・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレ(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。
以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。
「ううぅ…ひっく…うっ…」
バニラさんは、ひたすら泣いている。メイクは流れ出る涙で取れていて、ピンクの瞳からは光が失われている。
「なあ…本当にイヴァンを…バニラがやったのかよー…?」
「…もう…決まってるじゃん…私が…私が…うわあああああああああっ…!」
その場に膝をつくバニラさん。そこにいたのは、いつものムードメーカーのような彼女ではなく、悲しみに暮れるただの少女だった。
「…バニラさん。わたしも、悪いんだよ」
「え?鈴原さんが悪いって…?」
「実はわたし…あの洋館の鉄の扉を、事件前に蹴ってしまって…警報装置を発動させてしまったんだ。
わたしはすぐに逃げ出したから撃たれずに済んだけど…そこを通りかかったバニラさんたちが、カラフラの警報装置の扱い方を聞いてしまって…」
「…それが…どうしたの…?」
「本当に、ごめん。あの時わたしが洋館に突入しなければ、こんなことにはならなかったよね…」
わたしは、バニラさんに謝罪する。
「いや、違うよぉ…イヴァン殿を殺した…私が悪いんだよぉ…。イヴァン殿は…きっと私を…ゆ…許さないだろうね…みんな…ごめんなさい…!」
「謝罪合戦はどうでもいいけどさ、バニラさんがイヴァンクンをぶち殺した理由は一応あるでしょ?」
…モノクマは、お腹に手を当てて笑っている。
「では、早速バニラさんの動機について説明いたしましょう!こちらがバニラさんへのプレゼント…『おばあちゃんの映像のディスク』の映像になりまーす!」
スクリーンに、アナウンサーの女性からインタビューを受けるおばあさんの姿が映される。
◆
『孫が小さかった頃、よくここの公園でアイスを食べてピクニックごっこをしてたのよ。バニラ味が好物でね。
キャッチボールや、おままごともしたっけねえ。最近は会っていないけど、きっと元気にしていると思うわ』
おばあさんは、孫との思い出を話している。おそらくバニラさんの祖母なのだろう。
「私は…おばあちゃんと、お母さんと3人暮らしだったんだ。でもお母さんは仕事で忙しくて…おばあちゃんが私の面倒を見てたんだよぉ。おばあちゃんが大好きで、塞翁ヶ馬学園に入った後も毎日連絡取ろうと思ってたんだ…でも…あんなインタビューは知らない。
それに…番組の放送日が入学より後だったんだよぉ…!」
スクリーン映像には、アナウンサーが日にちを読み上げているのが映っている。
これはわたしでもわかる。日にちが…わたしたちの入学よりだいぶ後だ。
「モノクマの言う『何年も経ってる』なんて信じてなかった!でも…こんなディスクを見せられたら疑わえなかった!
…昨日の夜…たまたま外を見たら…拳銃に弾を込めてるイヴァン殿を見たんだよ。まさか、人を殺そうとしてるんじゃないかと思って…
鈴原殿に変装するのは、カーテンを見たら思いついたんだ…。万が一のことを考えてね。モップは二階堂殿が使ってるのを見てた。
変装して、イヴァン殿の後をついて行ったら…洋館にたどり着いたんだ。中に入ってたら、ちょうどイヴァン殿が多目的ホールから出てきて、それで…」
「…警報装置を発動させたんだね…おばあちゃんに、会うために…」
紅葉さんは、無表情で言った。
「あのさ、バニー」冷たい声が裁判場に響く。檀くんだった。
「このディスクが捏造である可能性は考えなかったのかよ?家族に会うために、ツバ吉に変装していっちゃんを殺したのか?
いっちゃんの命をあんな卑劣な手段で利用して、俺たちを殺して…それで良かったのかよ?」
「あ、あのさ檀くん…そんなに責めない方がいいんじゃ…」雨崎さんが仲裁に入る。
「お前らも、バニーに殺されていたかもしれないのに?」
「でも、ごめんって謝ってるじゃん…」
◆
「ねえ、ちょっとわからないところがあるんだけど…」絹川くんが手を挙げた。
「で?何かバニーに質問でも?」
「どうして、イヴァンくんは洋館に行ったのか…みんなはわかるかな?」
「推測だけど、洋館の2階は黒幕のアジトとか…そう言うのじゃないかな。警報装置なんて物騒なもの、黒幕が付けたとしか思えないし…」
わたしは、推測を言う。でも、答えても遅いのだ。
イヴァンくんは死に、バニラさんは…罪を犯してしまったから。
「もう…いいのです。」バニラさんが、力無さげに言う。
「愚かなのはアテクシ1人なのです。おばあちゃんの事だけじゃない。あめだま星のこととかファンのこととか動画の配信予定とか、今でも頭の中に渦巻いているのです。
動機は…『出たかった』と言う感情だけでいいのにね!私はいつもそう!自分を着飾ることばかり!どうして!どうして!どうして!」
バニラさんは涙を零し、地面を必死に叩く。
「いやー、本当にそうだね!素直に出たいとかお金が欲しいとか衝動的な殺人でいいのに、家族の話?そんなのつまんないじゃん!
そろそろウジウジした茶番はやめてさ…早くオシオキの時間にしない?」
「それもそうなのだ。わーは見守ってるから、初オシオキをとっとと済ませてくるのだ」
「…え?」
オシオキって…まさか…処刑?
⑧学級裁判で正しいクロを指摘できた場合、殺人を犯したクロだけが処刑されます。
電子生徒手帳の校則を思い出す。まさか…バニラさんが?
「今回は、『超高校級のネットアイドル』であるバニラ・キャンディさんの為に、
スペシャルなオシオキを用意しました!」
「しょ…処刑…?まさか…い…いやだ…死ぬのいやだ…ああああああああっ!」
バニラさんは叫び、髪を振り乱しながら錯乱する。
「たすけてよ!誰かモノクマやっつけて!なんとかして!お願い!しんじゃう!私…本当はこんなのいや!
おばあちゃんにあいたいのに!まだやりたいこともあるのに!しにたくない!しにたくない!しにたくない!」
「では、張り切っていきましょう!オシオキターイム!」
モノクマの座る椅子の前に赤いスイッチが現れる。モノクマは、それをハンマーで押す。
『バニラさんがクロにきまりました。オシオキをかいしします。』
スクリーンには、モノクマに連れ去られるバニラさんのドットアニメが描かれている。
すると天井のいつの間にか開いていた穴から、首輪のついた鎖が飛んできて…バニラさんの首に付けられた。
「あいばさん…おばあちゃん…!いやだ…!」
バニラさんに名前を呼ばれた藍葉さんは、何もできないまま立ちすくむばかりだ。
…そして、今回の犯人・バニラさんは。
「いやあああああああああああああっ!」
全ての希望を奪われ、漆黒と死の世界へと連れ去られていった…。
◆
天井にはUFOが浮かんでいた。鎖はどうやらUFOから伸びていたようだ。
今回のクロ…バニラ・キャンディを仕舞うと『連行中』のデジタル文字が書かれたUFOはどこかへと消えていく。
やがて…裁判場のスクリーンに、地球からUFOがワープで旅立ち、遠い宇宙へと旅立っていく映像が映される。
UFOはフィルムに包まれた飴玉のような星…『あめだま星』へとたどり着いた。
あめだま星の、お菓子でできたお城の前には、民衆が集まっている。
『人殺し』『犯罪者』『失望した』などのクッキーのプラカードを持った民衆。おそらくクーデターを起こしているのだろう。
バニラはそんな民衆の前で手を縛られ、仰向けでギロチン台に繋がれている。
『あめだま星クーデター勃発〜叛虐のスカフィズム〜』
超高校級のネットアイドル バニラ・キャンディ処刑執行
あめだま星の兵士の姿のモノクマが蜂蜜の瓶をひっくり返し、バニラの全身にかける。
彼女の顔から、赤いメガネが落ちた。
蜂蜜が切れると…モノクマが隣の虫籠を開ける。虫籠の中には、ハチにクモ、ガにムカデなどの大量の虫たちが蠢いている。
尤も、あめだま星にいるようなカラフルな虫なのだが。
虫たちは…バニラの全身に群がる。彼女は足や頭、縛られた手を必死に動かし虫たちを払いのけようとする。
しかし虫たちは極上の餌に食らいつくように全身を覆っていく。
バニラを覆う虫たちから血が吹き出ると、民衆の歓声が上がる。
虫に覆われた彼女は蠢き、やがて動かなくなる。それでも…虫たちは餌を食らいつくす。
しばらくすると、虫たちは籠へと戻っていく。
ギロチン台には、大きなリボンを付けた白骨死体が乗っている。
民衆は、さっきよりも大きな歓声を上げる。
やがてギロチンの刃が落ち、白骨死体の頭蓋骨がどこかへと転がっていった…。
◆
「ヒャッホォォォォ!エクストリィィィィィム!アドレナリンが染み渡るゥゥゥゥゥ!」
モノクマは、スクリーンの向こうの処刑を楽しむように笑っている。
そして、わたしたちは…
「あ…ああ…」
「な、な、な…何だよこれ…!バニラ姉ちゃんが…死んだ…!」
「なんて…むごいことをするんじゃ…!」
それぞれの希望が失われていくのを感じながら、喚き叫んでいた…。
「アナタラもこの処刑がエグいって思うんだね。わーもそう思ってるのだ。でもこれは仕方ないことなのだ。
だって…罪を犯したんだから。自分の罪は、自分で償う。それがこの世界のルールなのだ」
カラフラは、悟ったように喋る。
「ふざけるな…いくらルールだからって…!あんな残酷な殺し方はする必要はないじゃないか!」
わたしは、モノクマとカラフラへの怒りのあまり拳を握る。でも…怒りをぶつけることができなかった。
モノクマたちに怒りをぶつけてしまえば、わたしが警報装置をまた発動させたのと同じになってしまうから。
「そんなに殺されるのが嫌なら、ずっとここで共同生活を送るんだね。じゃ、バイナラ!ぶひゃひゃひゃひゃ!」
「アナタラの希望がどうなるのか、楽しみにしてるのだ。グッドラックなのだ!」
モノクマはカラフラを連れ、どこかへと去っていく。
残されたわたしたちは…どうしていいのかわからなかった。
「…バニラさん…」藍葉さんが呟く。
「私が…事件が起こる前に彼女に付き合っていたら…彼女に投票しなければ…死ぬ前の彼女に何か声をかけてあげれば…あんな悲しい終わり方はしなかったのかな…?」
藍葉さんは、床を見下ろしている。彼女はきっと自責しているのだ。バニラさんを救えなかったから…。
「イヴァンくんだって、彼1人に任せっきりにしないで。一緒にいてあげればよかったかな…」
だが、どうしようもないのだ。2人は死んでしまった。それが、現実なのだ。
「今は泣いたっていいわよ。どうせいつかはみんな死んでしまうんだし」
黒木さんは藍葉さんに近寄り、笑顔で語りかける。
…どうして笑顔なんだ?この状況なのに…飄々としていられるんだ?
◆
「前置きをしておくと…イヴァンやバニラさんの死は、本当に悲しいわ。リーダー的存在とムードメーカーの少女が死んでしまったんだもの。
でも、さっきのオシオキを見て一つだけわかったわ。二人の死は無駄ではなかったの。」
「…無駄じゃない?」藍葉さんは顔を上げる。
「そう…歪んだ娯楽性に溢れた、とても素晴らしいものだったわ」
黒木さんは、手を広げて言った。
「何言ってんのか貴様!オレらやイヴァン、バニラの命を弄ぶのを娯楽扱いじゃと!?」
怒る湖林くんを横目に黒木さんは続ける。
「何を言っているの?このコロシアイは、ただのエンターテイメントでしかないわ。なら、盛り上げればいいじゃない!私たちがこれを楽しめばいいじゃない!
人生なんて所詮死ぬまでの暇つぶし。静かに一人で死ぬよりも、視聴者の糧になって華やかに死ねればいいじゃないの。
それにもし盛り上げられたら、視聴者様のご機嫌も取れて生存者は見事脱出成功…ってなるかもねぇ?」
…黒木さんは、不敵に笑う。
なんで。どうして。人が死ぬ様を笑いながら見られるのか。
恐怖は、感じていないのか。それとも、狂ってしまったのか…?
「わ、私たちが死んでいく様を…盛りあげろって…!?」藍葉さんは怯え。
「何じゃ貴様!死を娯楽として楽しむ連中に媚びろってか!?」湖林くんは叫び。
「あんた大丈夫?バニラみたいに無様に殺されるのがいいってこと?」紅葉さんは静かな憤りを見せた。
「どうせ私たちの悲劇も喜劇も笑劇も惨劇も何もかもが消費されるもの。
なら、視聴者のお望み通りに生きればいいじゃない。コロシアイという地獄を視聴者の天国に変えるの。
ユーザーの見たいものを見せるのはエンタメの基本なのよ?」
「ふざけんなよ…あんた、タバコの件何も反省してねえってことか!?」
「君は積極的で勇敢な子だと思っていたが…愚かな人間だったようだね」
「狂ってますわ。人間の死が趣味だなんて…これだから女は嫌なのですわ!」
二階堂さんも、未隅さんも、一ノ瀬さんも怒りと恐怖を見せている。
「私のことはいつでも殺していいわ。ただし、つまらない殺し方はやめて、エンタメ性に溢れたものにしてね?」
黒木さんは、裁判場の外へと去っていった。
裁判を助けてくれた彼女は、どうしてコロシアイを楽しめるんだろう。
「…ふざけるなよ…いっちゃんは…もう戻らないのに…バニーだって…」
檀くんは、青ざめた声で悲痛な声を上げる。
「アタシたちは、どうすりゃいいんだ…助けだって来ないのに…」
「下手したら殺されるかもしれないんだよ、モノクマや、カラフラのせいで…」
「皆さんは、何を信じればいいのかわからない状況でしょうね」
わたしだってそうだ。迷っているし、悩んでいる。そして、疑っている。
どの道を行けばいいのかわからない状況だ。
「今は、疑うよりも…」
刹那。絹川くんの、優しい声が響いた。
「…2人の分まで『生きよう』と考えればいいんじゃないかな?生きていれば、なんでも考えられるよ。
今日のご飯とか、自然が綺麗だとか、音楽を聴くと楽しいとか。」
「レンきゅん、随分とベタな綺麗事を言えるんだな…」
確かに綺麗事かもしれないけど…それが大切になる時もあるかもしれない。少なくとも、罵りよりはマシだ。
死んでしまえば、考えることすらできないんだ。
「…そうだね。じゃあさ…昼ご飯、何にするか考える?」雨崎さんが提案する。
「食べるって、何をだよ」
「それを考えればいいんじゃないかな?例えば、うどんとかどうかな」
「私は、甘くないものがいいな。さっきの処刑を思い出して吐いたらみんなに心配されちゃうし…」
「じゃあ、うどんで決まりだね」
他愛もない会話。でも、これも生きるための会話かもしれない。モノクマとカラフラに負けないための…。
わたしたちはエレベーターで地上に降り、時計塔の外に出た。
今は昼頃。けれど空は皆の心を映すように曇り空だ。
わたしたちは脱出のプランとか、夕ご飯の話とか、見ているテレビの話とかをしながらそれぞれの行きたい場所へと向かった。
こうして2人の仲間が非業な死を遂げた事件は、幕を下ろした。
◆
わたしはレストランで少しだけうどんを食べた後、部屋に戻った。わたしは、何もすることもなく椅子の上に座っている。
「今は『生きよう』と考える、か…」
いつも付けているオルゴールペンダントのロケットを開ける。
モーツァルトの『きらきら星』の優しい音色が流れる。これを聴くと、とても落ち着く。
モノクマが用意したものかもしれないのに、どうしてなのだろうか。
時々思い出す、謎の記憶との関係は何なのだろうか。
わたしたちは、ここから出ることができるんだろうか。
それは、生きてみなきゃ、何もわからない。
◆
ダンガンロンパ ・フラワーズ Chapter1
「廃空楼獄遊園ヒストリヱ」
END
生き残りメンバー
残り14人
To be continued…
・「あめだまグラス」を入手しました。
1章が開幕した証。バニラ・キャンディの遺品。
赤いフレームと厚いレンズが特徴的なメガネ。
本人曰く飴の素材でできているらしいが、実際は誕生日に祖母から貰ったとか。