ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレと作者の自己解釈(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・17歳以上を対象とした人を選ぶ描写、残虐描写が含まれています。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


Chapter3 「怪奇!悪夢の湯けむりナイトメアは実在していた!」非日常編-学級裁判(後編)

・コトダマ一覧

 

【カラフラファイル3】

被害者となったのは一ノ瀬秋穂。

死因は心臓を刺されたことによる大量出血死。

死体発見現場となったのは旅館一階の混浴風呂。

 

【カラフラファイル4】

被害者となったのは雨崎梨々。

死体発見現場となったのは占いの館。

目立った外傷などは見られない。

 

【ガラスケース】

占いの館にあった、雨崎の死体を入れていたもの。

鈴原たちが発見した時は占いの館のカーテンで覆われていた。

(コトダマアップデート後)

占いの館にあった、雨崎の死体を入れていたもの。

鈴原たちが発見した時は占いの館のカーテンで覆われていた。

本来は博物館にある、展示物を飾るためのもの。何者かが占いの館に持ってきたようだ。

 

【占いの館の棚】

3mほどの高さの棚。

棚にあったはずの蝋燭やお香が消えており、『気絶薬』と書かれた瓶が封が取れた、空の状態で置かれていた。

 

【薙刀】

占いの館の棚の一番高い場所に置いてあったもの。

2mほどの長さを持つ。金属製で結構重い。

 

【雨崎のペンダント】

雨崎の死体に付けられた、青くて丸いガラスのトップが特徴的なペンダント。

動機発表前にお土産屋で、未隅と一緒に選んだもの。事件の前日の夜、付け忘れたことを二階堂に指摘されている。

因みに雨崎は二階堂と事件の前日に温泉に入っており、そこで落としてしまったのかもしれない。

 

【一ノ瀬の蕁麻疹】

一ノ瀬は女性に触ると蕁麻疹が出てしまう。

しかし、死体にはそれらしきものは出ていなかった。

 

【絹川の検死結果】

一ノ瀬は心臓を細長い刃物で一回深く刺されている。

また、両手に縛られた痕跡あり。

 

【一ノ瀬の持っていた手紙】

一ノ瀬が着物の袖の中に入れていた手紙。

濡れているせいで読めない。

(アップデート後)

一ノ瀬が着物の袖の中に入れていた手紙。

「午後十時、博物館の『小』の部屋で待つ 湖林」と書かれている。

 

【脱衣所のロック】

男女に分かれたそれぞれの脱衣所に入るには、その人の性別に合わせた電子生徒手帳を脱衣所のドアの四角い枠にかざす必要がある。

 

【厨房の様子】

作業台の上に冷蔵庫の中身が全て出されており、水浸しになっていた。

また、水で濡れている木製の柄の出刃包丁が作業台の下に落ちていた。

流し台には『消毒済み』の紙が貼られていたので、使われた様子はないようだ。

 

【ゴムボート】

旅館の倉庫に置いてあった大きなゴムボート。

少しだけ水で濡れている。

 

【客室のエアコン】

旅館の客室にそれぞれ設置されたエアコン。冷房・暖房機能と共に除湿除菌消臭機能が付いている。

どの部屋のものも二時間タイマーが設定されており、設定温度は24度だった。

 

【一ノ瀬の電子生徒手帳】

旅館二階、珊瑚の間に落ちていた電子生徒手帳。

壊された訳ではなさそうだ。

 

【マスターキー】

旅館の脱衣所以外の全てのドアが開く鍵。

黄金の間のオートロックも開く。なぜか黄金の間に落ちていた。

 

【脱衣所の入場記録】

旅館二階、事務所のパソコンに記録されていた。

『0:29 F 7:45 M 7:45 M 8:13 F』と書かれている。

 

【消えた西洋人形】

お化け屋敷に置かれた西洋人形がいくつかなくなっている。

 

【黒木の証言】

午前一時頃、ホテルの非常階段にいると誰かの足音が外から聞こえた。

午前二時頃、ホテルのエントランスに行くとソファに倒れている蒲生を発見する。その後、カラフラに運ばせた模様。

 

【『大』の部屋の破れたカーテン】

博物館の『大』の部屋のカーテンが、破られて一部なくなっていた。

 

【ドアストッパー】

博物館のエントランスに落ちていた。

これを使えばドアを固定できる。

 

【二酸化炭素消火器】

博物館の『小』の部屋に転がっていた消火器。

中身が入っていない、使用済みのもの。

(コトダマアップデート後)

博物館の『小』の部屋に転がっていた消火器。

中身が入っていない、使用済みのもの。

カタログの情報によると、噴出された二酸化炭素で酸素濃度を薄くして消火するタイプ。

電気火災の消火に適しており、汚れも出ない優れもの。

 

【燃えた『小』の部屋】

博物館の『小』の部屋の半分がなぜか黒焦げになっていた。

また、『小』の部屋に置いてある全ての油式のランプからオイルが抜き取られている。

 

【黒焦げの壊れたランプ】

博物館の『小』の部屋の窓台にひび割れ、黒焦げになったランプが置かれていた。

電源コードに繋がれている。恐らく、『小』の部屋が燃えた原因と思われる。

 

【博物館の照明スイッチ】

博物館のエントランスの出入り口付近に付いているスイッチ。

『ON』にすると博物館全ての明かりが付き、『OFF』にすると全ての明かりが消える仕組み。

 

【死体発見アナウンス】

三人以上の生徒が、死体を発見することで流れるアナウンス。

今朝一ノ瀬の死体が見つかった時は恐らく湖林と灰寺が発見した時に流れ、雨崎の時は檀が発見した時に流れた。

 

【『暮らしと火災の危険』】

図書館の本。火災が日常でどのようにして起きるのかということについて書かれている。

この本によると、照明器具に可燃性のあるものを近づけると火災の危険性があるとのこと。

なぜか図書館の返却ポストに入れられていた。

 

【『事故の原因大全』】

梅田がログハウスから持ってきた本。様々な事故の原因や対策について書かれている。

この本によると、二酸化炭素の濃度の高い場所にいると数分で体に様々な異常が起こり、しばらくしたら死亡してしまうとのこと。

 

【古文書】

図書館の隅の小さなショーケースに入れられていたもの。

虫食いと汚れで一部分が読めない。

『■■■■の■■き

ガラスの■■■けに■■■■させるも■■■れる

まんげつ■■かりが■■くはいるへやで■■■■

あ■■■ろうそくにひをつけおこう■■■、だいのうえにおく

い■■■とに■■■うをだいのうえ■■せる

■■じはじゅ■■■■■え、■■■ものは■■に■のし■ぞ■■やり■■■さす

■■■えは■■、いけ■■かべる

■■■■■せるものはか■■け■いれたまま、し■せい■■しょにおく

に■■■■からこ■■した■■■きは■■■■■■』

 

【学級裁判・再開!】

 

「あははははははは…あはははははは!これが我が崇拝者の知る者たちですか!誰もが硬直し、唖然とされている!なんという奇観でしょう!」

 

蒲生くんの様子がおかしい。

彼は血のように赤くなった瞳を見開き、こちらに笑いかけている。

 

「…おい、蒲生がどうにかしちまったぞ!?笑い方も口調もおかしいし、あそこまで偉そうな態度は取ってなかったじゃねえか…!」

二階堂さんが、蒲生くんに釘付けになっている。

当たり前だ。だって彼は、先程のように指紋を取られた時はともかくいつもは冷静な青年で、笑顔もあそこまで恐ろしいものではなかった。

あれは蒲生くんではなく、別の誰かなんだろうか…?

 

「うん。やっぱり、私の考えと見積もりは妥当だったみたいね」

こんな中でも様子を変えないのは黒木さんだ。

「あるスタッフから聞いた話だけど…ある宗教団体は拷問にも等しい過酷な修行や儀式により『天の人格』を宿した人間を、教祖として崇め奉るらしいの」

拷問のような修行で、『天の人格』を宿す?人々を幸せにするのが宗教なのに、どうしてそんな恐ろしい事が出来るのか…?

「もしかして、そこにいる蒲生は…その宗教の『超高校級の教祖』だったりしないかしら?」

蒲生くん…いや、『誰か』は、手を合わせて黒木さんの方向を見つめる。

「教祖…ですか。真であり審らかです。我はそこの泡沫の女の仰る通り『超高校級の教祖』。真名をヒミナム…と申します」

 

ヒミナム。

『超高校級の教祖』であり、蒲生くんの別の人格の名前。

泡沫の女と呼ばれたのは…黒木さんだろうか。檀くんみたいに人の名前を呼ばないんだな…。

 

「我が崇拝者から学級裁判と呼ばれる所業のことは聞いております。人の命運を賭けた、運命の甲論乙駁、そして出される死の判決。うむ。確かに皆が皆、気を引き締めておられるようですねえ。特にそこの、赤い外套の女…」

…わたしのこと?あとさっきから言ってる我が崇拝者って…蒲生くんかな?

「いかにも人を刺し、奪う事に慣れている…ただ、人の灯火を何よりも考えてきた…そういう情調と貫禄ですなぁ」

「人を殺すのに、慣れてる…?」

絹川くんも流石に戸惑っているようだ。

 

「にしても…あの蒲生が詩的で難しい表現使いまくってるとか、そりゃあ蒲生の時の記憶ねーのも当たり前だろうなー…」

「耳のない男、安堵なさい。我と崇拝者の関係は特別なものでして」ヒミナムが、梅田くんに視線を向け語りかける。

「崇拝者は我のことは憶えてはいませんが、我は崇拝者の記憶を有しています。しかし、崇拝者と我はいつの時も精神の中で通じ合うことができるのです」

「…蒲生はヒミナムが自分の別人格とは気づいてなくて、『天』と呼んでいる。そんな感じかしら?」

「その通りですなぁ!泡沫の女は中々聡いようです」

…黒木さんが、冷静な態度でヒミナムと会話している。

 

「あと、崇拝者についでですが。あやつが林檎色の女を弑しようとしていたことは認めましょう」

「林檎色の女…?し、しいしよう…?」

「一ノ瀬を殺そうとした、じゃろうな。しかしヒミナム。あんなにあっさり蒲生本人の犯行を認めるのか?」

「ですが崇拝者がそうなったのは…そこの燃えるような悪魔のお陰です」ヒムナムは手を広げる。

要するに、湖林くんが悪い…?どういうことなんだ?

「その話は後でしましょう。今は、犯人すなわちクロを暴けばよろしいんでしょう?」

「…話をはぐらかそうとするんじゃな…」

 

普通なら、殺人だけじゃなくても自分の犯行は認めないはず。特にここでは命に関わってくるし、たとえ生き残れたとしても仲間からの信用を失ってしまうかもしれないからだ。

ヒミナムは、この裁判を楽しもうとしているのだろうか…?

 

こんな空気だけど、わたしはヒミナムを信じたい…そう考えていた。

たとえヒミナムになっても、蒲生くんは蒲生くん、そんな理想を貫きたいと思っている。そんな理由だ。

こんな絶望的な世界じゃ、ただの、綺麗事だろうけど。

 

「ところで。学級裁判とやらは初めてなのですが。クロの証拠、と呼ばれるものがありますよね?例を言うと…沐浴者を監視するもの。それによって、クロは分かるのではないでしょうか?」

ヒミナムの言っていること、もしかして…

 

【コトダマ:脱衣所の入場記録】

 

「それって旅館の事務所にあった、脱衣所の入場記録のことだよね?脱衣所近くの四角い枠に電子生徒手帳をかざすことで、時間と利用者の性別が記録されるんだ。記録には『0時29分』の横に『F』の文字が映ってたんだけど…」

 

『0:29 F 7:45 M 7:45 M 8:13 F』

 

「性別は男子はM、女子はF。これを見る限り午後12時29分に脱衣所に入って、一ノ瀬さんの死体を混浴風呂に投げ入れたのは…女子かもしれないんだ。」

でも、ここは…ある方法を使えば、女子じゃなくても使えるようになるんだ!

 

【ノンストップ議論(脱衣所に入る方法)】

ヒミナム「林檎色の女を湖に入れるために、電子生徒手帳とやらを使われたのですか…

     まことに周りくどいですなぁ」

梅田「変な言い回じゃなくて、普通の名称を言えよなー…」

絹川「ところでみんな、脱衣所に自分とは別の性別で入る方法は…わかるかな?」

灰寺「<透明人間>になればいいんやろ!」

二階堂「流石に非現実的すぎるだろ…」

未隅「そりゃあ、<鍵を壊してしまえば>…きっと開くはずさ!ね、梨々!」

湖林「<誰かの手を借りれば>…入ることもできるかもしれんのう」

二階堂「<犯人の野郎が性別を偽ってた>…ってのはやっぱりねーよなぁ!」

ヒムナム「あはははは!やはり非現実的で非科学的ですなぁ!」

 

【コトダマ:一ノ瀬の電子生徒手帳】

「湖林くんに賛成だ!」

 

「旅館二階の珊瑚の間には、壊れていない一ノ瀬さんの電子生徒手帳が落ちていたんだ。それを使ったんだよ」

「電子生徒手帳…あれ、確か校則貸し借りはいけないって書いてなかったか?」二階堂さんが疑問符を浮かべている。

「皆、校則を見てほしい。『⑥電子生徒手帳の貸し借り、生存者からの強奪、紛失、破壊などを禁じます。』って書いてあるけど…『死者からの強奪』とはかかれてないよね。

殺した一ノ瀬さんの電子生徒手帳を奪い、脱衣所にそれを使って入場すれば…入場記録には『女性』として記録されるんだよ」

「校則の穴ってやつを使ったんだね。要するに、犯人は男の可能性もある…ってことかな?」

檀くんが髪を指に巻きながら考察する。裁判に積極的なのか消極的なのかわからないな…。

 

「あのさ、客室に落ちていたものといえば」絹川くんが白い手袋の付いた、小さな手を挙げる。

「黄金の間の入口近くに落ちてたマスターキー…あれは一体なんだったんだろう?」

「犯人がポイ、と投げ入れたとか、そう言うのじゃねえの?」

二階堂さんの推理は違う。一ノ瀬さんの行動に関係するものだとしたら…。

 

【選択:一ノ瀬が逃げ込んだ場所】

 

「一ノ瀬さんが、犯人から逃げるために入ったのが黄金の間なんじゃないかな?あそこにはオートロックがあるけど、マスターキーで開くことができる。旅館の設備を隅々まで見ていた一ノ瀬さんならわかるはずだ。

黄金の間の一ノ瀬さんを誘い出して、気絶薬を使った後に殺害した…そんなことができるのは…男子だけだろうね」

「男性の声さえ聞こえれば、一ノ瀬さんは安心する…というのもあるんだろうね」絹川くんが付け加えてくれた。

 

「成程成程。林檎色の女はそうやって弑されてしまったのですね。あの乙女は、崇拝者にとっては殺しやすかったと記憶しております」

それが、蒲生くんが一ノ瀬さんを殺そうとした理由なのか…?

「ねえ、ヒミナムくん…一つ質問があるんだけど」絹川くんだ。

「…殻の影法師。一体どうなされたのですか」

そう呼ぶと、ヒミナムは彼にギロリとした視線を向ける。

「ヒミナムの教団って、儀式をしているんでしょ?…なら、図書館にあったある物のことも、わかるのかな?」

 

図書館にあったある物。それって…。

 

【コトダマ:古文書】

 

「確か、梅田くんがメモしていたやつだったよね?」

「嗚呼。図書館の玻璃の牢に入れられた、あの古びた紙ですか」

ヒミナムの赤い瞳が、ギョロギョロと動いている。玻璃の牢って、ショーケースのことかな…?

「アレは、我と我を崇め奉るごく一部人々のみに伝えられた、禁忌の書…の一つです」

赤い瞳孔はやがて停止し、梅田くんを狂気の視線で見つめる。

「え?オレなのかー…?まあ、メモしてるのはオレだけど…」

梅田くんは苦笑しながら、ズボンのポケットからメモを取り出す。

「それにしても、どうして禁忌の書なんかがここの図書館にあったんだろう…?」

 

「そんな些細なこと気にしなくていいのだ!」

 

カラフラが飛び跳ねながら、絹川くんの素朴な疑問に答えてくれた。

 

「じゃあ、みんなに見せてやるからなー。二階堂、これを見た後は湖林に回してくれねえか?」

梅田くんがメモ帳の古文書の内容が書いてあるページを開き、隣の二階堂さんに回そうとする。

 

…が、その直後にモノクマの背後に何かが映されたスクリーンが降りてきた。

ポカンと口を開けながら、梅田くんは硬直する。

 

「ぶっちゃけ梅田くんのメモ帳は短小サイズで見づらいんでね、古文書の内容を大画面で見れるようにしてみたんだ。どう?ボクってデキるクマでしょ?」

「残念ながら修復する時間はなかったけど、特別に見せてあげるのだ。くひひ…」

 

モノクマが妙なポーズを取り、カラフラは左右に揺れる。

「お、これで見やすくなったし、こっちのが時間がかからないからいいな!」

「…オレのメモ、全部無駄だったのかー…?」

嬉しげな二階堂さんの隣の梅田くんは、メモを落としてしまった。

 

「梅田くん、大丈夫だよ…メモ帳はいつか役に立つと思うからさ…」

必死に慰めるも、梅田くんは悲しげな表情のままだ。

 

しかし、今回のモノクマは妙に協力的だ。簡単に犯人がわかってしまいそうだけどいいのか…?

古文書が映ったスクリーンを見る。あの時発見したものと同じ文章が書かれてある。

 

『■■■■の■■き

ガラスの■■■けに■■■■させるも■■■れる

まんげつ■■かりが■■くはいるへやで■■■■

あ■■■ろうそくにひをつけおこう■■■、だいのうえにおく

い■■■とに■■■うをだいのうえ■■せる

■■じはじゅ■■■■■え、■■■ものは■■に■のし■ぞ■■やり■■■さす

■■■えは■■、いけ■■かべる

■■■■■せるものはか■■け■いれたまま、し■せい■■しょにおく

に■■■■からこ■■した■■■きは■■■■■■』

 

「虫食いと汚れはあるけど、隠れてない文章から推測すれば一部のものはわかりやすそうだね。ねえヒミナム、なんて書かれているかわかる?」

「…」

静寂が流れる。どうやら、ヒミナムは答えてくれないらしい。

 

「じゃあ、みんなでわかる所から答えていこうよ。まずは『まんげつ』の行からだね」

絹川くんが澄んだ声で言う。

 

『まんげつ■■かりが■■くはいるへやで■■■■』

 

「…『満月の明かりが多く入る部屋』じゃないの?」

ゴーグルをいじりながら即答したのは、檀くんだ。確かに『■■かり』は『のひかり』とも読めるが、意味はほとんど同じだ。

「『く』で終わる文字は『たかく』とも『すごく』とも読めるっぽいけど…これが正しいんやろうな。にしても、最後の四文字がわからへん…」

「それは後回しにするよ。じゃ、次は『ろうそくにひをつけおこうを』『だいのうえにおく』…」

灰寺くんの疑問には答えず、檀くんは考察していく。

 

『ろうそくにひをつけおこう■■■、だいのうえにおく』

 

「これは『おこうをたき』しか考えられないだろうね」

檀くんが次の文章を解読する。気づくの、結構早いな…。つまり『蝋燭に火を付けお香を焚き、台の上に置く』になるのか。

 

「じゃあ、『い』で始まって『せる』で終わる文章は…」

 

『い■■■とに■■■うをだいのうえ■■せる』

 

『い』から始まる単語はわからないが、『に』からのはなんとなくわかる。

「『にんぎょう』をだいのうえ『にの』せる…じゃないかな」

「人形を、台の上に乗せたってこと?何に使ったんだろう?」

絹川くんが『超高校級の人形師』らしく反応する。

 

「そんで後半の『し』『やり』『さす』は…」

湖林くんが顎に手を当てる。あの行のあの文章ことかな…。

 

『し■■■■やり■■■さす』

 

「一ノ瀬の被害状況から考えると『しんぞうにやりをつきさす』になるんじゃないかのう」

湖林くんが正しいだろう。一ノ瀬さんの心臓を刺したのは槍ではなく薙刀だけど…。

 

「ってことは『いけ』から『かべる』は…アタシにもわかるぞ」

二階堂さんがスクリーンを指差す。

 

『いけ■■かべる』

 

「『いけにうかべる』ってことだよな?」

「…そうだろうね」

池に浮かべる…温泉に浸かった一ノ瀬さんの死体が脳裏をよぎる。

 

古文書の内容と、現場や証拠とは少し違うことはあれど、どんなことが書かれているかはわかってきた…。

「しっかし、槍を突き刺すとか満月の明かりとか蝋燭とか出てくるけど、これってさ…」

「何かの儀式、っ言いたいんでしょ?ってことは、『し』『せい』…あの言葉は…」

黒木さんが檀くんの言葉を遮る。

 

『し■せい■■しょにおく』

 

「『しんせいなばしょにおく』じゃないかしら?『神聖な場所』は占いの館でもあるわね」

髪をかき上げ答える黒木さん。

 

「みんなの考えをまとめると…一ノ瀬さんは儀式の生贄にされて、殺されてしまった…ってことでいいのかな」

何の儀式かはわからないけど、これが犯人の手がかりになるんだろうか?

 

「あのさ、古文書には『蝋燭に火を付けお香を焚き、台の上に置く』って書いてあるけど…何か引っかからない?」

檀くんがいきなり投げかけるように言ってくる。この文章が間違っている…訳ではなさそうだけど。

 

「梨々…蝋燭の光と空、すごく綺麗だね…まるで、ウエディングケーキみたいだ…」

未隅くんが、虚空を見つめて呟く。

「大丈夫だよ、未隅くん…雨崎さんの分まで、なんとか頑張ろうよ」

わたしが語りかけても、返事は帰ってこなかった。

 

未隅くんや皆、そしてわたし自身の信じるという理想の為に。希望は絶対に捨ててはいけない。

 

 

【ノンストップ議論(古文書について引っかかる点)】

鈴原「檀くん、古文書におかしな箇所はないのかな?」

ヒミナム「あぁ、秘法が書かれてあるアレですか!何一つ<誤謬はありませんなぁ>!」

灰寺「ひ、ヒミナムが久しぶりにしゃべったあああ!?」

檀「そこのタンポポもどきには聞いてないよ…」

ヒミナム「やぁ、すいませんねぇ…」

二階堂「そこのヒミナムは置いといて…<台が怪しい>んじゃねえの?どこが怪しいかはわかんねえけど」

檀「わかんないのに適当に答えるんだね…」

黒木「もしお香を使ったとしたら、<匂いが部屋に残る>かもしれないわね…」

絹川「何か<代わりの物を使った>可能性もあるのかな…」

梅田「…今なら未隅の気持ち、わかりそうだなー…」

 

【コトダマ:客室のエアコン】

 

「黒木さん、それは違うぞ!」

 

「…私の発言がどうかしたのかしら?」

「儀式に使ったであろうお香の匂いの消し方ならあるよ。旅館の客室の…エアコンを付けるだよ」

「ということは、事件が起きたのは客室になるんじゃな…」

湖林くんの言う通りだ。わたしは、更に続ける。

「旅館の客室全てのエアコンで、二時間タイマーと24度の温度設定がしてあったけど、そのエアコンには冷房と暖房と一緒に除湿除菌消臭機能が付いているんだ。つまり、お香の匂いも消せるってことだよ」

「儀式がどこで行われたかも隠蔽したと言うことなんじゃな」

「…お香の匂いなんてすぐに消えそうだけどなー…」

梅田くんが、力の出てない声を出す。

「早めに死体が見つかったり、座布団とかに匂いが移るかもしれない可能性を考えたんじゃないかな」

「そうか絹川…オレと違って成長したなー…」

未隅くんと一緒に、早く立ち直ってくれるといいんだけど…。

 

「事件が起こった場所をわからなくする為のものは、まだありそうだね…例えば、血が付かないようにしたりとかできないかな?」

絹川くんは話を続ける。血が付かないってことは、旅館に置いてあったものを使うんだろうか…?

 

【コトダマ:ゴムボート】

 

「旅館の倉庫に、ちょっと濡れたゴムボートがあったんだ」

「えーと、それに一ノ瀬姉ちゃんを乗せたんか…って、ああ!そーゆうことなんやな!」

灰寺くんが驚いたのか手を叩く。

「儀式の際、気絶した一ノ瀬さんをゴムボートに乗せれば刺してしまっても床に血が付くことはないだろうね。水滴が付いてるのは、温泉で血を洗い流しただろうな」

「川キャンプの必需品であるゴムボートをそんな風に扱うなんて…人の命を微塵とも思わへん殺人犯らしいやり方やな!」

腕を振りまわし、ぷんぷんと怒る灰寺くん。案外、物を大切にする子なんだな…。

 

「今、殺害現場が客室って分かった訳じゃが…古文書にある通り『満月の明かりが多く入る部屋』が、儀式の行われた場所、つまり殺害現場なんじゃな?」

「闇に耀く灯が必要ですが…円らな形でなければならないという決まりがあります」

「そうか。貴様の頭にも円らな風穴を開けてやりたいのう」

ヒミナムは余裕の表情で湖林くんに語りかけるが、湖林くんに睨み返されてしまった。大事にならなきゃいいんだけど…。

 

それにしても、満月の明かりが多く入る部屋って…。

『超高校級の天文学者』であるわたしなら…殺害現場はわかりそうだ。

 

「みんな。わたしにちょっと考え事をさせて欲しいんだ」

「どうかなさいましたか?赤い外套の女はいつも前に進もうとしているのですねぇ」

ヒムナムがこっちを覗き込む。

「古文書のお陰で…一ノ瀬さんの死亡推定時刻と殺害現場が分かるかもしれない!」

「え?そこまでわかるってことは鈴原姉ちゃん、エスパーなんか?」

「よろしいでしょう。さて、貴女の思惟はどうなのでしょうかねぇ…」

 

自分の記憶を希望に変えて…真実を解き明かすんだ!

 

 

 

 

 

【ギャラクシードリヴン スタート!】

 

 

 

 

 

Q.1 今回の事件に関係があるのは?

 

 

 

南中時刻 or 月の出の時刻

 

 

 

 

 

 

 

A:南中時刻

 

 

Q.2 満月の南中時刻、そこから割り出される一ノ瀬の死亡推定時刻は?

 

 

 

夜9時 or 夜10時 or 深夜12時

 

 

 

 

 

 

 

A:深夜12時

 

 

Q.3 これから分かる儀式が行われた場所、いわゆる殺害現場は?

 

 

 

琥珀の間 or 瑪瑙の間 or 黄金の間

 

 

 

 

 

 

 

A:瑪瑙の間

 

 

 

「推理は繋がった…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一ノ瀬さんが殺されたのは…南中時刻の深夜12時だと思うんだ」

「な、なんちゅう時刻…鈴原、いきなり関西人にでもなったのか?」

二階堂さんが戸惑うが、説明を続ける。

「南中時刻は太陽や月といった天体が、ちょうど真南に来る時刻のことなんだ。新月は昼の12時に、満月は深夜の12時の南中するんだよ。多少のずれはあるかもしれないけどね。…つまり、深夜12時には南側に窓のある部屋に満月の光が多く入るんだよ」

「そういうことか…理解できなくてごめんな」

「二階堂さん、別にいいよ。南側に窓のある部屋…この条件を満たす客室は、旅館一階の南にあって太陽の光が多く入る瑪瑙の間だけだ。同じく南にある二階の翡翠の間と珊瑚の間は窓が小さかったんだ。だから月の光もあまり入らないだろうね」

「わかりやすい説明じゃ。しかし、そこまでして瑪瑙の間が殺害現場だと気付かれるのが嫌だったんじゃな…」

「…その通りですなぁ!」

湖林くんが呆れていると、突然ヒミナムが大声を出してきた。

 

「ひ、ヒミナム…?まさか、犯行を…」

「我が全てを行ったは認めましょう。禁忌の書の儀式の内容は我にしかわかりませぬしねぇ。そして総ての客室に空調が付いていたのは…殺害現場を誤認させる。その為です」

 

儀式も殺人も証拠隠蔽も、ヒミナムが全てを一人で行なったのか?

 

「でもヒミナム、主人格の蒲生ってレンジすら使えないほどの機械音痴じゃなかったかー?エアコン動かせるとは思えねえんだけどなー」

「多重人格者の主人格が出来なかったことが、別人格にできた…よくある話よ。梅田は聞いた事はないみたいね」

いつの間にか立ち直っていた梅田くんが頭を傾けると、黒木さんが答えてくれた。

「あのさ、共犯者がいる可能性とかないの?」

檀くんが、何かを疑うような素振りを見せる。確かにそうだ。あれだけの規模の犯行なら、共犯者がいてもおかしくない。

「共犯…ですか。これは全て我の犯行なのですよ?」

 

「思ったんだけど…殺人を犯してここから出られるのも、暴かれて処刑されるのも…殺した犯人だけなんじゃないかな?」

 

絹川くんの発言で、ふと思った。

校則には『殺人を犯したクロだけが処刑される』と書かれているし、今日追加された新しい校則にも『後に事件を起こしたクロが投票の対象』とある。

それをわざわざ強調しているってことは、殺人を犯さず犯人の手がかりとなる証拠を隠蔽したりした人は投票の対象にならない…つまり、裁判に勝ってここから出たり、処刑される事はないって事なのかな…?

「共犯者が関わっても、メリットはあんまないってことか…モノクマ、確認してえんだけど…」

 

「…うーん、絹川くんと二階堂さんにしては中々鋭いねえ。まあ、一言で言えば…『そんな感じ』だと言っておきましょう!今日のボクは気分がいいんでね!」

 

モノクマが耳を動かしながらふんぞり返る。『そんな感じ』ってどういう事なんだ…。

「共犯者の可能性…まあヒミナムみたいなのなら、奇跡の力であっという間に準備はできそうやけどな…」

「じゃが。『超高校級の教祖』の才能を持っているのなら、言いくるめを使った可能性も…」

 

 

「今日は意見がお買い得ー!」

 

 

 

 

誰の声かと思いきや、モノクマだった。

 

「あーあ。今回も意見が分かれてしまったのだ。これは『変形裁判場』の出番なのだ」

「ってことで…学級裁判のサビであり盛り上がり所『議論スクラム』を開始しまーす!」

 

議論スクラム…またやるのか?二手に分かれて、意見を出し合うやつを?

 

そう考えているうちに、モノクマが迫り上がってきた台に鍵を差し込み回す。

 

陳述台がゆっくりと浮上し…それぞれ二つに分かれていく。

 

…いつの間にか目の前には、ヒミナムのニヤリと笑う顔があった。わたしとは違う意見ということか。

相変わらず慣れないけど、命が掛かっている議論だ。意見をぶつけ合うしかない!

 

 

 

 

 

【議論スクラム(蒲生公英&ヒミナムの他に共犯者はいるのか?)】

存在しない!(ヒミナム、黒木、灰寺、未隅、二階堂)

存在する!(鈴原、湖林、梅田、檀、絹川)

 

未隅「<共犯者>にはあんまりいい事はないみたいだよ」

 

湖林くん!

 

湖林「<共犯者>にメリットが少ない事は、さっきモノクマが言うまでわからんかったじゃろ!」

 

 

二階堂「ヒミナムが全てやったってのは<嘘>じゃないだろ!」

 

檀くん!

 

檀「あいつは裁判を楽しんでるみたいだし、<嘘>をついてもおかしくないよ」

 

 

灰寺「さっき黒木姉ちゃんが<別人格>にしかできないことがあるって言ってたやん!」

 

絹川くん!

 

絹川「逆に言えば、その<別人格>にもできないことはあるってことだよね?」

 

 

黒木「できないこと…<儀式>の準備なら、男一人でもできそうだけど」

 

梅田くん!

 

梅田「<儀式>に使うガラスケースは二人で持った方がいいと思うけどなー!」

 

 

ヒミナム「言ったでしょう。我が全て悪いと。<古文書>を始終理解できるのは我一人…」

 

わたしが!

 

鈴原「その<古文書>にこそ事件のヒントが書かれているんだ!」

 

 

この議論に終止符を打つには、この証拠しかない…!

 

【コトダマ:古文書】

 

これが、わたしたちの答えだ!

 

「古文書の話題に戻るけど…『心臓に槍を突き刺す』と書いてある行を見て欲しい」

議論スクラムが終わり陳述台が戻った後も、スクリーンはなぜか古文書を映し出している。

 

『■■じはじゅ■■■■■え、■■■ものは■■に■のしんぞうにやりをつきさす』

 

「この記述を見ていれば、二人でやる作業である…ってことがわかると思う。『じゅ』から始まる行動をする人物と、『もの』で終わる心臓に槍を刺す行動をする人物は違うんだ」

 

「ふ…あははははははは!!素晴らしい!そこに気がづくとは!」ヒミナムはケタケタと爆笑する。

「あのさ、古文書の内容をすぐに理解できるのはヒミナムぐらいしかいないよね?」

「ほほう。しかし禁忌の書にあった槍ではなく、薙刀を使っておられるというのが現実。様々な物が替えが利くつまり…儀の形さえ成していれば、一人で行うことも可能なのですよ!あははははは!」

 

「すげえ屁理屈なんだなー…あれで本当に教祖なのかー…?」

梅田くんが冷や汗をかいている。

ヒミナムは凄まじいオーラを放っているが、共犯者の証明ならまだできる。

…古文書の他には、あの証拠が使えるはずだ!

 

【ノンストップ議論(共犯者がいるという証拠)】

ヒミナム「共犯者の証明…赤い外套の貴女にできるのでしょうか?」

絹川「鈴原さんにならできる、そうボクは信じたいんだ!」

ヒミナム「証拠となるモノ。この<世界のルール>でしょうか?この<人々の憎しみ>?この<天体の構造>?それとも…貴女が<林檎色の女を殺めた>というのでしょうか?」

湖林「ヒミナムになっても、言ってる事は相変わらず阿呆じゃ。真実はいつも、貴様のような愚か者を破滅させるのじゃよ」

ヒミナム「燃えるような悪魔。いい加減なさい。それはやがて、貴方にも降りかかります…」

 

【コトダマ:死体発見アナウンス】

 

「それは、この世界のルールだ!」

 

「ヒミナム。あなたの言う『ルール』…死体発見アナウンスが証拠だよ」

意味がわからないヒミナムの言葉を理解できた。それだけでも良かったと言える。

「一ノ瀬さんの時は、湖林くんと灰寺くんが見つけた時に流れてたよね…二人とも」

「鈴原の言う通りじゃ。んで、雨崎の時は…」

「檀くんが発見した時に流れたよね。つまり…誰か二人が、檀くんより先に死体を見つけているってことだ」

「…まあ、見つけたのは俺だよ。あの時は…信じられなかったし、どうしようもないと思ったけど」

そんなことを言う檀くんの顔は、イヴァンくんが殺された時のように悲しげだった。

「所でさ、死体発見アナウンスが流れる条件って三人以上の生徒が見つけたら流れるよね。ふと思ったんだけど…それに犯人は含まれるんだよね?」

 

「檀くん、いい質問なのだ!えーと、ぶっちゃけ含まれな…むぎゅ!?」

 

質問に応えようとするカラフラの口に、モノクマがガムテープを貼る。

 

「黙っててよカラフラ。理事長は所詮、学園長の下なんだよ?」

 

カラフラが少し気の毒だ。

「この様子を見るに…犯人はアナウンスの人数には含まれんようんじゃのう」

「湖林くん、そうみたいだね。雨崎さんの死体は儀式を行ったヒミナムと、もう一人が見つけているかもしれないんだ」

絹川くんの考察に、心の中で同意する。

「儀式もヒミナムともう一人によって行われているってことは…もしかして一ノ瀬さんは、そのもう一人に…」

 

「哀矜懲創といたしましょうか!」

 

 

 

 

 

裁判場に、ヒミナムの不気味な声が響く。

「いやはや、皆々様も、赤い外套の女も。どうやらわからないようですねぇ…という訳で、反駁の時間です」

まさかのヒミナムの反論なんだろうか…?

「云ったでしょう?クロは我一人だと。愚かしい貴女に、少しわからせてあげましょうか」

 

【反論ショーダウン(犯人の可能性について)】

「金の雌羊の亡骸が<我と共犯者とやらに見られた>。そう仰るようですが…先程、あの奇花が<クロはアナウンスに含まない>と語っておりましたね?」

 

【発展!】

 

「金の雌羊…雨崎さんのことだよね?殺す前なら、犯人が発見者の一人になる可能性も高いよ」

 

「ではでは、二人がかりで儀式が行われたとして。殺められる寸前の林檎色の女が…<金の雌羊を拝覧した>としたら?アナウンスは儀式の際に流れてしまいますねぇ!」

 

【コトダマ:占いの館の棚】

 

「その言葉…ぶった斬る!」

 

「一ノ瀬さんが雨崎さんの死体を見なかった理由ならあるよ…占いの館の棚にあった、気絶薬を使ったんだよ。それを使ったせいで、一ノ瀬さんは死ぬまで気絶してしまったんだと思う…」

「赤い外套の女。そういう事ですか。クロが発見者である可能性もあると…」

ヒミナムから、悍ましいほどの笑顔が消える。

なんだが、嫌な予感がする…。

「雨崎さんが死んだことを確認する為に、一ノ瀬さんが博物館の『小』の部屋に見に行った可能性はないのかしら?」

「一ノ瀬のことじゃ。恐らくは…女の死体を見るのも怖かったんじゃろうな…」

覇気を失った湖林くんがいるのと同じ空間で、黒木さんはいつも通り平然と笑っている。

人らしい感情が欠けているのではないかと思えてくる…。

 

「それにしてもさー、証拠はほとんど出揃ったと思うんだなー。死因はどっちの事件のも判明してるし、古文書の内容だって儀式って解ってるし、人形とかの不可解なものはみんな用途があるし」

「…梅田くん。じゃあ、考え尽くされたことから掘り起こせばいいんじゃないかな?」

絹川くんの声だ。胸に手を当て、話を続ける。

「建物の設備とか、凶器とか、図書館の本とか。それに、古文書にはまだわからない所があるよ」

そう言われて、わたしたちは思案を巡らせる。

「設備…例えば、エアコンは証拠を隠す為に使われて、照明のスイッチとランプは蒲生くんが火事を起こす際に使われたよね。事務所のパソコンは、犯人の性別を隠すものだったし」

「凶器は、雨崎の時は博物館の消火器。一ノ瀬の時は占いの館にあった槍代わりの薙刀だったよな」

「図書館の本は『暮らしの火災と危険』に『事故の原因大全』…これ二つからはタンポポがりりりんを死に追いやったことが明らかになったよね」

 

二階堂さんや檀くんと一緒に考察していく。この中で、一番証拠になるものは…。

 

「おい、鈴原」

 

湖林くんが何かに気づいたような表情で、わたしに声をかける。

「一つ、思い付いた。凶器の置いてあった施設ではなく…場所についてじゃ」

 

凶器の場所に、何かあるのか?

 

…どちらかが正解だとすれば…

 

 

【選択:占いの館の棚の薙刀】

 

 

消火器は違う。二酸化炭素を振り撒く他にも鈍器として使うことはできる。しかし、被害者の二人には殴られた痕はなかった。

薙刀は…3mほどの高さの棚の一番上にあったし、持ってみたらかなりの重さだった。

 

 

そんな薙刀を持ち出せた人物は…。

 

 

……

 

 

目を閉じ、考えていくうちに。

 

 

「…そんな…」

 

 

『彼』しかいないという事実に、辿り着いてしまった。

 

 

【怪しい人物を指定しろ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人物指名:未隅実】

 

 

「え?僕と梨々が…どうしたんだ?」

指を差した後も、未隅くんは正気のない目で笑っている。

「…赤い外套の女。なぜ、鷹の男がクロだと思料されたのでしょうか」

「ヒミナム。あなたの言う鷹の男…未隅くんの身長は電子生徒手帳には194cmって書いてるよ。普通の人ならテーブルに乗っても届かない、棚の3mの高さにも届くと思う。それに、重い薙刀を持ち出すには相当の筋力が必要だと思う。だから…犯人…は…」

すらすらと出ていたはずの声が、なぜか一瞬で出なくなる。

 

「でも、未隅兄ちゃんだけじゃなくて、僕も薙刀を持ち出せたやん…僕は、疑わないんか?」

「灰寺。貴様はオレと一緒にアナウンスに含まれておる。じゃから犯人からは除外される」

湖林くんのいう通りだ。アナウンスについては先程議論した通り。

しかし、真実に辿り着けるのはもうすぐなのに…なぜか解き明かそうとすると進む足が止まってしまう。

 

…わたしは、未隅くんが犯人だと認めたくないんだろうか?

こんな学級裁判という残酷な舞台で、壊れてしまった男の心を救える。

みんなが納得して、推理と真実を受け入れてくれる。

そんな希望を抱いたわたしが、甘かったんだろうか?

 

「おい未隅…あんたが、一ノ瀬をぶち殺しやがったのか?雨崎を見殺しにした、あいつへの復讐だったのか?」

二階堂さんが未隅くんを追及する。

「まさか、雨崎が死んでるのを見つけて…あんたはトチ狂っちまったのかよ!?」

 

「二階堂さん。何を、言っているんだ?」

 

未隅くんは、優しく微笑むと。

 

懐から『それ』を取り出した。

 

 

「梨々なら…ここにいるじゃないか」

 

 

『それ』は、金髪に二つ結びの、ウエディングドレスを着た人形だった。

 

 

「み…未隅くん…?これは…雨崎さんの…!?」思わず、声が出る。

「みんな見てくれよ。綺麗な梨々だろう?『天』のお陰なんだ。天が梨々と幸せになりたいって願いを叶えてくれたんだ」

口から涎を垂らし、空虚な瞳を人形に向けながら未隅くんは笑う。

『天』ってことは…まさか、ヒミナムが…?

「ミーくん。あたし、天のお陰でこうなれたんだよ。あたし、今すっごく幸せだよ。うふふふふ…」

未隅くんは雨崎さんのような裏声を出しながら、人形の手を動かし始めた。

「何やってんだよみのるん…あんたは…どうして…」

「貴様…人形を雨崎だと思い込んでいるのか…?」

檀くんも湖林くんも…青い表情で『現実』を目の当たりにしている。

 

 

「おや。鷹の男がややご乱心の様子。民草諸君。誰が金の雌羊をこのようにしたのか…解りますかな?」

ヒミナムが、こちら側に笑いかける。

 

…答えは、解りきっている。

 

儀式をヒミナムと行い、一ノ瀬さんを殺したのは…未隅くん。

それが、この裁判の結論。

 

そして、未隅くんが持っている『それ』は…

 

【ノンストップ議論(未隅の不可解な行動について)】

未隅「ミーくん。このウエディングドレスにあってるでしょ?」

  「うん!とっても似合ってるよ!」

湖林「ヒミナム…未隅になんという仕打ちを…」

ヒミナム「仕打ち?我が奇跡を見せただけですよ。

    「しかし金の雌羊は…なぜあのような姿になられたのでしょうねぇ?」

    「<無から有など生まれては来ませぬ>。<魑魅魍魎が集う場所>には何もありませぬ」

    「全ては<天から降り注いだモノ>なのです」

黒木「ねえ、鈴原さんが青いけどさ…あなたと私なら、どういう意味かわかるわよね?」

未隅「今日は正装じゃなくてごめんね…梨々…愛してるよ…」

 

【コトダマ:消えた西洋人形】

 

「それは…違う…」

 

ヒミナムの言葉は難解だが、全く意味のない言葉という訳ではない。

「魑魅魍魎の集う場所、それは…お化け屋敷だよね」

声が震える。たとえヒミナムでも信じようと、理解しようとした結果がこれか。

「そこに落ちてた人形がいくつか無くなってたんだ。未隅くんが…持っていったの?」

「もう、人形言わないでよ鈴原ちゃん!いつものあたしじゃん!」

「ところで梨々にプレゼントしたネックレス、無くしたらしいから新しいものを選ぼうと思うんだ!」

壊れた人間の、壊れた台詞。未隅くんに希望は、伝わらなかったのか…?

 

「ねえヒミナム…一ついいかな。古文書に書いてた、台の上に乗せるものって…人形でしょ。儀式には、人形が必要だったんだよね」

「そうですなぁ。ここまで来れば、民草諸君には理解できる筈。林檎色の女はなぜ殺められたのか、そして、我と鷹の男が執り行った儀式の目的について…」

絹川くんの力の籠ってない言葉に、ヒミナムが返す。

 

彼はもう、未隅くんの犯行を認めるのか。

なぜ偽りの幸福を与えてしまったのか。わたしが愚かだったのか。

 

儀式の目的。

それは、『ある幻想』を見せつける為だろう。

 

 

 

 

 

【理論武装スタート】

 

☆Phase.1

「民草諸君、解っているでしょう?我の目処が」

「林檎色の女が弑された理由とは…」

「なぜ贄にしたかが解っていましたよね?」

「彼女もまた、我によって救われるでしょう」

 

☆Phase.2

「理想を貫くということは煩わしいこと」

「であれば、正しき幸福を見せる他ありませぬ」

「我が崇拝者もきっと悦ばれることでしょう」

「金の雌羊は結ばれ、愛されているのですなぁ…」

 

☆Phase.3

「鷹の男は美しき奇跡へと辿り着いたのです」

「赤い外套の女も、燃えるような悪魔も、いずれは救われるでしょう」

「貴女に我の秘術を教えしましょうか?」

「さあ、この地獄を認めれば極楽浄土を魅せることができますなぁ?」

 

 

「鷹の男はクロだとすれば、真の動機は何になるのでしょうか…?」

 

  【儀】

 

【活の】 【式】

 

  【復】

 

「これで…終わりだ」

 

【復活の儀式】

 

「それで…いいのです!」

 

 

 

 

 

「…未隅くんは、雨崎さんを生き返らせる為に…ヒミナムと共に、儀式で一ノ瀬さんを、殺したんだ…」

声を絞る。どうして逃げるんだ、現実から目を背けるんだと自責してしまう。

 

「あははははは…!赤い外套の女の言う通り!我は我のやり方で金の雌羊を蘇生させ、永遠の楽園を見せてあげたのです!」

 

「…」

救われたのに、未隅くんはこれから死ななきゃいけないんだ。

「ねえミーくん。天以外はみんな暗い顔してるけど、どうかしたの?」

未隅くんが人形を動かす。もうやめてくれ、と嘆願しようとも何もできない。

 

「鈴原さんがいつもと違って落ち込んでるみたいね。ここにいる人たちが納得するように、私が事件をまとめるしかないみたいね」

誰かと思ったら黒木さんだった。何事もないように、裁判を楽しんでいるような様子だ。

 

この裁判は、最悪の結末へと向かっている…。

進むしかないのか。現実からは、逃れられないのか…?

 

 

 

 

 

 

【クライマックス推理 ver.黒木小百合】

○Act.1

事件の発端となったのは、蒲生が図書館で『暮らしと火災の危険』を読んでしまったことね。

それを読んだ蒲生は犯行を決意。博物館の『小』の部屋に油式ランプのオイルを振り撒いて、『大』の部屋のカーテンを破いて…

壊れたランプに被せて、それを『小』の部屋のカーテンで隠したの。

蒲生は、一ノ瀬さんに湖林と偽って手紙を書いたわ。「午後10時に『小』の部屋で待つ」と書かれたものをね…。

午後10時になって、博物館を訪れた一ノ瀬さんは『小』の部屋で湖林を待ち続けたわ。

それを見た蒲生は、ドアストッパーで一ノ瀬さんを閉じ込めたわ。先程仕組んだ電気火災で、彼女が焼け死ぬようにね。

 

○Act.2

火事に気づいたのは、クロからプレゼントされたネックレスを探しに来た雨崎さん。

雨崎さんは一ノ瀬さんを逃して、博物館のエントランスの二酸化炭素消火器で火を消したのだけど…小さな部屋で使ってしまった為に、中毒を起こして死んでしまったわ。

一ノ瀬さんは旅館に逃げ込んで、マスターキーを使って黄金の間に閉じこもったわ。

しばらくして、クロも雨崎さんを探しに行って…博物館の雨崎さんの死体を発見したの。

そこに現れたのは蒲生…いや、ヒミナムだった。ヒミナムはクロを説得して、復活の儀式を共に行うよう仕向けたの。

 

○Act.3

儀式は旅館一階の瑪瑙の間で行われたわ。

準備として…博物館から雨崎さんを入れるガラスケース、お化け屋敷から人形、占いの館からは蝋燭に気絶薬にお香に槍代わりの薙刀。

図書館からは古文書、そして旅館の倉庫からゴムボートを用意したわ。

薙刀は重いしかなり高い所にあったから、背が高くて筋力のあるクロしか取れなかったの。

クロは黄金の間にいた一ノ瀬さんを呼び出して、気絶薬で気を失わせたわ。

一ノ瀬さんはこの時、マスターキーを落とした。瑪瑙の間に連れて行かれた一ノ瀬さんは手を縛られて、ゴムボートの上に乗せられたわ。

 

○Act.4

午後12時。儀式がスタート。

瑪瑙の部屋には月の光が多く入ったわ。大きなテラス窓の部屋だし、月の南中時刻に儀式は行われたからね。

ヒミナムは『じゅ』から始まる行動を行なっている最中…クロは一ノ瀬さんの心臓を薙刀に刺して殺害。

その後一ノ瀬さんの電子生徒手帳を奪って、被害者を血塗れのゴムボートに乗せたまま彼女の手帳で混浴風呂に侵入。死体を風呂へと投げ入れたわ。

 

○Act.5

儀式の後片付けとして、まずガラスケースは雨崎さんの死体を入れたまま占いの館に置いて、紫のカーテンをかけてそのままにしたの。

占いの館でクロは血を拭った槍を棚に戻して、それから午前一時くらいに人形を持ち帰ってホテルへ帰ったんでしょうね。

ここから先はヒミナムの出番。蝋燭とお香を捨てて、古文書は図書館に戻しに行く。

凶器をわからなくする為に、旅館の厨房にある冷蔵庫の中身を全て出して、作業台に置き…その下にフェイクの凶器である包丁を置いて。

殺害現場を隠す為に、全ての客室に空気清浄機能のあるエアコンをタイマー付きで作動させたわ。

片付けを終えて、ヒミナムは午前二時にはホテルに戻ったわ。その時に蒲生に人格は交代していたんでしょうね。

 

 

 

これがこの事件の現実よ。

狂気で狂人を惑わせた教祖と、悪夢に囚われ天を求めた男。

そんな二人の共犯事件の実行犯は、ただ一人…。

 

 

 

「愛に囚われ壊された殺人者…『超高校級のラグビー部』未隅実よ!」

 

 

 

 

 

「どう?まとめてみたんだけど。中々言えてたでしょ?私、こういうの一回やってみたかったのよね」

「…黒木さん。そう、なんだね…」

黒木さんに全てを論破された未隅くん。人形を持ったまま、なぜか真顔で立ち竦んでいる。

「あはははは!梨々!僕たち、今度旅行に行こうか!温泉がいいかな?それとも、都会でショッピングしようか?お土産ならなんでも買ってきてあげるよ!」

「ミーくん!あたし、ピクニック行ってみたかったんだよね!サンドイッチ作るのもいいかも!」

「いいよね!花のたくさんある公園とかどうかな?ネモフィラとか写真映えしそうだよね!」

 

…現実から逃避しているのか。それとも、完全に心が壊れてしまったのか。

未隅くんは、いないはずの雨崎さんと共に再び笑い出した。

 

「誠に僥倖でございます。我のお陰で、救われたモノがおられるのですから…」

裁判場の生徒たちの視線は、もう一人の暗躍者に向けられていた。ヒミナムだ。

「貴様…罪を認めたと思いきや、反省すらしないのか…?」

湖林くんは怒りに満ちた目でヒミナムを睨む。しかし、ヒミナムは笑っているだけだ。

 

「リアルファイトが発生する前に…さっさと投票しましょうよ奥さん」

「さて、全世界が待望した…ワクワクドキドキなお楽しみの…投票ターイム!なのだ!」

 

液晶画面に、16人の顔が写っている。制限時間が来る前に、ボタンを押す。

 

いつの間にかスクリーンには、得票数が表示されていた。

 

『未隅実 8票』

『蒲生公英 2票』

 

『一部正解』

 

ルーレットが始まり、未隅くんの場所にツートンカラーのボールが落ちる。

醜悪なまでに明るいファンファーレが鳴り響く。

 

 

「マジかよ!マジなのかよ…不正解者がいるとはいえ、三回目も正解とは思わなかったのだ!」

「今回、一ノ瀬秋穂さんを殺したのは…未隅実くんでしたぁ!因みに雨崎梨々さんの件は事故死として片付けておきますので、そこはご了承下さいね」

「ところで投票を間違えた人がいるみたいだけど…湖林くんと、鈴原さんみたいなのだ。一歩間違ったらクロ以外は全員死んじゃうから、今後は気をつけてね!」

 

…選択を、間違えてしまった。現実を、認められなかった。

「…畜生…」

湖林くんは、悔しそうに口を結んでいる。

 

そして、今回の犯人…未隅くんは。

「そうだ!結婚式を挙げようか。南の島でもいいけど、森の結婚式でもいいかもね!」

 

…処刑を待つだけにも関わらず、幸せそうな笑みを浮かべている。

 

 

未隅くんは、雨崎さんはもういないという真実から逃れ、生き返ったという幻想に縋って…本当に良かったのか?

 

 

【学級裁判・閉廷】

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