ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


ダンガンロンパ・フラワーズ Chapter2「廻リ空転スル黙祷ノ薔薇」非日常編-捜査

「わーはモノクマと違って人の命を守るマスコット!捜査中に生きてる生徒が死んでしまったら元も子もないから助けるのだ!」

 

…現像室の窓から現れたカラフラの声が聞こえる。

 

「まず蛇口を閉めるのだ。で、次は水をこれで吸って…」

 

カラフラがどこからか掃除機のようなものを取り出し、床の水を吸う。

現像室のドアのすぐ近くでは、過呼吸状態の絹川くんがうずくまっている。

…その隣では、男がわたしに向けてナイフを向けている。

 

やめろ。

 

男は突進し、わたしのお腹にナイフを突き立てようとする。

 

やめろ…

 

体が勝手に動いたのか、男の攻撃を避け現像室から逃げ出す。

 

違う…

 

これは…………じゃない!

 

 

「…鈴原姉ちゃん!」

灰寺くんの声が聞こえる。彼は無事だろうか。

 

「灰寺くん…逃げるんだ……………が…!」

 

 

「鈴原姉ちゃん!ここには…………はおらへん!」

灰寺くんがわたしに向かって叫んだと思うと、部屋を見渡し小さなゴミ箱を見つける。窓を開け、ゴミ箱の中身を捨てる。

 

「鈴原姉ちゃん!絹川!梅田兄ちゃん!大丈夫か!?」気がつけば、男は消えていた。灰寺くんが声をかける。

「さっきの男…一体何だったんだー…?」屈みこんでいた梅田くんは顔を上げ、そっと立ち上がる。

「おそらく…幻覚じゃないかな。ほら、温室に幻覚作用のあるバラがあったじゃん…」

「それよりも…藍葉さんが…」

大分回復してきた絹川くんは、ドアが開かれた現像室の入り口を指差す。

 

死体発見アナウンス。流し台の中の白衣の少女。

これが意味するのは3つ…

 

藍葉美郷の死。起こって欲しくなかった第二の殺人事件が起きたこと。わたしたちの中の誰かが、彼女を殺したということ。

 

 

「いやー、ついに2回目のコロシアイが始まってしまったのですね!」

 

…モノクマがどこからか現れる。

 

「いやー、まさか藍葉さんがねぇ…着衣したまま濡れ濡れで棒を突っ込まれて…ハァ…ハァ…」

 

モノクマは両手に胸を当てて興奮している。まるで、藍葉さんの死を嘲笑するかのように…。

「モノクマ、何を言ってるんだよ!お前のせいでまた殺人が起きたのに…」

 

「あのさ、恨むなら殺人を犯したクロか、殺人を止められなかった自分か、神様にしてよね。それより今大切なのはわかってるよね?

ってことで、捜査の時のお約束アイテム!『カラフラファイル2』を電子生徒手帳に転送します!

ボクとカラフラは裁判の準備をしてるから、ゆっくり捜査していってね!うぷぷ…」

 

モノクマはスキップしながらどこかへと去っていく。

 

「ふざけるな…!」

「落ち着いて。モノクマに怒るのはいいけど、それは後にしよう」絹川くんが話しかける。

 

それでも、仲間が死んでしまったショックとモノクマへの怒りが抑えられない…

 

ふと、オルゴールペンダントを握りしめる。少しだけ落ち着いたような気がする…。

 

わたしはドアに近づき、もう一度床の乾いた現像室の中を見る。流し台の中のぐったりした藍葉さんの死体が目に映った。

彼女の命の灯火が消えたことを、何度も突きつけられる。

またあの学級裁判に、参加しなければならないのか…。

しかし、犯人を指摘できなければ犯人以外の全員が残酷に処刑されてしまう。最悪の事態を起こさないためには、裁判に挑むしかないのだ。

 

「藍葉さん、悲しげな顔だね…」

隣にいた絹川くんが手を合わせる。わたしも、ゆっくりと目を閉じ黙祷する。

「そうやな…藍葉姉ちゃんも無念やったんやろうな…」

「クロがこの場にいたら許せねーなー…」

わたしとこの場にいた一同が、悲しげに動かない藍葉さんを見つめる。

 

藍葉さんのために、そして生きるために捜査しなければならない。

 

生きなければ、何もわからないのだから…。

 

 

【捜査開始】

 

捜査を始めようとしたその時、階段を登る複数の足音が聞こえた。

写真館の入り口には…黒木さん、湖林くん、一ノ瀬さん、蒲生くん、紅葉さんが集まっていた。

「しかしまたコロシアイが起こったとはね…さて、どうやって殺されたのかしら」

黒木さんは冷静に電子生徒手帳を取り出し、カラフラファイルを開く。

わたしもコートのポケットの中の電子生徒手帳を取り出し、メニューの『カラフラファイル』をタップすると、藍葉さんの死体の写真と、死亡情報が写る。

『被害者となったのは藍葉美郷。

死因は感電によるショック死。

死体発見現場となったのは写真館内の現像室。

前頭部に殴打の痕が見られる。』

 

…あれ?

イヴァンくんの時の事件では書かれなかった死因が書かれている代わりに、死亡指定時刻が書かれていない…

時間が何か関係してるんだろうか?

「皆さん…一つ質問があるのですが…」

蒲生くんが手を挙げる。

「蒲生くん、どうしたんだ?もしかして時間について…」

「電子生徒手帳とは、持ち歩くものなのでしょうか」

「…えっ?」

「手帳って持ち歩くためにコンパクトサイズなんでしょ?生徒手帳ならなおさらだよ」紅葉さんは呆れた様子だ。

「僕の持っている『天の書』とは違い、電気製品なので…部屋に置いておくものかと思っていました」

「貴様はアホか?ズボンのポケットと頭におがくずが入ってるらしいな」

湖林くんは呆れた様子でため息をつく。

「すいません…裁判が始まる前に、少し取りに行こうと思います」蒲生くんは階段を降りていった。

 

「そうね…単独行動は危険だから、紅葉さんが蒲生を見張っててくれないかしら。あと、檀を探してきて」

「…私が?」黒木さんの突然の提案に紅葉さんは驚く。

「クロはどこにいるのか不明だし、一応ね?」

「仕方ない。あの二人、何やらかすかわからないからね…」紅葉さんはその場から立ち去っていく。

蒲生くんと紅葉さん、無事でいられるといいんだけど。

 

先ほど去っていった2人を除いた皆が、現像室に入っていく。

「藍葉は死体も媚び媚びなのですわね。濡れてる上に棒まで刺して…しかも通電だなんて…」

「一ノ瀬さん…この場に二階堂さんがいなくてよかったね。箒で殴られてるところだったよ」死体を見つめる一ノ瀬さんを宥める。

それにしても、『感電によるショック死』って…もしかして、この棒のようなもので感電させたんだろうか?

 

【コトダマ:カラフラファイル2】

『被害者となったのは藍葉美郷。

死因は感電によるショック死。

死体発見現場となったのは写真館内の現像室。

前頭部に殴打の痕が見られる。』

 

死体の第一発見者以外の皆が、証拠集めのために現像室から去っていった後。

「鈴原、絹川、ちょっといいかー?」

「…梅田くん?」

「一体どうしたの?」

「2人とも死体、調べるだろ?昔読んだ本に人が死んだらどうなるかがわかるコツ…みたいなのがあったんだよなー」

「いったいどんなのなんだ?」

「人の体は血の巡りがなくなる…つまり死ぬと体の下になってる場所の表面に『死斑』って痣のようなやつが出てくる。例えば仰向けの死体は背中に、首吊り死体は足あたりにとかになー。

あと、これで死亡推定時刻がわかることが多い。死斑は死後10分から20分ほどであらわれて2、3時間で大きくなるんだよなー」

「こんな形で知りたくなかったけど、少し勉強になるな…ありがとう」

梅田くん、そんなことまで知ってるのか…『超高校級の図書委員』だからこそそういう知識も持ってるのかな。

 

「あと、絹川に一つ言いたいのは…『ピンチの時だけじゃなくて、自分の大切な人はいつでも守る』ってことだなー」

「…守る?」

「そうすれば大切な人には信頼されやすくなるし、いざという時にスムーズに助けられる…爺ちゃんが言ってたなー」

「梅田くんありがとう。その言葉、大切にするよ」

自分の大切な人はいつでも守る。

確かに都合のいい時にだけ助けるのと、いつでも大切にするのとは違うだろうな、と思った。

でも、なんで絹川くんにだけ告げたんだろう…?

 

【コトダマ:死斑】

人間は死ぬと体の下になっている場所の表面に死斑が現れる。

死斑は死後10分から20分に表れ、2、3時間で大きくなる。

 

 

現像室を見渡す。遮光のために黒く塗られた引き違い窓は…大きく開かれている。

窓の下を見ると、細いコの字型のステンレス製の棒が落ちてあった。

この形…タオル掛けかな?流し台の近くの壁を見てみると、二つの穴が空いている。

犯人はこれを壁から外して、藍葉さんの頭を殴打したんだろうか?でも、血液は付着していない。

 

「ってことで、この現像室の監視はオレと灰寺がやるんだなー」

「わかったで!まずは藍葉姉ちゃんが苦しくないようにあの変な棒を抜いて…」

「それはボクがやるね」

「…はい」

絹川くんは黒い棒を流し台から抜き、それのONになっているスイッチを切る。

「…何も起こらないなあ」

「壊れてるんやないかな?ところでこれ、一体何だろう…?」

「電気警棒かもなー。これは多分先に電流がバチバチってなるタイプのやつだ」

普段は護身用で使われそうだけど、もしかして、これが凶器なのかな…?

 

流し台の排水溝には蓋がされているが、カラフラが水を吸ったのか水は貯められていない。

 

【コトダマ:電気警棒】

流し台に差し込んであったもの。

死体発見時にはスイッチがONになっていた。

 

【コトダマ:現像室の窓】

遮光のために黒く塗りつぶされた引き違い窓。

死体発見時には大きく開かれていた。

 

【コトダマ:タオル掛け】

現像室の窓の下に落ちてあったステンレス製のタオル掛け。

血液のようなものは付着していない。

 

 

「ごめんなさい、藍葉さん…少し辛いだろうけど…」

絹川くんが頭付近を触り、その後は手と足をなるべく服が脱げないように見る。

「…頭が腫れているし、両手首に細いもので縛られたような痕があるね」

そういえばカラフラファイルにも『前頭部に殴打の痕が見られる』って書いてあったな…。

「鈴原さん、一つお願いがあるんだ…」

「どうしたんだ?」

 

「…藍葉さんを、少し脱がせて欲しいんだ」

「え」

「頭以外にも傷があるかもしれないし、梅田くんが言ってた死斑…もあるかもしれないし…ボクが脱がせたら、藍葉さんも辛いだろうから…お願いしていいかな?」

「だったらいいよ。男子のみんな…後ろを向いててくれないかな?」

「鈴原が言うんなら仕方ないんだなー…」

「よっしゃ!後ろを向くだけでいいんやな!」

…こうして、わたしが藍葉さんの検死の続きをすることになった。

 

セーラー服を捲る。布は水で濡れているせいか重く冷たい。

お腹あたりに細いもので縛られたような痕がある。

後は…ポツポツとした赤紫色の斑点…おそらく死斑が身体中に現れているだけだ。

白衣のポケットも探る。片方には何もなく、もう片方には四つ折りにされた小さなメモが入っていた。

「終わったよ!」わたしは藍葉さんの服を素早く整え、みんなに呼びかける。

「梅田くん、藍葉さんの身体中に、ポツポツした赤紫の斑点があったんだけど…どうやったら出るのかな?」

「体の下らへん以外にそういった死斑があるなら、それは死体を運んだ証拠なんだなー」

死体が運ばれた?ってことは…殺人現場はもしかして…

 

【コトダマ:死体の縛られた痕】

死体の両手首と腹部に、細いもので縛られたような痕があった。

 

【コトダマアップデート:死斑】

人間は死ぬと体の下になっている場所の表面に死斑が現れる。

死斑は死後10分から20分に表れ、2、3時間で大きくなる。

藍葉の死体にはポツポツとした死斑が身体中に表れていた。

 

 

ポケットの中に入ってた紙を開く。『持ち物リスト』と書かれているが、ほとんど滲んでいない。耐水ペーパーなのかな?

リストの中身は…どんなのだろうと見てみる。

 

・ライター

・ビーカー

・フラスコ

・ガラス棒

・塩酸

・電気警棒

・3号テグス

・50号テグス

・メモ帳

・文房具

・レシピ本

・折りたたみ傘

・フリーザーバック

・ライト 

 

…こんなに入るのか。それにしても、藍葉さんの死体はいつも付けているカバンを身につけていない。一体どこに?

「あの、テグスの3号とか50号って…」

テグスこそ知っているが、釣りをした知識も記憶もないわたしは戸惑う。

「僕に任せてな。テグスってのは号数が大きいほど太くて、重いものを釣り上げられるんやな。

50号ほどになるとカジキやマグロを釣るのに使われるんや。バス釣りとかで使われるのは3号やな」

「確かカジキやマグロって大きい魚だろ?どれくらいの重さなんだ?」

「例えば…クロカジキなんかは軽くて90kgくらいやな」

「解説ありがとう、灰寺くん」

「えへへー!なんかマグロのステーキが食べたくなって…って言ってる場合やないな」

灰寺くんは我に返ったのか真顔になる。

 

現像室での捜査も終わったし、写真館へ向かおう。

 

【コトダマ:持ち物リスト】

藍葉の白衣のポケットに入っていた持ち物リスト。

リストに書かれていた持ち物は以下。

・ライター ・ビーカー ・フラスコ ・ガラス棒 ・塩酸

・電気警棒 ・3号テグス ・50号テグス ・メモ帳 ・文房具

・レシピ本 ・折りたたみ傘 ・フリーザーバック ・ライト

 

【コトダマ:テグス】

テグスは号数が大きいほど太く、重いものを釣り上げられる。

50号のものは90gもあるクロマグロを釣ることができ、3号のものはバス釣りに使われる。

 

【コトダマ:消えた藍葉のカバン】

藍葉がいつも身につけているカバンだが、死体は身につけていなかった。

 

 

写真館のゴミ箱を覗く。先ほど捨てられたのか、中身は空っぽだ。

「そういや灰寺くんは…どうして中身を窓から捨てたんだ?」

「中に一本バラが入ってたんや、名前は忘れたけど。確か…」

「…ケルブレムだったね」

「梅田兄ちゃんたちがうずくまっているのを見て、温室に寄ってきた時に危険だ!って書かれてあったのを思い出したんや。もしかしたら、あのケルなんとかかもしれないって」

 

ケルブレム。わたしたちに危険な幻覚を見せるバラ。あれを室内で使われては大変なことになる。ガラスケースの中に入れてあるのも当然だろう…。

 

と思っていると、見たくもない白黒の生き物と台車に乗せられた花がやってきた。

 

「おはろんぱー!って今日はこんにんぱだったのだ」

「挨拶はどうでもいいだろカラフラ!それよりオマエラにケルブレムについて悲しいお知らせがあります!」

 

「…おい、早めに済ませてくれ」

 

「この建物の近くに置いてあったケルブレムは…神が見えたら非常に危険なのでカラフラが火炎魔法で燃やしておいたんだよ。

例えばファイ…ガーッ!ってね!」

「説明は以上なのだ。アナタラが死んでしまったらわーのコスプレを見てくれる人がいなくなるから絶対に死なないでね!」

「じゃ!バイバイクマー!」

 

一匹と一輪はどこかへと消えていった。藍葉さんは、魔法は信じないんだろうな…。

しかし、証拠品を燃やすだなんて。都合の悪いメモでもあったのか…?

 

写真館のケルブレム。閉じてあった現像室のドア。

現像室の窓さえ開いていれば密室になった筈。なぜこんなことを…?

 

【コトダマ:ケルブレム】

摘まれてしまうと数分ほどで周囲の人間の脳に幻覚作用が引き起こされるバラの一種。

なぜか写真館のゴミ箱に入ってあった。その後、カラフラによって処分される。

 

 

更衣室にも入ってみたが、衣装が飾られているだけで変わった点は何もなかった。

窓も閉ざされている。梅田くんの見た男はやはり、幻覚だったのだ…。

後は…一階の喫茶店も見てみよう。

 

 

喫茶店。灰寺くんの私物である釣り道具が入っているバッグと、彼が少しだけ食べたおかげで減っているスコーンが置いてある。

紅茶も捜査のせいで冷めてしまい、ゆっくりと飲めないのが悲しい。

「…スコーン、勿体無いね」

絹川くんが山盛りのスコーンを見つめる。

捜査が終わったらまた食べられる…なんて無神経なことは言えない。だって、この下には藍葉さんの死体があるから。

 

キッチンも見てみたが、棚や冷蔵庫を見ても先ほど見たのと同じ様子だった。

 

もうこの建物には用はないだろうから、行方不明の二階堂さんを探しに行こう。

 

 

もはや動物がいないのがお馴染みになってきた牧場。

牧場は「感電注意」と看板に書かれた電気柵で囲まれている。電気柵は雨が降ったせいか濡れており、触れただけで感電しそうだ。

 

納屋に向かってみると、驚きの光景が広がっていた。

「…誰だ?」

「わ、わたしだよ!って…未隅くん?」

「鈴原さんか。怪しい人間じゃなくて良かったよ。そういえば二階堂さんが、ここで倒れてたんだ」

 

奥を見てみると…木製の椅子に座っている二階堂さんと、彼女を介抱する雨崎さんがいた。

二階堂さんは頭に包帯を巻いている。犯人にでも襲われたのか…?

「…ごめん鈴原。せっかくのお茶会、主催なのに台無しにしちまったみたいだな」

彼女は申し訳なさそうな顔をしながら言う。

「別にいいよ。ところで頭の包帯、どうしたんだ?」

「二階堂ちゃん、ここで倒れてたの。必死に呼びかけてたら起きたんだよ」

雨崎さんはケースに入れられた包帯を持っている。包帯は彼女のものか。

「…実は10時45分くらいまで喫茶店と2階の写真館を掃除した後、11時に藍葉とここで出会って、それから色々話してたんだ」

「待ち合わせ…会話の内容は思い出せるかな?」

「うーん…アタシ、記憶力ねえからよく思い出せねえけど…確か釣りとか大雨とか以外には…『人に会いたい』みたいなこと言ってたような気がする」

 

人に会いたいって…一体誰に…?

 

「んで、藍葉と色々駄弁っている途中にさ、頭にすげえ衝撃が走って、それから目の前が真っ暗になったんだよな…。

殴ってきたやつの正体もわからないなんて、『超高校級の美化委員』失格だよなあ。後は雨崎の言う通りだ」

なるほど。11時くらいに気絶させられて、1時間くらい気絶してたのか…。でも、襲った人物がわからないのと美化委員は関係ないと思う。

「後…あたしとミーくんは9時半まで温室でハーブを摘んでて…その後喫茶店で9時半から11時半までスコーンを作ってたよ。後は、ハーブティーのブレンドと喫茶店の飾り付けかな」

「僕と梨々が証明しよう!喫茶店とそこのキッチンが証拠だ!」

11時半までアリバイがあるのか。それから30分後にも

「もう一つ聞くけど…二階堂さんは、喫茶店で誰か入ってくるのを見なかったか?」

「未隅と雨崎以外は誰も入ってきてねえな。あいつらずっとキッチンに籠ってたし…」

 

これで、ここにいる人物のアリバイは証明できたみたいだ。

 

入り口近くの用具入れも見てみる。さまざなま道具が入っている中、入っている木製のスコップが目に付く。

整頓されている他の道具と比べて乱雑に置かれたスコップ。

もしかして、犯人はこれで藍葉さんや二階堂さんを襲撃したのか…?

 

 

【コトダマ:電気柵】

牧場を囲む柵。『感電注意』と書かれた看板が置いてある。

雨で濡れており、触れただけで感電しそうだ。

 

【コトダマ:二階堂の証言】

二階堂は10時45分まで喫茶店と写真館を掃除していた。なお、その間未隅と雨崎以外の人物は建物に入ってきていない。

11時に納屋で藍葉と出会い、会話している途中で襲撃され、気絶。

1時間後に未隅と雨崎に起こされた。

 

【コトダマ:未隅と雨崎の証言】

未隅と雨崎は9時半まで温室でハーブを摘み、

9時半から11時半まで喫茶店のキッチンでスコーンとハーブティーを作っていた。

 

【コトダマ:木製のスコップ】

牧場の納屋の用具入れに入っていた木製のスコップ。

用具入れの中に乱雑に置かれていた。

 

 

温室に入る。白い噴水が中央にあるが、相変わらず水は流れている。

ロッカーの隣にある赤く美しいバラ、ケルブレムが入っているケース。その中身は…

「…1本しかない…?」

2本のケルブレムが消えていた。

そのうち1本の茎はハサミで切られたのか整った断面をしており、もう1本は乱雑に積まれたのかぐにゃりとした断面だ。

「そういえば、灰寺くんは幻覚を見せたのは1本だけって言ってたよね…」絹川くんが考察する。

「1本だけでも十分怖い幻覚が見れたんだけどね。それにしても、もう1本はどこ行ったんだろう…?」

 

 

【コトダマアップデート:ケルブレム】

摘まれてしまうと数分ほどで周囲の人間の脳に幻覚作用が引き起こされるバラの一種。

なぜか写真館のゴミ箱に入ってあった。その後、カラフラによって処分される。

温室のケースの中に入っていたのは3本だけだったが、そのうち2本が行方不明に。

 

 

温室のもう1つの扉から外へ出る。レンガの井戸に近寄ろうとすると…

「うわ!?」

…井戸の付近はゲリラ豪雨のせいか、土がぬかるんでいるようだ。足跡がついてしまった…

と言うか、すでにたくさんの足跡がある。

「だから気をつけろと…」声の方向を向くと、湖林くんだった。隣には一ノ瀬さんもいる。

「あら?鈴原はあの雨が降っている途中部屋で美少年もののビデオでも見ていましたの?頭の中が痴態だらけで足元に気が付きませんでしたのね」

「違うよ。コートをブラッシングしてた」

「絹川様に会うために美少年でニタニタしながらブラッシング!?ふざけないでくれます!?」

「だから違う…」

 

一ノ瀬さんは置いといて。井戸付近にはチェーンソーと1mほどの大きさの看板が転がっており、井戸には木製のスキが立てかけてある。

「そのチェーンソーはコードレス式じゃ。なぜかスキと一緒にそこらへんに置いてあったんじゃが…感電したら怖いんで触れとうない」

チェーンソーのスイッチは…よく見たら『ON』になっている。だが、動く様子はない。壊れているんだろうか?

湖林くんの言う通り、触れない方が良さそうだ。

木製のスキも外に放置されていたのか、濡れた状態で置いてある。牧場の納屋のスコップみたいに、ロッカーに置いてあるのが普通だよな…?

アルミ製の看板には可愛らしい緑の文字で『楽しいガーデニング』と書かれてある。

「この看板も水たまりができているけど…なんでここに転がってるんだろう?」

とてもここに置いておくとは思えない看板だけど…?

 

井戸の中を覗く。梯子が付いてある以外は何も見えない。入るのは危険そうだからやめておこう…。

「そういえば、黒木がライトを持って中に入って行きましたわ。そのあと妖怪にでもなって呪いのビデオに出演するんですわね?

いや、あの女の場合はあっち系のビデオのがお似合いですわ」

一ノ瀬さんが悪態をつく。

「そういえば黒木さんと檀くん、どうしているんだろう…?」

2人を心配する絹川くん。わたしも正直心配である。

 

 

【コトダマ:壊れたチェーンソー】

温室近くの井戸付近に落ちていたチェーンソー。

雨のせいか濡れており、スイッチが『ON』になっているのに動いていない。

 

【コトダマ:木製のスキ】

温室近くの井戸に立てかけてあったスキ。

雨のせいか濡れている。

 

【コトダマ:ぬかるんだ地面】

温室近くの井戸付近の地面はぬかるんでおり、歩くと足跡がつく。

 

【コトダマ:看板】

温室近くの井戸付近に落ちていた看板。

『楽しいガーデニング』と緑の可愛らしい文字で書かれてある。

 

【コトダマ:井戸の中】

井戸の中には梯子がついているが、中は真っ暗で何も見えない。

 

 

井戸から離れ、釣り堀へと向かう。本当なら、ここで釣りをする予定だったんだけどな…。

釣り堀を調べているのは部屋から戻ってきたであろう蒲生くんと紅葉さん、そして…黒木さんだ。

「黒木さん?確か一ノ瀬さんが言ってたよね、井戸の中に入っていったって…」

「そうだけど。それがどうかしたの?」

「鈴原嬢、実は」蒲生くんが何かを言おうとするが、黒木さんが口を手で閉ざす。

「ここから先は言わないでね。裁判、つまらなくなるし。紅葉さんもよ?」

「私も巻き込むんだね。映画監督だけにネタバレは禁句って奴?」

三人の他愛ない会話を聞いているうちに、絹川くんが釣り堀の対岸へと向かっていった。

そして、対岸にある物体…マンホールの蓋を少しだけ持ち上げる。

「鈴原さん!このマンホール、蓋が開くよ!」

絹川くんが大きな声を出す。黒木さんは、蒲生くんの口から手を離し固まる。

「…」

黒木さんは無言だ。いわゆる小さなネタバレをされたのが悔しかったのだろうか?

 

【コトダマ:マンホール】

釣り堀の近くにあったマンホール。

蓋を開けることができる。

 

対岸にいる絹川くんが、マンホールの蓋をさらに持ち上げようとする。

その瞬間…。

 

『ピーンポーンパーンポーン…』

 

「にゃー。最近というか昔からネコが流行ってるんだってね。なんでだよ。クマは大統領もびっくりの可愛さなのにさ」

「モノクマ、それはネコの方が小さいからなのだ。小さくて愛くるしいモノクマやわーも愛されモテカワマスコットになれるのだ」

「ところで、なんでこのヒストリヱランドにはボクのグッズがないんだろーね。ってことで、第一エリアの時計塔前に集まってきてくださーい!」

 

モノクマとカラフラの放送が流れた。

「どうしよう、まだマンホールの中に入ってないのに…!」

絹川くんは立ち上がり、諦めたような表情でこちらへと向かう。

マンホールの中身を見られなかったのは少し悔しいけれど…処刑を受けるかもしれないから、時計台へ急ごう。

 

 

こうして、13人の生徒が時計台の前へと集まった。無論、捜査時に見かけなかった檀くんも含めてだ。

檀くん、一体どこへいたんだろう…?

 

こうして、時計塔の重く冷たい扉が開かれる。

 

「さあ!オマエラが大集合したところでいっちょ裁判場へと向かいますか」

 

エレベーター内のモノクマとカラフラが呑気に声をかける。

わたしたち13人の生徒たちは、ある者は静かな足取りで、ある者は急ぐようにエレベーターへ乗り込む。

 

 

静かなエレベーターの中、二階堂さんがわたしに話しかける。

「アタシ、藍葉を殺した奴を絶対許せねえよ…こういう方法でしか藍葉の魂が報われねえのなら、せめて頑張って、考えて、この裁判を生き残りてえな…」

「…わたしも、生き残りたいよ」

 

しかしこの裁判を生き残るということは、犯人を見るも無残な『処刑』によって殺すこと。

「残酷なやり方でも、藍葉が望んでいなくても…アタシは、この裁判で勝ちてえんだ」

 

藍葉さんはわたしの友人だ。だから、わたしも犯人を許すことができないだろう。

でも、わたしたちを殺し合わせている黒幕は…もっと許すことができない。

 

絶望しない。それが、黒幕へのせめてもの反抗なのだ。

 

 

 

そう考えているうちに、エレベーターの扉が開かれた。

 

 

「では、自分の名前が書かれた席に立ってくださいなのだ」

 

16の陳述台が並べられた裁判場。

バニラさんと藍葉さんの席の遺影には、それぞれ花が飾られている。

 

「死んだからって仲間はずれにするのは可哀想なのだ!わーが特別に栽培した植物を飾っているのだ!」

 

カラフラが得意げに言う。

どこまでも優しいのか優しくないのかわからないマスコットだな…。

 

 

 

 

 

『超高校級の科学者』藍葉美郷さん…

弱気だったけれど、いつも慎重派で、皆に優しかった少女。

 

彼女の命を残酷な手段で奪った犯人。

 

 

犯人を暴き、処刑しなければ、私たちは生き残ることができない。

 

 

絶望を、希望の弾丸で、撃ち抜かなければならない…。

 

 

だから、わたしたちは信じ、疑うのだ。

 

 

 

 

…これは生き抜くか死ぬか、命がけの裁判なのだから。

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