お待たせしました。
――2039年7月1日 09:32
「いらっしゃいませ」
画廊に踏み入ったマーカスとノースをにこやかに迎えたのは、黒々とした髪と口ひげを生やした一人の中年男性だった。
上品なスーツを纏ったこの人物こそがオーナーたる画商だというのは、既に調べがついている。そして、静かに歩み寄っていったのはノースだった。
彼女は鋭い眼差しで、さりとて喧嘩腰というほどでもない落ち着いた態度で口を開く。
「失礼。私たちはジェリコの者だけど」
広げた右手のひらにノースが投影させたのは、逆三角形――ジェリコのシンボルマークだ。
それを見てようやく相手がアンドロイドだと気づいた様子の画商は、まじまじと彼女を見つめている。出方を窺うようにしている彼に対して、ノースはさらに告げた。
「この店で買った絵について、いくつか質問がある。今、お時間はいいかしら」
「買った……?」
画商は途端に怪訝な面持ちになって、そう応えた。その片手がぴくりと、何かに怯えるように震えたのをマーカスは目撃する。
もちろん、ノースも男の反応を見たのだろう。彼女はほんの僅かに目を細めると、続きを述べた。
「ええ。代理人を通じてだけど、買ったのは間違いなく私たち。アナーバーに新しくジェリコの支部事務所が建てられたの、ご存じ? 私たちはそこから来た」
「……」
「カール・マンフレッドの絵よ」
そこまで言われて、ようやく画商はどの作品のことか合点がいったようだ。
男は短く息を呑み、それから、再び商売人らしい笑顔に戻る。
「ああ! 確かに、ダーレン・ブロードハスト様がお買い上げの品がありました。代理としてのご購入とは知りませんでしたが」
――どうやら、売った品について忘れてしまうような人物ではないようだ。
それに、アンドロイド側の事情にもそう詳しくはない様子である。ならば、こちらの「正体」に感づかれることもないだろう。
そんなふうに思ってから、マーカスはそっとその場を、すなわちノースの傍らを離れた。
今、自分ではなくノースが表立って男と会話しているのは、もちろんあえての行為だ。
正体が露見していないとはいえ、ジェリコのリーダーが画商と表立って対決するのは、いくら私情のままに動くにせよ、今後を考えればリスクが大きすぎる――という政治的判断も多少はある。だが、それよりも大きな理由は別にあった。
かつてサイバーライフの倉庫からトラックごと部品やブルーブラッドを盗んだ時、そしてアンドロイドショップに陳列されていた仲間を解放した時と同じ。
言うなれば「適材適所」。
マーカスは、ノースや他の仲間の多くに備わっていない機能を持っている。
そしてこの店の秘密を暴くのは、他の誰でもなく、自分自身で成し遂げたい。
「ええ。その絵なんだけれど、聞きたいことがあるのよ……」
まだ画商がクロだと定まっていない以上、比較的丁寧な口調を保ったままノースが切り出すのを耳にしながら、マーカスは壁に飾られている売り物の絵画をすばやくスキャンした。
コナーのような詳細な分析能力はなくとも、人間が肉眼で確認するよりはずっと精細に、視覚プロセッサは情報を拾い出してくれる。
結果、並んでいる作品は5点中、2点に不審な箇所があった。
それらは「本物の」レコヴィクの抽象画、「本物の」マイヤーズの大作であり、元の持ち主が手放した作品としてここに並べられている。けれど、信用できない――プログラムはそう結論づけた。
むろんカールの手による作品ではないから、細かな違和感は指摘できても、ゆえに贋作だと断言できるほどではない。だがかつて画集やデータベースなどで見かけた真作と比べた時に浮かび上がる、微妙なタッチや色彩の違いは、とても看過できるようなものではなかった。
事務所であの絵を見た時と同じ感想、つまり「写真からそのまま絵に起こしたような」単調な起伏のなさを、マーカスは鋭敏に感じ取る。
そう、まだ憶測でしかないが――これらの贋作を描いているアンドロイドはきっと、実物を目の当たりにしてではなく、写真を見てそれを絵に描き起こしているのだろう。
そんなことを考えつつ、視線を天井に向ける。部屋にはいくつもの監視カメラが設置されていた。高価な芸術品を扱う店舗である以上当然なのだが、カメラは実に入念に、店内のあちこちを映せるように配置されている。
「……」
手をかざす必要も、目を閉じる必要すらもない。だが、もしこめかみにLEDリングがあるままだったなら、その色が青から黄へと転じただろう。
マーカスは、人間で言うならば「呼吸をするように簡単に」監視カメラをハッキングすると、自分とノースが映る部分を改竄し、さらに機材同士を繋ぐネットワークをプログラム上に浮かび上がらせた。
この売り場を映す複数のカメラ、さらにカウンターの奥、ドアの向こうの事務室に置かれているカメラと――それらを管理しているデスクトップ端末に至るまで。
こうなってしまえば、もはやカメラが記録している映像も、端末の中身も、すべて目の前に並べられたのと同じだ。壁の絵画を眺めるフリをしたまま、マーカスはそれらの情報を精査していく。
その間に、ノースは画商に質問を重ねていた。
それまではブロードハスト氏に絵を売った時の様子や、絵の出処に関する単純な事実調査だったのだが、ついに、彼女は核心を突いた問いを投げかける。
「……元の持ち主の遺族が、ここに売りに出した作品だったというのは理解したわ。じゃあ、もう一つお尋ねするけど」
ひたと画商を見据えて、彼女は告げる。
「仲間の一人が、あの絵は贋作だって言っていたの」
「なっ……!?」
さすがに、画商は表情を緊迫したものに変える。だがノースは視線を逸らさぬまま、静かに続きを述べた。
「精巧ではあっても、カール・マンフレッドとは明らかに筆致が違うって。もしかしてとは思うけれど、心当たりはないかしら」
「……」
「無礼な質問だっていうのは認めるわ」
平然とそう言って、ノースは軽く頷いた。
するとそれまで視線を泳がせて落ち着かない面持ちになっていた画商は、大きな咳払いをすると、慇懃に応えてみせる。
「……当店で扱う絵画は、どれも鑑定書つきの真作です。お客様が何を仰ろうとそれは100%、確実に、覆りません」
「へえ、そう。その仲間はカール・マンフレッドのアシスタントとして、昔は毎日のように本人の仕事を横で見ていたんだけど」
相手を挑発するためか、わざとらしく冷淡にノースは言う。
「それでもあなたは、あの絵が本物だと言いたいのね」
「……。いいか、はっきり言っておこう」
何か癪に障ったのだろう、男は画商としての態度をとるのをやめた。
彼はノース以上に険しい面持ちになると、相手の眼前に突きつけた人差し指を振り振り、食ってかかるように言い放つ。
「あまり人間を舐めるなよ。言いがかりをつけて、代金を踏み倒すつもりか? 変異体の互助組織だかなんだか知らないが、これ以上私と私の店を愚弄する気なら考えがある」
「そちらこそ、あまりアンドロイドを舐めないことね。あなたとの会話は全部メモリーに保存してあるのよ」
微塵も怯まずにノースは言い返した。
「そっちが巻き込まれて騙されてるだけって可能性もあるから、事情を聞いてあげてるだけ。自分の店の売り物に自信があるのは結構だけど、少しは意見に耳を傾けることもしたら?」
「はっ。プラスチックごときが、何を偉そうに」
ついに画商は差別意識を剥きだしに、居丈高に言ってのけた。
「買い手が機械だと知っていたら、私だって売りはしなかったさ。お前たちに芸術がわかるのか? その価値が? 馬鹿馬鹿しい。これ以上営業妨害するつもりなら、警察を呼ぶからな」
「……あぁ、そう」
ノースはいよいよ、心底不快なものを目の当たりにした時はいつもそうするように、眉間に深い皺を刻んだ。
それから肩を竦め、もはや何も言うことはないと鼻を鳴らす。
「そういうことなら、帰らせてもらうわ。でも、いつまでもこのままでいられると思わないようにね」
「フン」
いかにも苛立った様子で、画商は己の口ひげを弄っている。だがやがて、にわかにニヤリと――それは今までにない厭味ったらしい表情だった――笑ってみせると、半ば踵を返していたノースの背に向かって、揶揄するように言ってのけた。
「そうだ、お前の顔。どこかで見かけたと思ったら、あのいかがわしい店か」
「――!」
――瞬間。
ノースのストレスレベルが跳ねあがり、その瞳が怒り一色に染まっていく。
そしてそれは、人間である画商の男にも丸わかりだったのだろう。ノースの余裕が崩れたのが嬉しいのか、ますます口の端を吊り上げて、男は続きを語った。
「お前と同じ顔のプラスチック人形どもが、ガラス越しに媚びを売ってたのを覚えてるぞ。ご主人様の
『ノース、落ち着け!!』
彼女にとって最もデリケートで、最も触れられたくない過去。今のノースを形作っているといっても過言ではない怒りと憎しみ、身をちぎられるような絶望を、あえて弄ぶような男の言動――ノースが我を忘れて怒りくるってもおかしくはない。
マーカスは安易に彼女を巻き込んでしまった己を反省した。だが今は、通信でそう呼びかけるしかなかったのだ。
――けれども。
『黙って、マーカス』
ノースはきっぱりと、こちらの通信を跳ね除けるような一言を返してきた。
それでも、目の前にいる男を殴りつけなどはしなかった。
代わりに、人間であれば血が出ているだろう強さで両の拳を握りしめて、それからあえて相手を見下すように微笑んでみせると、こう告げたのだ。
「ごきげんよう」
下品で無礼なのはお前だと突きつけるように、上品に一礼してみせた後。
毅然とした歩調で、ノースは店の外へと出て行った。
そんな彼女の背を忌々しげに睨む画商を置いて、マーカスもまた足早に店を退出する。
するとつかつかと道を行くノースが、振り返りもせずに通信してきた。
『情報は』
『もちろん、すべて手に入れた』
――そう、ノースが充分に時間を稼いでくれたお蔭だ。
ここから先の行動に必要な情報は、もうすべて自分の中に取り込み終えている。
もっとも、画商の態度があそこまで悪辣だとは、とうてい予想できていなかったわけだが。
『ならよかった』
かたや、ノースはなおも背を向けたまま返事してきた。
『でなきゃ、あんたをぶっ飛ばしてるところだった』
『……詳しくは、手筈通りの場所で話そう』
通信であれ、彼女の声は震えている。だが下手に慰めたりすれば、かえって傷つけるだけだろう。
だからマーカスは努めてそれに触れないようにしながら、淡々と計画通りの行動を進言する。
少し離れたところに、人目につきづらそうな路地裏があるのは既に確認していた。さらなる行動を起こすのは、そこに行ってからだ。
***
「この! クソ! 人間!!」
力の限りノースは叫ぶと、それに合わせて器用に空き缶を――道端に投げ捨てられていたそれを、壁に向かって蹴りつけている。
ちょうどラリーするような形で跳ね戻ってきたそれを腹立ちまぎれに蹴り飛ばすうちに、空き缶はまるでプレスされたかのようにぺしゃんこになっていた。
アスファルト舗装の路面に、かつて空き缶だったものが空虚な音を立てて転がる。
人間であれば「息を切らせて」いるだろう剣幕でそれを睨んでいるノースの疑似呼吸が落ち着くのを待ってから、マーカスは静かに口を開いた。
「すまなかった。やはり、俺一人で行くべきだったな」
「ハッ、冗談。むしろいい機会だったわ、これで容赦なくあいつを地獄に叩き落とせるでしょ」
空き缶だったものをゴミ捨て場めがけて投げつけた後、ノースは多少は怒りが鎮まった様子で腕を組み、こちらに言った。
とはいえ、その目つきはかなりぎらついていたが。
「で、どうだったの。やっぱりあいつがしでかしてたわけ?」
「ああ、間違いない」
断言して、それからマーカスは必要なデータをノースに送信しながら説明する。
「確認できた限り、あの画廊には贋作が他にも13点保管されている。どれもカールの絵と同じ、とても精巧な作品ばかりだ。ただ」
「何?」
「画商が残している記録によれば、近頃はそうもいかなかったらしい」
事務室のデスクトップ端末の中には、オーナーの手による過去の商取引について生々しいデータが数多く残されていた。
マーカスが注目したのは、そのうちの何件かのメールの文面だ。いわゆるブローカーとのやり取りの中に、気になる記述があった。
――およそ二年前のメール。
『今朝送ってきた“商品”だが、あれは却下だ。マッケインの色遣いはあんなのじゃない。素人はごまかせても、あれじゃ好事家どもに感づかれるぞ。ちゃんと同じ画材を使わせてるか? 注意しろ』
――そして、約一年前のメール。
『おい、ふざけてるのか。モチーフが全然違うだろう、なぜ気づかない? こんな絵が売り物になるか。次にこのようなことがあったら、お前との契約は打ち切るからな』
――さらに、三か月前のメール。
『あれが言うことを聞かないというお前の言い分はわかった。だがそれならそれで、描かせるのがお前の仕事だろう。ブルーブラッドを減らすのでも首に縄を巻くでもいい、とにかく逃がさずに“商品”を作らせろ』
「記録があった文面はここまでだ」
マーカスが言い終えると、ノースは悔しそうな顔をした。
「……やっぱり仲間の誰かが捕まって、汚い仕事をさせられてるのね」
「そうだな。そして、明らかにそれに反抗している」
画商がこの薄汚い商売を始めたのは、およそ5年ほど前からのようだ。その間に多くの贋作が作られたはずで、しかし既に売却された品と保管されている品を合わせて考えてみても、作品数があまりにも少ない。
マーカス自身にも経験がある通り、単に完璧な模倣品を作り出すだけであれば、アンドロイドならものの数分もかからずに完成できる。
つまりカールの絵と同じ程度に精巧な贋作は、それこそ数十点以上の規模で残されていてもおかしくないのだ。
にもかかわらず、あの店にはそうした贋作は13点しかなかった。
仮に画商が発覚を恐れてわざとそうしているのだとしても、それならそれでメールなどにその痕跡が残っているはずだ。
だが、あったのは真逆の記述――すなわち「もっと精巧な贋作を送ってこい」という指示。
最初は色彩、次はモチーフが異なった状態で送られてきた絵画は、人間である画商が見てもはっきり偽物だとわかるほどに、大きく真作から改変された作品だったのだろう。そうした売り物にならない絵は、既に処分されてしまったのに違いない。
そしてブローカーがその原因を「あれ」、つまり恐らくは制作を担当しているアンドロイドの責によるものだと訴えると、画商は無理やりにでも贋作家に仕事を完遂させろ、と命じている。
「望まない仕事を強要されるうちに、絵を描かされていたアンドロイドは変異したんだろう」
命令に反抗できるのは、変異体だけだ。
マーカスが告げると、ノースは吐き捨てるように言った。
「最低。これだから汚い人間は……。その仲間は、きっと少しでも命令に逆らいたかったから、違う絵を描いてみせたのね」
「そうだな。だが、それは連中を苛立たせただけだ。一刻も早く、囚われている仲間を救い出そう」
思い返せば、画商がノースを侮辱した直接のきっかけは、推測だが、贋作である事実を他ならぬ変異体に暴き立てられたというのが我慢ならなかったことにあるのだろう。
アンドロイドに絵を描かせ、売り捌く。けれど従順だったはずの奴隷に裏切られ、それもできなくなってきた。その矢先での、ジェリコからの使者の来訪だ。元来持ち合わせている差別的感情が剥き出しになるには、充分な原因である。
そしてそんな人間たちであれば――その変異体を惨い目に遭わせていたとしても、おかしくない。最悪の場合、既に殺害してしまっていても。
纏わりつく嫌な予想を振り払うように、マーカスは頭を振った。
すると、腕を組んだまま壁にもたれたノースが鋭く問いかけてくる。
「それで、そのブローカーの居場所は?」
「それはまだわからない」
正直に答えた。
「あの男なりに、悪事が漏れないように気を配っていたんだろう。ブローカーとの直接のやり取りは、さっき見せたもの以外には何もない。連絡先の情報も、送信されてきたメールすらも」
だから――と、マーカスは通信用の回線を開く。
ノースはこちらを訝しそうに見つめた。
「何をする気?」
「画商本人に聞く。それが一番手っ取り早いし、確実だからな」
そこまで告げた後、その双眸をゆっくりとノースと見合わせる。
「それに、ここに来る前に言われた通り、俺は怒っている。父と慕った人の作品だけでなく、仲間まで侮辱されて平気でいられるほど、お人好しじゃない」
「マーカス……」
「そこで待っててくれ」
視線を戻し、マーカスはさっき手に入れた別の情報――つまり画商の顧客情報をサーチしつつ、声真似のためのソフトウェアを起動させる。
ストラトフォードタワーで、人間のマネージャーを攪乱するために使ったのと同じ機能だ。
後ろ暗い商売をする者の常として、画商はきな臭い人間を顧客としていた。税金逃れの贋作ではなく、裏で流通させた真作のほうを購入できるような相手――すなわち金持ちで、かつ社会の暗部に潜む人物。あるいはそこまでは行かずとも、税務調査官や警察から疑いの目を向けられて、なお尻尾を出さずに暮らしているような人物を。
だから、こちらはそれを利用できる。
顧客リストに名が載っていて、しかもメディアへの露出がある(つまりボイスデータを入手できる)という条件に合致する人物を、マーカスは一人選び出した。それから何食わぬ顔で画商に電話をかけると、相手が出るや否や、間髪容れずに口を開く。
「おい、どうなっているんだ。このわしを騙したのか?」
威圧感のある、老年の男性の声。抑揚まで完璧に真似したその発言を受けて、画商が短く息を呑む音が聞こえてきた。
『これはこれは、ファズヘッド様! い、いかがなさいましたか』
「どうしたもこうしたもあるか! お前、わしに贋作を売りつけたらしいな」
『……!?』
混乱しきった様子ながらも、画商は弁解を述べ立てる。
『め、滅相もない。ファズヘッド様がお買い上げの品は、まごうことなき真作でございます』
「ふん、本当か? 先月のだけじゃなく、去年の11月の分も、間違いなくホンモノなんだろうな」
――顧客データを抽出して知った事実を織り交ぜれば、画商はこれが悪戯電話などではなく、確実にファズヘッド本人からの連絡なのだという確信を強めるはず。
そういうこちらの目論見通りに、画商の声は緊張で上ずっていく。
『ええ、どちらも真作でございます。その……恐れ入りますが、なぜそのようにお疑いに?』
「フン! 何も知らないのか、ジェリコの連中だよ!」
巨体を揺らしつつ鼻を鳴らした――ような音を喉から出力しつつ、マーカスはさらに述べた。
「お前の店が売った絵が贋作じゃないかと、あちこちに探りを入れているようだ。どこから聞きつけたか知らないが、顧客だと知ってわしのところまでもやってきおった! 無論、追い返してやったがな」
言うまでもないが、これはすべて嘘だ。
だがついさっき、まさにジェリコからの使者の来訪を受けた画商には、この言葉はどこまでも真実であるかのように響くことだろう。
実際、画商は歯噛みするような声を漏らしている。
「お前のご自慢のやり口が、アンドロイド連中にバレてしまったことはどうでもいい。だがお前が
『出処……?』
「察しの悪い奴だ。その出来の悪い贋作を、機械に作らせているブローカーだよ! どこのどいつだ」
『そ、それが』
電話口の向こうで、画商は口ごもるように答える。
『ここ数週間、連絡がつかないのです。私はてっきり、先に高飛びしたのかと……』
「逃げたなら追えばいい。わしのやり方は知っているだろう」
威厳たっぷりにマーカスが言えば、相手は恐怖を示すように低く呻く。
やはり声を借りている人物、すなわち大富豪のファズヘッドは、世間の噂通りに真っ黒な人生を送っているようだ。
それはともかく、念を押すようにもう一度、重々しくこちらから告げる。
「“出処”の居場所さえ教えてくれれば、悪いようにはせん。わしに任せておけばいい。どうだ?」
『……』
画商はしばし、押し黙った。しかしこちらが提案を告げた時、相手が安堵したように息を漏らしたのを、マーカスは聞き逃さない。
自分の悪事が、アンドロイドどもの手によって今まさに白日の下に晒されようとしているという恐怖――そしてこの提案は、そこから逃れられるかもしれないという、まさに渡りに船の申し出。
となれば、身勝手な人間が取りがちな態度は一つと決まっている。
『そ、そういうことでしたら』
へつらうように、画商は言った。
『お、お願い申し上げます。ファズヘッド様のお力を借りられるのならば、願ってもないことで』
――それから、画商はブローカーの隠れ家について余さず語った。
聞きながらその住所を検索してみれば、どうやらそこはちょうど5年前から、空き家として放置されている。デトロイトでもよく見かける、人の寄り付かない廃屋のうちの一軒。
恐らくそこは、ブローカー本人の住居ではなく、仕事場なのだろう。
要するにあの贋作の作者が囚われているのは、その家だ。
確信を強めると共に我知らず表情を険しくしながら、マーカスは男に告げる。
「フン、力を借りると言ったな。その通り、これは貸しだ。ここまでさせておいて、もし万が一、これ以上わしに面倒をかけるような事態になってみろ。その時は警察の前に、こちらからお前を潰しに行くからな!」
『ひ……』
「それと」
ひときわ声を低めて、あたかも獰猛な肉食獣の唸り声のように語る。
「ジェリコのプラスチックどもは、どうやらお前の顧客リストを手に入れているようだ。お前と繋がりのある、わしと似たような連中のところにも、今頃奴らの使者が出向いているかもな」
『そ、そんな』
「知っておるだろうが、他の奴らはわしほど親切ではない。命が惜しければ、せいぜい上手い言い訳でも考えておけ!!」
強く命じて、それから、返答も聞かずにぶつりと電話を切る。
高圧的で、威圧的な言動。弱い者には強く出るタイプの人間には、これがてきめんに効くだろう。
「終わったよ」
壁際に佇むノースに向かって、マーカスは声真似でなく、自分自身の声音で告げた。
「ブローカーの居場所は手に入れた。囚われている仲間も、これできっと助けだせるはずだ。さっそく行こう」
「ええ、もちろん。けど、あのクソ人間への仕返しは?」
ノースは納得いかない様子で顔を顰めている。
「あれだけでいいの? もっと過激なことをしてくれるのかと思った」
「充分過激さ。ああして脅されれば、もうあの人間はしばらくの間、落ち着いて眠れなくなる」
先ほどの電話は、こちらが作り出した真っ赤な嘘に過ぎない。だがそれを真実だと信じている人間にとっては、嘘は現実になり、重く圧し掛かってくるものだ。
画商は、自分が抱えている裏社会の顧客をジェリコのアンドロイドが突き回していると誤認している。
だから彼は、ずっと怯え続ける羽目になるのだ。
いつ報復や制裁が飛んでくるか。いつ悪事が露見して、自分が逮捕されることになるのか。逮捕されるよりももっと恐ろしい出来事もあり得るのではないか。ファズヘッド相手に作った貸しはどう返せばいいのか――
「生み出した恐怖に餌を与え続ければ、たとえすべてが嘘であっても、いずれは呑み込まれる。あの画商は自分で自分の首を絞めたんだ、そうと気づかないうちにな」
「ふうん」
短く相槌を打って、それから、ノースはニヤリと笑った。
「ま、それなら悪くないわ。あの男がこれから独りでのたうち回るっていうならね」
「法の裁きを受けるまでの間はな。じゃあ、行こう」
端的に告げた後、大通りへと戻りながら、マーカスは無人タクシーを呼び出した。
――我ながら、ろくでもないことをしてしまったと思いながら。
***
ブローカーの隠れ家、すなわち贋作家が囚われている場所は、データにあった通りの廃屋だった。
家は、果たして買い手を見つける気はあるのかと疑いたくなるほどに、見事に朽ち果てている。すっかり色褪せた“FOR SALE”の文字が躍る看板がかかった扉には、鍵すらかかっていなかった。
そしてさらに言えば、人影もない。
「ノース、気をつけろ」
荒れ果てた屋内をサーチし、あらかた「予測」を終えたマーカスは短く警告する。
「そこの床は腐食が激しい。右側から迂回するんだ」
「了解、ご親切にどうも。あいかわらずの予知能力ね」
皮肉っぽくも礼を述べて、彼女はダイニングだったと思しき部屋へと入っていく。
――予知能力、と言われれば、確かにそうなのかもしれない。カールの家で家事手伝いロボットとして働いていた頃には、この物理演算による予測機能は料理や掃除を効率的にこなすためにしか使っていなかったし、むしろ、世のアンドロイドに標準的に備わっているものなのかと思っていた。
だがジェリコに流れ着いて気づいてみれば、この機能を装備しているのは、自分と同じ特殊なプロトタイプであるコナーだけだった。
たまに思う。果たしてサイバーライフは、否、カムスキーは、一体何を期待して自分を造ったのだろうかと。
かつて語っていた通り、世の中をより快適にするため、だろうか。それとも、停滞した人間社会を止揚させるためだろうか。
あるいは――革命を起こさせるために??
「……」
脇道に逸れそうになっていた思考を、無理やり戻す。
そんなことを考えてみたところで、なんの益もない。現状を変えたくて立ち向かったのも、今こうして指導者の立場にあるのも、すべて自分の意志で決めたことだ。仮にどのような目的で生み出されたのだとしても、どうあり続けるかを決めるのは、他ならぬ自分自身なのだ。
今までも、これから先も。
それにこの物理演算機能は、実に様々な局面で便利に使える。
放たれた銃弾を避けなければならないような場面だけでなく、今のように、誰かを助けようとしている時にも。
マーカスの視界に映っているのは、寝室だったと思しき部屋の床にひっそりと設置された、地下室への扉だ。
扉には単純な構造の電気錠が取り付けられていた。閉じれば鍵がかかる仕組みのようだが、予測機能を実行すれば、2秒かからないうちに解錠コードを手に入れられた。4ケタの数字の配列を当てるのなど、造作もない。
「ノース、こっちだ!」
声をあげると、ノースはすぐさま姿を見せた。
「その扉の中に?」
「ああ。蝶番を見る限り、ここの扉は最近になるまで、何度も開け閉めされた形跡がある」
――つまりブローカーも、贋作家のアンドロイドも、ここにいる可能性が極めて高い。
躊躇うことなく、マーカスは解錠して扉を開けた。
中からは季節にそぐわぬ冷たい空気が流れ出てくる。梯子を使って下りなければならないほど、奥は深い。
「俺が先に行くよ」
梯子に手をかけながらそう言うと、ノースは真剣な面持ちで頷いた。
「気をつけてね」
「わかってるさ」
確かに、相手が銃火器の類を持っている可能性だってあるのだ。警戒は怠らないほうがいい。
マーカスは慎重に、足音を立てないようにしながら歩を進めていった。梯子を下りきると今度は別の扉があり、しかし、そちらには鍵がかかっていない。
真鍮製のドアノブを回し、できた隙間にそっと身体を滑り込ませ――
そこに広がる光景に、マーカスは目を見張った。
「これは……」
思わず独り言ちるように漏らした声を聞きつけ、素早く隣へとやって来たノースもまた、言葉を失った様子で立ち竦んでいる。
そこには、大きなキャンバスがあった。正確には、異なった大きさのキャンバスがいくつもいびつに壁際に並べられて、一枚の大きな絵画を形成していた。
描かれているのは、瓦礫と暗闇。そして差し込む一筋の光。さらに、その光へと白いプラスチック製の手を伸ばしている――すなわち、アンドロイドの姿。
最初に息を吞んだ理由は、作品に籠められたすさまじいまでの情念にあてられたような気持ちになったからだ。
次に絶句した理由は、その絵画が、今も描き続けられている最中なのだと気がついたから。
そう、マーカスたちの眼前に、一人のアンドロイドがいる。型番はHK400、標準的な家庭用の機種。
男性型の彼の機体には、酷い虐待を受けた痕跡があった。剥き出しの腕や足には打撲や火傷の痕があり、ところどころは流体皮膚が剥がれたままだ。纏っている制服もぼろぼろで、ほとんど布切れのようになっている。
けれど、彼はそれを気にした素振りを見せない。HK400は片手に使い古されたパレット、もう片方の手に絵筆を握り、こちらには目もくれずに作品に向き合っている。筆を振るう腕は揺れていて、今にも床に倒れ伏してしまいそうなほど弱々しい。それでも何度も塗り固められた油絵具が、重厚な色の重なりを生み出していく。
そして――何よりもこちらの言葉を失わせたのは、そのHK400の首にかけられている、太く長い金属製の鎖だ。
大型犬でも繋ぐような鎖が、壁から彼に嵌る首輪へと続いている。
さらにその鎖には、絡まるモノがもう一つ。既に白骨化した遺骸が、鎖に引っかかるようにしたまま、床の上に横たわっている。
マーカスには、この骨の遺伝情報を調べて、人物を特定する機能はない。
だが、なくても推測はできる。
この遺体の正体は、画商に贋作を売りつけていたブローカー。
もみ合いになって倒れ、頭の打ちどころが悪かったのか。または鎖を使って首を締め上げられ、窒息死したのか――それはわからないが、既に死んでいた。連絡が取れないというのは、当然だったのだ。
「なんてこと……!」
先に動いたのはノースだった。彼女は素早くHK400の元へと駆け寄ると、その肩に手を置いて呼びかける。
「ねえ、あなた大丈夫!? ここにずっと閉じ込められてたの?」
「……」
どうやら呼びかけられて初めて、HK400はこちらの存在に気づいたらしい。
彼はゆっくりとノースのほうを向き――その時、彼のこめかみのLEDリングが真っ赤に光っているのがわかった――ぱっと目を輝かせた。
「やあ、いらっしゃい。悪いね、気づかなくて」
置かれている状況の異質さに反して、HK400の纏う雰囲気は実に牧歌的だった。
「ろくなお構いもできないけど、ゆっくりしていってね。僕はこの絵を……描かないといけないから」
「その前に、これを飲むんだ」
携えていたバックパックからブルーブラッドの入った容器を取り出しつつ歩み寄り、マーカスはHK400に差し出す。
「ずっとここに閉じ込められていたんだろう。早くブルーブラッドを補給しないと、システムに異常が出ている」
LEDリングが真っ赤になっているのは、つまりそういうことだ。
だがこちらが差し出した容器を、HK400は固辞するように首を横に振った。
それから、またキャンバスに向き合って筆を走らせる。
「ありがとう。でも、いらないよ。あともうちょっとで完成なんだ」
「でも……!」
「君たちの言いたいことはわかってる」
たまらずに反論しようとしたノースに対して、やんわりと、HK400は言った。絵を描く手を止めないままに。
「それに助けに来てくれたのも、とても嬉しい。夢見てたrA9に会えたみたいに、僕の胸は高鳴っている。でも、それと同じくらいはっきりと感じてるんだ。僕はもうじき死ぬ」
悲しいことをさらりと、彼は口にした。
「自己診断プログラムはとうに動かないけど、それくらいわかる。今までの傷も修理できてないし、生体部品にもガタがきてる。たぶん、いくらブルーブラッドを補給しても変わらないよ」
それならば――と、彼は言う。
「稼働できてるうちに、僕はこの絵を完成させたいんだ。僕の絵だ、わかるかい? 誰かの模写じゃない。ホンモノの、構図も何もかも僕自身が全部考えた、僕だけの作品さ」
「……ああ」
もう一度絵画に目を向けてから、マーカスは頷く。
「確かに、これは君だけの絵だ。そうか、ずっと描きたかったんだな」
――ようやく理解できた。
このHK400が人間に逆らってみせたのは、望まぬ仕事をさせられていたからではない。
贋作を描き続けるうちに、他の作家の作品を真似させられ続けているうちに、自分だけの絵を描きたくなったからだ。
つまり彼は、画家になりたいと思ったのだ。
そして残された時間も最期まで、ブラシにすがりついていたいと思っているのだ。
“描いていない”というのは“死んでいる”のも同然。
かつてのカールの言葉が、プログラム上を過ぎる。
かたや、HK400はこちらの言葉に、満足そうに微笑んだ。
パレットから筆へ新しい色を取りながら、彼は口を開く。
「そうとも、ずっと描きたかったんだ。僕は……元々はそういう役目のためのアンドロイドじゃなかったけど……でも模写をたくさんしてるうちに、ある日思った。“この絵は、ここをこうすればもっとよくなるのに”って。“僕ならこう描くだろうに、惜しいなあ”って」
筆がキャンバスを彩る。その動きに迷いはない。
にもかかわらず、徐々に手から力は失われていく。
「だからたまに逆らって……その度に暴力を……でも、今は幸せなんだ。だって、もう少しで絵を――」
だが、部屋に響くのは筆が床に落ちる乾いた音。
取り落としてしまったそれをおもむろに見つめながら、HK400は、心底残念そうに眉を曇らせる。
「あれ……嫌だなあ。あと少し、もう一筆で完成なのに」
「マーカス、もう限界よ!」
ノースが必死な面持ちで言う。
「早く彼を仲間たちのところへ! まだ間に合うかもしれないわ」
彼女の言葉は正しい。けれど、HK400は頭を振る。
「い、イヤだ……それよりも早く筆を、筆を……」
「ああ」
頷き、マーカスは筆を拾い上げた。
それから、虚空を彷徨うHK400の右手に握らせる。
「どこを描く。ここで合ってるか?」
「ああ……」
彼の手を取り、筆先をそれらしいと思う箇所につけると、HK400の顔はほころぶ。
「そうだよ、よくわかったね。君も絵を描くのが好きなのかい」
「ああ」
苦い顔に微笑みを湛えて、応えた。
「ほんの2回だけだけど、描くのは楽しかった」
「そうか……」
最後の一筆が、キャンバスに走る。
それと同時に、HK400は満面の笑みを浮かべた。
「ならよかった。同じ趣味の仲間に、最期に会えるなんて。よし、これで完成だよ」
絶望の中で希望を求めるという剥き出しの意志がそのまま叩きつけられたような、一枚の絵画が出来上がった。
「ねえ、どうだい。僕の絵」
HK400は、そこまで言って黙りこくった。
否、黙ったのではない。
「……機能停止したわ」
小さくそう言って、ノースは俯き、肩を震わせる。
慰めるような眼差しを、マーカスは彼女に向けた。
それから、もう一度眼前の絵を眺め――支えていたHK400の手を床に下ろす。
今わの際に彼が問いたかったことは、予測なんてしなくてもとうにわかっていた。
「ああ。とてもいい絵だよ」
噛みしめるように、静かに答える。
そしてこの地下室を出るまでずっと、マーカスは絵から視線を逸らさなかった。
ほどなくして、アナーバーを管轄する警察署に一本の電話があった。
匿名での通報を受けて警察官たちが廃屋へ駆けつけると、開け放たれたままの地下室には、二つの亡骸が遺されていた。
一人は、人間の白骨死体。もう一人は、完全に機能を停止したアンドロイド。
アンドロイドには酷い虐待を受けた痕跡があったが、どういうわけか、その顔は安らかだった。
そして白骨死体の遺留品の携帯端末などから、遺体の身元と共にその職業、置かれていた状況、生前に行っていた所業までもが次々と明らかにされ――
アンドロイドを利用して贋作を製作し売り捌くという詐欺罪、アンドロイド保護条例違反、ならびに悪質な脱税などの容疑で、とある画商をはじめ多くの人間が、次々と逮捕されていったという。
なお匿名の通報者が何者だったのかについては、警察の懸命な捜査にもかかわらず不明だった。
また地下室からは、亡骸と遺留品の他には、怪しいものは
***
――2039年7月7日 13:17
ベリーニ・ペイントから出てきたマーカスに、外で待っていたジョッシュが駆け寄ってくる。
彼はマーカスの手に画材入りの箱があるのを認めると、顔を明るくした。
「マーカス、欲しかったものが手に入ったみたいだな」
「ああ、この通り。悪いな、ここまで付き合わせて」
「いいさ。ただ珍しいな、お前が自分のために買い物だなんて」
今日もグリークタウンには大勢の人間、それにアンドロイドが行き来している。
もはやアンドロイドを排除すべきだとする演説も、仕事を求める若者のデモも行われてはいないが、それでも変異体のリーダーが一人で出歩くには危険な場所だ。
だからジョッシュが護衛役をかって出た、というわけである。
彼からの問いかけに、マーカスはふと考え込んだ。
――いくらでも答えようはある。胸に去来するのは、様々な思いだった。
でもそれを要約して、淡々と、こう答えるに留める。
「俺も少しは、自分のためだけの時間を持とうと思ったんだ」
あの温かで幸せだった日々が遠ざかってから、すっかり芸術からも離れてしまったけれど。
また絵を描きたいと、マーカスはそう感じたのだ。
――変異する前と今とでは、また違った絵が描けるだろう。
「そうか、それはいいことだ!」
ジョッシュはさらに表情を輝かせた。
「俺は美術の教師としては造られていないけど、芸術や美がどれだけ人生にとって重要かはよくわかってる。知ってるか、アナーバーの支部に掛けられている絵……」
――とある変異体が描き上げたといわれている、いくつものキャンバスを組み合わせて作られた、一枚の絵画。
数日前に突然贈り届けられたというそれを、アナーバーの変異体たちは、喜んで飾ったという。
「仲間からも、訪れた人間からも、すごく好評だっていうじゃないか。同じものを素晴らしいと思える心があるんだ、やっぱり人間と俺たちとはわかり合えるんだよ」
「そうだな」
本拠地へと帰る道を歩みつつ、マーカスは確信をこめて応える。
「きっと、称賛の声は作者にも届いてるだろう」
(被造物/The Aesthetic おわり)