ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter3 「怪奇!悪夢の湯けむりナイトメアは実在していた!」
Chapter3 「怪奇!悪夢の湯けむりナイトメアは実在していた!」10日目(探索編)


 

 

 

ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter3

「怪奇!悪夢の湯けむりナイトメアは実在していた!」

 

 

 

(非)日常編

 

【幕間】

 

薄暗い、何かの巨大な機械に囲まれた部屋。

中央部のシンプルながらも機能性に溢れた椅子には、和装を着た初老の男が鎮座している

そして椅子の後方には…灰色のシルエットのホログラムが浮かび上がっている。

 

「…………と言ったな。よくぞ来た。貴様が、私の『作品』を人間の道へ引きずり下ろしたのか」

 

声がした。エコーのかかった、だが威圧のある初老の男のものだ。

椅子の男か、ホログラムの主かはわからない。

 

椅子のすぐ前には、顔の見えない人物が立っている。人物は何も言わず、持っていた小型の銃の引き金を引く。

バン、という銃声が響くと、椅子に座る男のこめかみは、赤黒い血を吹き出しながらぐったり、と倒れた。

 

「ふはははは!たかが銃ごときで私を殺すとは!愚かで惨めで烏滸がましいわ!報いをう…うううけけけけけけけけけkkkkk…」

 

ホログラムが乱れる。それと同時に、死んだと思われた椅子の男は痙攣し始めた。

部屋に置いてある機械は、赤や青などの色にランダムに点灯する。

 

「縺阪&縺セ縺ェ縺ォ繧偵@縺溘∪縺輔°縺ゅ>縺、縺後?縺薙@縺溘d縺、縺ェ縺ョ縺九″縺輔∪」

 

フードの人物は周りの機械にターゲットを改め、銃撃する。

耳障りなエラー音を立てる機械が止まる。

椅子の男は眼球を大きく回転させ、やがて、口から血を吐いてまた動かなくなった。

 

部屋に静寂が訪れる。反撃はない。

フードの人物が、小さな声を上げる。

 

「随分あっさりとしてるけど…これで、良かったんだ」

 

 

 

 

この無音の部屋で起きるのは、何度目だろうか。

恐らく、10日目くらいだろうか。

そう思考しながら、掛け布団に覆われた身体をゆっくりと起こす。

 

夢は見なかった。

それなのに身体は汗だくで、昨日の事件のせいかだるさが残っている。

 

昨日…そういえば。

 

紅葉さんが妹の藍葉さんを殺害して、藍葉さんが母親を失明させたことが明らかになって。

処刑寸前の紅葉さんに、藍葉さんが遺したであろうICカードを託されて。

メリーゴーランドの隠し部屋に行って、藍葉さんが作った思い出しドリンクを飲んで。

そして…

 

『叶千華』と呼ばれる少女の記憶が蘇ったんだった。

 

『わたし、流れ星に願うんだ。みんなの願いが叶いますようにって』

 

一回目の、動機発表の時に配られた写真の少女。

わたしはこの少女について何も知らなかった。どうして、この記憶がピンポイントで蘇ったのだろう。

それほどわたしの大切な人の記憶だったんだろうか。

 

流れ星の記憶。

 

『じゃあわたしは…せめて、自由になりたいって願おうかな』

 

なぜ自由になりたいと願ったのか。何から自由になりたかったのだろう。

考えても、わからない。考察材料が足りない。

モノクマやカラフラに聞いても、きっと話さないだろう。

 

思考を巡らせているうちに、チャイムが鳴る。一度ではない。間をおいて二回目、三回目。

わたしはもう起きているのに。一体誰だろう…?

もう朝だけど、そこまで急かさなくても…

 

「って…朝…!?」

慌てた様子で時計を見てみる。8時。そういえば、食事会は7時半…

30分も遅刻している…!

「しまった…!」

ベッドから飛び出し、クローゼットから服を取り出す。

鳴り響くチャイムの中、素早く私服に着替え、髪を梳かし、身支度を整えたら…部屋のドアを待ち人にぶつからないようにゆっくり開ける。

 

どうやら、チャイムの主は絹川くんと雨崎さんだったみたいだ。

わなわなと震える雨崎さんは、わたしの肩をいきなり掴んできた。絹川くんは、胸を撫で下ろしながらそんな様子を見ている。

「みんな心配してたよ!いつまで経っても来ないから…でも、無事みたいでよかった!」

「鈴原さん!生きて…いや、起きてたんだ!大丈夫だった?」

「昨日のことでちょっと疲れてたみたいだ…ごめん、今行くよ!」

 

こうしてわたしたち三人は、急ぎ足でレストランへと向かうことになった。

 

 

 

 

レストラン。コーヒーと共に朝食セットのトーストをかじるわたしと…ドリンクバーのジュースを大量に飲む灰寺くん以外は、どうやら全員食べ終わったようだ。

みんなのお皿が空っぽになっている。

「灰寺、流石に飲みすぎなんじゃないかー?」

「炭酸水とコーラを混ぜたら炭酸強くなると思ってやってみたんや。でも味が薄くなっただけみたいやな。

ザクロジュースと炭酸水の組み合わせは美味しかったんやけど…」

梅田くんがドリンクバーに通い詰める灰寺くんを気掛かりそうな目で見つめる。

 

わたしの隣に座る二階堂さんは、そんな彼らを諌めるように声をかける。

「灰寺、膀胱炎になるかもしれねーからもうやめとけよー!多分膀胱がぽぽぽーんってなって死ぬぞー!」

「お腹が減っとるねん。トーストだけじゃ足りへんかったし。あと人間は水と睡眠さえあれば2週間くらいは生きられるんや。野菜や果物ジュースを飲んでおけば栄養も偏らへん」

そう言いながら灰寺くんは『炭酸水』のボタンを押すと、彼の持つコップ半分くらいに透明な泡水が注がれた。

次に『ブドウ100%』のジュース。コップの水の色がみるみる紫色に変わっていく。

「果物はともかく、さっきから野菜のジュースには手を付けてないような…?」

わたしの視点なので、もしかしたら既に飲んでいるかもしれないが。

 

二階堂さんは、少し不満そうに下を向いた。

「あーあ。力づくで止める訳にもいかねーし。あいつが…灰寺の状況を見てたらすごく心配したんだろうな…」

 

…それを聞いたのかコップを持ち、席へと向かおうとする灰寺くんの足が止まった。

 

「それって…藍葉ちゃんのこと…」

レストランにいる生徒たちが、機能のことを思い出したかのように静かになる。

 

イヴァンくんが報われない死を迎え。その事件の犯人であったバニラさんが処刑され。

藍葉さんが、実の姉である紅葉さんに殺害され。紅葉さんもまたモノクマによって殺され。

それでもなお、わたしたちはヒストリヱランドから抜け出せていない。

 

「結局、このコロシアイという惨劇は終わっていないのですね…」

「最後の二人になるまで終わらないのよ、このデスゲームは。それとも、視聴者が満足するか…」

蒲生くんと、向かい側の席の黒木さんが何か会話しているようだ。

 

「済まねえ。アタシのせいで暗くなっちまった…」

「別にいいよ。わたしだって…まだ引きずっているし」

わたしは、二階堂さんを慰める。藍葉さんと、紅葉さんのことは忘れてはいけない。そう言い聞かせるしかないのだ。

「…もう二度と殺人事件なんて御免なんだなー」

「ここでは、誰かが死んでもおかしくないですわ。だからこそ、自分の身は守らないと…」

梅田くんも、一ノ瀬さんも何か思っているようだ。

 

…わたしが朝食を食べ終わってから数分後。

「やっぱりレモンジュースとの組み合わせが良かったなぁ。ごちそうさまでした」

灰寺くんがジュースを飲むのに飽きたのか、食器の返却コーナーにコップを置く。

そろそろ自室へ帰ろうとした、その直後だった。

 

「オマエラ、グッドモーニング!ヒストリヱランドは満喫できてますか?」

「マスコットの中のマスコット・モノクマと…ただの…理事長カラフラ…なのだ」

 

コロシアイの主催である一匹と一輪が、レストランの中に入り込んできた。

くるくると回転しながら台車を押すモノクマと、台車に乗せられ目を回すカラフラだ。

 

「ぎゃああああああ!」一ノ瀬さんが叫ぶ。

「も、モノクマと…カラフラかー?一体何をしてるんだー?まさか動機かー?」

 

「動機には…流石に早すぎるのだ。ゲーマーは…短気…だけどモノクマは…バオバブの木の…全長より気が長いのだ…」

 

カラフラは手替わりの葉っぱで口を抑えている。

「まさか…新しいエリアの開放とかじゃないの?」

黒木さんが主催たちに語りかける。モノクマは、カラフラを放置しながら不気味な笑顔を見せる。

 

「オマエラみたいなスマホ世代は飽きっぽいし短気ですよね。では簡潔にお話します。

そろそろこのエリア二つにも飽きてきたでしょ?という訳で…

ヒストリヱランド・第三エリア…『知的好奇心とやすらぎのエリア』を開放致します!」

「もちろん設備は…揃って…いるのだ…例のゴムやロープ…動くこけし…もあるのだ…」

 

カラフラは青ざめた顔をこちらに向ける。回されまくったのか気持ち悪くなったようだ。

後半の発言は聞かなかったことにしよう。

 

「どっちらかの昼は夜…ってことで。カーモンベイビー!第三エリア!以上!」

「わーの渾身の下ネタ…スルー…され…」

 

カラフラは台車の上にぱたりと倒れ、モノクマはくねくねしながら台車を引っ張りドアの向こうへと消えた。

「…モノクマと同じ船の旅人とは思いたくないのう」

湖林くんがぼそりと言う。同感だ。

でも。第三エリアが見つかったということは…脱出や奪われた記憶の手がかりもあるのかもしれない。

 

こうしてお皿を片付けた後、第三エリアへと向かうことになった。

 

 

 

 

レトロな時代を彷彿とさせるデザインの建物が並び立つ第三エリア。

入り口の地図看板にはモノクマが言った通り「知的好奇心とやすらぎのエリア」と書かれていた。

エリア中央部には、江戸時代のような和式のお城がそびえ立っている。

 

地図によると…どうやらお城は旅館らしい。

どうしてハイカラロマンがテーマなのに旅館は和風のお城なんだろう。

ヒストリヱランド、絶対迷走してたよね…?

 

パンフレットの第三エリアの地図。その中央に旅館はある。

まずは、そこへ向かおう。

 

 

 

 

旅館に入り、エントランスの地図を見てみる。旅館は二階建てだ。

一階には厨房と脱衣所、倉庫。

二階にはカラオケルームとプレイルーム、事務所。

どちらの階にも大広間が一つ、客室が三つある。

エントランスのソファには、旅館のものらしきパンフレットとにらめっこする一ノ瀬さんが座っている。

「所詮は微妙遊園地のミニミニ旅館ですわ…内装はそこらのZ級キャバクラよりはまともですけど」

Z級キャバクラとやらで働いている人たちに失礼な気がする。

「ここは一ノ瀬旅館よりも狭いですわ。女がターゲットだから身体の小さい女に合わせているんですの?」

「…ところで、収穫あった?」

「身体の小さい女…まあ女児思考の殿方様なら…ってきゃあああああ!!!」

一ノ瀬さんに話しかけてみる。彼女は驚いた様子で叫ぶ。

「部屋はSNS映えしそうな小綺麗なだけの部屋、温泉は人工、部屋は和洋ごちゃごちゃ、プレイルームのゲームは古いものばかり…本当に客を呼ぶ気が見られませんでしたわ。全く、神の宿とも言われた一ノ瀬旅館を見習って欲しいですわ…」

「一ノ瀬旅館は日本一の旅館だったよね。比べてしまうのも無理はないよ」

「鈴原の意見は聞いていませんわ。ああ、広々とした一ノ瀬旅館が懐かしい…。極上のグルメ、様々な癒やしをくれる温泉、優雅なひととき…全てにおいてそこらの…醜女どもが…うう…」

監禁のストレスでだいぶやられているんだろうけど…これ以上は聞くのはやめよう。

受付にあったパンフレットを一枚貰う。

パンフレットによると西には階段、北にはエレベーターがあるようだ。

 

まずは、一階から探索することにした。

 

 

 

厨房を覗く。広々としているが、なんの変哲もない調理室だ。

…包丁などの凶器になりそうなものも置かれているが。

大きな冷蔵庫を開けると、大きな魚や霜降り肉、野菜などよりどりみどりの食材があった。

どうしたらこういった食材を調達できるんだろう?

 

 

 

次に三つの客室を調べる。

南の客室。引き戸近くのプレートには達筆で『瑪瑙(めのう)の間』と書かれている。

瑪瑙の間と書かれた客室に入る。ドレッサーとベッド、四つの椅子と大きなテーブル、棚が置いてあるフローリングの洋室だ。

棚の上には…青い縞模様のプレートのような鉱物が立て掛けてある。これが瑪瑙か。

テラス戸のおかげで燦々と輝く太陽の光がよく入る。

 

『水晶の間』の中へと入る。

そこは低いテーブルに座布団、床の間が特徴的な和室だった。新鮮な畳の香りが心地いい。

床の間には両手で持てるくらいの水晶玉が置いてある。

もしかして、瑪瑙の間みたいにそれぞれの部屋に由来した鉱物が置かれているんだろうか。

 

『琥珀の間』。水晶の間とはあまり変わらない和室だった。

黄色と茶色が混ざった鉱物の置物が床の間に置かれていることと、苛立つ二階堂さんの様子を除けば。

「なあ、鈴原…聞いてくれねえか?」

「何かあったのか?もしかして、恐ろしい仕掛けとか…」

「違うんだよ…ここの部屋、どこもシャワールームがねえんだよ!アタシたちの泊まってるホテルですらあるのになぁ!

身体キレイにしたきゃ温泉に入るしかねーってのが気に入らねえ!みんなに裸見せるのが恥ずかしい奴はどうしたらいいんだよ!」

恐らく、二階堂さんなりの正義で怒っているんだろうな…

 

 

 

大広間へ。靴箱が置かれたスペースの向こうは広大な畳の部屋だった。

前方にはステージ。それの後ろの舞台裏には、照明をコントロールするための機械があった。

ステージがあるってことは、ここで手品大会でも開くのかな。

 

 

 

瑪瑙の間のすぐ隣にある倉庫。ワゴンには大量の備品が置かれてある。

替えと思われる布団やシーツ、楽器類、消火器、食器…旅館なんだしここまであって当たり前だろう。

「…あっ」

ワゴンの隅にきらりと輝く円盤状の物体…モノクマコインを発見した。しかも四枚。

これもモノモノマシーンで使うしかないんだろうか…?

 

 

 

温泉へと続く脱衣所。『男』と書かれた青いドアと『女』と書かれた赤いドアがそれぞれある。

どちらのドアにも筆で書かれた説明書きが貼られていた。

 

『脱衣所に入るにはそれぞれの性別に対応した電子生徒手帳が必要なのだ!』

 

よく見ると、二つのドアの近くにはそれぞれ何かカードを通す用の四角い枠がある。

…電子生徒手帳をかざすんだろうか?そういう機能、あったのか?

『女』のドアの四角い枠に取り出した電子生徒手帳をかざすと、電子音が鳴る。

開かれたドアをゆっくり引き、中へ入ってみると。昼白色の光に照らされた、洗面台といくつかのロッカーが鎮座していた。

 

脱衣所にはもう二つドアがあった。それぞれ『女湯』『混浴風呂』と書かれたガラスの引き戸。

…女湯はともかく、混浴風呂に入る勇気はない。

 

 

 

エレベーターは裁判を思い出す…ので階段で二階へと向かう。

客室は…翡翠の間は和室、珊瑚の間は洋室。一階と変わりない部屋だった。どちらもそれぞれの部屋の名前に因んだ鉱物が置かれている。

なぜか、同じ南にあるはずの瑪瑙の間と違い窓は小さい。

 

黄金の間も引き戸だが、力を入れようがなぜか開かない。蹴飛ばすのはやめよう。

「一体、どうしたら開くんだろう…」

 

「そんな鈴原さんにはこれなのだ!事務所から持ってきたマスターキー!なのだ!」

 

場違いな明るい声がする。台車に乗り、鍵らしきものを持ったカラフラだった。

「か、カラフラ!?何をしにきたんだ!?」

 

「この鍵は脱衣所以外の旅館の全てのドアが開くというスグレモノ。黄金の間のオートロックも開くのだ」

 

「…もしかして、黄金の間だけオートロックじゃないよね?」

 

「その通り!黄金の間だけに許された権利なのだ。だってセレブご用達のお部屋だからね!」

 

他の部屋にはオートロックがないって、この旅館のセキュリティはどうなっているんだろう。

 

「貧乏人はただの鍵でも持ってるのだ。じゃあねー!」

 

カラフラはマスターキーを置いてどこかへと消えていった。

「ま、待て!」

あまりにも早すぎる退場。一体何がしたかったんだろう?

 

気を取り直しマスターキーを拾い、黄金の間の鍵を開ける。他の客室より広めのオシャレな和室だ。

床の間には『常在戦場』と書かれた掛け軸と、大量の金塊がガラスケースの中に置かれている。金塊、盗まれないのかな?

個室には風呂場があった。二階堂さんが知ったら喜びそう。どうやら、ここはVIPルームのようだ。

 

 

 

プレイルームに向かう。一ノ瀬さんの言う通り20年前くらいのゲームが多い。

絹川くんがあるパズルゲームのゲーム画面をじっと見つめていた。ゲーム、やりたいのかな?

「…ねえ鈴原さん、これどうしたら画面が動くかな?」

「コインってやつが必要なんじゃないかな」

倉庫で見つけたモノクマコインをポケットから三枚ほど取り出し、ゲームの筐体の上に置く。

「機械の下らへんにコインを入れる場所があるから、そこに入れたら遊べると思う」

「いいの?ありがとう!じゃあ試しに一回入れてみるね」絹川くんは嬉しそうな様子でコインを硬貨投入口へ入れる。

 

…が、何も起こらなかった。

それどころか、コインが音を立てて返却口に戻っている。

「…これ、使えないのかな?」

別のモノクマコインも何枚か入れてみる。やはり筐体には何も起こらず、コインは返却口に落ちる。

諦めた様子で絹川くんは三枚のコインを自分の手のひらに載せる。

「できないんだね。なら、返すよ…」

「…ぬか喜びさせちゃって、ごめん」

わたしたちは落ち込んだ様子でプレイルームを後にした…。

 

それにしても、絹川くんはアーケードゲームを知らない様子だった。なぜだろう…?

 

 

 

ドアの開かれたカラオケルームにも向かう。ミラーボールの光で照らされた薄暗い部屋の中、未隅くんと雨崎さんが何やら分厚い本を見ている。

「古いカラオケ屋さんってさー、こういう本の選曲リストが置いてあるんだけど、やっぱり古い曲ばっかだよね…これじゃあ小さい子が楽しめないじゃん」

「僕はポップスのことはよく知らないけど、確かカラオケって般若神経とかも選べたよね?」

「え、お経まで入ってるの!?カラオケルームで幽霊出た時用!?」

「そんなことはないと思うぞ!明るく優しい梨々には幽霊はきっと近寄らないさ!」

「み、ミーくん…!?そんな…!」

 

雨崎さんは顔を赤くしている。

この二人の間に入ってはいけないような気がしたので、カラオケルームから去ることにした。

 

 

 

事務所にも向かう。デスクとパソコンとウォーターサーバーが置かれたごく普通のオフィスだ。

監視カメラに繋がっているであろう、パソコンモニターには何も写っていなかった。

電源を入れようとしても同じだ。何も反応しない。

ここ、プレイルームより広いんだよな。設計どうなってるんだろう…。

 

壁についたキーボックスが開いていたので、マスターキーを掛ける。

キーボックスにはダイヤルがあるから安心だと思うけど…

 

 

 

 

 

旅館の西には高い崖がある。パンフレットには上に郵便局とログハウスがあるらしい。

崖の上に行くには…長い階段を登る必要がある。

わたしは今、旅館のとは比べようのない階段を登っている…が、疲れをあまり感じない。

それでも、登るだけの作業は精神的にきつい。

「エスカレーターくらい…つければいいのに…」

ヒストリヱランドが廃園した理由がわかった気がする。いや、廃園後も設置しなかったモノクマとカラフラも悪いんだろうけど…。

 

 

ようやく頂上に辿り着く。四つのログハウスと、ミントグリーンの木造の建物…郵便局が建っていた。

 

 

 

 

郵便局には、普通なら野外に置かれるであろうポスト一つと、前方に置かれたカウンターテーブル以外は本当に何もなかった。

灰寺くんが開かれていたポストの中を覗きながら私に話しかける。

「このポスト、手紙一枚も入っとらんね…そういえば鈴原姉ちゃんは、手紙出す人いるんか?」

「いないと思う…」

「…どうして『思う』って言うんか?記憶があやふやだったりするんか?」

両親との仲は悪いし、叶千華以外の人間はあまり思い出せない。だから『思う』なのだ。

悪いけれどこのことは、今灰寺くんに話すことではない。

 

カウンターの向こうの広いスペースへと向かう。

やぱり何もない…と思いあたりを見回した瞬間。

 

カウンターの裏側に黒いダンボール箱を発見した。ガムテープの封が貼られてある。

 

「灰寺くん、おかしなダンボール箱があったんだけど…」

それを聞いた灰寺くんがポストから素早くカウンター裏へと向かう。

「どうしたんか?子猫でも捨てられてるんかね。捨てたやつ酷いなあ…」

灰寺くんがしゃがみ込み、ダンボールをじっと見つめると、それを軽く揺らしたり叩いたり、持ち上げたりする。

揺らした時にゴトゴトという音がする事以外は、何も起こらない。

「動物じゃあらへんな、結構重いし。開けてみる?」

「じゃあ、確認してみよう。爆弾だったら怖いけど…」

彼はガムテープを剥がし、蓋を開ける。

 

中身は、大量に入ったA4サイズのポスターだった。

黒い背景に、地球を横断するようにペンの置かれた、大きい奇妙なロゴマークが印刷されている。

マークの下には、白い文字が書かれている。

 

『絶望郷の住民へ 一切の希望をかの者らへと捧げよ

諸君は醜き絶望なり。歯車となって心を捨てよ』

 

「ぜ…絶望郷…?」

「なんやこれ…なんかの貼りもんか?」

絶望郷と、醜き絶望とされるその住民へのメッセージ。一切の希望を捧げるべき『かの者』。

メッセージが断片的すぎて、わたしも灰寺くんも意味を理解できなかった。

「歯車になるって…住民に言ってるのに、物になれって…意味がわからない…」

「絶望郷ってなんや?もしかして…このコロシアイを目論んでる黒幕は絶望郷からやってきたんか?」

灰寺くんの言葉でふと、コロシアイが始まった時にモノクマが言っていた言葉を思い出した。

 

『ボクは、絶望と希望が見たい。それだけなんだ』

 

モノクマが望んでいたのは希望と絶望。しかしあのコロシアイと処刑を見る限り、そこにあるものは絶望しかない。

あいつら…モノクマを操る黒幕は、本当に希望が見たいんだろうか。

絶望郷と呼ばれるわたしたちの知らない世界からやってきたのなら、彼らはより深い絶望を望んでいるんじゃないか?

 

「ごめん、鈴原姉ちゃん…頭こんがらがってきてしもうた…ちょっと外の空気吸ってくる」

灰寺くんが立ち上がり、郵便局のドアから外へと出る。

 

わたしたちが知らない世界。

黒木さんの言っていたスナッフフィルムとの関係はあるんだろうか。

 

少し気分が悪くなってきたので、外に出よう。

 

 

 

 

郵便局の近くには四つの木製のログハウスがあった。

窓はカーテンで閉ざされ、どの部屋のドアを開けようとも開かない。

…これ以上開けるのはやめておこう。

 

わたしは崖の長い階段を下り、エリア北の図書館へと向かうことにした。

 

 

 

 

威厳を感じさせる、白いレンガ建ての大きな図書館。

 

扉を開けて中に入ってみる。白く塗られた壁や様々な本が入った棚。図書館にはよくある光景だ。

高い棚に掛けられたはしごに登った梅田くんが、一冊の本を取り出している。

はしごの下には…大量の本が入った袋がある。

『超高校級の図書委員』である梅田くんだから、部屋に持っていって読むのかな?

 

梅田くんがはしごから降りてきて、本を袋の中へと入れる。

「梅田くん、この本どうするつもりなんだ?」

「…袋の中の本のタイトル見たらわかるだろー、あとで燃やして捨てるんだよー」

袋の中身を見てみると…『殺人鬼大百科』『子どもが読んではいけない殺人の話』などの本が入れられている。

「随分と物騒な本ばかりだけど…勝手に燃やしていいのか?」

「校則見てみろよー。そこには『監視カメラの破壊を禁じます』とは書いてあるけど、本を捨てたらいけないって書いてないんだなー。

本は大切にしたいんだけど、これに殺人の方法が載ってたら危け…うぎゃあっ!?」

はしごが梅田くん目掛けて倒れてきた。避けることができなかったのか、梅田くんにぶつかってしまった。

「大丈夫か!?」

「…うう…平気なんだなー…ダイナマイト投げられた時よりはマシなんだなー…」

梅田くんは頭を抑えている。ダイナマイトを投げられるってどういう状況なんだ…?

それにしても、梅田くんの言うことには一理あるかもしれない。

 

新書コーナーには本は一冊も置かれていなかった。

わたしたちが奪われた記憶と、何か関係があるんだろうか。

絶望郷のことも、書いてあるかもしれないのに…

 

 

 

 

象牙色に塗られた内装の、線香やタイヤを広告するブリキの看板が貼られた博物館に入ってみる。

 

エントランスには…外国製と思われる古いテレビ、天井にはシャンデリア、ガラスケースの中には火縄銃や動物の骨などが飾られている。

火災防止のために用意されているであろう消火器も隅に備えてられている。

 

「何でじゃ…」

そして、拳を握りながら苛立ちを見せる男…湖林くんもいた。

「なんで、何も置いてないんじゃ…!博物館のくせに、日本刀も!日本鎧も置いとらんのじゃ!」

「そりゃ仕方ないよ。だって、パンフレットにも書いてあるようにここ…ヒストリヱランドはハイカラロマンがテーマだから、戦国時代のものは…」

「…火縄銃が置いとるじゃろうが。あれは戦国から江戸の末まで使われておった。

これならオレの宗三左文字、義元左文字、薬研藤四郎、圧切長谷部、長篠一文字もレプリカぐらいは置いとると思ったんじゃが…

ここの責任者はどこにいるんじゃ!?クマでも花でもいいから出てこい!」

 

「はいはーい!どうもオマエラの人生以外の責任は取ってあげるモノクマでーす!」

 

…扉から、スキップしながらモノクマが出てきた。

「おいモノクマ、なぜ戦国のものが火縄銃程度しか無いのか」

モノクマに凄まじい威圧をかける湖林くん。どれだけ戦国好きなんだ。

 

「湖林クンは頭そんなに悪くないよね?なら『驚異の部屋』だって知ってるはずだよ?」

 

「…15世紀から18世紀までのヨーロッパに実在した、博物館の原型じゃ。奇妙な絵画や化け物らしき生物の剥製、骨董品など珍しいものならなんでも置かれた…」

湖林くんがスラスラと答える。まあ『超高校級の歴史学者』なら当たり前だろう…。

 

「正解!さすがは自分を織田信長だと思い込んでいる一般歴史学者だね!スケートやったら?」

 

「…あ?」

湖林くんはモノクマを睨みつける。いかにも殺意の波動に目覚めそうな雰囲気を醸し出している。

 

「この博物館は『驚異の部屋』がモチーフなんだよ。火縄銃が置いてあるのはヒストリヱランドの元園長の趣味で、深い意味はないと思ってて欲しいなあ。じゃ、ボクはウサギ狩りで忙しいからじゃあね〜!」

 

モノクマは扉から外へと出ていった。ウサギ狩りって何なのか。

「逃げたか。ここから出たら蝦夷へクマ狩りでもしようかのう…」

蝦夷って北海道だっけ…?湖林くんのことは置いておいて、博物館の中を探索しよう。

 

 

 

博物館には三つドアがあり、それぞれに『大』『中』『小』と書かれてある。

まずは中央の『中』の部屋へと入る。薄暗い部屋にはモノクマの言う通り、生物の剥製やホルマリン漬けが大量にあった。

それにしても、部屋が暗いのに照明のスイッチすら無いのか…。

 

 

 

右の『小』の部屋は狭い部屋だった。古い地球儀やランプ、ドレッサーなどの骨董品が置かれている。

カーテンで閉ざされているのかやはり暗いし、照明のスイッチがない。

ランプは電源コードが繋がれている。電源をON、OFFと変えてみるが、全く付かなかった。

 

 

 

左の『大』の部屋。油絵や白黒写真が壁に、1/2くらいの大きさの複葉機のレプリカ、巨大なデッサン人形がある。

やはりカーテンで閉ざされているのか暗い…と思った瞬間。明かりが付いた。

湖林くんがどっかにあるスイッチを押したのかな。

複葉機は何やら太い電源コードで繋がれているが、本当に動くんだろうか。

座席を見てみると、モノクマコインが三枚ほどあった。やはりモノモノマシーンをしなければならないのかな。

 

 

 

博物館のエントランスに戻る。湖林くんは、姿を消していた。

出入り口の付近をよく見てみると、『ON』に向けられたスイッチを一つ発見した。

スイッチを『OFF』にすると、シャンデリアの明かりが消える。これが、照明のスイッチかな。

それと同時に、『中』の部屋から誰かの「ぎゃああああ!何者じゃ、何しとんじゃ!?」という大きな声が聞こえてきた。

これ、博物館の全ての部屋の明かりが付く仕組みなんだろうか。

「湖林くん、ごめん…」

スイッチを『ON』にした後、わたしは博物館からそそくさと出ていった。

 

 

 

 

占いの館と看板に書かれた、紫のレンガで出来ている建物。

 

棚にはロウソクやお香、羽ペンとインク、タヌキの置物や本などが並べられている。

これ、全て占いに使うのかな?それとも、ただの飾りなのかな?

「…タンポポ、どうして俺がやんなきゃならないの?」

「檀殿もどうぞ。天の声を聞くやり方で占ってみませんか?そうすることで、救われることもありますよ」

檀くんと、蒲生くんの声がする。説得しているんだろうか。

「どれだけ願っても、どうせあいつは生き返らないんだ。なら別にいいよ」

蒲生くんの手を払い、去っていく檀くん。

「檀殿なら救済を信じてくれると思ったのですが…やはり初回特典が必要でしょうか」

初回特典でもダメだと思う…。

 

奥にある紫のカーテンの中を覗いてみる。テーブルに水晶玉と、タロットカードが置かれているだけだった。

 

 

 

 

一番南のお化け屋敷。入り口に大きな鳥居がある、蔦の生えた和風の屋敷だ。

 

暗闇には慣れている。だから大丈夫だろう。

そう言い聞かせ、わたしはゆっくりとした足取りで入っていく…。

 

最初は明るい、廊下のようなエリアだった。

でも大量の西洋人形が散らばっている部屋、赤いクレヨンで『タスケテ』『イタイ』と沢山書かれた部屋、人の手や足が天井からぶら下がっている部屋…。

どの部屋も不気味な雰囲気を醸し出している。

しかも、だんだんと暗くなっていく。ライト、持っていればよかったかな。

 

やがて、完全な暗闇の世界へと放り出された。

暗闇ばかりで何も起こらない、と思った瞬間…

 

 

腹から内蔵を出した男と、首の取れた女の死体が…

 

赤いライトに照らされて。

 

 

その傍らで、全身血のついた包帯の小さな少女が。

 

「ユル…サナイ…」

 

大きな、痛々しい声をあげながら、笑ってこちらを見ていた。

 

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

その瞬間。部屋の照明が明るくなった。

よく見てみると男女の死体も、包帯の少女もただのマネキンだった。

 

「あはははは!大成功だわ!」

部屋の向こうのドアから一人の少女がニコニコしながら出てきた。黒木さんだ。

「大成功って…心臓止まるかと思ったのに…!」私は怒りを抱えながら黒木さんに語りかける。

「このお化け屋敷、ラストが微妙だったからちょっと改造してみたの。テーマについて知りたい?」

「いや、別に…あと、今の状況でさっきのは不謹慎じゃないかな?」

「まあ確かにね。でも全年齢向けのお化け屋敷にも、こういうグロテスクな仕掛けは必須よね」

本当に、必須なのかな…?

 

 

 

第三エリアで調べられる場所は全て調べた。レストランへ戻ろう。

 

 

 

 

レストランに皆が集合する。

「脱出についてのヒントは…どこにもありませんでしたね」

皆の様子を見る限り、前と同じくわたしたちの行動範囲が広まっただけ…みたいだ。

勧誘した所しか見かけてない蒲生くんが言うことじゃないと思うけど。

「旅館は隅々まで見てみましたけど…本当に酷かったですわ。冷蔵庫の食材以外は…」

一ノ瀬さんの言葉で思い出したが、食料はどこから来ているんだろう。

 

「まためんどくせえことになってきたみたいだな。ところでさ…絶望郷って知ってる?」

 

誰もが気だるそうな声に振り向いた。檀くんの声だった。彼は右手に丸められた紙を持っている。

「…どうしたんだ、檀君!?何か脱出の方法でも見つかったのか!?」

「見つかってないよ。ただ…俺の知らない世界について、崖の上の郵便局にあったんだよね」

檀くんが紙をテーブルに広げる。わたしと灰寺くんがダンボールの中から見つけた、あのポスターだ。

 

『絶望郷の住民へ 一切の希望をかの者らへと捧げよ

諸君は醜き絶望なり。歯車となって心を捨てよ』

 

「ぜ、絶望郷?そんなの知らないよ!」

「オレも聞いとらん!学生のアート作品みたいじゃが…これが黒幕の手がかりだと言いたいんか!?」

騒ぎの中、檀くんが続ける。

「絶望郷ってのはディストピアとも呼べるな。理想郷、ユートピアの反対となるもの。簡単に言えば『秩序を守るために民衆の自由を奪った世界』『極端なまでに秩序を守る世界』…

よく個人が政府に監視されたり、逆らったら殺されるSFあるよね?それがディストピアの世界。この前モノクマも言ってたよな?オマエラの住む世界は、謎の隕石をきっかけにすっかり変わってしまったって…」

「何が言いたいんじゃ。黒幕はディストピアの支配者、この世界は隕石のせいでディストピアになったってことかのう?」

「多分そうだよ。信長もどきにしては理解が早いね」

「…誰が信長もどきじゃ!巫山戯てるんか!?」

湖林くんが、檀くんにキレている。今はそういうことじゃないと思うんだけど。

「ディスなんとかになったってことは…僕たち、逆らったら殺されるってことなんか!?」

「大丈夫よ、超高校級の才能を持つ私達ならきっと生きられるわ」灰寺くんを慰めたのは黒木さんだった。

「ここまでの黒幕の出したヒントをまとめてみると…私たちが記憶を無くした数年間のうちに謎の隕石が降った。

その後、世界は隕石から拡散されたウイルスで滅茶苦茶になった。そして世界は黒幕の支配する絶望郷になって、黒幕はコロシアイを起こした。そんな感じかしら?」

「黒木嬢の言う通り…かもしれません。もしかしたら、僕達に逃げ場はないのでしょうね…」

「そ、そんな後ろ向きなこと言うなよ蒲生!アタシたちが倒せばいいだけじゃねえか!」

二階堂さんは焦っているようだ。

 

「でも…どうしてこんなコロシアイなんか起こしてるの…?絶望郷ってのができたのはわかるけど、コロシアイを起こす目的について、なんか飛んでない?」

「コロシアイの目的としては…絶望郷の支配者がルール違反した住民を処刑するためにコロシアイを起こしてる…みたいな感じだろうね。ディストピア的に考えれば」

雨崎さんが震えた声で質問すると、檀くんが答えた。

 

コロシアイの目的。

あの裁判後のオシオキと、廃園した遊園地・ヒストリヱランドを舞台にしたデスゲーム…。

 

わたしたちのコロシアイは、絶望郷の人々に見られているのだろうか…?

わたしたちは、反逆した絶望郷の人間なんだろうか?

それとも、本当は誰にも見られていないんだろうか?

 

じゃあ…わたしが思い出した記憶の中の願い…『自由になりたい』ってのは…

絶望郷から自由になるってことなのかな?

 

「じゃあ、どうして超高校級の才能を持った高校生たちが集められたのかしら?大人でも殺す人は殺すのに…ってあれ?」

考察話の主であった檀くんは、扉からどこかへと逃げていった。テーブル上のポスターを残して。

「檀くん!ちょっと待ってくれないか!?」未隅くんも彼を追いかけて出ていく。

「あいつは気まぐれだからな。図書館に置いてた保健の本読もうと思ったんじゃねえの?」

「違うと思う…保健の本、男子はそんなに好きなのかな…?」気を取り直した二階堂さんに語りかける。

「好きに決まってるだろ。性について書いてあるページなんて少ねえのにな!」

そういえば、わたしの受けた授業ってどんなのだったんだろう…?ほとんど記憶にない。

 

「それにしても、心を捨てるって…心を持ってるからこそ人間なのに…」

絹川くんが、小さな声で呟いたような気がする…

 

 

 

 

夕方になった。暗くなる前に、気晴らしに第一エリアのお土産屋でモノモノマシーンを回そう。

 

相変わらずモノの殿堂と言うべきお土産屋。そこのガチャガチャにコインを入れて回すと…。

カプセルが出てきた。さて、中身のアイテムは…。

 

『津田遠江長光・レプリカ』

織田信長が持っていた太刀。本能寺の変の後、明智光秀が奪い家老のものとした。

そんなドラマある刀のレプリカ。

 

『ゾートロープ』

くるくる回しながら穴を覗くと、静止画が動いているように見える円筒形のもの。

『生命の輪』とも呼ばれる。

 

『スモークサーモン』

鮭の切り身に塩やハーブをまぶし、サクラのスモークチップで燻製にした食材。

香ばしさと中々の塩加減が癖になる。

 

『男と女のロマン』

見た目は黄色い桶だが、持っているとなぜかロマンを追い求めたくなる。

誰かに渡すのもいいが、持っているといい事がある。

 

『曲げわっぱ』

薄く切った木材を曲げて、木製の箱にした伝統工芸品。

弁当にすると中々風流である。

 

『怪人ポロリ・ニューヨークへ行く』

小学校高学年に人気の児童文学。

ブタの怪人がニューヨークのカジノに挑戦するというシビアなストーリー。

誰かに渡すのもいいが、持っているといい事がある。

 

『ペンライト』

ペンの形をした懐中電灯。様々な色に光るタイプ。

アウトドアだけでなく、アイドルの応援にも使われる。

 

マシーンから出てきたアイテムは、袋に入れて全て持っていこう。

 

 

 

 

夕食のハンバーグ定食を食べ、部屋に戻る。

絶望郷と、コロシアイの目的。

考えても…答えは全く出ない。

 

シャワーを浴び、浴衣に着替えて、わたしは床に就いた。

 

 

 

 

南極の氷河の中から恐竜が発見されたらしいね。オマエラはどうする?

玉乗り仕込む?それともビスケットを増やす要領で叩いてみる?

動物愛護の観点から見ても叩くことはオススメしないなあ。

普通に考えたら恐竜って叩いても増えないし。

ベストはメタルを聴かせることだね。ボクらしくないけど所謂平和的解決ってやつだよ。

泣いてる赤ちゃんもクラシックを聴かせればすぐ寝ちゃうでしょ?恐竜もメタルを聞いたらきっと喜ぶよ。

「ヒャッハー!プテラノドンなど(自主規制)してやるわー!」みたいにさ。

そしてテンションが上がるあまりペンギンたちを食い荒らすんだ。あまりの暴れっぷりにタロジロもびっくり!

…あれ、よく考えたら平和的解決じゃなくね?




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