聴いて驚け!強竜者と歌姫のブレイブシンフォニー   作:マガガマオウ

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芽生えた希望~受け継がれた歌~

「がぁぁぁぁ!」

 

現れては引き引いては現れを繰り返す、己が体を貫き現れる謎の突起物の齎す痛みに苦悶の雄叫びが周囲に響き、少しずつその身体を戦う者へと変化させ苦悶の声も小さくなっていく。

 

「あれ?私……何これ?」

「お姉ちゃんカッコいい!」

 

さっきまで自分の身を苛んだ痛みは何処かへ消え、代わりに自身を包み纏う装甲を訝しみつつ観察していると、さっきまで悲壮感など何処へ行ったのか少女が羨望の視線を響に向けていた。

 

「……っ!」

 

突然の変化からそれ程間を置かず自身の身に何が起きたかも分からず仕舞いだが、それでも今ここで何を成さねば成らぬかは理解できる、今はこの歌と共に戦おう自分に憧れの視線を送るこの少女を生かすために。

 

『そうだった、何が起きているかは今は問題じゃないんだ。私が一番やらなきゃいけないのはこの子を助ける事!』

 

胸の内から溢れる音に身を任せるままに歌を口遊み、少女を抱きかかえて彼方へ跳び上がる。

 

「うわ⁉わっ!何?」

 

しかし、その一蹴りは響の想定を超え大きく二つの体を宙に打ち上げ、その高さと距離に自身で起こした事だと一瞬理解が追い付かず困惑し、それが反応に現れ空中で減速して地面に着地する。

なおも口から紡がれる歌を奏でつつさっき自分たちが落ちてきた上空を見れば、ノイズたちもまた響たちを追い落下しており、それを睨み付けながらノイズが落下する直前で横を飛んで躱し体を地面に跳ねさせ衝撃を殺して再び立ち上がる。

 

「うぁぁぁぁぁ!」

 

そこへ更に追い駆けて来るノイズたちを躱しもう一度大きく跳んで今度は建物に激突してケーブルの様な物に掴まり、建物の影から現れた大型ノイズを注意深く見つめ大型ノイズが腕を振り上げると跳び引いき着地した所を小型ノイズが飛び掛かるその瞬間、響は覚悟を決めて拳を握りしめてノイズに向けて突き出した。

 

『え?私が倒したの?』

 

突き出された拳がノイズを捉えた時、灰塵となったのが己ではなくノイズだった事の驚いた響は僅かな間呆然と立ち尽くす。

そんな響の後方から轟いたのはエンジン音、誰かが一直線に進路上のノイズを跳ね除け突き進んでくる、そして姿が見えた時響はその人物に呆気の取られる。

 

「え?」

 

バイクに跨り通り過ぎた特徴的な青い髪が風に舞い大型ノイズの直前で飛び上がると、バイクだけが大型ノイズの脚に当たり炎上して翼だけが降り立つ。

 

「呆けない、死ぬわよ……よく頑張ったわね。後は任せてその子を守ってなさい。」

「ふえ⁉」

 

振り返らずに響に柔らかく一括すると、最後に彼女に労いの声を掛けてノイズの大群へ駆け出し歌を紡ぎ、戦装束を纏い手にした刃を広げ横に一閃、全方に犇めくノイズを忽ち切り伏せて大きく跳躍、今度は無数の剣の雨を降らせ刺し穿つ。そして残るノイズたちもたちどころに切り伏せていく。

 

「すごい、やっぱり翼さんは……。」

「あっ!」

 

その活躍を目にして響が圧巻の想いを吐露していた時、後ろを見た少女が慄き表情を引き攣らせ響も其方を見て同じ表情になる。

 

「うぇ!」

 

自分達を見下げる大型ノイズが体を屈め直ぐ後ろに居たのだ、さっきまで緩んだ空気が一瞬で引き攣り緊張を張らむ。

 

「ガァオオォォォ!」

 

蛇に睨まれた蛙の様に動けない響達に今まさに大型ノイズが圧し掛かろうと言う時、その雄叫びが張り詰めた空気を揺らし、その直後巨大な影が響達の前に躍り出てノイズに当たり吹き飛ばす。

 

「何⁉……あれは、恐竜!」

 

現れた物の正体ティラノサウルスを思わせる真っ赤な体の巨大生物が響達を庇うようにノイズと相対する。その時遠く離れた彼方から獣電池が飛来しティラノサウルスの口に差し込まれた。

 

「ガァオオォォォォ!」

『ガブリッチョ!アッローメラス!』

 

獣電池を飲み込んだティラノサウルスからそんなセリフが溢れ、ティラノサウルスが高温の火を噴いて大型ノイズを焼き払う。

 

「終わった……の?」

「だから、呆けない!まだ、確実に安全だって分かった訳じゃないんだから。」

 

此処までに至る一連の出来事が一応は終結して呆然とした面持ちになる響に、翼が駆け寄り気を抜かない様に注意を呼びかけ応援の到着を待つ。

 

「あの翼さん、ありがとうございました恐竜さんも。」

「ん?……気にしないで良いわ、これから先輩後輩の関係になるんだし後輩を助けるのは先輩の役割よ。」

「ガァオオォォォォ。」

 

周囲を見張る翼と恐竜に響が助けられた事に礼を述べると、翼は少し表情を和らげ当然の事のように返し、恐竜も鳴き声で応じる当たり会話は成立しているようだが、言葉が通じないからその内容は一方通行だ。

 

「ガブティラも気にするなって言ってるぜ。」

「えっ?ダイゴさん⁉」

 

そこに大分前に一度だけ聞いた懐かしい声が聞こえて、皆がそちらを向くとダイゴが溌溂な笑顔で腕を組んで佇んでいて、唐突なダイゴの登場にこれまでとは違う反応が其々から返る。

 

「ハハハ、思ったより元気そうで安心したぜ響!」

「帰っていたんですねダイゴさん、奏はどうしてます?」

 

久しぶりに再会した響の壮健な様子に満足そうに頷くダイゴ、そこに翼が見知った顔で近くによると奏に現状を質問する。

 

「おう!翼か。奏なら今は親父のところで最後の追い込みを掛けてるところだ。」

「えぇ⁉知り合いだったんですか⁉」

 

ダイゴも大分親し気なので二人は知り合いなのだろう。まぁ、奏に指南役をやっていた時点で何かしらの接点はあったと思うが。

 

「えぇ⁉翼さんとダイゴさんって知り合いだったんですか⁉」

「はぁ、少し落ち着きなさい騒がしいわよ。」

「ははは、まぁ良いじゃねぇか!何も言わずに静かにしてるより、表情に出してくれた方が分かりやすいぜ。」

 

そうとは知らない響が何度目かの驚きの声を上げ、困った様に窘める翼をダイゴが諫め高らかに笑う。

そうして、時間が過ぎ特異一課の処理班が到着すると、翼は同時に到着した二課の職員に駆け寄り響は一人呆然と佇む、今日起きた出来事が現実であると頭で理解し精神が理解を拒むそんな心情であったが助け出した少女の様子は気になるのか静かに見守っている。

 

「あの、暖かい物どうぞ。」

「あぁ、暖かい物どうも。」

 

そこへスーツ姿の女性おそらく現場で働く組織の職員と思われる人から、湯気の上る紙コップを差し出されお礼を言って受け取る。

 

「ふぅーふぅー……なはぁー。」

 

紙コップから伝わる熱を感じつつ息を吹きかけて少し冷まし口に含んで人心地、ずっと続いた緊張状態が解かれ体の力が抜けたと同時に彼女の体を覆う装甲が輝き消失し、元の制服姿に戻る。

 

「うえっ⁉はっ!うわ!うぅわ、わっわわわ!」

 

その突然の変化に驚き持っていた紙コップを落とし体勢を崩して、仰向けに倒れ懸かる所を誰かに支えられる。

 

「あぁ!ありがとうございます!……はっ!ありがとうございます‼」

「どういたしまして、お礼は一度でいいわよ?」

 

支えてくれた誰かしにお礼を言おうと振り向くと表情を少し崩した翼が居て、それに気が付いた響は感極まった様子で二度続けて礼をし、翼は響からの礼を受け取ると眉根を下げた笑みを浮かべて返した。

 

「は、はい!あの、翼さんに助けられたのはこれで二回目ですね。」

「二回目?」

 

向き合った翼に自身が知っている限りで二度助けられた事を告げる満面の笑みの響に、彼女は響の発言の内容に疑問符を浮かべて困惑する。

 

「ママ!」

「無事だったのね。」

 

翼が響の発言の意味を理解しようと思案している時、あの少女の感極まる声が聞こえ親子が再会できた事を場面を見つめる響。

 

「それでは同意書に目を通した後、サインをして頂けますでしょうか?」

 

そんな感動の場面でも事務的な態度を崩さず、互いに無事を喜び合う親子の前にタブレットを出す女性職員。

 

「本件は国家特別機密事項に該当する為、情報漏洩の防止の観点から貴女の言動及び言論の発信には今後一部の制限が加えられることになります。特に外国政府への通謀が確認されたら、政治犯として起訴され場合によっては……。」

 

恐らく当事者である少女に向けての説明であろうが当の本人は、意味が分からないのか呆然とし母親も唖然としている。

 

「あはは……それじゃあ私もそろそろ。」

「ごめんなさいね、貴方をこのまま返してあげられそうにないの。」

 

そんな様子を眺めていた響も早々に退散した方が吉と考えたのか、この場を離れようとして翼に声を掛けるといつの間にか現れた黒服の男性たちの中心で苦笑を浮かべた翼が申し訳なさそうに告げる。

 

「何でですか?」

「理由は後で話すから今は、特異災害対策二課まで付いてきて貰えるかしらし?」

 

今日一日ずっと様々な事柄に巻き込まれ或いは首を突っ込んできた響でも、これまでとは別種の急展開にしどろもどろな様子で翼に尋ねるが、本人からは要領を得ない返答が返って焦りが加速した。

 

「はい?あの、それ答えになってない……!」

「はっは!落ち着け響、今から行く場所は俺も知ってるし怪しい所でもないぜ。」

 

不透明な状況で焦燥は強く困惑が濃くなる響に、ダイゴが緊張を解き解す様に陽気にだけど落ち着いた態度で話しかける。

 

「何より、嘗ては奏が居た場所だしな。奏自身が響自身やその周辺の人の為に行って欲しいって言ってたぜ。」

「奏さんが!……分かりました、何処へ向かえばいいんですか?」

 

ダイゴが奏の名を出すと、響は姿勢を軟化させ指示に応じる。

 

「おっしゃ来い!ディノチェイサー!」

『ガブリッチョ!ディノッチェイサー!』

 

響の返答を聞いたダイゴは相槌を打つと、ガブリボルバーを取り出しディノチェイサーを呼び出す。

 

「乗れ響!先に行ってるぜ翼!」

「はい!よろしくお願いいたしますダイゴさん!」

「え?あっ、ちょっと!……一応、追い駆けましょう。」

 

そのまま響を後部に乗せて走り出した二人の姿を見送る事しか出来なかった翼。その場に残された黒服たちと共に呆然としていたが直ぐに建ち直しその後を車で追い駆け、目的地へと向かったのだった。

こうして一応の初戦を終えた響は、突如再会したダイゴと共に向かう。

いざ行かん!目的の場所は、特異災害対策二課の本拠地なり!

 

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