・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレ(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。
以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。
ダンガンロンパ・フラワーズ 第1章 1日目&2日目
ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter1
「廃空楼獄遊園ヒストリヱ」
(非)日常編
「塞翁ヶ馬学園遠足実行委員会がお知らせします。
ただいま午後10時になりました!今から夜時間です!
ホテルの自分の部屋でゆっくり休むことを強くオススメします」
「部屋の鍵はしっかりかけて殺人鬼から身を守るのだ!」
モノクマとカラフラの放送を聴きながら、自分の部屋のベッドに座っていた。
スマートフォンのような形の電子生徒手帳を取り出し、電源ボタンを押すとメニュー画面が映る。
そして、2番目の項目の「校則」を指でタッチする。
①生徒のオマエラはヒストリヱランドだけで共同生活を行ってください。共同生活の期限はありません。
②ヒストリヱランドの捜索は自由です。行動制限などはございません。
③夜10時から朝7時までを「夜時間」とします。夜時間は立ち入り禁止区域がございますのでご注意を。
④学園長と理事長への暴力を禁じます。
⑤監視カメラの破壊を禁じます。
⑥電子生徒手帳の貸し借り、生存者からの強奪、紛失、破壊などを禁じます。
⑦ヒストリヱランド内で殺人が起こった場合、生存者による全員参加の学校裁判が行われます。
⑧学校裁判で正しいクロを指摘できた場合、殺人を犯したクロだけが処刑されます。
⑨指摘できなかった場合、クロ以外の全員が処刑されます。その場合、クロだけが卒業し、ヒストリヱランドから脱出することができます。
⑩3人以上の生徒がクロに殺害された死体を発見した場合、「死体発見アナウンス」が流れます。
⑪一人が一度に殺害していい数は二人までです。
⑫なお、校則は追加されることがあります。
…これが、塞翁ヶ馬学園の校則らしい。わたしはゲンナリした顔をして、電子生徒手帳の電源ボタンを再び押した。
画面が黒に包まれる。
誰かを殺せばこのヒストリヱランドから脱出できる。
そんなのは絶対に嫌だけど…それぞれに武器が配給されて血生臭い殺しあいが繰り広げられる訳ではないのが不幸中の幸いか。
それなら体力は人並みなわたしや小さい雨崎さん、絹川くんは部屋にたどりつく前に死んでいたことだろう。
いや、今この瞬間にも殺人を目論んでいる人間がいるかもしれないのだ。
…わたしに、その人を止めることはできるんだろうか?
部屋のクローゼットにはわたしの着ている私服と似たような服と、3枚分の浴衣が並んでいた。
浴衣に着替え、何も起きないことを祈り眠りについた。
モノクマ劇場
初めまして皆様。ボクはモノクマです。
ついに始まった16名の生徒による「コロシアイ遠足」。
舞台は廃空遊園地「ヒストリヱランド」。
生徒のみんなはどんな絶望を見せてくれるんでしょうか。
どんなトリックを使ってくれるんでしょうか。
そして、そこから生まれる希望はどんな奇跡を起こしてくれるんでしょうか。
ワックワックの、ドッキドッキだなー!楽しみ楽しみー!
「塞翁ヶ馬学園遠足実行委員会がお知らせします。
オマエラ、おはようございます!今日もハイカラ文化してるぅ〜?」
「第一エリアのレストランでスイーツバイキングを開催しているから朝食がわりに食べるのだ!
わーが実家の農園で作ったフルーツもあるのだ!」
…朝の7時。モノクマとカラフラの放送で目を覚ます。
それにしてもお腹が空く。レストランのスイーツバイキングでも食べようかな。
朝ごはんで食べるヨーグルトやバナナは確かにスイーツっぽいけど、朝からスイーツってお腹がもたれないのかな?
もし脱出口があるのなら、このヒストリヱランドを探索して見るのもいいかもしれない。
わたしはレストランへと向かった。
◆
レストランは朝に似合うジャズが相変わらずレコードプレーヤーから流れていて。
丸いテーブル4つに椅子がそれぞれに4つ…計16つある。ちょうど生徒たちの数と一致する。
入り口近くの席に座っているのは…
「ミー君、この緑の果物は何?」
「これはフィンガーライム!オーストラリアのアボリジニの人々の間で食べられている高級な果物さ。
切って指で押すとキャビアのようなツブツブが出てくるんだ」
席に座り、半分に分けられていた緑の果実…フィンガーライムを食べる未隅くんと雨崎さん。
未隅くんの席には大量のフルーツと1枚のパンケーキ、雨崎さんの席には1ホール分のタルトが置いてある。
そして二人の隣で見てるだけで胃もたれしそうなほどショートケーキを食べているのが灰寺くん。
「しかしうめーじゃん!近所の洋菓子店のおばちゃんのケーキしか知らなかったけどうめーな!
ふんわりしたスポンジに甘酸っぱいクリームに何よりでかい苺…これなら沢山食べられるな!」
「ねえ、この席に座ってもいいかな」
「ん?いいけど」
わたしは空いている席に赤いコートを掛ける。スイーツが並べられている台へと向かい、お皿を取る。
パンケーキにチーズケーキアイスを乗せ、カトラリーを取り、三人が座る席へと戻る。
「鈴原さん!ビタミンの大量に含まれた果物はいいぞ。特にアセロラは100g中1700mgのビタミンの含まれた…」
「また解説が始まったー」
「よくわかんねーけど体にいいってことやな。でも僕はイチゴだけでいいや」
「灰寺君もさあ、フルーツを食べたまえ」
未隅くんがわたしの灰寺くんの皿にオレンジを乗せてきた。正直、少し押し付けがましい気がする。
「あ、ありがとう」
でも、戻すのも勿体無いから頂いておこう。
食べてみるとパンケーキとアイス、オレンジは中々の味だった。
「…よし、撃沈だな。俺の勝ちだ」
わたしたちの右側の机には、フライドポテトをトングで食べながらアナログゲームに勤しむイヴァンくんと檀くんがいる。
「バイキングの食物は全て毒味させてもらったが、毒や睡眠薬といった薬物は入っていなかった」
「あ、負けそうになるとまた独り言が出る」
「どうやらコロシアイの主催者…モノクマとカラフラは我々のコロシアイは強制しないようだ。強制するのなら殺戮衝動を起こす薬などを混入している筈」
「さ、殺戮衝動!?」わたしはパンケーキを口に運ぶフォークを止めてしまった。
檀くんがこっちを見てきた。
「ん?早く食べれば?」
それにしてもイヴァンくん、独り言を言ってる時は敬語じゃなくなるのか…。
「恐らく、コロシアイの『黒幕』は私たちの意思で殺しあってもらいたいのだろう。しかし…これでは殺人が起こらない。そうなると主催者はそのうち何か仕掛けてくるに違いない」
つらつらと独り言を述べるイヴァンくん。そんな彼に灰寺くんが話しかける。
「ねえイヴァン兄ちゃん、ショートケーキ分けようか?結構美味しいねん。イチゴは多分とよのかかな」
「フライドポテトも美味いよ。それ用のトングもご丁寧に用意してあるし、あ、駆逐艦落ちた」
檀くんは大量にマスタードとケチャップがかけられたフライドポテトを口に運ぶ。舌、大丈夫かな…。
「モノクマとカラフラが出てきたステージがあるな。あそこにお土産屋の道具でSOSを作るべきか…」
それにしても、イヴァンくんの独り言はどうも気になる。
コロシアイの黒幕。なのに強制するようなことはしてこない。
…一体、黒幕は何をさせたいんだ?
◆
朝食を終え、探索に出かける。まずはアスレチックからだ。
「畜生!ここにゴミを置いたのはどこのどいつだァ?探し出して『媚歌鬼奸』で掃いてやろうかァ!?」
…二階堂さんが藍葉さんとゴミ拾いをしているが…今持っているのは『僕と私の異世界探訪』と書かれた、可愛い女の子の表紙の本だ。
梅田くんのじゃないか。
「あの、それ梅田くんのだと思うんだけどさ」わたしは二階堂さんに話しかける。
「ん?梅田のか?あいつ見かけによらずエロ野郎だったのか!中身うっかり見たけど水着の女が股開いてたぞ!」
「み、水着の女性!?進学校なら即退学レベルにだよそれ!」
…あの本、過激な描写が特徴的なライトノベルなのかな。
「じゃあわたしが預かっておくよ。後で梅田くんに返すからさ」
「ダメだ!梅田がこれ以上エロ野郎になったら逮捕されちまうじゃねえか!」
「あの、犯罪者がエロ本を持っているとは限らないと思…あ、また言っちゃった…!」
藍葉さんは自分の失言に極度に怯えているようだ。
「仕方ねえ、梅田をアスレチックの頂上から探す!そして遠距離から改造箒を飛ばす!」
「二階堂さん!?流石に箒は置いたほうがいいよ!?アスレチックに引っかかって落ちたら死んじゃうよ!」
「大丈夫だって!地面は土だし骨折程度で済むって!バイクに轢かれるよりはマシじゃん!」
二階堂さんはアスレチックの頂点を目指しながら登っていく。
「うう…包帯ちゃん忘れたのに…いざとなったら白衣を破るべきかな…」
第一エリアの真ん中にある二階建ての白い洋館に入ってみる。中には誰もいない。
玄関には洋館の地図がある。一階には…北西に多目的ホール、南西に応接室、中央にトイレ、北東にバスルーム、南東にキッチンがあるようだ。
なぜか、二階の地図は黒く塗りつぶされている。二階建てなのに。
全ての部屋を見回る。バスルームやキッチンなどの水回りには全て「消毒済み」の紙が貼られている。
恐らく誰も使っていないのだろう。
トイレの中を覗いてみる。「消毒済み」の紙は貼られていないが、トイレットペーパーは使われていないようだ。
多目的ホールに入る。アンティークのテーブルと椅子が中央に鎮座していて、テーブルの上にはガラスの吸い殻入れ。
飴色の棚には、本や様々な箱が置かれている。
そして壁には…アンティーク銃が飾られた、大きなガラスケース。長い銃は撲殺用の凶器に…って何を考えてるんだろう。
応接室に向かう。やはり似たようなアンティークのテーブルと椅子があり、机上にはアンティークには似つかない現代風のライターが置かれていた。
部屋の隅には暖炉がある。炭は入っているが、使われた形跡はない。
応接室から出る。ふと階段の二階への階段があると思われる場所には…巨大な鉄の扉があった。
…二階には何があるのか?もしかしたら、黒幕のアジトだったりするんだろうか
なんでこんなところにわたしたちを閉じ込めるのだろう。
なぜ殺し合わせるのか。なぜ縛り付けるのか。黒幕は鉄の扉の向こうにいて、今でもわたしたちを嘲笑っているんだろうか?
…そう思うと、必然的なのか怒りが湧いてきた。そして…
わたしは鉄の扉を蹴り上げてしまった。
「畜生!」
その瞬間。
大きな音のアラームが鳴った。
鉄の扉のちょうど上から、銃がゆっくりと飛び出してきた。
まるで、鳩の人形が時刻を知らせるように。
「…え?」
これは本物の銃?もしかして、わたしは…撃たれるのか?
そんな。死ぬのは嫌だ。こんなところで。
体が勝手に動き出し、わたしは玄関へと向かう。素早く扉を開き、洋館の外へと脱出する。
その瞬間…
館の中から6つの大きく鈍い音が、響いた。
「はぁ…はあっ…」
息をつきながら膝に手を当てる。その様子を偶然見ていた5つの人影がいた。
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
「まさか、コロシアイでも起こっちまったのかー!?」
「アラームが鳴って銃声が響いたと思ったけど…何があったのかしら」
5つの人影は驚くバニラさんと梅田くん、怯えた様子の一ノ瀬さん、そして…動じない蒲生くんと黒木さんのものだった。
5人はわたしのいる洋館の玄関近くへと近寄ってくる。
「どうやら怪我はないようですね。天の祝福はまたあなたを守られた」
「うん。この洋館にはトラップがあるみたいなんだけど…」
「コロシアイが始まる前に生きていてよかったのだ!」
そこに、小さな台車に乗ったカラフラが現れた。
「か、カラフラ!?どうしてここにいっ!?」一ノ瀬さんが驚く。
「わーはカラフラなのだ。暇つぶしに散歩してたのだ」
「カラフラも女なのでしょう!?あの女ストーカーは女とみればウサギまで狙うような生き物なのですのよ!?」
「残念なのです、あめだま星人にウサギに恋する趣味はないのです」
「そうなのだね。せっかくだからあそこの洋館の『警報装置』について教えるのだ」
「…警報装置とは何でしょうか」
「警報装置はただのトラップなのだ。無理矢理こじ開けようとしたり危害を与えたりすると発動して、アラームが6秒間鳴った後にドアの上にある銃撃装置から銃弾が発射されるのだ」
「ろ、6秒間?流石に短くないかしら」
「外に猛ダッシュで外に逃げ込めば大丈夫なのだ。ちなみに一番近い生体反応を追って6発銃撃するのだ」
「ということは。ドアには銃創が残ってるんじゃねーの…?」
「因みに洋館は床も壁も窓も全て防弾加工されているので銃創はつかないのだ」
「えーと…ジュウソウって?」重曹ならわかるけど銃には詳しくない。
「知らないのかー?銃撃したら跡がつくじゃん。それだよ」
梅田くんが教えてくれた。
「コロシアイが起こらなくなったらモノクマがキレるから、ここにいる人以外には誰にも教えないでね!グッドラックなのだ♪」
カラフラを乗せた台車はどこかへと去っていく。
「警報装置ですか。僕は機械にはあまり詳しくないのですが…とりあえず僕たちはこの洋館には近寄らない方が良さそうです」
蒲生くんが笑顔で口を開き、どこかへと去っていく。
一ノ瀬さんはいつの間にか消えていた。バニラさんが「あの着物の中には藍葉殿もびっくりんなプロポーションが…」と呟きながら走っていった。
「あーあ、一ノ瀬さんも災難ね?」
「本を無くしたオレよりもひどいなー…」
残されたのは梅田くんと黒木さんだ。彼らを残し、わたしはウォーターライドへと向かった。
◆
「綺麗な滝だね。あの丸いのに乗ったら面白いのかな。」
ウォーターライドでは絹川くんが水を眺めている。絹川くんはウォーターライドを知っているんだろうか?
あのブリキ色のドラム缶は乗り物だろうけど。
一緒に眺めていると…絹川くんは話しかけてきた。
「あの、この変なコイン、貰って欲しいんだ」
そうすると着物の裾から小さな円状のものを取り出してきた。モノクマの顔が描かれたコインのようだ。
「カラフラに聞いたらボクは使えないみたいで…鈴原さんしか使えないみたいなんだ」
なら貰うしかない。にしても、どうやって使うんだろう?まさか…お土産屋のガチャガチャ?
とりあえず、モノクマのコインは6枚あるようなので貰っておく。
ステージと時計塔には何もなかったので、お土産屋へと向かう。
そこには、怒っている様子の湖林くんが…
「鈴原…貴様、オレのグッズは知らんか?」
「え?湖林くんのグッズ?」
まあ、『超高校級』となれば知名度も高いし、グッズくらいはありそうだけど。
「たわけが!織田木瓜の家紋やら圧切長谷部のキーホルダーやらが置いとらんのじゃ!
観光地のお土産屋にはよくあるじゃろうが!?」
そういや湖林くん、自分を織田信長だと思ってるんだっけ…
にしても、お土産屋にはキーホルダーも「○○に行ってきました」系のお土産はない。
「でもヒストリヱランドってハイカラロマンがテーマの遊園地だよね?どこにでも売ってあるようなありきたりなお土産よりも、その遊園地ならではのお土産の方がいいと思うんだけど」
「オレが…ありきたりじゃと?」
しまった!地雷を踏んでしまったようだ!
「ストップ!ストップ!落ちついて湖林くん!それほど織田信長が有名ってことなんだよ!」
「…そうじゃ。いいこと思いついたぞ。ないんなら作ればいいんじゃ。
ハンドメイドには自信はないから後で雨崎あたりに教えてもらおうかのう」
どうやら機嫌はなおったようだ。よかった…。
湖林くんに洋館のことは教えない方がいいんだろうか。もし教えてしまったら…わたしはどうなるかわからない。
だから、身勝手な考えかもしれないけど今は内緒にしておこう。
それにしても…モノモノマシーンと書かれてある巨大なガチャガチャが気になる。
絹川くんから貰ったメダルはここで使うのかな。
わたしはポケットからメダルを取り出し、モノモノマシーンのコイン入れに入れ、ハンドルを回す。
すると、モノモノマシーンからは大きなカプセルが出てきた。
そしてカプセルの中には…水の入った500mlペットボトルと、説明が書いてある小さな紙が出てきた。
『ミネラルウォーター』
水道水に満足できない現代人のために海洋深層水を加工した飲料。ミネラルが豊富で美味しい。
ガチャガチャに口に入れるものを入れて大丈夫なのか?
でも、何が出るのかわからないというのは実に楽しい。
…もう一度、いや、あと5回やってみよう。
『2.5Dイヤホン』
立体的かつ薄っぺらな音響を提供するイヤホン。因みにカナル式で音量調節不可。
『ドローン手作りセット』
ドローンの仕組みを理解しながら作れてしまうキット。因みに完成しても高さ3mまでしか飛べない。
『フィギュア入り培養槽』
小さな培養槽の中にポリマーと一緒に入れられているフィギュア。部屋に飾ると人造人間をと一緒に居られる気分が味わえる。
『名画折り紙』
世界各国の名画が書かれた折り紙。なぜかダ・ヴィンチの名画が多い。
『ブリキの兵士』
とある国で製作された銃を持った兵士のおもちゃ。ゼンマイを回すと歩く。
おもちゃから実用的なものまで出てきたけど…誰かに渡してもいいのかな。
噴水広場。噴水近くのベンチで本を読む女性が一人。紅葉さんだ。
『愛のコラール』と書かれた表紙の本を黙々と読んでいる。お土産屋で買ったんだろうか?
今は邪魔しない方が良さそうだな。
探索も終わり、レストランで昼飯も食べたのでホテルの自分の部屋に戻る。
今のところは誰も死んではいない。だが、洋館の警報装置や、お土産屋のロープのような凶器は用意されている。
コロシアイを止める為にはどうしたらいいのかはわからないけど…とりあえず、今は行動してみようかな。
さて、昼から何をしようか。
◆
二階堂さんは、無言でホテルのエントランスを改造箒で掃除している。
エントランスには掃除道具が入っていると思わしきロッカーがあるんだけど、その中のものを使うことはないのかな。
「ん?どうした鈴原?にしてもここ結構綺麗だよな!アタシらを誘拐した奴らってひょっとして綺麗好き?
まあピカピカのホテルを見たら連中もいつか更生すっかもな!」
よし、二階堂さんと過ごそう。
というわけで、二階堂さんとモップで掃除をして過ごした。
二階堂さんと仲良くなれたようだ。
喉が渇いたと思うので、『ミネラルウォーター』を渡しておこう。
「おおっ!これ…掃除に使えそうだな!多分これでサッシが綺麗になるぞ!鈴原、ありがとな!」
飲料として渡したんだけど…とても喜んでくれたようだからいっか。
「…」
相変わらず黙って掃除をしている。というか、掃除をしている時は黙っている。
「あの…話しかけていいかな?」
「?いいけど」
「二階堂さんさ、ここを掃除してて何か脱出の手がかりとか見つけた?」
「うーん…ここのエリアはほとんど掃いたんだけどさ、穴も全然見つからないんだよな。
出口は言わずもがなだし、マンホールも溶接されて閉ざされているみたいだし…」
「この『コロシアイ遠足』の黒幕の目的を考えれば当然だろうね…」
「でもさァ!コロシアイとかよりもやっぱ掃除だろ!
掃除はいいぜ。ずっと無くしてたものが見つかる、収納スペースも増える、
お客様がきても恥ずかしくない部屋になるでいいこと尽くしだ」
わたしは掃除は好きではないんだけど…その気持ちはわかる。
「あのさ、聞いてくれるか?」
「いいけど、どうしたんだ?」
「アタシの部屋見たんだけどさ…掃除道具がねーんだよ。改造箒は持ってるんだけど。トイレのブラシしかねーんだよ!
トイレのブラシでどうやってお風呂掃除するんだよ!」
「ホテルってそんなもんじゃないかな。普通従業員さんが掃除するし。黒幕が綺麗好きだとしたら多分彼らがやってるんじゃないかな」
「綺麗好きならちゃんとお風呂のブラシも置いてるだろうが!まあいいよ。
なあ鈴原!いつか黒幕連中にカチコミ行こうぜ。この改造箒がありゃモノクマやカラフラだって一発だろ!」
「…校則にはモノクマやカラフラに暴力を振るってはいけないって書いてるけどいいの?」
「あ、そうだったね。でも殺されそうになった時のために得物は用意した方がいいぜ。新聞メリケンとか」
メリケンってことはメリケンサックかな?いや、武術の心得はないんだよな…
「木の枝を折って木刀を作る…とかはアタシ的には邪道かな。遊園地の景観が乱れる」
「いや、大丈夫だよ。気持ちは嬉しいけどそこまでしなくていいよ!」
「鈴原、あんた殺し殺されの世界ナメてんだろ?強けりゃ生きて弱けりゃ死ぬ…今はそんな世界にいるんだよな。
聞きたいか?アタシの周りの人間の話」
…それから、彼女の出会ってきた不良の話を聞かされた。
五流した不良、伝説の暴走族、100発殴られても立っていたヤンキー…。
どうやら彼女は、ものすごく過激な世界で生きてきたようだ…。
『美化委員の名の通りかなり綺麗好きな少女…なのだが同時に現役の不良でもある。
カチコミやメリケンなどの物騒な言葉を使ったりする。』
◆
夜7時。夕食の時間がやってきた。レストランのバイキングは普通のバイキングだ。味は結構良い。
梅田くんと二階堂さんの姿がないが、前者は部屋で食べ、後者は6時には食べたらしい。
隣の席でグラタンを食べる雨崎さんが、1つわたしたちに提案してきた。
「あのさ、ここのみんなで花火大会しない?みんなの友好を深めようと思って」
「花火?そんなのどこにあるの?」
「お土産屋で見つけたの。手持ち花火とかの小さなやつしかなかったけど」
雨崎さんは2袋の大きな花火セットを取り出した。
「それは素晴らしいですね。打ち上げるタイプがないのは悲しいことですが。僕も参加してよろしいでしょうか」
「いいよ。参加は自由だから。花火に参加したい人手をあげてくださーい!」
この生活の息抜きを見つけたいのか、多くの人が手を上げる…例外除いては。
「ごめん。花火はうるさくて苦手なんだ。小説読んでたいね」紅葉さん。
「昔花火で火傷したのがトラウマになっていますの」一ノ瀬さん。
「燃えるのは本能寺の変で十分じゃ」湖林くん。
そして、意外な人物も断った。
「はぁ…あのさ、この中に殺人犯がいるかもしれないのに呑気に花火大会?
明らかに花火を使って犯行を起こす奴いるだろ?」
「では、マユミくんにを考慮して私も欠席させていただきます」
檀くんと、イヴァンさんだった。
「結構欠席者多いんだね…まあいっか。梅田くんと二階堂ちゃんは後で誘おーっと」
「仕方のないことだ。誰にでも事情はある。無理に参加させてストレスを溜める訳にはいかないからな!」
未隅くんと雨崎さんはお互いグラタンやらステーキやらを食べさせながら話す。
バイキングで取ってきたものを食べ終わったので、わたしはある人物に話しかけることにした。
「…灰寺くん、ちょっといいかな」
「んー?」
灰寺くんはピザにオムレツを乗せて食べている。イタリア人が見たら卒倒しそうだ。
「1つ、お願いがあるんだ。怖いお願いかもしれないけど…このヒストリヱランドの壁を登って欲しい」
「うーん…実は今日の昼登ろうとしたんだけどさ、登山用のハーケンが売ってないんや。
それに壁はレンガ製なのにすごく硬いんや。ハーケンがあっても打ち込めへんと思う」
「そうなんだね…でもありがとう」
わたしは灰寺くんにお礼を言う。やはりヒストリヱランドからの脱出は不可能なんだろうか。
最終手段…殺人と学級裁判のことを思い出す。いや、ダメだ。殺人というのは、人の人生を終わらせてしまう行為だ。
その人が生きたかった道も、意思も消してしまうんだ。だからコロシアイなんて、してはいけないんだ。
ホテルへ帰る途中、星空を眺める。星空はやはりヒストリヱランドのある日本のものだ。
異世界へワープしたとかそう言うのではない。
生きているのに、日常の中にいるのに、日常から切り離された空間にいるような気がした。