あるmobが守る鎮守府の日常について   作:キルメナイム

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ラバウルの朝食のお話です。


第2話 朝食の時間

 僕たちが食堂の暖簾をくぐると、賑やかな声が聞こえてきた。

「皆はもう来てるみたいだね」

「そうですね。私たちもいただきましょうか」

 竹馬の上から僕が言うと、大淀の声が返ってくる。

 食堂に入った二人は、トレーと皿を取って配膳台へと並んだ。幸せな匂いに包まれ、思わず顔がふやける。

「あっ、司令官に大淀さん、おはようございます!」

 後ろから声をかけられた提督。彼が振り向くと、そこに居たのは駆逐艦の吹雪であった。

「おはようございます、吹雪さん」

「おはよう、吹雪」

 提督たちが挨拶を返すと、明るい笑顔を浮かべる吹雪。

「司令官、今日の朝御飯は鳳翔さんが作ってくれてるんですよね!?」

「うん。塩鮭とお味噌汁だってさ」

「やったぁ!私、鳳翔さんのご飯大好きなんです!」

 軽空母の鳳翔。ベテランの軽空母として深海棲艦と戦いながら、皆の食事まで作ってくれる艦娘だ。基地の者からの信頼はとてもに厚く、提督の頭の上がらない艦娘のもう一人だ。

「この基地に、鳳翔さんの作るご飯が嫌いな人なんていませんよ」

「それもそうですね!あ、列が進みましたよ」

「おっと、ありがとう」

 三人の会話が弾む。これが、提督が食事を食堂で食べる理由の一つである。仲間とのコミュニケーションを重視するというのは提督のモットーであり、同じ所で暮らし背中を預け合う者たちと深い信頼関係を結ぶために提督が率先して行動した結果だ。ちなみに、本来の理由が提督の、というかヘイホーという種族の寂しがりやな性格にあることは、特一級の秘密である。

 その後も三人の会話は続き、提督たちは自分の分の食事を全て受け取ってテーブルへと移動した。

「それでは早速、いただきます」

「いただきます」

「いただきます!」

 席についた三人が、手を合わせて朝食を食べ始める。味噌汁をすすった三人の顔がふやけた。

「あ~、鳳翔さんの作るお味噌汁って最高!」

「これを飲むと、一日の気合いの入り方が違いますね!」

「同感です。このお味噌汁が艦隊勤務のささやかな楽しみですね」

 鳳翔の味噌汁を三人が揃って絶賛する。

「まぁ、そんなに誉められると照れてしまいますね」

 そんな三人に一人の艦娘が声をかける。

「あっ、鳳翔さん!」

 噂をすれば影。話題の人、鳳翔がそこに立っていた。

「おはようございます皆さん。私も朝食を頂こうと思って。ご一緒させていただいてもよろしいですか?」

「もちろん。二人もいいよね?」

「いいに決まってるじゃないですか!」

「ええ。そんなに遠慮なさらないでください」

「では、失礼しますね」

 鳳翔は、椅子に腰を下ろすと静かに手を合わせて朝食を食べ始めた。

「鳳翔さん、そういえばなんだけど……」

 少しして、提督が鳳翔に話しかけた。

「なんでしょうか?」

「あいつら、真面目に働いてたかい?」

「あの子達のことでしたか。提督が心配なさらなくても真面目に手伝ってくれましたよ?厨房の準備から、食材の下処理まで手際よくやってくれて本当に助かりました」

「それならよかった。あいつらも、この基地での仕事が板についてきたみたいだね」

 提督が安堵のため息をつく。そんな提督を見て、吹雪と大淀も話題に加わってくる。

「司令官のお仲間さんたちはいつも真面目に頑張ってて、私たちすっごく助かってるんですよ!そういえば先日、花壇の整備をやってくれてるのを見ました」

「吹雪さんの言うとおりですよ。私も先日、書類の整理を手伝ってもらいましたし。あの子たちが半年前にここに来たときは、私もだいぶ動揺しましたけど、今ではあの子たちもこの基地の人気者ですからね」

「う~ん。まさか、あいつらがここで皆に受け入れられてマスコットみたいになるとは僕も予測できなかったな~」

「そういえば、明石さんと夕張さんが工廠での作業を手伝ってもらって助かってるって言ってましたよ?あと、最近は妖精さんとも仲良くなったみたいで……」

「あっ、それなら私も見ましたよ!妖精さんと鬼ごっこで遊んでました」

 会話の盛り上がる提督たち。そんな四人に、小さな影が声をかけた。

「リーダー!」

「おっ、お前たちか。ちょうど今、お前たちの話をしてたんだぞ?」

 提督たちに声をかけたのは、提督の色ちがい達、黄色や緑色の服を着たヘイホーたちであった。

「皆さん、今日も厨房のお手伝いありがとうございました。とても助かってますよ」

「いえいえ、これがボクたちの仕事ですから~」

 鳳翔に仕事を誉められ、心なしか嬉しそうに見えるヘイホーたち。仮面で素顔を隠しているわりには、表現豊かに感じられる。

「お前たち、今日もおつかれさま。お前たちも食事を取ってきなさい」

「はーい。行ってきまーす!」

 提督の言葉を聞き、ヘイホーたちは四人のもとから一旦姿を消した。

「ヘイホーさんたち、とっても真面目に働きますよね。それに可愛いし~」

「ただの居候ってのは毎日がんばってる皆に申し訳ないからね。これしかできない、っていうのが本当のところさ」

 吹雪の言葉に提督が答えた。

 

 

 

 現在のラバウル基地には、提督以外にも大量のヘイホーたちが住み着いているのだ。皆、ゲーム世界の壁を越えて提督を追ってきた者たちだ。同族との絆の深いヘイホーたちは、提督を追ってラバウルにたどり着き、ここに定着したのだ。

 当時のラバウルは謎のヘイホー軍団の一斉上陸に際してパニックに陥いったが、提督による必死の努力やヘイホーたちが提督の指示をよく聞いたこともあって、なんとかヘイホー御一行がラバウルに居着くことが許されたという経緯がある。

 その後、ヘイホーたちは持ち前の多彩なスキルを駆使して艦娘たちの手伝いをするようになり、それを提督が後押しした。さらに、その手伝いがきっかけで艦娘や妖精さんたちとヘイホーたちの間に友情も芽生え、その愛らしさも後押ししてヘイホーたちはラバウルのマスコットのようになったわけである。

 

 

 

「あいつらもあいつらで、皆にすっかり懐いちゃったな~」

 仲間たちがラバウルを訪れた当時を思い出しながら、提督は呟いた。

 常に素顔を仮面で隠すほどに内気な性格のヘイホー族だが、仲間と認めたものとは深い信頼関係を望むという傾向もある。ラバウルの艦娘たちも、ヘイホーたちと絆を感じている。これからヘイホーたちと艦娘たちの信頼関係はもっと厚くなり、色々なことが起こるだろう。

 そんな未来を思うと、提督は静かに微笑まずにはいられなかった。

 その後も愉快な朝食の時間は続き、食事を終えた者たちはその日の仕事へと向かうのであった。




投稿がメチャクチャ遅くなってしまったー!申し訳ないです……( ;´・ω・`)
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