桜並木が満開になった道を行く。春休みが終わったかと思うと残念に他ならない。いやまぁ、春休みを満喫出来たかと問われればそうでも無いのだが。
春休みに起きた出来事を思い出しながら歩いていくと、ポケットに入れていたスマホが着信を知らせる。学校の授業中とかで着信音鳴っちゃった時とか恥ずかしいよな?
たまたま今回はバイブレーションになっていたから気づけたものの、普段なら通知は切っている為電話には出ない。俺が電話嫌いなこと知っててかけてくるんだもんな………。
そう思いながら、一向に終わる気配が無い着信を切ってしまおうかと悩むが、切ったら切ったでめんどくさいんだよな。
「はぁ。仕方ねぇか」
観念して電話に出ることにする。
「やっと出たか。お前の電話嫌いは治らないのか?」
向こうに怒っている雰囲気は無い。もう諦めているのだろう。へへっ(勝ち誇った顔)
「何の用だよ?」
「用が無ければかけては駄目なのか?」
「ああ駄目だね。俺の平穏な日々が壊れちまう」
「つれないな。仕事の話だ」
それを聞いた途端自分の中で何かが変わる。普通の学生じゃいられない。いや、そうなることを望んだのは俺自身なんだ。我が儘と言うものだろう。
「内容は?」
「駒王町にはぐれ悪魔が逃げ込んだとの情報が入った。対象は二体。片方は神器持ちだ。数日前に教会の戦士と殺り合ったらしく、手負いの可能性がある。見つけ次第始末してくれ」
電話の相手から告げられた内容に思わずため息が出た。
「一応、ここは魔王の妹の領地ってことになってるよな?何で態々死地に飛び込むんだ?自殺願望者か?」
この駒王町を管理しているのは四大魔王の“妹達”。レヴィアタンとルシファーの名を冠する現魔王は、己の妹達を溺愛している。そんな彼女達が領地だと思っている場所で事件など起こしてみろ。魔王を敵に回すことになる。そうじゃなくても、その魔王の妹達は才能に溢れてるそうじゃないか。木っ端悪魔じゃ相手にならんだろ。
「さてな。悪魔の命など知らんが、無辜の民が犠牲になるのは見過ごせん。既にそちらにアイン達を送っている。お前が負けるような事は無いと思うが、必要とあれば頼るがいい」
「へーへー。俺一人で十分だっての」
「しかし………」
「あー!やっべー!全力ダッシュしなきゃ遅刻しちゃうなー!電話とかしてる余裕無いわー!じゃな!」
長くなりそうだったから無理矢理にでも切ろうとする。ぶっちゃけ本当にいい時間だから急がなくちゃいけない。急いで電話を切ろうとするも、相手の才能で妨害される。
「まったく………仕方ない。では最後に1つだけ。組織から四人、駒王学園に編入させた」
「……はい?」
「ではな」
「ちょっま………切りやがった」
いや元々切る予定だったけど………編入だぁ?しかも四人も?誰だよ。
誰でも良いが、俺の平穏を壊さないで貰いたいね……。
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始業式も無事終わり、それぞれのクラスに戻った俺に待っていたのは………。
「今日から皆の新しいクラスの仲間を紹介するぞ。入ってくれ」
教壇の上に立っている担任が言った言葉に今朝電話で聞かされた事が過る。
『組織から四人、駒王学園に編入させた』
誰だ、誰が来るんだ。
教室の扉を開けて入ってきたのは、白色の短い短髪に端整な顔立ちをした青年と、長い銀髪と青い瞳を持った氷のような印象を抱かせる少女。
「皆さん初めまして、僕はフランスから来た、シャルル=アンリ=デュランと言います。日本の事は分からない事が多いので、教えてくれると助かります。よろしくお願いします」
「アナスタシア=ニキフォロフ………よろしく」
先に青年が、後に少女が自己紹介をした。つってもアナスタシアは名前を言っただけだがな。サンソンを見習え。おっと、今はデュランだったか。
「うおおおお!!美少女キターーー!!」
「きゃあああああ!!木場くんと並ぶイケメンよ!!」
「アナスタシアちゃん……イイ。踏んでもらいたいハァハァ」
「くっ、儚い系王子様………いえ、これは見たことが無いイケメンね……。是非とも木場くんとの絡みを…!」
クラスの大半がトリップしてやがる。まぁ、アイツら顔は良いからな。二人はクラスの熱気に若干……かなり引いてるけど。
「よーっし、今日はこのあと入学式の準備があるから遅れずに体育館に集合な。それまで編入生と交流しとけよ~」
そう言って退出する担任。そして我先にと編入生へと群がるクラスメイト。二人は成す術も無く飲まれるのであった………南無南無。
「クソッ、また新たなるイケメンが来たか」
「いやしかし!アナスタシアちゃんは美少女!しかもクール系!滾りますぞぉ!」
「駒王学園美少女ランキングが変わるか……? 早くアナスタシアちゃんの裸体を見たいぜ……」
そんな会話がする方へ目を向けると、下衆い顔をしながら編入生………アナスタシアを見つめる三人組。危ない(確信)。
アイツら三人組はこの学園の有名人だ。有名人と言っても負の方でだけどな。変態三人組と呼ばれるくらいに問題行動ばかり起こす奴ら。だけどその内の一人が……なぁ。
転生してから暫くたってから、転生前の記憶が戻っていた。とは言っても、転生前の名前と家族や親しい友達の事は思い出せず、自分の好きな事や学んでいた知識のことばかりだった。恐らく転生後の生活に支障をきたさない為だろう。転生前の家族の記憶があれば、転生後の家族に違和感などを覚えてしまう、とか。
まぁ、結局は神のみぞ知るって奴かね。
俺はスマホを取り出し、時間まで暇潰しをする。転生前の世界とそう変わらないからな。好きだったスマホゲーも出てきたから助かるぜ。名前が微妙に違っていたりするけどな。
ゲームを起動する前にLINEが届いた。相手は……。
「アイツも来てんのかよ。あぁ、そういや四人だったか」
メッセージの内容はシンプルに、屋上にて待つ、だった。
俺はチラリと二人を見ると、サンソンが困ったように俺を見ていた。隣に居るアナスタシアは気分が悪そうだった。アイツは人見知りだからなー。それに心の壁分厚いし。
「しゃあねぇか」
ここで才能を暴発させられちゃ堪らんので助けることにする。二人に群がっているクラスメイトへと近づいて声をかける。
「おおーい。そこら辺にしとけよ。初対面の人間にいっぺんに喋られても混乱するだろ」
クラスメイト達は俺の方へと向いてハッとする。
「そ、そうだよね。ごめんね」
「い、いや、謝ることは無い。でも今度からは少しずつにしてくれると嬉しいな」
空気がギクシャクしてしまったな……。まぁ良いか。さっさと二人を連れ出そう。
「ニキフォロフ……さん。気分が悪いなら保健室に案内するけど?」
ちくしょう。呼び慣れないからちょっと戸惑っちゃったじゃねぇか。
俺の心を見透かしたように、アナスタシアはクスリと笑う。
「ええ、お願いできるかしら」
氷のような冷たい印象を抱かせる無表情から一変、小さく微笑んだ。それは周囲に居たクラスメイト達の心を射ぬいた。
「「「「アナスタシアちゃんしゅき……」」」」
恐るべしアナスタシア。次の瞬間にはまた無表情に戻ったけどな。
「それじゃ案内するよ」
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「助かったよ。ありがとうジャック」
「おい。この学園では
「分かったよ」
教室から出た俺達は、メッセージを送ってきた相手に会うため屋上へと向かっている。入学式の準備にはまだ時間があるから大丈夫だろ。
「だけど、もう少し早く助けて欲しかったわ。もう少しで凍らせてしまう所だったもの」
アナスタシアは薄ら笑いを浮かべなから言う。コイツがそんなこと言うと洒落にならねぇ……。
「悪かったな。でもお前らだって、社会性を身に付ける為~とかなんとか言われて来たんだろ?」
「あれ?ノイマンから聞いてないのかい?」
「あん?」
「私達がここに来たのは、ノストラダムスの予言があったから」
「予言、ねぇ。それは当たるのか?まあまあ外れるノスのだぜ?」
俺の言葉に苦笑いを浮かべるサンソン。そう言うのも仕方の無い事だと分かってるんだろう。かのノストラダムスの“廻り者”。彼の才能によって予言された事は、過程はともかく結果は変えようが無い。彼の予言の的中率はおよそ70%。だからまあまあ外れるんだよ。しかし、本当に大事な事は当たる。つまりその予言によってコイツらが来たと言うことは………
「そんなに大事なのか?」
「あぁ。歴史が動くらしい。それも、あらゆる神話勢力を巻き込む全世界レベルで」
「その中心が、ここだと?」
二人が頷いた。マジかぁ。それってつまり、原作の事だよな………。あの変態か……あの変態かぁ(二回目)。あの変態性を目にすると、マジかしか出てこねぇ。
「僕達がこの学園に来たのは、予言の時に備えること。それと同時に、学園生活も楽しんでおけとノイマンが……」
「………だいたい把握した。それで、お前達の他には誰が来てるんだ?」
「それは━━」
「それは屋上についてからのお楽しみよ」
デュランの言葉をアナスタシアが遮る。イタズラを思い付いた少女の笑みを浮かべて、俺の手を取る。
「さ、早く行きましょう」
「引っ張るなって。階段は危ないぞ」
「大丈夫よ。早く早く」
そう言って全然手を離そうともせず階段を上がっていく。サンソンに救いを求めるがあっさり首を横に振ってしまった。おのれ……!
階段を早足で登りながら到着した。アナスタシアと手を繋いでちょっとドキドキしたのは秘密だ。
「それじゃ、ご対面と行こうかね」
前編と後編に分けちゃいました。
それでは次回、『廻り者』
次回もよろしくお願いします。