最高と言っても過言ではない程のスタートを切った学校生活1日目を終えて、昨日はとても良い気分で眠ることができた。俺は心身共に絶好調だった。スキップでもしたくなるような軽やかな気持ちで教室に入ると、皆は昨日の疲れがあるのか机に突っ伏していたりしている人が多かった。昨日あんなにボロボロになるまで頑張ったのだ疲れていて当然だろう。俺は相澤先生に抑えるように言われていたので疲れていなかったが、そう考えると一人だけ手を抜いていたみたいで申し訳ない。
昨日は個性把握テストで一日潰れてしまったので、今日から本格的に授業が始まった。内容は思った以上に普通の授業内容だったが、プロヒーローが教えてくれるだけでとても新鮮な気持ちで受けることができた。ラジオやテレビで見聞きしたことがあるプロヒーロー達が近くにいるのも、雄英高校の特権だろう。その内、授業で分からない所があった時には、教えて貰いに行くついでに握手をお願いしてみよう!
プレゼントマイク先生(山田先生は止めろと言われた)の英語の授業が終わるとお昼の時間がやってきた。大食堂でクックヒーロー ランチラッシュが作ってくれる料理はとても美味しかったが、俺の座った席から半径三席分きれいに空いていたことに心の涙を流したことは内緒だ。しかし、悪いことがあれば良い事もある。なんと!友達候補と出会ったのだ!
俺が一人寂しくご飯を食べていると、1-B組の生徒と思われる金髪の男子(物間?君と言うらしい)が話をしに来てくれたのだ。声など掛けて貰えると思っていなかったから目を見開く程に驚いていると、何故か物間君は他の1-B組のクラスメイト達の連れ去られてしまったのだ。オレンジ色の髪の女子が『物間(ものま)には後できつく言っておくから、本当にごめん!』と謝っていたが、俺はなぜ謝られたのだろうか?謎だ。
今度見かけたら、俺から話しかけてみようと思う。
嬉しい出来事があったお昼も終わると、次は午後のヒーロー基礎学の時間だ。ヒーロー基礎学はヒーロー科だけの特殊な科目で、ヒーローの素地を作るために様々な訓練をする時間であり、メインと言っても過言じゃないだろう。クラスの皆も楽しみにしている様子だ。かく言う俺もワクワクが止まらないわけだが。
しばらくすると扉の奥からオールマイト先生が定番の『わーたーしーがー!!』の掛け声と共に豪快に扉を開け『普通にドアから来た!!!』と現れた。クラスの皆のボルテージが更に上がった。No.1ヒーローが自分達にヒーローとは何かを教えてくれる事が嬉しくない訳がないのだ。
オールマイト先生は『早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!』とハイテンションに今日の授業内容を伝え、コスチュームに着替えてグラウンド・βに集まるよう指示した。雄英高校ヒーロー科への合格が決まった時に個性届と要望書を聞かれていたのはそういう事だったのか。俺はてっきり昨日と同じように体操着でやると思っていた。
合格通知と一緒に来た要望書の作成はとても難航したのだ。当初は顔や体のラインが出ないような、親しみやすいポップな衣装をお願いしようと考えていたのだが、俺が目指すのは『ヴィランっぽいヒーローランキングに載ること』なのだ。それならば、なるべく威圧感と恐怖を与える衣装の方が良いのではないかと考えなおし、要望を出した経緯があった。正直に言えばどんなヤバい衣装が入っているのかとトランクを開けるのが怖かったが、いつまでもこうして突っ立っている訳にもいかないため、俺は覚悟を決めると勢い良くトランクを開けた。
……あれー?ズボンと手甲と説明書しか入っていないぞ?
入れ忘れたのかと思い説明書を確認すると、装備の欄にはやはりズボンと手甲しか無かった。何故だとうなだれていると説明書の裏に手紙が張り付いている事に気づいた。何か分かるかもと手紙を読んだが、内容を簡単に要約すると『貴方はごちゃごちゃ着飾らなくても素が一番怖いから。隠すなんてとんでもない!ズボンと手甲は絶対破れたり壊れたりしない位に丈夫だから安心して』と言った内容だった。
泣いてもいいだろうか…素が一番怖いは傷付く。
ふざけている訳ではなく、手紙の文面はとても丁寧で何処がどう怖いかを理論的に語っており、とても説得力がある内容だったことが余計にダメージを与えた。しかし、要望に応えてくれたのならこれが俺のコスチュームだ!
俺はさっさと着替えると、グラウンド・βに向かった。
***
オールマイトは相澤から忠告されていた『不屈は貴方と同じ位に強い』という言葉に半信半疑だった。長年No.1として日本の平和を守ってきた誇りもあった。流石にまだ今年で16歳になる少年に負けることはないだろうと甘く考えていた。しかし、今コスチュームを着て相対した不屈を前にして自分の考えの甘さを痛感していた。
(相沢君、君の言葉を疑ってしまいすまなかった。不屈少年は確かに今まで相対してきた中でも、最上位に位置する強さを持っている!)
数多の戦闘経験から相手の強さを見極めることに自信があったオールマイトだが、自分と不屈が本気で戦った際に周囲一帯が更地になる事は予測できたが、どちらが勝つかは分らなかった。
(全盛期の私であれば未だしも、今の衰えた状態では…)
もしも不屈がヴィランに身を落とした時に、止められる存在が果たしてどれ程いるのかを考えるだけでオールマイトは背中に冷や汗を流した。
(確かに不屈少年が危険な存在であることは間違いないだろう。しかし、根津校長もおっしゃっていたが、不屈少年がこのままヒーローとなれば、これ以上頼もしい存在はない!もしかすると私以上にヴィランを抑止する存在に…)
オールマイトはこの時に覚悟を決めた。
(私の"最後"の仕事は緑谷少年の育成と考えていたが、不屈少年をヒーローとして導くことも付け加えなければいけない!たとえ私の命が尽きることになろうとも!!)
固く握った拳はオールマイトの誓いの固さを表していた。
因みにこの時の不屈君はオールマイトを見て、(オールマイト先生はコスチュームかっこいいよなぁ。俺はズボンと手甲だけ…)と落ち込んでいた。
沢山の方にお気に入り頂き、大変恐縮です。これからも細々と続けて参りますので宜しくお願い致します。