化物のヒーローアカデミア 未完   作:濁り丸

9 / 14
 いつもより長くなってしまいましたが、お付き合いいただければ幸いです。


第9話~USJ事件・表~

 午後のヒーロー基礎学の授業が始まったが、今日は相澤先生とオールマイト先生、それともう一人の三人体制で見ることになったと相澤先生が教えてくれた。もしかすると昨日の校門破壊があったからかな?

 

 瀬呂君が相澤先生に『ハーイ!何するんですか?』と今日の訓練内容を聞いてくれた。相澤先生が今日は人命救助(レスキュー)訓練をすると教えてくれた。ヒーローとは人を助けることが一番の仕事だと思うので、俺も頑張らなくては!

 

 訓練所にはバスで移動するみたいだ。人命救助に伴ってコスチュームも活動を邪魔しなければ、着て良いとの事だったので着用した。殆ど全員が着ていたが、緑谷君だけは体操服だった。一昨日の戦闘訓練でボロボロだったから仕方ないか。因みに俺のコスチューム(ズボンと手甲)は、一昨日の戦闘訓練でも傷一つ付いて無かった。コスチュームを作ってくれたサポート会社さんの技術力には感心させられる。今度お礼の手紙を書こう。

 

 バスの席順について委員長の飯田君がとても張り切って決めていたが、席のタイプが予想と違っていて意味がなく、とても悔しがっていた。

 

 訓練所に向かう移動中のバスでは、皆の個性についての話題で盛り上がっていた。どういった個性が良いかと話し合いが行われている時に、蛙吹さんが『私思ったことは何でも言っちゃうの、緑谷ちゃんと不屈ちゃんの個性ってオールマイトに似てる』と俺にも話題を振ってくれたのだ!緑谷君はとても慌てており、俺は緊張してしまい『先生の方が凄い』としか言えなかった。その後は、誰の個性が目立って派手かの話になり、俺に話題が回ってくることは無かった。

 

 訓練場に到着したが、名前がウソの災害事故ルーム略してUSJであることが分かった。教えてくれたのは今日の訓練を担当してくれる3人目の"スペースヒーロー 13号先生"だった。13号先生は宇宙服の様な服を着ていて、災害などの救助で活躍しているヒーローだと麗日さんが嬉しそうに説明していた。もしかして麗日さんはファンなのかな?

 

 13号先生は自己紹介もそこそこに、個性がとても危険なもので簡単に人の命を奪えるものだと話を始め、最後には人を救うために個性をどう使っていくかを今回の訓練で学んでいって欲しいと話を締めくくった。

 

 人を殺せる力。俺の個性がその典型だろう。俺が暴れまわったら、それこそ人を何人殺せるか分からない。それでも俺は人を殺すのではなく、人を助ける道を選んだ。オールマイト先生のように俺も…握った拳を見つめた。

 

 クラスメイト達が13号先生に、拍手喝采を送っているときに"ヴィラン"はやって来た。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 一番早くに異変に気付いたのは相澤だった。多くの戦闘を経験してく中で培われた感が、いち早く"悪意"に気付くことを可能にした。相澤はこの瞬間に教師から"プロヒーロー イレイザーヘッド"となった。

 

 「全員一塊になって動くな!13号!!生徒達を守れ!」

 

 イレイザーヘッドが悪意の気配を感じた場所を見下ろすと、そこには黒い霧から数十人ものヴィラン達が顔を出している光景だった。状況は最悪だ。頼みの綱ともいえるオールマイトが今日に限って、活動限界を迎えてこの場にいないのだ。切島などの生徒は『なんだありゃ?今日の訓練のキャスト?』と呑気なことを口にしていた。生徒達に危機感を持たせるために、イレイザーヘッドは今の状況を端的に伝えた。 

 

 「動くな!あれは"ヴィラン"だ!」

 

 ヴィランと言葉を発した瞬間に、イレイザーヘッドの横を赤い巨影が高速で通り過ぎた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 死柄木の気分は過去最高に高揚していた。廃工場に集めた百人近いチンピラと最強のサンドバッグ(脳無)を伴って、これからオールマイトを殺しに行くのだ。ゲームで言えば勝てることが分かっているラスボスに挑み、最強の装備を手に入れる直前の気分だった。

 

 「死柄木 弔。準備が整いました」

 

 黒霧がワープゲートを開く。

 

 「行くぞお前ら…」

 

 死柄木を先頭にチンピラ達が続々とワープゲートを通り抜けていく。ワープゲートを抜けた先は中央広場だった。階段を上った先の入り口付近には、先生と生徒達が集まっていた。

 

 「13号にイレイザーヘッド。先日いただいたカリキュラムでは、オールマイトがいたはずなのですが…」

 

 黒霧が見た限りではオールマイトがいないことが分かり、明らかに不機嫌になった死柄木は眉を顰めて文句を言った。

 

 「どこだよ…せっかくこんなに大衆を引き連れてきたのにさ…オールマイトがいないなんて。…子供を殺せば来るのかな?」

 

 生徒達に向かうようチンピラ達に命令を出そうとした瞬間だった。生徒達の中から赤い巨人(不屈)が飛び降りて来たのは。赤い巨人はヴィラン達の眼前にクレーターを作りながら着地すると、深呼吸でもするかの様に、徐に両手を左右に広げた。死柄木達は『…なんだ?こんな仲間いたか?』と一瞬呆けた。その一瞬が、死柄木達には命取りであった。

 

 「WOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

 不屈は”全力”で左右に開いた手を打ち合わせた。戦闘訓練で爆豪の最大爆破に対処する為に見せた技だったが、前回は建物への被害を考えて押さえていた。しかし、今回は違う。オールマイト級のパワーを持った不屈が、本気で繰り出した場合どうなるか。

 

 答えは簡単だ、周囲一帯の全てが吹き飛んだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「先輩。いや、相澤先生がヴィランがいると叫んだ瞬間でした。(不屈)が突然飛び出したんです」

 

 後に『USJ事件』と呼ばれる事になる事件の"一部"をその目で見ていたスペースヒーロー 13号は、この時の様子をこう語っている。

 

 「ヴィラン達の目の前に着地した彼が、いきなりヴィランの目の前で両手を左右に開いたんですよ。僕は隙だらけの彼を止めなきゃって思ったんですが、相澤先生と生徒達の反応は違ったんです。相澤先生がヴィランが現れた時より必死に『全員、伏せろーーー!!』って叫んだんです。僕も災害がメインではありますがプロヒーローですからね、皆と同様に咄嗟に伏せました」

 

 13号は何かを思い出したのか、ブルリと体を震わせた。

 

 「ヴィラン達は彼を自分達の仲間だと勘違いしてたみたいです。次の瞬間でした。彼の叫び声と共に、ミサイルが着弾したみたいな大爆発が起こったんです。彼とは100m以上離れていましたし、身を伏せていたので僕達は何とか大丈夫でしたが、至近距離であの一撃を喰らったヴィランは堪ったものでは無かったでしょうね。ヴィランに初めて同情しました…」

 

 「台風の様な暴風が静まって顔を上げた時には、彼と脳みそが剥き出しになった大男(脳無)に守られていた主犯格の男二人の合計4人以外に、立っている人間はいませんでした。他の大勢いたヴィラン達は、遠くの方で倒れていました。間違いなく戦闘不能でした。死人が出なかったことは幸いでしたが、彼がいる娑婆には出たくないと今でもヴィラン達は刑務所にいるそうです…」

 

 話を区切ると13号の纏う空気が徐々に重くなっていった。

 

 「その後、僕は相澤先生の指示に従い、生徒達を連れて避難を開始しました。相澤先生が彼の元に向かって行くのを今でも止めれば良かったと後悔しています。僕達は敵連合(ヴィランれんごう)を侮っていたんだと思います。簡単に撃退されたヴィラン達を見て。そうすれば相澤先生があんな事には…」

 

 13号は顔を伏せて後悔を滲ませていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 「なんだよ…これは」

 

 先程まで圧倒的優位に立っていたはずの自分達が、目の前にいる赤い巨人の一撃によって一変したのだ。死柄木は現状を上手く認識できていなかった。

 

 「死柄木 弔!早く脳無に命令をっ!」

 

 黒霧は脳無に赤い巨人を抑えて貰って、その間に自分の個性で逃げようと考えていた。しかし、それは上手くいかなかった。イレイザーヘッドが駆けつけたのだ。

 

 「遅い!」

 

 死柄木が命令を下す前にイレイザーヘッドが、死柄木と黒霧の二人を首に巻いた捕縛布を使用して縛り上げた。イレイザーヘッドは地面に押さえつける際に、黒霧の背中に膝を入れて行動不能にした。ワープゲートであると思われる男をそのままにしておく程、イレイザーヘッドは馬鹿じゃなかった。当然、脳無がイレイザーヘッドを妨害しようとしたが、不屈が反応して脳無を地面に押さえつけた。

 

 「不屈絶対そいつを離すな!俺のことは知ってんだろ…お前にはもう手札はない」

 

 イレイザーヘッドは髪を逆立て、死柄木に言い放った。

 

 「クソッ!解けよ…うぜぇ…」

 

 反抗しようとする死柄木の右腕をイレイザーヘッドは一切の躊躇なくへし折った。

 

 「ーーッ痛」

 

 「無駄は嫌いなんだ、合理性に欠く。お前さっさと不屈が抑えてる此奴を止めろ。お前らの会話から、お前の命令で脳無が動くのは分かってんだ」

 

 「……死んでも嫌だねッ」

 

 相澤は『そうかよ』と呟くと、今度は死柄木の左腕をへし折った。

 

 「ーーッ!!」

 

 「応援は呼んである。お前らはどっちにしろ終わりだ!」

 

 死柄木は絶体絶命だった。大勢いた味方は、今も脳無を地面に押さえつけている不屈と呼ばれた赤い巨人に一撃でやられた。逃げようにもイレイザーヘッドに、黒霧(ワープゲート)は気絶させられて使い物にならなくなった。自分自身も両腕をへし折られ、個性も碌に使えない状態だ。そして、後10分もすれば数十人のプロヒーローが応援にやって来る。

 

 「クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!」

 

 感情のままに暴言を死柄木は、周囲に撒き散らす。

 

 「騒いでも無駄d『無駄ではないさ』ッ誰だ!」

 

 イレイザーヘッドは周囲の警戒を全く怠っていなかった。それなのに突然"湧いて出てきた"かの様に、後方から声が聞こえてきたのだ。咄嗟に振り向こうとした瞬間に、イレイザーヘッドは風の大砲によって吹き飛ばされた。数十メートル先にある壁に激突し、イレイザーヘッドは気を失った。

 

 『おぉー怖い怖い。君に見られるのは"僕"も怖いからね…死柄木 弔。もう大丈夫だよ、僕がいる』

 

 死柄木は、イレイザーヘッドを吹き飛ばした存在に対してこう呟いた。

 

 

 「“先生”」

 

 

 魔王が現れた。

 

 




 沢山のお気に入り登録ありがとうございます。
 コメントいつも励みになっています。
 誤字報告や感想で指摘くださる方本当に助かっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。