化物のヒーローアカデミア 未完   作:濁り丸

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 人は簡単に変われないって話です。


第14話~覆せない恐怖~

 相澤先生の治療を保健室の前で待っていたら、リカバリーガールさんが扉を開けて『心配なのも分かるけどね。気が散るから教室にでも戻って待っていな。他の生徒達もその内来るさね』と教室に戻らされた。リカバリーガールさんが大丈夫だと言ったんだから、大丈夫な筈だ信じて待とう。

 

 教室に戻って、俺は今日の出来事を思い出していた。

 

 ヴィランも親玉になるとやっぱり強いんだなぁ。相澤先生が助けてくれなかったら絶対に死んでた。オールマイト先生は、あんなに強いヴィラン達に勝ち続けてきたのかと思うと、改めて実力の差を感じた。もっと強くならなくては!

 

 敵に『お前はクラスの皆に嫌われてるよ。ヒーローになっても化け物扱いされて終わりだから』と映像付きで精神攻撃を受けた時には正直泣きそうだった。元々人に嫌われてることは分かっていたけど、それでもヒーローになって人の笑顔を守る事も、人に認めてもらう事も諦めたくはなかった。何よりあの時、俺の後ろには相澤先生がいたのだ。絶対に倒れたりするわけにはいかなかった。

 

 それにしてもあの戦いで出した炎は何だったんだろうか?俺は異形型の個性だと思っていけど、それだけじゃ無かったという事だろうか。あの戦いの時には意識しなくても操れた、まるで俺の意思に応えてくれるように炎を自由自在に使えた。今は全く使える気配がないけど、これから強くなるために絶対に必要な力だと思う。誰か炎を使える人がいれば教えて貰えないだろうか……

 

 今後の課題について考えていると、教室の扉が開いた。緑谷君以外のクラスの皆が教室に入ってきた。リカバリーガールさんから大丈夫だと聞いていた事と、相澤先生を運ぶ途中で擦れ違った時に、皆の無事な姿は見ていたから、心配はしていなかったけど本当に無事で良かった。

 

 席から立ち上がって皆に声を掛けようとした時だった、飯田君を先頭に此方に近付いてきたと思ったら頭を下げたのだ。クラスの皆もそれに合わせて頭を一斉に下げた。突然の事に驚いていると飯田君が『不屈君!僕達は君がヴィランと繋がっていると誤解していた。本当に申し訳ない!』と謝ってきたのだ。クラスの皆も謝罪を口にした。飯田君は顔だけを上げて『根津校長に聞いたんだ。相澤先生を守るために、あの恐ろしいヴィランと戦っていたと!それなのに僕は!本当に最低だ!』と目から涙を流していた。

 

 俺なんかの為に泣いている飯田君達に、申し訳ない気持ちが溢れた。俺は少し強がって皆に『…気にしていない。そんな事には慣れている。だから泣かないで欲しい』と伝えた。

 

 飯田君は目を見開いて『そんな事!?僕達は君をヴィランだと思っていたんだぞ!殴られても当然の事をした!それなのに不屈君…君は…僕らの謝罪すら受け入れてくれないのか』と拳を握って体を震わせていた。後半は小さくて聞き取ることが出来なかったけど、これ以上俺のせいで皆に悲しい思いをして欲しく無かった。

 

 俺は『話がそれだけなら、もうこの話は終わりにしよう。これ以上この話に意味はない。皆も疲れているだろう。席に戻って先生を待とう』と話を切り上げて席に座った。飯田君達は、まだ先程の事を気に病んでいるのか、その後も席に着いて顔を伏せていた。

 

 その後、刑事の塚内さんに呼ばれて俺は教室を後にした。教室は俺がいなくなった途端に騒がしくなった。峰田君が何か叫んでいたようだったけど、何だったんだろうか?塚内さんにはUSJの出来事を聞かれたけど、根津校長先生が先に、オールマイト先生から事情を聞いて今回の事を話していてくれたみたいで、目新しい情報を提供することは出来なかった。塚内さんが『君が味方で本当に良かった!』と笑っていたが、どういう意味だったのかは聞いても教えてくれなかった。

 

 塚内さんと別れて教室に戻ると、教室には轟君以外には誰も残っていなかった。轟君は、今日はもう帰っていい事と、明日は学校が休みな事を教えてくれた。俺に教えてくれるために、態々待っていてくれたのかと聞くと、轟君は『他は色々あって無理そうだったからな……それに俺もお前に聞きたいことがあった。USJから炎の柱が見えた……アレはお前がやったのか?』と聞かれた。俺は頷いて肯定を示すと、轟君は『……お前には絶対負けない』と言い残して去ってしまった。

 

 

 俺は横を通り過ぎて行った時に見えた、轟君の冷たい表情が頭から離れなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「これで分かっただろ!アイツはオイラ達の事なんて何とも思ってねえんだ!」

 

 塚内に呼ばれ、教室から不屈がいなくなると峰田は叫んだ。

 

 「アイツはオイラ達の事なんて道端の石ころ位にしか見てねえんだ!だからオイラ達が、ヴィランだと思っていた事も気にしてなかったんだ!」

 

 元々、不屈に恐怖を人一倍感じていた峰田は、皆での謝罪も乗り気ではなかったのだ。皆に頼みこまれて渋々、参加した経緯があった。不屈は冷たい奴だと叫ぶ峰田に、切島が「おい!やめろよ!不屈は相澤先生を守ったんだろ?俺達だって相澤先生を背負って連れて行くのも見た!校長先生も言っていたけど、悪い奴な筈ねえだろ!」と不屈をフォローしたが、峰田は止まらなかった。

 

 「オイラは入試の時からずっと怖かった!個性把握と戦闘訓練と大勢のヴィランを倒したあの力を見て、あの先生ってヴィランと戦えるって聞いてアイツがもっと怖くなった!あんなのヒーローじゃない!あれは化け物だ!本当にアイツに相澤先生を守るつもりがあったら、怪我なんてしてる筈ねえって!」

 

 必死に保っていた心が決壊した峰田は、涙を滝の様に流しながら不屈に思っていた事を全て話してしまった。クラスメイト達は、峰田に何も言えなかった。どこかしら峰田の考えに共感できたからだ。

 

 相澤先生を守る姿をその目で見ていれば、こんな事にはならなかった。不屈が皆の謝罪を素直に受け入れていれば、今の状況は変わっていたかもしれない。

 

 根津校長は人は変われる生き物だと言っていた。しかし、一度染みついた恐怖を克服出来る人間が少ないこともまた事実だった。

 

 その後、B組の担任であるブラドキングが今日はもう帰っていい事と、明日が休みになったことを伝えに来たため、今日は解散となった。ブラドキングが「不屈にも連絡頼むぞ!」と言い残していったので、飯田が残ろうとしたが、轟が不屈と話したいことがあると譲らなかった。飯田は俯き、とぼとぼと帰っていった。

 

 

 こうして根津校長の思惑は失敗に終わった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「……お前には絶対に負けない」

 

 不屈の横を通って教室から出て行こうとする、轟の心は荒れ狂っていた。不屈がクソ親父に重なって見えて仕方無かったのだ。

 

 幼少の頃に鍛錬と称して受けた、圧倒的な実力差がある親父から与えられた暴力と恐怖。恐怖をある事が切っ掛けで復讐心が覆っていた轟に、不屈の存在や行動はあの時の恐怖を鮮明に思い出させていた。

 

 (炎を使い圧倒的な力を持つ不屈は、越えなければいけない壁だ。クソ親父やオールマイトを超えるNo1ヒーローになるために…右の氷だけで不屈を……)

 

 轟は何時の間にか震えていた体を、両腕で抱くように抑えた。これが武者震いだったのか、恐怖から来る震えだったのかは、本人にも分からなかった。

 




 感想いつもありがとうございます。とても励みになっています。
 
 誤字修正いつもありがとうございます。

 活動報告に第14話についての謝罪であったり、この『化物のヒーローアカデミア』についてのテーマだったりを書きました。思った以上に反響が大きくてビックリしています。
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