・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。
以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。
占いの館で、呆然としている中。
みんなの足音と、誰かの大きな声が聞こえてくる。
「梨々…ねえ、起きてくれ…目を…覚ましてくれ…!」
…ガラスケースを揺さぶりながら叫んでいる未隅くんの隣で、檀くんが何も言わずに彼の肩に手を置いている。
「まさか、雨崎まで死んでるのか!?」
「雨崎さん…昨日まで元気だったのに、どうして…!」
二階堂さんと絹川くんの声だ。
ああ、そうか。
一ノ瀬さんと、雨崎さんは…死んでしまったんだ。
冷たく苦しい現実を見せつけられ、思わず拳を握る。
「はいはーい!まさか第三、第四のコロシアイが始まるとは思わなんだ!ところでライトノベルで思わなんだと出てくると、なんだか堅苦しい雰囲気になるよね!」
ガラスケースの載せられたテーブルの隅から、モノクマが出てきた。
「まさかまさかの五回目は、マンネリ打破のダブルキル!今回の犠牲者は、女嫌いのお嬢様女将・一ノ瀬さんとリア充チビモデル・雨崎さん…まさかの女子が五連続で死ぬとはねえ…流石に男性読者がキレるんじゃなーい?」
相変わらずの、1ミリも笑えないモノクマのトーク。
「…モノクマ、ふざけるのもいい加減にせい」
湖林くんがため息をつく。顔が疲れているように見える。親しかった一ノ瀬さんが、あんな殺され方をしたんだから無理もないだろう。
「男性キャラ代表?の湖林くんも唯我独尊男子から、他人の気持ちを慮れるように成長したんだね!そんな湖林くんだけじゃなくて、ここに生きているオマエラに朗報!捜査に役立つ『カラフラファイル3』アーンド!『カラフラファイル4』を電子生徒手帳にプレゼントします!」
すぐにポケットから電子生徒手帳を取り出し、カラフラファイルを開く。
被害者である二人の情報が、それぞれ別に書かれている。
『被害者となったのは一ノ瀬秋穂。
死因は心臓を刺されたことによる大量出血死。
死体発見現場となったのは旅館一階の混浴風呂。』
『被害者となったのは雨崎梨々。
死体発見現場となったのは占いの館。
目立った外傷などは見られない。』
少し、気になる所がある。
「ねえ、モノクマ。一つ聞いていいかな?」
「鈴原さん、ボクのTバックが見たくなったの?思春期だから?それとも寂しい夜の過ごし方を知りたいとか?」
どれも全然違う。わたしが聞きたいのは…
「藍葉さんの事件と同じで、どっちのファイルにも死亡推定時刻は書かれてないよね。あと、雨崎さんのファイルに至っては死因が書いていないけど、どういうことなんだ?」
モノクマは口に手を当て、うぷぷと笑いながら答えた。
「勘のいいガキだと思われるほどなかなか理解が早いね!とりあえず、ボクが言いたいのは…『捜査してみればわかる…と思うよ?』ってことですね。ゲーマー女子もそう言うと思うよ!」
「モノクマみたいな奴を除いたら、そんな不謹慎なことを言う人はいないと思う…」
流石の絹川くんもモノクマのジョークは笑えないようだ。
「あと一つ、質問があるんだけど…」
黒木さんが、手を挙げる。一体何を聞くんだろうか?
「どしたの黒木さん?今日のボクは朝から女子高生にモテモテで困っちゃいますね!」
「もしも、の話だけど…二つの死体が発見されたとして、二人のクロがそれぞれの被害者を殺していたとしたら…どちらのクロに投票すればいいのかしら?」
黒木さんらしいスマートではあるが、まるでゲームを攻略するかのような質問だ。
「二つの事件がほぼ同時に起こった場合って事でいいのかな?そのケースだと…先に殺人を犯した方が無罪放免になりますね!」
…え?
無罪、放免?どうして?
「そして…後ほど殺人を犯した方が、投票対象となり処刑されます!電子生徒手帳の校則にも書いておくから、オマエラはちゃんと確認してよね!
ってことで、ボクは伝説の木の下で待ち合わせするが如く…裁判場で待ってるよ!また会いましょう!」
「待て、モノクマ!」
モノクマは再び、テーブルに隠れて消えていった。
電子生徒手帳の『校則』をタップし、新しく追加された文章を目で追う。
⑬.2つの殺人がほぼ同時に起こった場合は、後に事件を起こしたクロが投票の対象となります。
⑭.なお、校則は追加されることがあります。
…仲間を殺しても大丈夫だなんてなんて理不尽な校則だ、と思う。
これが、現実なのか。
「梨々、梨々…ああ…起きてくれ…もう朝だぞ…」
「みのるん、随分とショック受けているみたいだな…」
「しっかりせい。雨崎も貴様の落ち込む姿は見たく無かろう。灰寺、貴様はどうするか?」
がくりとした様子の未隅くんを、檀くんと一緒に外に連れていこうとする湖林くん。
そうしていると、俯いている灰寺くんが二人に告げる。
「湖林兄ちゃん…僕、ここを見張っておくけん。本当はまだ辛いけど…落ち込んだままだったら一ノ瀬姉ちゃんがもっと悲しむから…」
「貴様もちゃんと何かを言えるようになったな。オレは未隅を連れ出した後、一ノ瀬の現場を見張っておくかのう」
未隅くんを抱え、湖林くんと檀くんは去っていった。
「じゃあ、アタシもここを見張っておくぜ。雨崎が死んだのは、アタシの責任かもしれねえからな…」
二階堂さんが拳を作り、力強く言う。
「ボクは検死だね。死んでしまった二人の為にも、本当のことを知りたいんだ」
「では、何かおかしなものがないか見てきますね」
「誰も近寄らない場所にこそ、ヒントはあるかもしれないわね」
「ヒントって…ゲーム気分でやるのはどうかと思うんだなー…」
わたしと絹川くん、見張りの為に残った灰寺くんと二階堂さん以外が、捜査の為に占いの館から出ていく。
皆が真実を突き止めるために、立ち上がろうとしている。
わたしも、真実を明かす為に…立ち上がらないと。
「……ちゃん、どうか、生き延びて…」
一瞬、頭の中で誰かの声が響く。
声の主はわからないが、なんだかわたしに勇気をくれそうな気がした…。
【捜査開始】
【コトダマ:カラフラファイル3】
被害者となったのは一ノ瀬秋穂。
死因は心臓を刺されたことによる大量出血死。
死体発見現場となったのは旅館一階の混浴風呂。
【コトダマ:カラフラファイル4】
被害者となったのは雨崎梨々。
死体発見現場となったのは占いの館。
目立った外傷などは見られない。
まず、死体のおかしな箇所を知るにはガラスケースを開けなきゃいけない。
「灰寺くん。ガラスケース、一緒に持ち上げていいかな?」
「ええで!割れないようにゆっくり持ち上げちゃる!」
…わたしと灰寺くんでガラスケースの端を死体が傷付かないよう持ち上げ、占いの館の空いているスペースにゆっくりと置く。
ガラス越しでない雨崎さんの死体は、やはり傷一つない。カラフラファイルに書いてある通りだ。
「それにしても、占いの館には水晶玉やタロットカードはあっても、こういうガラスケースはなかったよね。どこから持ってきたんだろう?」
「別の場所から持ってきたんじゃないかな。後、あの玉は水晶玉じゃなくて大きなガラス玉だと思うよ」
絹川くんがちょっとしたツッコミを入れたので、少し恥ずかしい。
それにしても一体、何の目的でガラスケースに死体を入れたんだろう…?
【コトダマ:ガラスケース】
占いの館にあった、雨崎の死体を入れていたもの。
鈴原たちが発見した時は占いの館のカーテンで覆われていた。
「雨崎さん。少し、触れるね」
絹川くんが手を合わせた後、検死を始める。
そうしている間に、周りを捜査してみよう。
辺りを見回す。左には壁が、右にはものすごく高い…恐らく3mほどの紫に塗られた棚がある。
タヌキの置物、羽ペンとインク、怪しげな本たち…ってあれ?
「探索した時にはあったはずの、ロウソクやお香がなくなってる…?」
「所詮は飾りだと思ってたけど、こう言うのが何か重要になってくるんだよな。例えば、本を取ったら隠し部屋とか」
二階堂さんが棚の本を一個取って、戻してみる。そんなドラマみたいなこと、あったりするのかな?
よく見ると、棚の一番下に何か瓶が転がっているのがわかる。
タヌキの置物を振ってみたりする二階堂さんの邪魔にならないよう、しゃがんで瓶を手に取る。
瓶のラベルには…『気絶薬』と書かれていた。封と思われるシールが取れていて、中身はほとんど入ってない。
「なんだこれ…ドラマでもこう言うの見たことねえぞ」
飾りであろう本型の箱を開いている二階堂さんがラベルを覗き込む。
これで、被害者を抵抗しないように気絶させたんだろうか?
他にも棚の中を見て探してみたけど、封が貼ってある未使用と思われる瓶や、『恐怖の都市伝説』『こっくりさん』などのオカルト方面の本などが置いてあるのが見えた。
【コトダマ:占いの館の棚】
3mほどの高さの棚。
棚にあったはずの蝋燭やお香が消えており、『気絶薬』と書かれた瓶が封が取れた、空の状態で置かれていた。
「なあみんな。あそこになんかギラギラしてるやつあるんやけど…取ってきた方がいいんか?」
灰寺くんが棚の一番上を指差す。見てみると、照明のおかげで光っているものが。そういえば、あそこは調べてなかったな。
「別にいいけどさ、梯子もねえのに登れるのか…?」
「僕、ああいう所に登るのはかけっこ並に得意なんや。じゃ、取ってくるで!」
心配する二階堂さんに灰寺くんが答えると、彼は棚板を梯子代わりにして登り始めた。
素早く棚の一番上まで登り、そこに置いてあった細長い『何か』を手に取る。
その『何か』は…長さ2mほどの、反った刃が特徴的な、金属製の薙刀だった。
「これ、下に落とすで。怪我に気をつけてなー!」
「わかった。みんな、離れてくれ」
わたしと二階堂さんがその場から離れ、灰寺くんが薙刀を下に放り投げると、カランという音を立てて倒れた。灰寺くんはすぐに降りていく。
薙刀を手に取ってみる。拭き取られただけだろうけど、血の痕は見当たらない。
「これ、結構重いね。なんでこんな」
「棚は高いし重いし、普通の男がここにあるテーブルに乗っても薙刀を取ることは出来んやろうなー」
灰寺くんの言う通りだ。これが、一ノ瀬さんを殺した凶器なんだろうか…?
【コトダマ:薙刀】
占いの館の棚の一番高い場所に置いてあったもの。
2mほどの長さを持つ。金属製で結構重い。
「死体、調べ終わったよ。カラフラファイルに書いてある通り、傷は全くなかったんだけど…少しおかしな所があったんだ」
絹川くんがわたしたちの方向を向く。検死が終わったらしい。
「一体何があったんだ?傷もなかったのに…」
「首あたりを調べたら、何か紐が見つかってね。少し引っ張ってみたらペンダントだったんだ」
「…ペンダント?」
雨崎さんの首付近を見てみると…茶色い紐と、青くて丸いガラスのトップが特徴的なペンダントが見える。一体どこで手に入れたんだろう?
「見たことあるぜ!これ、正真正銘雨崎のペンダントだ!」
「二階堂さん…わかるのか?」
「それが…動機が発表されるちょっと前に雨崎が付けてるのを見たんだけどさ、聞いてみたらさっき未隅と一緒に選んだって言ってたんだ。
けど、事件前の夕食の時には付けてなかったから『うっかり付け忘れたのか?』と言ったらショック受けてさ…」
次の瞬間、二階堂さんは悲しそうな顔をしていた。
「アタシ、事件の前日…ログハウスから出られた記念に雨崎と温泉入ってたんだよな。入浴時には付けてなかったし、そこで失くしちまったんだろうな…」
もしかしたら、雨崎さんはペンダントを取りに行こうとして犯人に…。
【コトダマ:雨崎のペンダント】
雨崎の死体に付けられた、青くて丸いガラス製のトップが付いたペンダント。
動機発表前にお土産屋で、未隅と一緒に選んだもの。事件の前日の夜、付け忘れたことを二階堂に指摘されている。
因みに雨崎は二階堂と事件の前日に温泉に入っており、そこで落としてしまったのかもしれない。
「ここの捜査も終わったやろ?二階堂姉ちゃんと見張っとくわ。二人とも、頑張ってな」
「わかったよ、次は、一ノ瀬さんが見つかった現場を見にいくね」
占いの館から出て行く。次は旅館へと向かおう。
◆
「アナタラー!捜査デート中失礼するのだ!」
旅館に入り、脱衣所に入ろうと電子生徒手帳を取り出すと…カラフラが後ろから話しかけてきた。思わずビクッ、とする。
「か、カラフラ!?どうしたの!?」
「流石の絹川くんもビックリだなんて…わーはアナタラの日常に折角溶け込めたと思ったのに…」
…後ろから不意打ちで話しかけられて驚かない人なんていないと思う。
「カラフラ…要件は一体何なんだ?」
「あそこの脱衣所についての話なのだ。本当なら入るのには電子生徒手帳が必要なんだけど、むしゃくしゃしたので…今はロックを解除して、電子生徒手帳なしでも男女両方の脱衣所に入れるようにしたのだ!」
むしゃくしゃしたから脱衣所のロックを解除?意味がわからないけど、電子生徒手帳をわざわざかざさないでいいのは面倒じゃなくなったってことか。
「じゃ、用件はここまで。グッドラックなのだ。心の中の自分を見失わないでね!」
カラフラは高くジャンプすると、わたしたちを飛び越え何処かへと消えていった。
わたしは電子生徒手帳を再びポケットに入れる。
「男子でも女子脱衣所に入れるんだろうけど、流石に抵抗があるから…男子の脱衣所から混浴風呂に入ってもいいかな?」
「…そうだね。じゃあ、女子の脱衣所に入ってくるよ」
それぞれに配慮し、わたしたちは別々の脱衣所へ入っていった。
◆
温泉から引き上げられ、タオルの敷かれた床に倒れて死んでいる一ノ瀬さんの側には、無表情の湖林くんが立っていた。
「鈴原と絹川か。浸かったままの一ノ瀬が気の毒に思えて引き上げたんじゃが…」
「ありがとう、湖林くん。調べやすくなったよ」
「早速調べさせてもらうよ。失礼するね、一ノ瀬さん」
絹川くんはしゃがみ、手を合わせてから検死を始める。
「そういえば、ヒストリヱランドに監禁された初日さ。一ノ瀬さん、女性に触ると蕁麻疹が出るって言ってたよね」
「それは本当じゃ。バニラも一ノ瀬も生きてた頃、一ノ瀬の全身が赤いぶつぶつだらけだったんでどうしたと聞いたら『バニラに思い切り抱きつかれた』とか言ってたんじゃ。あの女、もうバニラの近くには寄りたくないと泣いていたのう」
昔話を語る湖林くんは、どこか悲しそうな目をしている。
「しかし、一ノ瀬の体にはそう言ったものは見当たらなかったのじゃ」
そう言われ、一ノ瀬さんの死体に視線を向ける。肌に赤いぶつぶつは無い。
これが、犯人の手がかりになるのかな…?
【コトダマ:一ノ瀬の蕁麻疹】
一ノ瀬は女性に触ると全身に赤い蕁麻疹が出てしまう。
しかし、死体にはそれらしきものは出ていなかった。
「ねえ、一ノ瀬さんの着物の袖から、少しおかしなものが見つかったんだけど…」
しばらくして、絹川くんが顔を上げた。検死が終わったらしい。
「おかしなもの?あちこちを触ったらしいが、まさか一ノ瀬の身体を…」湖林くんから殺気が放たれる。
「違うよ!そこまではしてないよ!と、とりあえず、ボクの話を聞いて!」
「湖林くん!まずは落ち着いて信じてくれ!」
慌てる絹川くんを前に、キレそうになる湖林くんを抑える。
「…死体の様子を説明するね。一ノ瀬さんの死体は一回、細長いもので深く刺されただけだよ。両手に縛られた痕もある。
そして袖の中に、こういうものも入ってたんだ…」
絹川くんの手には、折り曲げられた濡れているメモ用紙。
無理矢理開いたら、破れてしまいそうだ。そう思った瞬間…。
「みんなを見守る自称理事長・カラフラの登場なのだ!」
脱衣所のドアの方面を向く。混浴風呂に入ってきたのは、カラフラだった。
「カラフラ、貴様は何をしに来たのか?」
湖林くんがカラフラに怒声をあげる。まずは話を聞いてあげて。
「そこの手紙、読めなくて大変らしいのだ。流石に破れたらおしまいなのでわーが読めるように乾かすのだ!」
「本当に乾かせるの?不正は流石にしないよね?」少し疑問に思ってしまう。
「そこは某軍もびっくりの世界いや銀河一の科学力で修復するのだ!じゃ、早く手紙を渡すのだ!」
「…わかったよ、カラフラ。それ以外は、何もしないでね」
絹川くんが持っているメモ用紙をカラフラに渡す。
「ありがとうなのだ。今日のアナタラの金運は五つ星。じゃあ、絶望に負けないでねー!」
カラフラは再び、混浴風呂から出ていった。
あのメモ用紙を手紙と言っていたけど、黒幕の立場だからわかるのか…?
「しかし、なぜ犯人は混浴風呂に一ノ瀬を投げ入れたんじゃろうかのう」湖林くんが呟く。
「犯人が男子か女子か、わからなくするためじゃないかな。例えば、女子が犯人だとして、男子しか入れない場所で人を殺せば、まず男子に疑いの目は向かうだろうし…」
絹川くんの考察は確かにそうかもしれない。しかし、本当にそれだけなんだろうか?
…脱衣所に入るには、その人の性別に合わせた電子生徒手帳が必要だった。抜け道はどこかにありそうだ…。
【コトダマ:絹川の検死結果】
一ノ瀬は心臓を細長い刃物で一回深く刺されている。
また、両手に縛られた痕跡あり。
【コトダマ:一ノ瀬の持っていた手紙】
一ノ瀬が着物の袖の中に入れていた手紙。
濡れているせいで読めない。
【コトダマ:脱衣所のロック】
男女に分かれたそれぞれの脱衣所に入るには、その人の性別に合わせた電子生徒手帳を脱衣所のドアの四角い枠にかざす必要がある。
「おい、二人とも。オレの話を、聞いてくれんか。裁判の証拠には、役に立たないじゃろうが…」
混浴風呂から去ろうとした時、湖林くんに引き止められた。
「なんでも聞くよ。何?」
「…昨日の夕方、一ノ瀬に突っぱねられたんじゃよ」
男性に従順な一ノ瀬さんが、男性である湖林くんを突っぱねる?一体どうして…?
「レストランで、一ノ瀬が一人で夕飯の支度をしておって、少し倒れそうになってたんじゃ。
じゃから支度を手伝おうとしたら、凄まじい剣幕で『私一人でも夕食の支度は出来ますわ』と叫んできてのう。
ちょうどレストランにいた未隅と雨崎、梅田もビビってたほどじゃ。オレも驚いた。あれほど男に甘い一ノ瀬が、手伝いを拒否するとはな。
…あの女は、一人でなんでも出来ると思い込んでいたのかのう…」
そう語る湖林くんにいつもの覇気はない。一ノ瀬さんは結局、一人で抱え込んでしまったまま死んでしまったのか…。
「湖林くん。どうか、彼女の側にいてね…」
「…ああ」
一ノ瀬さんの死体を見守る湖林くんに見張りを頼み、わたしと絹川くんは混浴風呂を後にした。
◆
旅館の厨房に入る。一ノ瀬さんを刺し殺したであろう凶器なら、ここにあるはずだけど…って、あれ?
作業台の上に、溶けて小さくなった氷や野菜や肉などの食材が並べて置かれていた。
台が水浸しになってるし、このままでは食材が台無しになってしまう…と考えている場合ではない。
絹川くんが大きな冷蔵庫に立ち寄り、ドアを開ける。あるはずの食材がどこにもない。
「大きなドアにも、小さなドアにも食べ物がないね。もしかして、台に乗ってるのが冷蔵庫の中身だったりするのかな」
確かにそうだろうな…と思い冷蔵庫に寄ろうとすると、何かが金属音を立てて足にぶつかった。
ぶつかったものを、拾い上げてみると…。
「…水で濡れた、包丁?」切れ味の良さげな、木製の柄の出刃包丁。血も何も付いていないけど、これも薙刀と同じく凶器候補になりそうだ。
血は水で洗い流したのかな…と思い、流し台の方向を向く。『消毒済み』の紙が貼られていて、しかも濡れていない。
「この包丁が凶器ならどうやって血を洗い流したんだろう?」
「血が付かないように包丁にビニール袋を被せたんじゃないかな」
「普通にビニールが破けて、血が付くと思う…」
絹川くんのビニール袋の話も、一応は頭に置いておこう。
【コトダマ:厨房の様子】
作業台の上に冷蔵庫の中身が全て出されており、水浸しになっていた。
また、水で濡れている木製の柄の出刃包丁が作業台の下に落ちていた。
流し台には『消毒済み』の紙が貼られていたので、使われた様子はないようだ。
◆
倉庫を物色してみる。モノクマコインを見つけた場所だが、ワゴンに置かれているシーツも食器も、使われた痕跡がない。でも…
「これ、少し水滴が付いてるけど…」
絹川くんがワゴンの下の方から見つけたのは萎んでいる、それなりに大きいであろうゴムボートだった。ポンプが近くにあるから空気を入れるのは容易いだろう。
「ちょっと膨らませてみる?」
「いや、ここは狭いしやめた方がいいと思う。でも、確かに所々水滴があるし…温泉にでも浮かべたのかな?」
わたし自身のちょっとした考えを言ってみる。温泉に浮かべて、薙刀か包丁で刺したのかな。目的はわからないけど…。
【コトダマ:ゴムボート】
旅館の倉庫に置いてあった大きなゴムボート。
少しだけ水で濡れている。
◆
旅館はまだ見ていない所が沢山ある。客室も見ていく事になった。
まず、客室の一つ・琥珀の間に行く。
畳とテーブル、座布団と床の間。何の変哲も証拠もない部屋だが、上をよく見るとエアコンが設置されている。
「エアコンに何かあったりしてね…」
そう言って、壁に付けられたコントロールパネルを見てみる。スイッチはOFFになっているが、ボタンを押し電源を入れてみると…
『冷房』
『設定温度 24度』
『タイマー 2時間』
という表示が、エアコンからの涼しい風と共に出てきた。
「…これ、エアコンだよね?」絹川くんがコントロールパネルを見つめる。
「そうだけど、なんでタイマーが初期状態のままで付いているんだろう?」
「いや、エアコンって、タイマーを付けるのかなと思って」
…絹川くん、エアコンは知っていてもタイマーが付いていることは知らないのかな?
よく見ると、コントロールパネルに貼られたシールには青い文字で『冷房・暖房にプラスして除湿除菌消臭機能あり!』と書いてあった。
しかし、部屋の中はそこまで暑くもないのになんで冷房に…?
水晶の間、瑪瑙の間も見てみたが、エアコンの設定がどの部屋のものも同じなこと以外は特に変わりはなかった。
階段で二階に行って、そこの客室も見てみよう。
◆
旅館の二階。珊瑚の間に入ってみる。やはり窓が小さい以外は瑪瑙の間と違わない洋室なのだが…。
テーブルの上に、誰かの電子生徒手帳が置いてある。扇子のストラップ付きだ。
「扇子ってことは…一ノ瀬さんのものかな?」
「ボクが一ノ瀬さんを調べた時は、こういうのどこにもなかったけど。まさかこんな所にあるなんて…」
電子生徒手帳を手に取り、電源を入れてみる。
『超高校級の女将 一ノ瀬秋穂』
やはり、一ノ瀬さんのものなのか。壊れてはないらしい。
そういえば、校則には電子生徒手帳について書かれてたよな…。
⑥電子生徒手帳の貸し借り、生存者からの強奪、紛失、破壊などを禁じます。
この校則と、落ちている電子生徒手帳が示すもの。それってまさか…。
【コトダマ:一ノ瀬の電子生徒手帳】
旅館二階、珊瑚の間に落ちていた電子生徒手帳。
壊された訳ではなさそうだ。
ついでに珊瑚の間のエアコンと翡翠の間も調べたが、やはり状況は一階の部屋と同じだった。
黄金の間の引き戸には何かが書かれた張り紙が貼ってある。
『説明が面倒なので捜査中はオートロックは外しておくのだ カラフラ』
…つまり、マスターキーなしでも開くってことなのかな。
黄金の間に入ってすぐの場所に、何やら光る物が落ちていた。刃物…ではなく、事務所のキーボックスにかけてあるはずの…。
「…マスターキーだね、これで黄金の間のオートロックが開くはずだけど」
「オートロックだったんだねここ。たくさん金塊が置いてあるからかな」
それもそうだけど、多分VIPルームだからだと思う。
ここのエアコンも、やはり24度の冷房と二時間タイマーが設定されていた。
全ての部屋のエアコンが同じ設定。それの機能に何か証拠があるのかな?
【コトダマ:客室のエアコン】
旅館の客室にそれぞれ設置されたエアコン。冷房・暖房機能と共に除湿除菌消臭機能が付いている。
どの部屋のものも二時間タイマーが設定されており、設定温度は24度だった。
【コトダマ:マスターキー】
旅館の脱衣所以外の全てのドアが開く鍵。
黄金の間のオートロックも開く。
◆
次に、事務所に入る。モニターが光っているものが一つある。普段は電源が切れているであろうパソコンに電源が入っているようだ。
そのパソコンの本体には、先程と同じように張り紙がある。
『パソコンスキルゼロのオマエラの為にヒントを一つだけあげますね!代価としてたい焼きとシャケも頂戴ね モノクマ』
モノクマも出てきて説明するのが面倒になったのか、と思いつつも、画面を覗く。
ウィンドウに『脱衣所・入場記録』と書かれている。その下には…
『0:29 F 7:45 M 7:45 M 8:13 F』
…この数字とアルファベットは何なんだろうか。
「えーと。数字は時間で、FとMはそれぞれ女性と男性を表してるんじゃないかな?」
「確かにそうだろうな。ということは…Fは女子脱衣所、Mは男子脱衣所って事になるね。そう考えると、7時45分に脱衣所に入ったのは死体を見つけた湖林くんと灰寺くん、8時13分のはわたしってことになるね」
「じゃあ、深夜に入った女子は誰なんだろう…」
犯人、あるいは一ノ瀬さんの死体を混浴風呂に投げ入れたのは女子の可能性が高くなる。
そこは慎重に考えなければならないけど…。
【コトダマ:脱衣所の入場記録】
旅館二階、事務所のパソコンに記録されていた。
『0:29 F 7:45 M 7:45 M 8:13 F』と書かれている。
他にもゲームコーナー、プレイルーム、一階と二階の大広間も見てきたが、証拠となるものはなかった。
旅館の捜査は終わった。次の場所へ向かおう。
◆
お化け屋敷に入る。廊下は相変わらず明るいが、それでもこれから向かうであろう不気味な部屋のことを考えると怖くなる。
「お化け屋敷、入ったことはないけど、本当に怖いのかな…」絹川くんがそわそわしながら呟く。
またライトを忘れてしまったな。でも、裁判の為には進まなければならない…。
やがて、西洋人形が大量に散らばる部屋にたどり着く。人形の一つを持った黒木さんもいた。
「黒木さん。誰かと捜査はしないのか?」
「捜査?別に一人でもできるわ。あとそこら辺を歩いている未隅を励まそうとしたら、どこかへ逃げていったわね…」
黒木さんの事だから碌でもない励まし方だったんだろうな…。
「ここのお化け屋敷は何度も見てきたけどね。今回見た時は部屋に落ちてる西洋人形がいくつかなくなっていたのよ。それ以外はお化け屋敷に変化はないわ」
よく見ると、第三エリアの探索の時に比べて人形の数が減っている気がする。数えてはないので、いくつかはわからないけど。
【コトダマ:消えた西洋人形】
お化け屋敷に置かれた西洋人形がいくつかなくなっている。
ここにはこれ以上怪しい所はないようなので、別の建物に行こうとした瞬間…。
「鈴原さんと絹川、ちょっと待ってくれるかしら?多分重要な証言があるんだけど」
「…どうしたの?」
黒木さんに引き止められた。それなら、先に言うべきだと思うんだけど…。
「昨日の夜の証言よ。ちょっと、おかしな事があったのよ…」
彼女は殺人事件が起きたばかりとは思えない笑顔を作り、口を開く。
「昨日の深夜、中々眠れなくてホテルの非常階段で読みかけの本を読んだり、階段を上り下りしたりしてたのよ。冷たい場所で暇を潰してるとインスピレーションが浮かんでくるしね」
「冷たい場所だと、逆に集中力途切れない?」
「絹川、世の中には色んな人がいるのよ?話を続けるわ。そうしていたら、一時くらいに誰かの階段を登る足音が聞こえて来たの。
折角だから荷物を片付けて部屋に戻って、ベッドに潜ったわね。それでも眠くならなかったから二時くらいに、外に散歩に行こうと思って部屋を出たの。
するとホテルのエントランスのソファに…蒲生が横たわっていたのよ」
「…蒲生くん?犯人にでも襲撃されたのか…!?」
「怪我とかの状況はよくわからなかったけど、一応カラフラを呼んで部屋に連れて行かせたわ。私には運べそうにないからね。カラフラ、花のくせに眠そうだったわね」
深夜なのに、ホテルのエントランスで倒れていた蒲生くん。一体何が起こったんだろう。
というか、夜に咲かない花の方が多いんだし、眠くなるのも当たり前なんじゃないかな…。
「ねえ黒木さん、一つ言いたい事があるんだけど…どうして時間がわかったの?」絹川くんが疑問を投げかける。
「電子生徒手帳を付けてればわかるでしょ」
そういえばあれ、現在時刻が隅っこに映るタイプだよね。大体のスマートフォンやパソコンはそうだけど。
【コトダマ:黒木の証言】
午前一時頃、ホテルの非常階段にいると誰かの足音が外から聞こえた。
午前二時頃、ホテルのエントランスに行くとソファに倒れている蒲生を発見する。その後、カラフラに運ばせた模様。
「重要な証言も聞けたし、次は博物館にでも行こうかな」
「そうだね。ここの部屋、人形の扱いが可哀想だし…」
絹川くんの人形師らしい台詞を聞きながら、二人でお化け屋敷の外へと向かっていった。
◆
「…」
博物館のドア付近に立っている未隅くんは顔を青くしていて、何も言わない。
今のところはそっとしておこう。
博物館のエントランスに入ると、床には火縄銃が散らばっていた。こういうのはガラスケースに入っているはずだけど…。
って、ガラスケース?
「そういえば、展示品を入れる為のガラスケースが一つ見当たらないね…」
「本当だ。もしかして、占いの館のあれも…」
雨崎さんの死体を入れたガラスケースも、博物館のものとほぼ同じものだった。誰かに拭かれたのか、少し綺麗にはなっていたけど。
【コトダマアップデート:ガラスケース】
占いの館にあった、雨崎の死体を入れていたもの。
鈴原たちが発見した時は占いの館のカーテンで覆われていた。
本来は博物館にある、展示物を飾るためのもの。何者かが占いの館に持ってきたようだ。
そう考えているうちに、『大』の部屋のドアが乱暴に開かれる。出てきたのは、檀くんだった。
「檀くん、ボクたちここを調べていたんだけど一体何が…」
「…『大』の部屋と、『小』の部屋だけ見ればいいよ」
檀くんはそう言い放つと、わたしたちの横を通り過ぎて博物館から出ていく。相変わらず単独行動が好きだな、と思ってしまう。
じっとしている訳にもいかないので、『大』の部屋に向かおう。
『大』の部屋に入ると、複葉機もどきに壁に貼られた絵や写真がある。
以前と全く変わりはないが…。
「カーテンが少し破れてる…?」
破れてるだけじゃない、一部分なくなっていた。これも証拠になるんだろうか。
【コトダマ:『大』の部屋の破れたカーテン】
博物館の『大』の部屋のカーテンが、破られて一部なくなっていた。
エントランスに出て、次は『小』の部屋に入ろうとする。と、絹川くんが床に小さな三角形の物質を見つけたようだ。
「これは…ドアストッパーだよね?」
「ドアに挟むと、動かないように固定できるやつだね。ドアが開かないようにすることもできる」
本当の用途は、換気や掃除のためなんだろうか。
【コトダマ:ドアストッパー】
博物館のエントランスに落ちていた。
これを使えばドアを固定できる。
ドアを開け、絹川くんと一緒に『小』の部屋へと向かうが…目に入ったのは惨状だった。
「なんで、こんなに焼けてるの…!?」
部屋の奥半分が黒焦げになっていた。部屋のカーテンに至ってはほとんどが燃えている。
「昨日の夜、ボクたちの知らない所で火事があったのかな…?」
「そうなると事件が起こったのは…夜の九時以降になるな。被害者も犯人も、わたしたちに見つからないように第三エリアに向かったんだろうし…」
床をよく見てみると、円柱型のずっしりとした物体…消火器が落ちている。上半分が緑色で、下半分が赤いものだ。
拾いあげ、ラベルの説明書きを読んでみると…『二酸化炭素消火器』と書いてある。
どうやら特殊な消火器みたいだ。安全栓は抜かれているので恐らくは使用済み。軽く振ってみたが、中身はどうやら空のようだ。
【コトダマ:二酸化炭素消火器】
博物館の『小』の部屋に転がっていた消火器。
中身が入っていない、使用済みのもの。
上が焼け焦げた棚も調べてみる。油式のランプがいくつかあるが、よく見ると全部燃料タンクが開けられていて、オイルも入っていない。
そういえば昨日見た時、ここの油式ランプには油が入っていたような…?
【コトダマ:燃えた『小』の部屋】
博物館の『小』の部屋の半分がなぜか黒焦げになっていた。
また、『小』の部屋に置いてある全ての油式のランプからオイルが抜き取られている。
窓も見てみると、狭い窓台にひび割れ、黒焦げになったランプが電源コードに繋がれて二つ置かれている。
「昨日壊れたランプじゃないかな、このランプ…」
「え、昨日ここで何かあったの?」
絹川くんは昨日博物館で起きたこと、知らないんだっけな。
「…あったよ。昨日湖林くんと一ノ瀬さん、灰寺くんが博物館を見ていたんだけど、灰寺くんが誤ってランプを床に落として壊しちゃったんだ。
結果、この部屋のゴミ箱にランプを捨てることになったんだよね」
そう言いながらゴミ箱を覗いてみる。割れたランプはやはりなくなっていた。
「もしかして…それが火災の原因なんじゃないかな?」
火事の中では電気火災に分類されるんだろうな、と思う。
【コトダマ:黒焦げの壊れたランプ】
博物館の『小』の部屋の窓台にひび割れ、黒焦げになったランプが置かれていた。
電源コードに繋がれている。恐らく、『小』の部屋が燃えた原因と思われる。
「あと、博物館について絹川くんに一つ教えたい事があるんだけど、いいかな」
「いいよ!どんなこと?」絹川くんは興味を持ってそうな表情で見つめてくる。捜査の為とはいえ、話すのは少し緊張する。
「エントランスの出入り口にスイッチがあるんだけどさ、それを『ON』にしたら博物館の全ての明かりが付いて、『OFF』にすると逆に消える仕組みになってるんだ」
「便利な仕組みだね。でも、部屋の一つずつにスイッチを付けた方がもっといいと思う」
「なんで、あんな仕組みにしたんだろうな…」
湖林くんの入った部屋を暗くしてしまったことを思い出す。ブレーカーとは少し似たものとはいえ、博物館の設計者にはもうちょっと何とかしてほしかった。
そうしたら火事も、起こらなかったと思うから…。
【コトダマ:博物館の照明スイッチ】
博物館のエントランスの出入り口付近に付いているスイッチ。
『ON』にすると博物館全ての明かりが付き、『OFF』にすると全ての明かりが消える仕組み。
博物館も調べ終わったし、情報収集のために図書館へ向かおう。
◆
博物館から出て、図書館へ向かおうとした途端。
「ねえ、死体発見アナウンス…あれが流れたタイミングはどうだったのかな?」絹川くんがいきなり聞いてきた。
「えーと…わたしは二人の死体を見ているんだけど、どっちも見つけた時には流れなかったよ。
一ノ瀬さんの時はわたしが第三エリアに向かう時にすれ違った、湖林くんと灰寺くんが見た瞬間に恐らく。
雨崎さんの時は多分、檀くんが死体を見つけた時に流れた…はずだった気がする」
「校則じゃ確か…三人以上の生徒が死体を見つけると流れるんだよね」
ということは、被害者二人の死体を最初に、朝に見つけた人以外が見ていると言うことなのか。
じゃあ、二つの死体の第一発見者は…?
【コトダマ:死体発見アナウンス】
三人以上の生徒が、死体を発見することで流れるアナウンス。
今朝一ノ瀬の死体が見つかった時は恐らく湖林と灰寺が発見した時に流れ、雨崎の時は檀が発見した時に流れた。
◆
そんなことを話しながら、絹川くんと共に図書館に入っていった。
「やっぱりあそこ、普通の火事は流石に起きてないよなー…」
梅田くんが図書館の中の椅子に座りながら、ログハウスの中から頂戴した本…『事故の原因大全』を読んでいる。
博物館で起きた火事については知っているみたいだ。
「梅田くん、図書館におかしなところとかはなかったよね?」
図書館に異変はないか聞いてみる。
「一つだけあるんだなー。ここのほんはいつも綺麗に並べられてるけど、これだけはなぜか返却ポストに入れられてたんだなー」
梅田くんはテーブルに置いてある一冊の本を差し出す。『暮らしと火災の危険』と書かれているが…?
「これなら、あの火事のこともわかる…はずだよね?」
この本で博物館で起こったであろう火事について知る為に『暮らしと火災の危険』の、電気火災についてのページを探して開いてみる。
火災が日常でどのようにして起きるのか、ということについて書かれた本らしいが…。
『使用中の照明器具は高い熱を発します』
『電球や器具を布や紙などの可燃性のあるもので覆ったり、近づけたりして使用しないように気をつけましょう。火災の危険性があります』
こんな記述が、わかりやすい図付きで書かれていた。
「紙製のランプシェードが燃えにくいのは、電球と紙の間にちゃんとした距離があるからなんだろうね」
「そんな感じだなー。紙の火なしで発火する温度は450度、白熱電球の表面の温度は最高で180度くらいだけど、だからと言って近づけたら燃えるからなー。絹川と鈴原も気をつけるんだなー」
紙の発火点については知らなかった。梅田くんは結構博識だな。
【コトダマ:『暮らしと火災の危険』】
図書館の本。火災が日常でどのようにして起きるのかということについて書かれている。
この本によると、照明器具に可燃性のあるものを近づけると火災の危険性があるとのこと。
なぜか図書館の返却ポストに入れられていた。
「そういえば、少し気になることがあったんだよね」絹川くんが、梅田くんに尋ねる。
「博物館の『小』の部屋に使用済みの二酸化炭素消火器って書いてあるものが落ちてたんだけど、使い方とか、どういう用途で使われているかとか書いてある本はないよね?」
「…絹川。流石に自分で調べた方がいいんだなー。何でも他人に聞くと何もできない人間だと思われるぞー」
「もしかして…梅田くんも消火器についてそこまで詳しくないのか?」
そう突っ込むと、梅田くんはギクリとした様子で苦笑いを浮かべた。
「うう…オレだからって何でも知ってるとは限らないんだなー…仕方ない、オレは消火器について書かれた本を探してくるんだなー」
梅田くんは立ち上がり、並木のように立つ沢山の本棚へと向かっていった。
…手がかりがあるであろう『事故の原因大全』まで持っていかれた。
待っておくわけにもいかないので、他の場所も捜査しようとしたその瞬間…。
「見つかったんだなー!消火器のカタログ一冊だけどこれでも大きな収穫だと思うぞー!」
梅田くんが早速薄めの本を持って走ってきた。
広い場所で探しているのにこんな一瞬で見つけるなんて、やっぱり『超高校級の図書委員』なんだなと思う。
図書館で大声出したり走るのはタブーだと思うけど…。
「ありがとう梅田くん。このカタログで、色々わかるといいんだけど…」
…カタログをテーブルの上で開き、緑と赤のカラーリングの『二酸化炭素消火器』の紹介ページを開く。
『二酸化炭素消火器は、噴出された二酸化炭素で酸素濃度を薄くして、消火するタイプです』
『汚れもなく、電気火災の消火に適しています』
『主に博物館や美術館で設置されています』
「…というか、消火器って色々な種類があるんだな。キャラクターとコラボしてるやつも売ってる」
「投げることで火を消す瓶みたいなものもあるんだね」
「二人とも、捜査時間過ぎるからカタログに夢中になるのもほどほどなー」
梅田くんの一声で我に返る。カタログもいいけど、もっと調べておかないとな…。
【コトダマアップデート:二酸化炭素消火器】
博物館の『小』の部屋に転がっていた消火器。
中身が入っていない、使用済みのもの。
カタログの情報によると、噴出された二酸化炭素で酸素濃度を薄くして消火するタイプ。
電気火災の消火に適しており、汚れも出ない優れもの。
「そういえば梅田くん。この本に、どこか引っ掛かる情報はあった?」
『事故の原因大全』について尋ねてみる。すると梅田くんは咳払いし、口を開いた。
「これの知識だけど、二酸化炭素は火を消せたりはできるけど、温暖化の原因になるだけじゃなくて結構危険なんだなー。
濃度の高い場所にいると数分で頭痛や眩暈や吐き気がして、しばらくしたら死ぬとか…そんな感じだった気がするんだよなー。
大量のドライアイスがある密室だとか結構危険だから換気には気をつけろよー」
「結構覚えてるね、梅田くん。すごいね!」
「あはは、絹川も知っておけば損はないんだよなー!ドライアイスで遊ぶ時とかなー!」
そんなやりとりをする絹川くんと梅田くんはまるで兄弟、いや家族のようだ。
【コトダマ:『事故の原因大全』】
梅田がログハウスから持ってきた本。様々な事故の原因や対策について書かれている。
この本によると、二酸化炭素の濃度の高い場所にいると数分で体に様々な異常が起こり、しばらくしたら死亡してしまうとのこと。
「あの、皆さん…少し気になるところがあったのですが…」
話しているうちに誰かの声がした。蒲生くんだ。
「蒲生?どうしたんだ?ネズミやピラニアの死骸でも落ちてたのかー?」
「ここに水槽はなかった筈ですが…まず、僕について来てください」
蒲生くんは踵を返し、どこかへと向かう。犯人の手がかりになるかもしれないし見てみよう。
目的地にたどり着く。図書館の隅の、少しだけ扉が開いた小さなショーケース。
中には…虫に食われてボロボロの一枚の古文書が入っている。
「開いてるけど…まさか捜査時に開けたとかじゃないよなー?」
「僕がこの古文書を見つけた時は何故か開いていたんですよね。どうやら日本語で書かれているようですが…証拠になりますか?」
「異常事態が起こった時以外、こういうショーケースが開いてるとは思わないし…とりあえず解読してみる?」皆に提案する。
「じゃあ、ちょっと取り出していいかな?ケースに入ったままだと読みづらいだろうし…」
「それに賛成。ねえ、誰かメモ帳持ってる人はいる?」
「カウンターにあったメモ用紙とペンなら一応は持ってるんだなー。じゃあオレがメモしていくんだなー」
絹川くんはショーケースを開き、ゆっくりと古文書を両手で摘んでケースの上に乗せる。
読もうとしても…文字が、虫食いと汚れで所々読めない。それでも梅田くんは、メモ用紙にペンを走らせていく…。
『■■■■の■■き
ガラスの■■■けに■■■■させるも■■■れる
まんげつ■■かりが■■くはいるへやで■■■■
あ■■■ろうそくにひをつけおこう■■■、だいのうえにおく
い■■■とに■■■うをだいのうえ■■せる
■■じはじゅ■■■■■え、■■■ものは■■に■のし■■■■やり■■■さす
■■■えは■■、いけ■■かべる
■■■■■せるものはか■■け■いれたまま、し■せい■■しょにおく
に■■■■からこ■■した■■■きは■■■■■■』
「読める所は読めるけど、何の文章なんだー…?」
ほとんどがひらがなで書かれた古文書。
事件時にショーケースから取り出されたとしたら、この古文書は犯人にとってどういうものなんだろうか?
『ろうそく』や『おこう』は…もしかして占いの館から失われた蝋燭やお香だったりするのかな?
【古文書】
図書館の隅の小さなショーケースに入れられていたもの。
虫食いと汚れで一部分が読めない。
『■■■■の■■き
ガラスの■■■けに■■■■させるも■■■れる
まんげつ■■かりが■■くはいるへやで■■■■
あ■■■ろうそくにひをつけおこう■■■、だいのうえにおく
い■■■とに■■■うをだいのうえ■■せる
■■じはじゅ■■■■■え、■■■ものは■■に■のし■ぞ■■やり■■■さす
■■■えは■■、いけ■■かべる
■■■■■せるものはか■■け■いれたまま、し■せい■■しょにおく
に■■■■からこ■■した■■■きは■■■■■■』
『ピーンポーンパーンポーン…』
そう考察しているうちに、チャイムが鳴った。
「絶望の候、いかがお過ごしでしょうか。モノクマと申します」
「世の中腐ってると新世界の神もおっしゃっていましたが、腐った奴は死ぬよりも極刑が必要というのが世の中の総意であります」
「皆様、是非第一エリアの時計塔前にまでお集まりください。追伸、野菜スタンプでもピーマンのスタンプだけはご勘弁下さい」
人が死んでいる事態とは思えない放送だ。
「捜査は終わっちゃったけど、証拠は集められたから裁判に行けるね」
絹川くんは古文書をショーケースに戻す。梅田くんのメモがあるから一応は大丈夫だろう。
◆
第一エリア、時計台前。十人の生徒が集まっている。六人もの生徒が殺されていったということが嫌でもわかる。
「梨々、なあ…どこにいるんだ…答えてくれ…」
張り詰めた空気の中、未隅くんだけは虚ろな表情で雨崎さんを探している。
そうしていると、カラフラが台車に乗ってやってきた。
「あ、鈴原さーん!例のアレが読めるようになったのだ!」
カラフラがくるくる回りながらわたしに紙を渡す。一ノ瀬さんが持っていたあの手紙を乾かしたんだろうか。
「これ以上無くしても代替品はないのだ。人間の心のようなものだから大切にするのだ!」
手紙を受け取り、早速読んでみる。ボールペンの文字で、こう書かれていた。
『午後十時、博物館の『小』の部屋で待つ 湖林』
思わず固まってしまった。
一ノ瀬さんを心配していた湖林くんが、彼女を博物館に呼び寄せたのか…?
【コトダマアップデート:一ノ瀬の持っていた手紙】
一ノ瀬が着物の袖の中に入れていた手紙。
『午後十時、博物館の『小』の部屋で待つ 湖林』と書かれている。
「梨々はどこにいるんだろう?あの喫茶店で紅茶でも飲んでいるのかな?」
「…未隅殿。大丈夫ですよ。裁判が終われば、天が幸福を運びます」
独り言を繰り返す未隅くんを、蒲生くんが慰める。
「…蒲生。貴様は天というものをやたら信じているらしいが、天にまつわるもんならなんでも構わんわけか?貴様は…自分自身の頭で考えたことはないのか?」
湖林くんは、少し嫌そうな態度で蒲生くんに話しかける。
「天の祝福を信じぬとは。それを受ければ、誰もが救われる…僕はそう思います」
湖林くんの方向を向き、微笑む蒲生。それはまるで、何かを完全に盲信しているかのような顔だ…。
「全てを幸せにするものなど、どこにも存在しない。だからこそ…人間は、自分で考え、幸せを掴まなければならんのじゃよ…」
二人は密かに火花を散らし、お互いを凝視する。
「湖林兄ちゃん!流石にここで喧嘩するのはやめるんや!」
「そうだ!二人ともここで争ってもどうにもならないんだよ!」
わたしは灰寺くんと共に、二人の間に入って仲裁する。湖林くんがハッとした表情を浮かべる。
「蒲生。貴様とは、やはり相性が悪いようじゃ」
「…湖林殿、貴方が考えることこそ至高と言うのなら…僕も、天と共に考えてみたいと思います。」
蒲生くんは目を閉じて笑ってみせる。
「あいつは天とやらのことしか考えとらんのか…さて、その天は果たして蒲生を本当に救うのか…」
少し不安げで、苛立ちを隠せない湖林くん。
そのうち、時計塔の扉が開かれる。わたしたちは、エレベーターの中に入っていった。
◆
上がっていく鉄の箱の中にて。
「さっき蒲生が天とかなんとか言ってたけど。本当に怖いのは神とか超常現象とかじゃなくて、人間かもしれねーなー…」
梅田くんが、虚空に話しかけるように言う。
「それでも、ボクたち人間にしかできない事はあると思う。だからボクはみんなを信じていこうと思う」
そう返したのは絹川くんだ。皆を信じたい。それも理想だ。
ここから出るには、惨たらしい処刑を誰かが受けるという現実に、『信じる』という理想で立ち向かわねばならないんだ…。
◆
裁判場に辿り着く。
前回の犯人だった紅葉さんと、今回殺害された一ノ瀬さんと雨崎さんの席には植物や花が飾られた遺影が置いてある。
命が、どんどん失われている事を痛感する。
「三回目だし、裁判には慣れたよね?って事でボクはダラダラしながら待ってるので…オマエラは自分の席にお立ちくださーい!」
相変わらず豪勢な椅子に座るモノクマが寝そべりながら笑う。
わたしは悔しさと怒りを堪えて拳を握りながら、自らの陳述台に立った。
『超高校級のモデル』雨崎梨々さん…。
いつも明るく気さくで、そして恋人の未隅くんを誰よりも想っていた女の子。
そして、『超高校級の女将』一ノ瀬秋穂さん…。
悪態はついていたけど献身的で、やることには一生懸命だった女性。
この二人にあんな仕打ちをした、最悪の犯人は…わたしたちの中にいるのだ。
犯人を暴き、処刑しなければ、私たちは生き残ることができない。
絶望を、希望の弾丸で、撃ち抜かなければならない…。
だから、わたしたちは信じ、疑うのだ。
…これは生き抜くか死ぬか、命がけの裁判なのだから。