あるmobが守る鎮守府の日常について   作:キルメナイム

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前回のあらすじ
勢力を拡大する深海棲艦に対し、追い詰められつつあるラバウル基地。基地空襲や包囲網の危機が浮上する中、提督指揮下のヘイホー達は友達のために共に戦う決意をしたのだった。


第5話 訓練開始

 某日、深夜のラバウル基地。消灯時間はとうに過ぎ、各所の灯りは落とされていたが、戦闘訓練用の道場だけ、ひっそりと照明がつけられていた。

「よし、みんな集まったね。彼女たちには気づかれていないよね?」

 提督が、道場に集まった小さな影たちに静かに聞く。すると、小さな影たちがコクコクと頷いた。

「抜かりなしです、リーダー」

「念のため、ベッドにはダミーのぬいぐるみを置いて来たです」

 提督は、彼らのそんな返答を聞くと力強く頷き、その口を開いた。

「皆、今夜集まってもらったのは他でもない。僕たちヘイホーの能力を、深海棲艦にぶつけて通用するものに調整するためだ」

 道場の中で小さなどよめきが起こった。提督は、それを片手で制しつつ言葉を続ける。

「僕たちヘイホーにも、外見は同じでも、使える技なんかに微妙な個体差がある。今後の訓練は、その個体差を少しずつ無くしていって、皆が戦いに出られるようにするためのものになるよ」

「なるほど~」

「それじゃあ、まずは基礎的な戦闘訓練から始めようか」

「はーい!」

 

 

 ヘイホーたちの戦闘訓練は、本当に基礎的な、集団行動の演習から始まった。

「いいか!?お前たち、俺たちヘイホーは、どこまで行っても雑魚だ!モブだ!頭を少し踏まれただけでもポンと弾けて消えちまうぬいぐるみなんだ!」

 道場に、そんな怒声が響く。声の主は、提督が訓練教官を依頼した『アーミーヘイホー』だった。カーキ色の服に身を包んだ彼は、彼のベノーム神殿において特殊任務に従事した経験のあるヘイホーで、状況把握能力と行動能力に優れており、テレパスの精神感応に対応してしまうという冷静さも持ち合わせていた。

 彼の知識と経験がヘイホーたちの訓練に役立つと確信した提督が、向こう側から呼び出したのだった。

「お前たちの武器は、雑草みたいなタフさと、数だ!集団戦闘をマスターすれば、必ず強くなれる。ただ、逆に単独行動、孤立なんてしちまえば、いい的だ。あっさりと叩き落とされて、土管戻りだろう。あの配管工どもと戦ったときのようにな」

 アーミーヘイホーが、そんなことを言いながらヘイホーたちに集団行動の要領を叩き込んでいく。ヘイホーたちは、アーミーヘイホーから発せられる号令や怒声に右往左往している。

「赤ヘイホー隊、集まれ!」

『ワーッ!』

「緑ヘイホー隊、警戒体制!」

『アワアワ……』

「行動が遅いぞ!実戦では、1ターン動きが遅れれば火の玉が十発は飛んでくるんだ!テキパキ動け!」

『ハッ、……ハイ!』

 こんな具合の訓練が、日の出前まで続けられ、すべてが終わったのは艦娘たちに総員起こしがかけられる三十分前だった。

「よし、今回の訓練はここまでとする!今後の訓練は、実戦を想定した個別の戦闘訓練となるから、さらに気を引き締めて臨むように!」

『ハイ!ありがとうございました!』

 アーミーヘイホーが敬礼と共に解散の号令をかけると、ヘイホーたちは寝床へと戻っていった。

 

 道場に提督とアーミーヘイホーの二人が残った。

「アーミー、ありがとう。助かったよ」

 提督が、アーミーヘイホーに頭を下げた。

「気にするな。これも任務だ」

 アーミーヘイホーは素っ気なく答える。彼の感情は、その仮面の奥に封じられ、提督にもうかがうことができない。

「しかし……」

 アーミーヘイホーがポツリと呟いた。

「どうした?」

 提督が聞くと、アーミーヘイホーは天窓から覗く星空を見上げながら言った。

「妙なことになったものだな……。元々はマリオ(人間)(モンスター)だった我々が、なんの因果か人間側の世界に渡ってきて、こっちの深海棲艦(モンスター)と戦うことになるとは……」

 道場を沈黙が包んだ。少し置いて、提督が答えた。

「まったくだな。僕自身も、未だにこの状況を受け入れきれていない部分があるんだ……」

「あんた、今どんな気持ちで『提督』ってのをやってるんだい?」

「……今は難しいことは極力考えないようにしてるよ。ただ、彼女たちと彼女たちの居場所を守る。それが今の僕の仕事だ」

「……なるほどな。あんたらしい、というかヘイホーらしい答えだ。俺たちは、決まった主や定まった居場所を見つけると、なかなかそこを離れられんからな。それこそ、そこが崩壊するまででも……。まあいい、俺の仕事は済んだ。任務に戻る」

 アーミーヘイホーは、そう言うと道場の出口へ向かって歩きだした。

「待ってくれ」

その背中を提督が呼び止めた。アーミーヘイホーは振り返らずに聞いた

「なんだ?」

「向こうに帰る前に、こっちの世界であと一個だけ任務を引き受けてほしい……」

 提督の口調からは、強い不安のようなものがにじんでいた。

「……任務の内容は?」

 ただ事ではないと察したアーミーヘイホーがわずかに振り返った。その瞬間、提督からアーミーヘイホーへ、強力な『念』が送られた。アーミーヘイホーの頭の中で、その念はあるひとつの映像に変換される。

「……なるほど、調べてみよう。どれくらい時間がかかるか分からんが……」

「構わない。なるべく正確な情報が欲しいんだ」

「了解。何か掴んだら報告する」

 そう言うと、アーミーヘイホーは道場から出ていった。提督は彼の背中を視線で追ったが、ふと気がつくとその気配は完全に消えていた。

「頼むよ……アーミー……」

提督は、そう呟いて道場の灯りを落とし、執務室へと戻っていくのだった。




今回の話、艦これ要素が『提督』って単語以外なかったな……(汗)

提督が使った『念』というのは、イメージとしては漫画やアニメの回想シーンみたいなものです。複数人で同じ映像を思い浮かべるアレです。

遅投稿本当にすみませんでしたm(__)m
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