ダンガンロンパ・フラワーズ   作:むらさき@ロンフラ

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■作品についてのご注意

・この作品はスパイク・チュンソフト社の作品「ダンガンロンパ」シリーズの、オリジナルキャラクターを使った二次創作です。
 モノクマ以外の登場人物は(おそらく)登場しません。
・「ダンガンロンパ」シリーズのネタバレ(ゲーム・アニメ共に)が含まれる場合があります。
・文章、トリック、ストーリー共に素人のものです。大目に見てやってください。

・この作品については
  ・Chapter1の被害者・犯人の自由行動
  ・特殊イベント
 の内容が含まれています。ネタバレにご注意ください。

以上のことをご理解できる方のみ、お読みください。
では、どうぞ。


ダンガンロンパ ・フラワーズ 第1章 特別編

【被害者 自由行動】

 

 

 

「モノクマと呼ばれる存在にはオーバーテクノロジーが使用されているのだろうか。NASAか、それとも犯罪組織の陰謀か…」

 

独り言が多くても、表情があまり変わらないイヴァンくん。

そういえば、アウリンコ共和国の貴族の息子なんだっけ…

由緒正しき血筋だからこそ、冷静でいることを強いられてきたのかな…?

イヴァンくんと話すと、なんだか緊張するな。何を話せばいいんだろう?

「…アウリンコ共和国はオーロラで有名だよね」

「オーロラですか。私もよく母と観察しました。母は首都近くの山から見るオーロラが一番美しいと会話していたと記録しております」

「お母さんと仲いいんだね」

「母は政治家であり、故郷のホームレス達を救済していることでも知られています。アウリンコのことを思考する素晴らしき女性です」

「故郷といえば…アウリンコでは何かやっていたのか?」

「陸軍にて軍医として従軍しておりました。兵士たちの修復などが主な仕事でしたね」

…修復?普通は治療というけれど…

「ところでスズハラくん。貴女は…身体などの不具合はございますか?」

身体などの不具合?身体の悪い所って意味かな?

「特に無いよ。ここに閉じ込められて怖い時もあるけど」

「では、精神機能の安定のために深呼吸をしましょう。それでも安定しないのなら…精神安定剤があります。それを摂取しましょう」

「い、いや…深呼吸だけで大丈夫だよ!少し不安ってだけで…お薬は大丈夫だから!」

「そうですか…副作用の軽い精神安定剤だったのですが…なら仕方ありません」

「でも、心配してくれてありがとう。優しいんだね」

「優しい…ですか。感謝の言葉だけでも、十分です。」

イヴァンくんは、とても紳士的だ。でも、自分だけなく他人を人間と思っていないような気がする…。

過去に何かあったんだろうか…?

 

イヴァンくんと別れ、部屋に戻ることにした。

 

『落ち着きのある、紳士的で穏やかなアウリンコ共和国陸軍軍医。しかし、同時に自分や他人を人間扱いしていない言動が目立つ。』

 

 

 

 

「モノクマとカラフラからの食料の供給が途絶えれば、餓死の可能性もある。早く脱出手段を考えねば…」

相変わらず独り言が多い。何かわたしから話した方がいいかな…

「聞いていいかな?…アウリンコの観光名所とか、どんな所があるんだ?」

「それについて質問する理由は何でしょうか」

「いや、どんな国だろうなーって…単純な興味だよ。話題になった時によく名前を聞くけど、行ったことはないし…」

「では、発言しましょう。アウリンコ共和国は、ヴァイキングによって栄えた、太陽の美しい国と言われております。

冬は雪の厳しい小国ですが、クリスマスにはヴァイキングの生首に似せた球を湖に蹴り飛ばし、どこまで遠くまで飛ばせたかを競う祭りが開催されます」

え?今生首って言った?それに似せた球を…蹴り飛ばす?

サッカーみたいに…?

「アウリンコの初代国王を讃える儀式です。初代国王には中世で最強とされていたヴァイキングを制し、その首を湖に蹴り落とし神への捧げ物にしたという伝説が残っています」

それほどヴァイキングがひどいことをしたってことなんだろうけど…

「他にも、夏には観光客にサルミアッキを摂取させる祭りが開かれますね」

「えーっと、サルミアッキって…リコリスってハーブのお菓子だっけ?」

「その通りです。この国では馴染みのないお菓子だそうですが、アウリンコの子供達には親しまれています。

マユミくんはアンモニア臭のする、タイヤのゴムのような菓子と仰っていますが…私はよく摂取していますね」

檀くんにとっては苦手なお菓子みたいだな。でも、なんで夏に食べるんだろう?

「スープ皿に入ったサルミアッキを一番早く、全て摂取した観光客は、英雄として金一封が貰えるそうです。

スズハラくんもどうですか?マユミくんは、スプーン一杯分だけでリタイアしたのですが…」

「…わたしは、見ているだけでいいかな…」

…それからイヴァンくんは、お正月に藁で出来た馬に酒を飲ませるしきたりとか、

首都広場のヴァイキングの像目掛けてダーツして、目に当たったら旅行の時に危険な目に合わないおまじないの話をしてくれた。

案外、楽しく話していたような気がする…。

 

『アウリンコ共和国は小さな北欧の雪の国。鈴原の知らない奇妙なしきたりもあるらしい?』

 

 

 

 

「今日の朝食でも、檀くんと一緒にいたけどさ…いつ知り合ったんだ?」

「マユミくんですか?彼は中学生時代からのペンフレンドですね。」

「中学生からなんだ。実際、ここに来るまで会ったこともあるの?」

「いいえ、対顔の経験はありません。しかし、この国の文化などを教示したりしてくれますね。

例えば、海賊に出会った時の攻撃方法…」

「いや、攻撃よりも逃げる方がいいんじゃないのか?」

「攻撃は最大の防御、やられる前にやれ…というのが彼の持論だそうです」

ある意味すごく大胆な戦略的だ…

「で、普段は一緒にどんなことして過ごしてるの?」

「主に…お土産屋にあったゲームをしています」

ゲームって…ボードゲームとかかな?

「『蒼海皇帝』と呼ばれるゲームの最新作をプレイしております」

お土産、色々揃ってるんだな…。蒼海皇帝って、確か…

「海戦シミュレーションゲーム、だったよね?」

「その通りでございます。最新作『蒼海皇帝LegendX』はイージス艦の操縦感のリアルさが売りと聞いておりますが、マユミくんによると子供のおもちゃのように現実からかけ離れているようです。

近頃の『蒼海皇帝』はリアルさよりもグラフィックや演出を重視しすぎている、最高傑作はやはり初代だった…とも言われておりましたね。

それから、グラフィックにおいても前作『Legend』の方が遥かによかったとも…」

檀くん、そんなコアゲーマーみたいなことも言うんだ…

「しかし、マユミくんと実際に出会うまでは…わたしは私は他人とのゲームの経験はありませんでした。というよりも、国家の有料な部品となるための勉学に励む日々でした」

…そうか。

イヴァンくんにとっては、檀くんは多分初めての親しい友達なんだ。

ずっと勉強していたから、あんな風にゲームに誘ってくれるのも嬉しかったのかな…

「よろしければ、次回ご一緒されませんか?」

「ご一緒って、ゲームを?」

「その通りです。海戦ゲームのルールについて指南しましょう。私と共にプレイしていただく形となります」

「…ありがとう。軍艦についてはよくわからないけど…時間が空いた時に教えてくれたら嬉しいな」

最近のイヴァンくんは、とても楽しそうに話してくれてる…。

 

イヴァンくんと海戦ゲームの約束をして、解散した。

 

『ペンフレンドから実際に会う仲になった檀。国家の部品でしかない自分に親しく接してくれる彼を大切に思っているみたい?』

 

 

 

 

イヴァンくんと、海戦ゲームで遊んでいる途中。イヴァンくんがわたしに告げてきた。

「スズハラくんに、兄であるセルゲイの事は伝えたでしょうか?」

「え?伝えてないけど…」

「そうですか。私の兄・セルゲイは家の跡継ぎであり…『車椅子の国会議員』と呼ばれる男です。体は弱くとも、頭脳は自私を上回る。時期首相とも言われるエリート。

無口であり滅多に笑顔の表情を見せない男。…私の目標でもあります」

「へえ…すごい人なんだね」

「かつては仲の良い兄弟でしたが…昔起こったある事故により、二人の関係には亀裂が入ったのです」

「…どんなことが、あったんだ?」

「では、発言しましょう。私の幼少期の記録です。

幼少期から、兄は身体が弱いこと以外は何もかもが私より優秀な人間でした。

ある日のこと。私と兄は家の近くの凍った池で遊戯していました。

滑ったり、雪玉をぶつけあったりしましたね…私はふと、兄を驚かせようと太い木の棒で凍った水面を叩きました。

兄には危ないと言われたのですが、何度も叩きました。そうすると、氷が割れてしまい…私は池の中へと落ちてしまったのです。」

「あ、危ないじゃないか…」

「私は死を覚悟しましたが…兄が水の中へと入り、救出してくれたのです。しかし、そのせいでただでさえ弱かった身体が弱くなり、車椅子での生活を強いられることになったのです」

イヴァンくん、すごく後悔しているだろうな…

「私は後悔の感情を抑えきれなかったのか、兄含めた家族に何度も謝罪しました。僕が悪かった、だから許してほしいと。

しかし父は『お前の余計な感情のせいで長男が死にかけた、今後一切感情を出すな』と告げ、ハイスクールに上がった頃には勘当されていたのです」

…ひどい父親だ、あれほど謝罪したのに…。

いつも兄のことを考えていても、イヴァンくんには頭が回らなかったのかな…

「…それでも兄は、国会議員となるために努力しました。そして、選挙にて見事当選を勝ち取ったのです。

兄は体は弱くとも精神は非常に強い人。しかし、そんな彼のことを考えると…脈拍が高くなるような感じがするのです」

そうか…イヴァンくんは…お兄さんにコンプレックスを抱えているのかな?

彼の悲しい一面が見られたようだ…。

 

それからは海戦ゲームの続きをしていたが、残念ながら勝つことができなかった。

彼より優れた兄は、本当にどんな人間なんだろう…?

 

『兄は家の跡継ぎであり、イヴァンにとって目標でもある。しかし、そんな兄とは悲しい因縁があるようだ。』

 

 

 

 

私は今、イヴァンくんとホットサンドを食べている。イヴァンくんは手でホットサンドを食べる時も上品だ。さすが貴族の生まれ。

「スズハラくん。3つくらい発言したいことがあります」

「えーと…どんなことなんだ?」

「一つは…感謝の感情を伝えたいということです」

感謝って…わたし、話を聞く以外に何かしたっけ…?

「最近になって『自分は人間だ』と思えるようになったのです。これも、自尊心の向上というのでしょうか?

おそらくここにいる生徒の皆さんの行動のお陰でしょうか。まずはスズハラくんに感謝を伝えたい。ありがとう」

「うん。どういたしまして」

「二つ目はいつか軍医の経験を生かし、アウリンコに総合病院を建てたいということです」

「…病院?どうして?」

「人は人によって変えられる…ということに気づいたのです。私も同じ。

軍医として国を守るのもいいが、人々を癒し、変えるための病院を持ちたいと思考したのです」

イヴァンくん、目標ができたんだ。

それに、自分を大切にできるようになったんだ…!

「…今度、マユミくんと一緒にアウリンコに来訪しませんか?アウリンコはこの前も言った通りの素敵な国です。どうぞ来訪されてください」

「サルミアッキの摂取だけは勘弁してほしいけど、楽しみだな」

「なら仕方ありませんね。私を人間にしてくれる貴女との絆を、大切にしたいと思っています」

 

話していると、すごく楽しい。これが、友達ってのなんだろうか。

 

 

『自分のことを部品ではなく人間だと思ってくれた鈴原に感謝の感情を伝えたイヴァン。いつか自分の病院を持ちたいという夢ができたようだ。』

 

 

・「イヴァンのパンツ」を入手しました。

イヴァン愛用のパンツ。高級素材で作られている。アウリンコ共和国は布の名産地でもあるようだ。

 

 

 

 

 

【犯人 自由行動】

 

 

 

「あのさ、バニラさんが生まれたあめだま星って…どんな星なんだ?」

わたしがバニラさんに問いたのは、2人でレストランの食事を食べている時だった。

バニラさんは、自慢げな顔で話す。

「あめだま星が気になるのですか?流石は『超高校級の天文学者』!では、お話しましょう!

あめだま星は…この前も言った通り、ソンブレロ銀河の隣にある不思議天然平和な惑星なのです!

建物すべてが飴でできていて、生まれてくるあめだま星人は全て可愛い女の子ですが…クッキーマンのような風貌の女性もいます。

嬉しいことに、あめだま星のお菓子を食べても全く太らないどころか健康になっていくのです!

毎日が日曜日で働かなくてOK、学校の中に遊園地もあって遊び放題。まあそんな国ですね」

どこかで聞いたことがある話だ…けど、夢のような国だな。

「ちなみに赤ちゃんは…お母さんの口からチョコエッグが出てきて、その中から出てくるので繁殖も問題ないのです」

やっぱり聞いたことがある話だし、お母さんの口が甘くなったりしないのかな…

「ちなみにあめだま星人は体はマシュマロでできていて血潮はイチゴソース、心はゼリーで出来ている…

というのを唱えると固有結界を出せるらしいです。アテクシは試したことがありませんが…」

…これも聞いたことがある話じゃないか!

 

「ちなみにアテクシが地球の学校に通うときは…ワープ能力を使うのです」

「…ワープ能力であめだま星に帰ればいいんじゃないか?」

「うーん、それが10kmぐらいしかワープできないのです。ロケットを修理するためのパワーと部品があればいいのですが」

「そんなに困ってるんだったら…手伝おうか?」

「それでいいですか?じゃあ…今度動画配信のネタ集めを手伝って欲しいのです」

手伝うって…どんなことだろうな?動画のネタとロケットの修理、どんな関係があるんだろう?

 

バニラさんの手伝いの約束をして部屋に戻った…。

 

『自称・ソンブレロ銀河の隣のあめだま星のプリンセス。あめだま星には女性しか住んでいないらしい。』

 

 

 

 

「そういえばロケット修理のためのパワーや部品を集めるためには、どうしたらいいんだ?」

「部品は地球にある材料で足りるのですが…問題は『あめだまパワー』なのです」

「…『あめだまパワー』?」

「あめだま星のロケットは『あめだまパワー』と呼ばれる宇宙の真理の力で動きます。

そのためには…動画の閲覧数を上げる必要があるのです」

「『あめだまパワー』と動画の閲覧数…どういう関係なんだ?」

「『あめだまパワー』…それは感情を持った生き物のある力と同等のものなのです!」

もしかして、『あめだまパワー』って…

 

「…感情のことだよね?」

「その通りなのです!面白い動画を作ることで産み出される『すごい』『楽しい』というプラスの感情こそが…あめだま星のエネルギーの源、『あめだまパワー』なのです。

だからこそ、みんなが楽しめる動画を作る必要があるのです。

アテクシ、地球の文化のことを一生懸命勉強して…アテクシのテーマソングの作曲から歌唱までやったのですよ!」

作曲か…。やったことはないけど、難しそうなイメージがある。

それをこなすのは、よほどの努力家じゃないとできないことなんだろうな…

「まあ『あめだまパワー』や部品の他にも、家け…ロケット修理のための資金集めもやらねばならないのです」

今、家計って言った…?バニラさん、家が貧しいとかじゃないよね?

「他にもスポンサーとの面談とか、取材への対処とか…まあ、いろいろ大変なのですよ

…話が脱線してしまったのです。改めて鈴原殿には…動画のネタの題材を一緒に探して欲しいのです。

コロシアイをネタにすればいいんじゃないかと言われそうですが、不謹慎だと炎上しそうですし…」

「確かにね。一緒に探そう…まず、ウォータースライダーにでも行く?」

それからわたしたちは、2人で動画のネタを探した…。

 

『ロケットを修理するためのあめだまパワー集め…ではなく、家計を助けるためにネットアイドルとしての活動を始めたらしい。』

 

 

 

 

動画のネタを探しに、購買部を物色している途中だった。

わたしたちはレトロなコンピューターゲームのカセットと本体を見つけた。

「こ…これは!『マルコファイターズ』!アテクシがこの前実況したゲームの初代じゃないですか!」

「ゲーム実況か…どんなゲームの動画を配信してるの?」

「ゲームは家にあったものをやスポンサーから頼まれたゲームを実況したり、スマートフォンの対戦ゲームを配信しているのです。

昔のゲームはかなり難しいですが…プレイ動画がきっかけでそのゲームを知り、買ってもらえるとすごく嬉しいのです

まあ炎上もあるのですが…」

動画でも百合キャラで売ってるんだな…そういや、百合営業ってのは…

 

「ファンのために自分は女の子が好きですってアピールすることだろ?」

「その通りなのです!スポンサーの男の人に都会のカレーショップについて教えてもらったので許可をもらい配信した、

それなのに『バニラたんが辛いカレーを食べるわけがない』って考察班が現れ…お店にも大きな迷惑を掛けてしまったのです!」

「ネットアイドル、大変なんだな…」

バニラさんも、苦労を重ねてきた顔をしている…。

 

ちょっと会話をしていくうちに、70年代のアイドルの着せ替え人形を見つけた。

「これはこれは…おばあちゃんが好きそうなお人形なのです!持って帰っても怒られないですよね?」

…おばあちゃん?一体誰なんだろう?

「よし、今度の配信はレトロなおもちゃについて語るのです!」

「それも、いいかもしれないね」

 

バニラさんと一緒に動画のネタを探した…。

 

『慣れないゲーム配信を行ったり、彼氏疑惑で炎上したり、ネットアイドルの仕事はとても大変。』

 

 

 

 

「あのさ…あめだま星の人々とは通信とかやってるの?」

「毎日通信しているのです。そりゃあいつも天然平和な会話をしているのです」

「ところで、どうして地球に来ようと思ったの?」

「まあ色々ありましてですね…あめだま星の王家の血を引く者は修行のために宇宙を旅しなければならないのです。

その旅の途中で…富士山に不時着してしまったのです」

富士山…青木ヶ原樹海、じゃないよな…

「そこにいた心優しい老女に拾われ、彼女と…お母さんと暮らすことになったのです」

「お母さん?お父さんは…?」

「お父さんは、幼い頃にし…いや、何でもないのです。」

なんだか悪いことを言った気分だ…

バニラさんは、目を伏せながら口を開いた。

 

「…おばあちゃんには、あの人のおじいちゃんが残した大量の借金があるのです。

それを返せないかと趣味だったダンスの動画を投稿した所、今のスポンサーにスカウトされて、ネットアイドルとしてデビューすることになったのです。それが…アテクシのアイドル人生の始まりなのです」

そうか。バニラさんはおばあちゃんの借金を返すために、活動をしているのか…。

「最近は稼ぐための条件が非常に厳しくて…まあ、100万PVくらいだとお金になるんですけどね。

スポンサーとの打ち合わせや取材で忙しいし、毎日バス通勤で交通費がかさむのです」

バス?この前言っていたワープを使えばいいんじゃないか…?

まあ、突っ込んでも野暮だからやめておこう。

「でも、おばあちゃんとの生活があれば毎日が楽しいのです。ゴールデンウィークは茶摘みの季節なのでおばあちゃんの手伝いをするのですよ」

「もしかして、バニラさんのおばあちゃんが住んでる所って静岡だったりする?」

「ビンゴ!そうなのです!アテクシは生まれも育ちも静岡…じゃなかった!さっきのことは聞かなかったことにするのですー!」

顔を抑えながら、バニラさんはどこかへと去っていった…。

 

『実は静岡に住んでいるらしく、祖母と母親と3人暮らし。茶摘みの季節になるとおばあちゃんの手伝いをするんだとか。』

 

 

 

 

「動画の編集ができないのは残念なのですが、ネタについてはだいたいまとまってきたのです。

とりあえず新作動画はレトロなおもちゃについての話をしたいのです!スポンサーも喜んでくれそうだし!」

レストランのテーブルの上には、おもちゃの絵とその説明と動画の構成について書かれたメモ帳が広げられている。

超合金のパチモンロボット、救急箱のままごとセット、初代リサちゃん人形…アニメのメンコ、塗り絵、ボクシングするサル…

これだけあれば長い動画にはなりそうだけど…

「その動画、長すぎて見てもらえない…ってことにならない?」

「いいや、面白ければ長い動画でも見てもらえるのです。じゃなかったら映画産業なんてとっくの昔に寂れているのです

でも…レトロなおもちゃは電気を使わないシンプルな構造のものが多かったような気がするのです」

バニラさんは俯く。

「昔のおもちゃは素晴らしいんだねぇ。私もゴテゴテしたケーキのようじゃなくて、こんな風にシンプルに生きれたら…」

口調がいつもと違う…もしかして、素が出たりしたのかな?

「…はっ!なんでもないのです!アテクシは…あめだま星のプリンセス!

美少女が大好き!象が踏んでも壊れないし、眼球だってアイスクリームのように冷たいのです!」

設定が増えてるような…

「そうやって、設定を増やすのもいいけど、大切な人の前では素を出す…なんてのもいいんじゃない?」

「…え?」

「ほら、よくあるじゃん、正統派がギャップを出したら人気が出たとか…」

「でも、アテクシのキャラクターが崩れたら、去っていくファンのほうが多いような…?」

「それでもついていくファンを大切にすれば…もっと人気が出る。そんな感じもするんだ」

「えーと、素を出すってことは…」

バニラさんは周りを確認し、わたしに耳打ちすると…

 

「アテクシの本名は…箱崎亜衣里(はこざき あいり)という名前なのです」

 

 

…いきなり本名を出してきた!?

 

 

耳から口を離し、バニラさんは小声で言う。

「…さっき言ったことは、秘密にしてほしいのです。」

「うん。秘密にするよ」

「よし!EDMのCDのジャケットのようにゴテゴテしたレイアウトはやめて…シンプルな可愛さを追求するのです!

脱出したら、すぐ動画作成に取り掛かりたいのです!鈴原殿、協力感謝なのです!」

 

バニラさんは、笑顔で感謝の言葉を告げた。

友達と一緒に協力するって、こういうことなんだろうね…!

 

「信じてるよぉ。この秘密、守ってくれるって…」

 

 

『鈴原に教えた本名は箱崎亜衣里。アイスクリームのようにもっとシンプルに生きてみたいと考えるバニラであった。』

 

 

 

・「バニラのパンツ」を入手しました。

バニラ愛用の縞パン。縞パンといってもクリーム色。後ろには土星の絵が描かれてある。

 

 

 

 

 

 

【特殊イベント】

 

動機が発表された次の日のことだった。

レストランで昼食を食べていると、絹川くんに話しかけられた。

「あの…鈴原さん?」

「どうしたの?」

「…あんな動機見ちゃったけど、コロシアイを止める為には…みんなで仲良くしたほうがいいよね?」

その為に…広場で遊ぼうと思って、色んな人を誘っているんだけど…鈴原さんも来る?」

 

…そういえば、購買部のモノモノマシーンで手に入れた『ドローン手作りセット』なるものがあったな。

それをみんなで組み立てて遊ぼうかな…?

 

「いいよ、ちょうどいい遊び道具もあるし」

「いいんだね!じゃあご飯を食べ終わったら行こう!」

絹川くんの顔がぱあっ、と明るくなる。こっちまで嬉しくなりそうだ。

 

 

 

 

噴水広場に絹川くんと向かう。

そこで待っていたのは…藍葉さん、イヴァンくん、檀くん、バニラさん、蒲生くんだった。

「さすがに遅いっての、レンきゅん。主催者が遅れてどうするんだよ」

檀くんが悪態をつく。わたしはとりあえず、『ドローン手作りセット』を取り出し、紙の箱を開けた。

箱の中身は、組み立てれば大きくなるであろうドローンの部品と取扱説明書が詰められている。

「うわあ…組み立てれば、すごく大きなドローンになるね!」

「…純国製の無人航空機。安全性は確かだが、組み立てが必須か…」

「えーと、これをみんなで組み立てれば多分すぐに飛ばせる…かなぁ…?」

「ラジコン飛行機ですか。天に人類が作りしものを飛ばすとは…天に近づいたような感じですね」

「カメラ機能のないタイプのドローンなのですね!カメラさえあれば配信には使えそうなのですが…」

「バニー…なんでも動画の話に繋げるなよ…」

箱を覗く皆が、驚きの声を上げている。

「よし!藍葉殿と鈴原殿で青空の下裸の付き合いでもしましょう!」

腕まくりをするバニラさんを無視して、蒲生くんが取扱説明書を取り出す。

「僕は機械には強くないので…指示を出す係をやろうと思いますがよろしいでしょうか?」

「いいよ。みんなは説明書を見てる暇はないと思うし…」

「ではアテクシは工具セットを持ってきたので…好きに使うのです!」

…という訳で、全員でドローンを組み立てることになった。

 

 

 

 

「ドローンとは無人機の全般を指す言葉。オスのミツバチという意味を持つ。

3つ以上のローターを搭載した回転翼機はマルチコプターと呼ばれている…」

説明書を読み上げるような独り言をあげているのは、蒲生くん…ではなくイヴァンくんだ。

「…ところでこれ、ドローンじゃなくてマルチコプターだよな…?」無表情で、なぜか素早く組み立てる檀くん。

「そうだねぇ…今組み立てているのはローターが4つあるクアッドコプター…って言うんだ」解説する藍葉さん。

「なるほど。ドローンとマルチコプターは違うもの…自動で動く機体がドローンなのですね」勉強する蒲生くん。

「ドローンは自分で動けるんだ。放り投げるだけで飛ぶものもあるみたいだね」なぜか詳しい絹川くん。

「ローター…いや何でもないのです」下ネタを呟くバニラさん。

そして、コントローラー部分を望遠鏡を手入れするように慎重に組み立てていくわたし。

 

こうして、20分ほどでドローン…いやマルチコプターは完成した。

1mほどの大きさの赤と白の機体だ。

 

 

 

 

最初の操縦は、檀君がすることになった。

「さて、ちゃんと組み上がってれば空高く舞い上がるんだけどな」

檀くんがコントローラーを少し動かした瞬間…マルチコプターは舞い上がった。

ドローンは噴水近くをぐるぐると回っている。

「す、凄いね!ドローンも楽しそうだよ!」絹川くんは大はしゃぎだ。

「これを空から見た人が何かに気づけばいいんだけどな…」

「遠くまで飛ばしていけば、誰かに気づいてもらえる…と思うんだけど」

「…いや、モノクマとカラフラにバレるんじゃねえの」

「それにしても、感無量と言ったところですね。人が天に近づくとは…」

「地球の科学力は世界一ぃ!なのです!」

 

ドローンは広場を滞空し、風を切りながら飛んでいる。

スマートフォンがないから空撮はできないのが残念だが、皆の記憶に残るのならきっと美しい思い出になるだろう。

いつかみんなで、あのドローンみたいに自由になれたら…

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