後一話入れてUSJ事件は終わりにする予定です。
不屈の覚悟を知った先生は、肩を落として明らかに落胆した様子を見せた。
『はぁ…全く
先生はこの時点で、不屈の勧誘から抹殺へと今回の目標を変えていた。今後、死柄木 弔にとってオールマイト以上の障壁となる事が分かったからだ。不屈の様なタイプの人間に会うのは初めてではなかった。超常黎明期にもいたのだ。民衆に化け物と揶揄されながらもヴィジランテとして人々を守り続けた人間達が。悪の帝王として君臨していた自分に挑む彼らは、悉くが厄介な存在だった。
(実に忌々しい。今の火柱で此処の異常はばれたか…後五分もしない内に
『その前に…ここは逃げろ弔。黒霧、頼むよ』
黒霧に先生は黒く伸びる爪を突き刺し、『個性強制発動』の個性を使用してワープゲートを起動させた。ワープゲートに沈んでいく死柄木は焦ったように先生を止めた。
「駄目だ先生!」
「心配する必要はない。すぐに戻るさ」
死柄木と黒霧は霧の中に消えていった。
(暫く活動は出来なくなるだろうが、君を殺すことが出来るのなら安いものだ)
衝撃波と転送、衝撃反転のみで体への負担を抑えていたことと、防御を全て脳無に任せていた事で先生には若干の余裕があった。
『筋骨
先生の右腕が本人の半身を超えるほど肥大化し、何人もの腕が重なったように見える。
不屈と先生がぶつかった瞬間に、これまでにない規模の破壊が起こることは容易に想像がついた。
『この一撃で周囲一帯を吹き飛ばして。君自身と君の守ろうとしたもの全てを終わらせる』
余りにも悪辣な戦法に不屈は怒りを露にする。
「絶対にさせない!」
先生が動くよりも先に倒すために不屈は飛び出すと同時に、熱エネルギーを体の背面に発動させて体を押し出し、更に速度を上げて先生に迫った。
『当然そうするだろうね。だけど僕は、君と違って"一人"じゃない』
先生は不屈を嘲笑った。不屈と先生の間に脳無が立ちはだかる。
「WOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
不屈は全力で、両腕をクロスして防御していた脳無を真正面から殴った。先生は即座に衝撃反転を使用した。今までと同様に不屈の右腕が後方に弾け飛ぶ"筈"だった。
「邪魔をするなぁぁああああああああ!!!」
不屈は右腕にありったけの熱エネルギーを集中させ、衝撃反転で受けた衝撃すら上回わる推進力を右腕に持たせて腕を振り抜いた。脳無の持つショック吸収と超再生すら上回る威力の一撃に、脳無は先生の真横を目にも留まらぬ速さで吹っ飛んで行った。
『脳無を破るか。でも残念だったね僕の勝ちだ』
不屈の目の前には既に先生の拳が眼前に迫っていた。回避も防御も間に合わない距離と速さだった。不屈はこの時に自分の死を悟った。不屈は相澤を守れなかった事を謝罪し、目を閉じた。
(相澤先生。守り切れ無くてごめんなさい…)
不屈は途轍もない威力の一撃を覚悟していた。しかし、不屈が受けた一撃はとても軽いものだった。先生が憎々しげにある人物の名前を呟いた。
『…やってくれたな"イレイザーヘッド"』
不屈が目を開くと、そこには普通の腕に戻った先生が、自分の頬に拳を押し付けている姿だった。後ろを振り向くと、相澤が壁に背中を預けた状態で顔を上げて個性を発動させていた。相澤は不屈に向かって叫んだ。
「お前は"一人"じゃない…俺がいる!だから勝て!勝ってくれ…不屈!!」
一体何時から相澤に意識があったのかは分からないが、自分にとって最悪のタイミングで個性を封じられた事に先生は顔を歪めた。注意を不屈に戻せば、既に腕を振り上げて殴る態勢をとっていた。
『…全くイレイザーヘッド。君を殺しておかなかった事を後悔してるよ。弔に"必要"だと思って欲をかいてしまった』
「お前は不屈に相対した時点で負けてたんだよ。悪が正義に勝てる道理はない」
当然の事だと話す相澤の言葉を聞いて、先生は弟の事を思い出した。最後まで自分に屈しなかった弟に、個性を与えた時の言葉だった。
『兄さん知ってるか?悪者はな必ず最後に負けるんだ』
先生はマスクの奥で自嘲気味に笑った。
『僕が
「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
不屈の打ち下ろしの炎を纏った拳が、マスクを突き破り、先生の頬に深々と突き刺さった。地面に叩きつけられた先生を中心に大きなクレーターが作り出され、USJ全体に暴風が吹き荒れた。
暴風が止み相澤が目を開けると、クレーターの中心で立っていたのは不屈だけだった。
***
相澤が意識を取り戻したのは、不屈が膝をついた時だった。それから聞いたヴィランとの会話は、不屈を少しでも危険視していた自分に後悔の念を抱かせるのには十分な内容だった。
今の時代に命を懸けて人を守れるヒーローがどれだけいるだろうか。
(俺は不屈に謝らなくてはならない…)
不屈が相澤を心配し駆け寄る。相澤が不屈に謝ろうと声を掛けた時に、突然入り口の扉が吹き飛び、煙の中からオールマイトが現れた。
「不k「もう大丈夫!!私が来た!」…はぁ」
遅すぎたうえにタイミングの悪いオールマイトの登場に、相澤は深く、深くため息をついた。
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