるだけだった。
絹川くんは冷蔵庫や棚を開けていく。
「…何もない…!」
わたしはキッチンから出て、喫茶店のカウンターや棚を調べる。食器が置いてあるだけでおかしな点は何もなかった。
「うわあああああっ!やめてくれぇぇぇぇぇっ!」
二階から悲鳴が上る。梅田くんの声だ。その直後に絹川くんがキッチンから出てきた。
「…二階へ上がろう!」
わたしたちは階段を登り、写真館へと向かった。
◆
「…助けてくれぇ…」
写真館では、梅田くんがうずくまっていた。
「梅田くん、どうしたの!?まさか…」
「絹川…鈴原…オレは大丈夫だー…それより…棒を持った男が…更衣室に…!」
「大丈夫か!?灰寺くんは…」
「すぐ…更衣室へ向かっていったんだなー…」
わたしは更衣室へと向かう。灰寺くんがハンガーに掛けてあるドレスや正装を調べている。
「灰寺くん!棒を持った男は見かけなかったか!?」
「…え?鈴原姉ちゃん、何言ってるんや?僕以外の人は見かけとらんけど…」
わたしは呆然と立ち尽くす。その瞬間、絹川くんの声がした。
「…水が溢れてきたよ!」
何事かと思い、わたしと灰寺くんは更衣室から出る。
現像室へのドアは開かれていて、なぜかそこから写真館に水が流れ込んでいた。
絹川くんは後ずさりしながら、絶望したような顔でしゃがみ込む。
「…みんな、気をつけて…!」
灰寺くんは真っ先に現像室へと入っていく。それについていくかのように、わたしもドアを覗き込む…
「…あ…………?」
一瞬、時間が止まる。
チャイムが鳴った直後に…モノクマの濁声が響いた。
「死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!」
…その場から、動けるはずがなかった。
現像室は窓が開かれており、天井には明かりがついている。
床は水浸しになっている。薬剤を洗う流すための蛇口から、水が出ているからだ。
水が満杯になった流し台には、警棒のようなものが刺さっている。
流し台の中に…彼女は入れられていた。
幻であってほしいという願いも叶わず。
『超高校級の科学者』藍葉美郷さんが、眠るように死んでいた。