ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

・この作品については
  ・Chapter2の被害者・犯人の自由行動
  ・特殊イベント
 の内容が含まれています。ネタバレにご注意ください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


Chapter2「廻リ空転スル黙祷ノ薔薇」特別編

 

 

 

 

 

 

 

【被害者 自由行動】

 

「うう…どうしよう…私の研究室…大丈夫かな…」

藍葉さんが何かを心配しているようだ。

「そんなに心配しなくていいよ。一緒に脱出する方法を見つけよう?」

「…あの、言っていいかな…?」

「?」

「もし脱出口が見つかったとして、そこにトラップがあったら…鈴原さんはどうするの?

脱出口が偽物だとしたら?マフィアが待ち構えていたとしたら?

私たち、脱出できずに捕まるか死んじゃうよね…?」

「その時は、最善の方法を考えた方がいいと思う。あと、準備かな。」

「準備?護身用にゴルフクラブちゃんとか装備した方がいいかな?武器も作った方がいいかも。

女性でも扱える銃みたいな飛び道具ちゃんとか、対マフィア用には必要だよね…?

あと、脱出口までの道とかが迷宮みたいな道だとしたら目印をつける用のペンキちゃんやテープちゃんもいるよね?

うう…またカバンに物が増える…」

何かに『ちゃん』を付けるのはともかく、彼女自身は石橋を叩くタイプ…みたいだ。

「もし物が多くなった時はみんなで持った方がいいんじゃないかな」

「それもあるよね…でも雨崎さんや絹川君に重いものを持たせるのも…」

「そこまでは考えてなかったな…」

「やっぱり未隅君や湖林君が先頭がいいかな?いや、力が弱い人が先頭の方がいいのかな?

…ああ、また考えすぎちゃったよ…!イライラさせちゃう、よね…?」

…彼女は、考えすぎてしまうタイプみたいだ。というか、『石橋を鉄橋に改造してランマーで叩いてから渡るタイプ』だ…。

「やっぱりまた作るしかないのかな、アレ…」

「アレって?」

「体にかけると10分間だけ動けなくなる薬品ちゃんなの。水鉄砲がお土産屋にあったからその中に入れればいいし。

昔暴漢に襲われたとき、カバンの中からそれを取り出してかけて警察に通報したんだ。」

随分とすごい薬品を作るんだな…その用心深さは、彼女の科学への関心にも繋がっているのかな。

「もし脱出できたとして…出所した暴漢が復讐しにまた来たら…その時はスタンガンちゃんか小型火炎放射器ちゃん持っていった方がいいかな…」

「火炎放射器は威嚇にはいいんだろうけどやりすぎなんじゃ…」

それからわたしは、藍葉さんをしっかり慰めた…。

 

『用心深く、石橋を鉄橋に改造してランマーで叩いてから渡るタイプの藍葉。

しかしその性格が彼女の科学への関心へと繋がった。』

 

 

 

 

藍葉さんは、何かが書かれた紙を見つめながら、カバンの中身を探っている…。

「ちょっといいかな。今、何をしてるんだ?」

「…えーと、メモ帳ちゃんを探しているの…」

メモ帳か…。藍葉さんなら絶対に持ってそうだけど…もしかして、落としてしまったのかな?

「表紙の青い撥水性のものなの。ヒストリヱランドで気づいたこととかを書いているんだけど…もしかして、落としちゃったのかな…?」

藍葉さんはソワソワした様子で周りを見渡している。

「あの、その紙は…?」

「…カバンの中に何を入れたかを書いたリストなの」

「カバンの中、一体何を入れてるんだ…?」

藍葉さんは無言でリストを渡してきた。

ビーカーやフラスコ、リップクリームの入ったポーチ。

遭難した時の緊急連絡先を書いたカード、ビスケット。

五色ペン、英会話の本、ライト、マッチ、ソーイングセット…。

大きなカバンに、結構色んなものを入れているらしい。

「とりあえず、遭難したり誘拐されてもいいようになんでも入れてるんだよね…スマホや財布はいつも入れているけど、モノクマの取られちゃったし…」

「でも、備えあれば憂いなしって言うし、準備は大切だと思うよ。わたしも天体観測の時は防寒用のカイロとか色々持っていくし」

「鈴原さんもそうなんだね、安心したよ。クラスメイトからは考えすぎって言われるけど…」

「じゃあ、メモ帳を探しに行こうか?」

「あ、メモ帳ちゃんのことから話が脱線しちゃった…!探そうと思ってたのに…」

「思い出せたからいいよ、一緒にメモ帳探そうか?」

「いいよ。でも、絶対に離れないでね。単独行動は怖いから…」

 

それからわたしたちは、様々な場所でメモ帳を探した。

街路樹を揺らしたり、お土産屋を隅々まで見ているうちに…ウォータースライダーの近くで発見できた。

「あぁ、メモ帳ちゃんだ!良かった!水の中に入ってたら濡れながら取りに行く羽目になって…それで風邪を引いて…そこを殺しを企てようとする人間に…うぅ…」

藍葉さんはメモ帳の中のページを確認すると、大切そうにカバンの中へと仕舞っていった。

本当に良かったけど、ホテルの部屋は指紋認証式だから、勝手に入る人はいないと思う…

「でも、万が一のためにトラップちゃんは仕組んでおこうかな…」

看病している人がうっかりトラップを踏んでしまったら大変なことになりそうだ…

藍葉さんが、これ以上物をなくさないことを願っておこう…。

 

 

『いつも持ち歩くカバンには実験道具だけでなく様々なものがいっぱい。

コロシアイの時も怯えているのか、自室にトラップを仕込もうと考えている…。』

 

 

 

 

「藍葉さん、天文学のことには詳しい?占星術とかが有名だけど…」

「…」

藍葉さんは、黙って嫌そうな顔をしている…。

「ごめんね。占いにはあまりいい思い出がないんだ…」

「いや、こっちこそごめん」

心配性だから占いには最低限頼ると思ってたんだけど、違うみたいだ…。

「実はお父さんがあるタロット占い師と仲良くなって、この高校は悪魔の正位置とか言われて志望校を変えられそうになった上に、

ラッキーカラーだからって全身黒い服を着せられそうになったんだよね。黒い服は夜道で事故や犯罪に遭いやすいのに…うう…」

こっちもお父さんで苦労しているんだな…そうなると…

「お父さん…オカルトを信じやすかったりする?」

「そうなんだよね。お父さん、科学だけじゃなくてオカルトも研究しているの。」

親子揃って科学者なのか…。

「例えばUMAにハマっていた頃は家中にびっしり怖いUMAの写真を貼ってたし、黒魔術にハマっている時は毎日鶏料理を食べさせられたんだよね…」

ニワトリを生贄にしたのかな。それにしても、儀式に使った動物を娘に食べさせるのか…。

「色々あって、信じなくなっちゃったんだよね。オカルトも、占いも…。女の子向けの雑誌の占いすら怖くなっちゃった。

そうしているうちに…結局、最後に追い詰められた時に信じられるのは私だけなんじゃないかと思えてくるんだ…」

「でも、それって自分を信じることができるってことじゃないかな?」

「自分を…信じる?」

「孤立無援の状態で自分すら信じられないのなら、もう誰も味方がいないのと同じだろうし。そういうの、ある種の強さだと思うんだ…」

「そうなんだ…私の、強さ…」

藍葉さんは少し思考したようなそぶりをした後、こちらを向いて…

「ありがとう…気が軽くなったみたい」

「いや、それほどでもないよ。でも…安心できたようで良かった」

 

藍葉さんがこれからも、自分を信じることができるようになればいいな…。

 

 

『父との因縁ゆえか、占いなどのオカルトは信じない。代わりに自分を信じることはできるようだが…。』

 

 

 

 

「私…ペットボトルロケットちゃんを作ろうと思うんだ…」

「ペットボトルロケット?確かにお土産屋にあるもので作れそうだけど…」

「救援メッセージを書いたロケットちゃんを壁の外に飛ばしたら、外にいる誰かに助けを呼べるんじゃないかなって思うんだ…

でも、モノクマやカラフラが怒らないかな…?」

「確かにそうだけど、やってみなければどんな物事も意味はない…と思う。良かったら手伝おうか?」

「ありがとう!じゃあ早速作ろうよ!」

 

それからわたしたちじゃロケットの材料をお土産屋で集め、レストランで作ることにした。

ロケットの部品を作っている途中、気になったことがあったので聞いてみることにした。

「どうして、ペットボトルロケットを作ろうと思ったんだ?藍葉さんなら気球とかも作れそうだけど…」

「お父さんから、ジェット機の飛ぶ高さまで飛ばせるペットボトルロケットちゃんの作り方を教えて貰ったんだ。」

ジェット機の高さまで…それならヒストリヱランドの壁の向こうにも飛ばせそうだ。

「お父さんは優秀な科学者で、大学教授なの。何処か騙されやすかったり、様々な儲け話に弱い人だけど…」

頭良さそうだけど、明らかに残念な人っぽいな…。

「つい最近じゃ宝くじの当選番号を予測するマシーンを買って見事に外したり、怪しげな団体の特殊な遺伝子操作で身体能力を上げるプロジェクトなどに投資してきたの。

こうして借金を積み重ねてきたために、親子揃ってヤクザに追いかけ回されてきたんだ…」

そこまで酷い目にあってきたのなら、用心深くなるのも当然かもしれない…。

「ある日、お父さんが2日暗い帰ってこなくなったの。不安になったから100通もSMSを送ったよ。もしかしたら、マフィアや宗教団体に誘拐されたかもしれないと考えたんだろうね…

お父さんは自分の研究所で残業していただけなんだけど。その後、メンタルクリニックを受診することになったんだ…」

メンタルクリニックは信じるんだね、藍葉さんのお父さん…。

でも、それだけ二人はお互いを心配しているってことなのかな。

 

そうやって話しているうちに、ロケットが完成した。

「ああ…日が沈む前に作れて良かった!これも鈴原さんのおかげだよ!」

その後、噴水広場でロケットを飛ばすことになったけど…突如現れたカラフラに止められ没収されてしまった。

 

わたしと藍葉さんは、少し落ち込みながら部屋に戻った…。

 

 

『父親は優秀だが、どこか騙されやすい大学教授。反面教師にしてきたと同時に、なんだかんだで心配しているように見える。』

 

 

 

 

「あのさ、藍葉さんのお母さんはどうしているんだ?話を聞かないけど…」

「…記憶にないんだよね」

記憶にないって、どういうことだろう?

「でも、お母さんは生きている。私はそう感じるの…」

藍葉さんが根拠のないことを信じるとは思えない…一体どうして?

「家には倉庫があって、その中に空気の抜かれたボールが入っていたんだ。

運動ができない私がボールを持つのかと思っていたんだけど…少し気になって、ボールに自作の遺伝子検査薬ちゃんをかけてみたら、自分の遺伝子と近い反応が現れたの。

だから、生き別れのお母さんかきょうだいがいるかもしれないと考えたんだよね…」

「お父さんにはそのことを話したのか?」

「話したんだけど…ボールを没収されて『このことを忘れなさい』と言われたんだ。

関心なさげな口ぶりだったけど、もしお母さんが一方的に私を捨てて、何処か行ってたらどうしよう…って、その時思ったんだ…」

相変わらず不安と恐怖が抜けていないけれど、ここは…励ますしかない。

「藍葉さんは自分の力や意志を信じている。信じて行動すれば、きっとお母さんには会えると思うよ。今の、藍葉さんならね…」

「…動けば、会えるかな?」

「そうだよ。大切なのは…実行することだと思う…それでも怖いのなら、わたしが手伝うよ」

「…ありがとう」

いつも不安げな藍葉さんが、優しく笑ったような気がした。

「探すことになったら万が一のために鈴原さんには、護身用のボウガンちゃんを持たせようかな…」

ボウガン!?物騒すぎないか!?

「お母さんがマフィアの幹部だったり、連れの悪い男がいるとしたらやっぱり不安だからね。

大丈夫だよ。動けなくなる程度の痛みを与える、刺さらない矢だから…」

「どんなボウガンなんだ…」

まだ心配性なのが治っていないのかな…

でも、そんな藍葉さんだからこそ『信じる』ということが必要なのかもしれない。

そんな藍葉さんを助けたい。わたしは、そう思えたのだ…。

 

「鈴原さん。あなたといると、とても安心するよ。これからも頼って…いいかな?」

 

 

『実は生き別れの家族がいると考えている藍葉。ヒストリヱランドを出る際には家族探しの手伝いをしようと約束する鈴原であった。』

 

 

 

・『藍葉のパンツ』を入手しました。

藍葉愛用の国産綿100%ショーツ。ズレにくいので心配性の人にも安心して履ける仕様になっている。安定の白いパンツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【犯人 自由行動】

 

 

「…」

「…」

 

紅葉さんは、文庫本をじっと読んでいる。

話を読もうにも邪魔だと思われたらどうしようかな…。

 

そう考えているうちに、紅葉さんは本を閉じて立ち上がり、どこかへと向かう。

「も、紅葉さん?どこへ行くんだ?」

 

…紅葉さんを追いかけていく。

辿り着いた先は、お土産屋だった。紅葉さんは遊具のコーナーを物色していく。

「紅葉さん…何を探してるんだ?」

「…ボールだね。できれば固めがいいな。バスケの練習をするの」

彼女はいつも、バスケ熱心で読書熱心なんだな。

「鈴原、一つ言っていいかな?筋トレにランニング、シュートやドリブル、イメージトレーニング…

バスケの練習ってのは…一人でもできるんだよね、正直言って」

それ、それ、遠回しに邪魔って言ってるのかな…。あまり付いていかない方がよかったな…?

固そうな桃色のゴム毬を見つけ、傍に抱えたと思うとわたしの方向を向く。

「でもさ、バスケの『試合』ってのは一人ではできないんだよね」

「…えっ?」

「バスケってのは、自分や味方のチームだけでなく相手の動きを見ていかに勝利を掴むかのスポーツなんだ。

他の球技にだって言える。テニスもゴルフも、相手と点数を競わなければできない。例外はスカッシュやボウリングぐらいだと思うよ。だから、二人以上での練習も必要なんだけど…」

「もしかして…わたしに練習を手伝って欲しい…とか?」

「…別に。正直素人相手に練習なんて時間の無駄だし、一人での練習の方が気楽なんだよね…」

やっぱり、そう返すんだ…

「ってことで、私はどっかでドリブルの練習でもしとくよ。じゃあね」

紅葉さんはゴム毬を抱え、どこかへと去っていく。

本当に一人が好きなんだな、紅葉さん…

 

『バスケの練習は一人でもできる…と言い張る紅葉。

しかし、バスケの試合は一人ではできない…というのも彼女の持論である。』

 

心がヘトヘトになりながらも、次の目的地へと向かった…。

 

 

 

 

『…』

「…」

 

紅葉さんは、今日も文庫本を読んでいる…。

「ちょっといいかな?一体何を読んでいるんだ…?」

「…これ?」

しおりを挟んでから本を閉じ、本を私に渡す。

どうやら『アドニスの季節』という小説らしい。宗教画のような表紙が印象的だ…。

裏表紙を見てみるとあらすじが書いてあった。

『気難しい美男子・青木と聖母のような女・三島、小悪魔的な少女・如月の三角関係を描いた悲喜劇!』

でも、本の帯には『爆笑ラブコメディ』と書かれてある。宣伝してる上で矛盾してもいいんだろうか…?

 

紅葉さんに本を返した後、ちょっと訪ねてみた。

「いつも本を読んでいるけど…どうして本が好きなんだ?」

「…長くなるけどいい?私の家は貧乏で、ゲーム機どころかトランプすら置いてなかった。図書館で借りてきた本が数少ない娯楽だった。

それに本を読んでいれば『所詮バスケしか出来ない頭の悪い人間』って舐められることはなくなるからね…

うちの高校の女子バスケ部、あまりいい結果が出せなくて前の高校では冷遇されてたんだよね。

どれくらいかってと、練習も体育館の1/4しか使わせてもらえなかった」

「なんだか、酷い高校だね…」

『アドニスの季節』のページを開きながら紅葉さんは言う。

「バスケ部に入部した時は困ったけど…部員の間である女子向けのライトノベルが流行ってることに気付いたんだよね。

そこで思いついたんだ。マネジメント本や有名バスケ選手の伝記を皆に読ませれば、ある程度は上達するんじゃないかって」

読書でバスケが上達する…のかな?

「難しいものだけじゃない。色んな本を読んで探して、部員の皆にも分かりやすくてバスケの為になる本を探したんだ。それをバスケにも通じる本だから…って何冊か読ませて、練習にも応用させていって、チームを育ててきたんだよね」

本を読ませれば集中力も鍛えられるし、彼女は結構なマネジメント能力があるんだな…

 

紅葉さんは本を膝に置き、わたしに語りかけた。

「話は変わるけどさ…私のバスケのポジションって、どんなのだったか覚えてる?」

「えっと…ポイントガードだったよね?どういうポジションなんだ?バスケ、パスとかシュートぐらいしか知らないんだ…」

「鈴原、ポイントガードも知らないんだね」

誰もが知ってる知識じゃないと思うんだけど…

「ポイントガードは簡単に言えば…チームの司令塔のような存在で、パスやコミュニケーションなどで皆を勝ちへと導いていく…みたいな感じだね。

1番とも呼ばれててね。高い知能とリーダーシップ、状況把握能力が必要となるポジションだよ」

そうか。本を部活で流行らせるほどのチームを纏める力があるから司令塔であるポイントガードを任せられているんだね。

これも『超高校級のバスケ選手』の才能なのかな…?

「じゃ、これもそろそろ読み終わるし私は新しい本探してくる」

『アドニスの季節』の本を持って、どこかへと消えていく紅葉さん。

ポイントガードであっても、マイペースなところはこのヒストリヱランドでも変わらないようだ…。

 

紅葉さんのバスケの才能について、わかった気がする…。

 

『本好きであり、それをバスケに生かせるほどの才能の持ち主。

だからこそポイントガードを任されている…のかもしれない。』

 

 

 

 

紅葉さんの筋トレと、ランニングが終わってからの休憩中。

彼女はそっと呟いた。

「安里…今頃どうしてるかな…」

「あんりって…誰だ?大切な人?」

「弟だよ。弟といっても、母さんの兄の子だけど」

「…母さんの兄ってことは…伯爵の『伯』、父親の『父』と書いて…伯父さんだったよね?」

「父母の兄がそうだね。…私は今、母さんと兄の伯父さん、そして伯父さんの子供の弟・安里と住んでる」

「…紅葉さんのお父さんと、安里くんのお母さんは?」

「私の父さんは記憶にないし、多分死んでる。伯父さんの奥さんは安里を出産してすぐに死んだ」

少し憂いのある顔からして、聞いてはいけないこと聞いちゃったみたいだ…

「…ごめん」

「いや、別にいい。父さんより母さんのが多分よっぽど深刻だから。母さんは目が見えないから娘の私と一緒に伯父さんたちの所に置いてもらってるんだ」

お母さん、目が見えないのか。そうなると、生活が結構大変そうだな…。

「だから内職くらいしかできなくて、伯父さんが安月給の工場で働いてる。そのせいかいつも学校でいじめられてるんだよね、安里…」

不安そうな感じの声だ。それほど安里くんを大切にしているのかな…?

「安里くんは、どんな人間なんだ?」

「…弱気で努力家な、寿司職人見習いだよ」

「寿司職人…?近い将来『超高校級の寿司職人』にでもなるのかな?」

「なれるといいんだけど。伯父さんがいつもクリスマスに買ってきてくれるお高めの寿司を気に入ってさ、『将来お寿司を作る仕事にに就きたい』って言ったんだ。

最近はある青年寿司職人に弟子入りしてさ。厳しい修行に耐えながら学校に通ってる。

でもその寿司職人、ある巨大寿司チェーン店から妨害受けててさ。例えば、貴重な海苔にガソリン撒いて燃やしたり、材料のエビを踏み潰したりとか…」

「燃やしたり…踏み潰したり!?酷いじゃないか…警察に連絡したほうがいいよ!」

「そうできたら苦労しないよ。あの寿司チェーン店、政界にも顔が利くからね。それでも、あの職人と安里は、なんとかしてあいつらに負けないように努力してきた。

そして安里は、去年のクリスマスにかまぼこのお寿司を作ったんだ。塩味の効いたかまぼこと酢の味がマッチしてて、美味しかったな…

あいつは本当に成長したよ。泣き虫から、立派な寿司職人に…」

 

家族について話す紅葉さんは、とても安心したような、生き生きとした表情だ。

「紅葉さんは…家族の努力を認めることができる人間なんだね」

「…そうなんだ…」

少し顔が赤くなっている。本当のことだったのかな…?

 

『ヒストリヱランドの外に置いてきた、大切な家族。

目の見えない母親と伯父、寿司職人を目指す従弟をいつも大切に思っている。』

 

彼女が家族に早く会えることを願いながら、わたしたちは別れた…。

 

 

 

 

「ねえ鈴原、いいバイト知ってる?」

バイト?紅葉さんの家の経済状況のことはわかってるけど…どうしていきなり聞いてくるんだ?

レストランでのバイト以外は記憶にないぞ…。

「ごめん、わたしバイトのこと良く知らないんだよね…ここから出て、見つかったら教えるよ」

「ならいいよ、『あれ』より安全で稼げるバイトがあればなって」

「『あれ』って一体…?」

「…暗黒バスケだよ」

紅葉さんは少し間を置くと、真顔で言った。

「それって、裏社会のバスケみたいな?」

「簡単に言うとそうだね。うちのチームがアメリカの高校のチームに完勝した際に、相手チームのコーチに誘われたんだ。

一勝ごとに100万から貰える…最初は半信半疑だった。でも、家の借金を返すためには何でもしようと思ったよ。

そして暗黒バスケのコートにやってきた時は…正直驚いたね。だって、人体改造を施した身長3m超えの選手相手の1on1だったしね」

…借金はともかく、3m超えの選手と戦ったのは本当の話なのかな…?いや、紅葉さんが嘘をつく筈がないし…。

「正直苦戦したよ。素早さも体力も見たことのない超人レベルの強さだった。

でも、どんな選手にでも弱点はある。そう考えて相手を必死に観察して、ギリギリで勝てた…そんな感じだった」

「勝ててよかったけど…それ以上の戦いには挑んだのか?」

「それでも借金は全額は返せなくてね。1on10とか、炎に包まれたコートでの試合もあったよ。

負けないように挑んできたけど…一番きつかったのは観客がコートに刃物やら鈍器やらを投げてくる試合かな。流石に命の危険を感じたね」

観客まで危ないバスケ…選手側は楽しいのかな…?

紅葉さんが安全なバイトを望んでいる理由が、なんとなく分かった気がする…。

「借金はなんとか返せたけど。もう暗黒バスケからは足を洗いたいし、次はまっとうなバイトをやりたいんだよね。

もしお金が貯まったら安里と、新型ゲーム機で遊びたいな…」

自分のバスケチームのために本を広めたことといい、家の借金を返すための暗黒バスケといい、紅葉さんは他人想いなのかな?

やりすぎな点は少し、不安になってくるけど…

「それにしても…どうしてゲーム機なんだ?」

「安里がゲームセンター好きでさ。数少ないお小遣いで色々遊ぶんだよね。格闘ゲームとか、パズルゲームとか。」

「紅葉さんが相手しているのか?」

「そうだね。勝ったり負けたりしてるけど…結構楽しいよ」

彼女は、命を賭けた勝負よりも、相手と楽しめる勝負を楽しんでいる。

わたしは、心からそう考えたのだった…。

 

 

『貧乏な家族のために、一家の大黒柱として暗黒バスケに挑んだりしている。鈴原が不安になるほどの他人想いだったり?』

 

 

 

 

紅葉さんが、噴水広場でジョギングを終えた後のことだった。

「鈴原、練習手伝ってくれる?」

「練習?いきなりどうしたんだ?この前はバスケの練習は一人でできるって言ったのに?」

「それは前言撤回させてもらうよ。なんというか、一人で練習するのもいけど…今は二人でできるやつがしたいんだよ」

…気が変わったのかな?ここでは紅葉さんの要望を聞いてみよう。

「いいよ。何をすればいいんだ?」

「まずパス練習からね。ボールをパスするからそれを受け取って、また私にパスするだけでいい」

よし…やってみよう。

紅葉さんはいつもの桃色のゴム毬を一直線に投げてきた。

ゴム毬は、凄いスピードを出してこっちへ向かってくる…!

 

バシッ!

 

…なんとか受け取れた。あまりにも力強いパスだったので、少し手が痛いけど…。

次はわたしがパスする番だ。狙いを定め、ゴム毬を相手に一直線に投げる。

紅葉さんは、難なくゴム毬を受け取った。

「あんた、結構力はある方だね。もしかしてどこかで鍛えていたとか?」

「あまり鍛えたことはない…と思う」

 

これを何回か繰り返していくうちに、次の練習になった。

「じゃあ次はボールを前じゃなくて宙に投げて。私が受け取るから」

紅葉さんからボールを受け取り、それを高く宙に投げる。紅葉さんはジャンプし、ボールを片手で受け取る。

そのまま素早く、わたしにパスをしてくる。それを急いでキャッチする。

「ほら、ぼーっと立ってないで次は左か右に投げて。これを繰り返すよ」

立ったままがダメだったのかな。わたしは慌ててボールを左上に投げた。

紅葉さんは投げられたボールに手を伸ばし、それをまた手中に収め、わたしの方面に投げてくる。

わたしが右か左かに投げ、紅葉さんがキャッチし、それをパスしていき…

これを、何回か繰り返していく。

 

…数十分ほど経った後。

「じゃあ、休憩にしようか。ほら、スポーツドリンク二本持ってきたからあげるね」

ストレッチする紅葉さんの傍らには、スポーツ総合雑誌が置いてある。これもお土産屋から貰ってきたのかな…?

ドリンクを飲みながら、紅葉さんはわたしに話しかけてきた。

「さっきはありがとうね。いい練習になったよ」

「いや、こちらこそありがとう。紅葉さんは、バスケに一生懸命なんだね」

「そっか。実は…練習や試合以外で他人とこんな風に接したこと、正直ないんだよね。あんたが初めてっていうか」

他人との関わりを嫌う紅葉さんが、心を開いている。

そうやってコミュニケーションをとってくれるとなると、こっちまで嬉しくなるな。

「こういうのを…アレって言うんだろうね」

アレって?えーと、こういうのは…

「ベストフレンドってことかな?」

「そうだね。正直、少し恥ずかしいけど…これからはそう思わせてもらうよ」

…そう言ってる紅葉さんの笑顔は、どこか爽やかそうに見えた。

「じゃあ、あと10分くらいしたら練習再開するけど…あんたもついて来る?」

「いいよ。でも次はパスは弱めにしてほしいな」

 

でも、これが友達…いわゆるベストフレンドってことなんだろうね。

紅葉さんと、わかりあえて本当に嬉しい。わたしは、そう感じたのだった…。

 

「友達ってのも、やっぱりいいのかもね。あんたのお陰でようやく気づけたよ」

 

 

『珍しく練習に付き合ってほしいと告げた紅葉。鈴原をベストフレンドと認め、誰にも見せないような笑顔を見せてくれた。』

 

 

 

・『紅葉のパンツ』を入手しました。

紅葉留架の履いているボーイレッグショーツ。男性の履いているトランクスに似ているが、意外と動きやすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

【特殊イベント】

 

 

【二章その1】

 

ヒストリヱランドに来て、7日目昼のこと。偶然出会った雨崎さんに話しかけられた。

「鈴原ちゃん!ちょうどいい所失礼するね!」

「…何かの誘いかな?」

「みんなでさー、ゲーセン女子会…しない?今の所二階堂ちゃんを誘ってるけど…」

「いいよ。でも…何でゲーセン?わたし、ゲームセンターに行った記憶なくて心配なんだけど…」

心配そうなわたしに、雨崎さんは語りかける。

「大丈夫だよ!久々にゲームやりたくなってさ。でも、ここは一人でやる家庭用のゲームなんて置いてないし、アーケードのゲームって大勢でやった方が楽しいでしょ?」

…この前モノモノマシーンから出てきた『超技林 第55版』さえあれば、わたしでも楽しめるかな…?

「そういえば丁度お土産屋でゲームの本があってさ。あれを読めばみんなで楽しめると思うんだ。だからみんなでゲーセンに行こう」

「分かった!じゃあ一時半にゲーセン前に集合ね!」

 

こうしてわたしたちは、ゲームセンターに行く約束をした…。

 

 

 

 

ゲームセンターの中には、雨崎さんと二階堂さんと…紅葉さん、黒木さんがいた。

「一ノ瀬ちゃんは女子会なんて論外って言ってくるし、藍葉ちゃんは怖いって言って断ったんだよね…」

「ところで、何で黒木までいるんだ…?」二階堂さんが少し焦っている。

「ゲームから映画になる作品なんて沢山あるからね。例えば、ファンタジーの入った原作がフルCGを使った完全なSFモノになったりとかね。作品のネタにならないかしら?」

黒木さんが優雅(?)に解説している隣で、紅葉さんはスポーツドリンクを飲んでいる。

「今日の練習終わって暇だったし。こういう集まり、慣れてないけど…」

「この本があれば、初心者でもいい所まで行けるんじゃないか?」

わたしが『超技林 第55版』を休憩用のソファの上に置く。

「あ!これ父ちゃんが持ってるやつだ!えーと、この本に載ってあるアーケードゲームは…」

と、二階堂さんが横からパラパラと捲り…ある特集を指差した。

『ストラグルファイターZero』と呼ばれる対戦ゲーム。ゲームセンターの隅に筐体はある。しかし…

「このゲーム、無駄にグロくない…?」

「え?血が出たり、腕がちぎれたりって普通じゃないかしら…?」

「でも結構面白いって評判のゲームだぜ?誰かプレイするやついないか?」

一部以外はドン引きしている空気の中、手を挙げたのは…紅葉さんだった。

「こういうゲーム、家族が遊びたいってせがむんだよね…お金ないし月に数回やる程度だけど、結構楽しいんだ」

「マジか?紅葉もやるんだな!『超高校級のバスケ選手』だから絶対反射速度も強そうだけど…アタシは負けねー!」

 

数分後。

 

「二階堂ちゃんが負けた…!?というか、攻撃するスキが見当たらなかったよ!?」

「対策は十分だったのに!?コンボせっかく繋げそうだったのに!?」

二階堂さんが頭を抱えながら悔しがっている。結果は…紅葉さんの圧勝だった。

「パワーキャラとかこの本には書かれてるけど…扱うのにはテクニックが必要だったようだね」

「でも、紅葉ちゃん凄い!どうやって勝ったの!?」

スポーツ選手にインタビューするかのように、雨崎さんは紅葉さんに勝利法について問う。

「私がいつもやってるバスケと同じだよ。頭脳と敏捷性と状況判断能力が必要になる。じゃあ、自主トレの時間なんで席外していい?」

「いいけど、紅葉ちゃんはお土産とかいらない?」

「別に。これからは好きにしてて」

紅葉さんは椅子から立ち上がり、ゲームセンターの外へと向かっていく。

「うう…ダチと遊んでて負けたことなんてねーのに…よし鈴原!次はUFOキャッチャーで勝負しようぜ!」

「わ、わたしが…?」

「自分が勝つまでやめないって、ギャンブルでやっちゃいけないことなんじゃないかな…?」

雨崎さんは、わたしと二階堂さんを見て冷や汗をかいている。

 

 

それからわたしたちは、様々なゲームで遊んでみたりした。

黒木さんはクイズゲームで、映画の問題しか解かなかったり。

二階堂さんと雨崎さんは、パズルゲームでなかなかいい所まで行き…

 

「凄いわ鈴原さん!このステージは正答率低いのに、見事な全問正解だなんて!」

わたしは黒木さんのプレイしていたクイズゲームで遊ぶことになっていた。

「まあ、天文学の問題だったからね…」

「でもコラプサーなんて単語、私にもわからなかったもの。ブラックホールの前の呼び名と答えられるのは多分あなただけよ?」

「そうだろうね…。ここに来てお父さんから教えてもらった知識が役に立つとは思わなかったよ…」

 

「雨崎すげえじゃん!あのウサギのぬいぐるみを四回で手に入れるなんてな!」

「ぶっちゃけミーくんの方が上手だよ。二回でもうちょっと大きなぬいぐるみ取ってるし。

…そういえばこのぬいぐるみ、モノクマに似てるよね…色が真ん中で別れてる所とかさ」

「白とピンクだけど、モノクマよりは可愛いんじゃねーか?ほら、赤い左目あたりが」

「目のつけどころが鋭いね…あと三個取れたら、みんなの部屋に飾ろうかな…?」

 

 

楽しい時間は、早く過ぎていくもの。

しかし、この思い出だけは決して失いたくない。どうかこの記憶が、希望に変わりますように…。

 

 

【二章その2】

 

 

動機が配られた翌日の、朝食が終わった頃。

灰寺くんが藍葉さんに話しかけているのを見かけると、灰寺くんが話しかけてきた。

「あ、鈴原姉ちゃん!ちょうど良かったねん。湖林兄ちゃんや藍葉姉ちゃんとピクニックする予定なんやけど…行かへんか?」

「ピクニック?いいけど…どこでやるんだ?」

「メリーゴーランドやな。あれ、ずっと動き続けとるんやけど一時間に10分ほど止まることがあるんや。その隙を狙って馬車に乗り込んで一緒にお弁当とか食べれたらええなって」

「…どうして、メリーゴーランド?」少し疑問に思ってしまった。

「木馬もいいけど、馬車に乗って色々食べるのって…人類共通の夢ちゃうか?

あと、馬車の部分よく見てみたら珍しくテーブルがあったんや!貸し切りみたいやし、やってみたいねん…って言ったら湖林兄ちゃんがみんなで集まってピクニックしないかって…」

たしかに楽しそうだけど、人類共通の夢、なのかな…?

「でも、お弁当はどうするの?私は作ったことないし…」

藍葉さんは心配そうな素振りを見せている。

「大丈夫やって!燻製ならやったことあるけん」

「燻製は流石にメリーゴーランドが焼けちゃうかもしれないよ!?」

この前手に入れた『おにぎるメーカー』さえあれば、おにぎりはなんとかなるかな…?

「あの…材料を入れるだけで手に触れずに、簡単におにぎりが作れる機械を持ってるんだ。よかったら使おうか?」

「簡単におにぎりが、作れる…?なら正義の大発明や!これでみんなおにぎりたらふく食べれるねん!」

「正義じゃなくて世紀じゃないかな…?」

藍葉さんが静かにツッコミを入れる。

「ところで、どこでおにぎりを作るんだ?」

「喫茶店とかがいいんじゃないかな…あそこ、キッチンも炊飯器もあったし。第二エリアだからメリーゴーランドからも近いし…あと、お箸は四人分持っていった方がいいかな…?」

提案する藍葉さん。

あの隠し部屋についての話題は、誰にも言わないでおこう…

 

 

 

 

喫茶店のキッチンへと入り、皆でおにぎりを作ることになった。

「明太子にスライスチーズ、おかかにツナにマヨネーズ、たらこ、鮭フレーク、生ハム、いくら…これ、全部食べられるんか!?」

灰寺くんが目を輝かせながら、テーブルに並べられた材料を見つめている。

「灰寺、全部は食うな。材料はレストランの冷蔵庫の中に入ってあるやつを頂戴した。

あと緑茶も用意しておる。千利休のものほどの味はないが…おにぎりには合うじゃろう」

ご飯もちょうど炊きあがったし、『おにぎるメーカー』も洗ってセットしたし、そろそろ作り始めよう。

『おにぎるメーカー』の中に材料を入れ、スイッチを押すと…

何秒か経った後に、見事な三角形のおにぎりが出てきた。

「えっ!?これ、本当におにぎりなんか?こんなに簡単に作れていいんか!?」

「じゃろうな。良い世の中になったのう」

はしゃぐ灰寺くんに湖林くんが答える。

次は…湖林くんがご飯とのり、ツナと鮭フレーク、チーズを入れる。

「チーズはともかく、他のは同じ魚介類だけどいいのかな…?」

「海鮮丼も同じ魚介類を入れるじゃろうが。あと魚にマヨネーズはマグロ以外認めんぞ」

ツナって、マグロからできてなかったっけ…?

 

こうやって沢山のおにぎりが完成したので、全て弁当箱に入れてメリーゴーランドへ行くことになった。

 

 

 

 

止まっているメリーゴーランドの馬車に四人でわたしと藍葉さん、湖林くんと灰寺くんに分かれて座る。

やがてメリーゴーランドが回り始める。四人でいただきますを言った後、おにぎりを手に取って口にする。

…王道のツナマヨ味だ。マヨネーズの酸っぱさとツナのまろやかさが合わさりとても美味しい。

 

藍葉さんは箸でおにぎりをつまんで食べ、持参の皿に持っていった後に食べる。

「…やっぱりお米だよね…お茶にも合うし…パンもクルミさえ入ってれば健康にいいけど…」

「こうやって優雅におにぎり食べるのも楽しいなあ!貴族の気分?って言うんやろうか?」

灰寺くんはおにぎりを口いっぱいに頬張っている。

「ほう。生ハムといくら、意外と合うのう…ほら、鈴原も藍葉ももっと食べんか。せっかく大量のおにぎりがあるんじゃからのう」

一応、3つは食べたんだけど…

 

 

わたしたちは、メリーゴーランドが止まるまでおにぎりを食べたり、ここから出たら何をしたいかを語り続けた。

この時だけはコロシアイの事も、あの隠し部屋のことも、忘れられるような気がした…。

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