もしも一花の好感度が最初から高かったら   作:神光の宣告者

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単行本の8巻までと最新話の知識を元に書いていきます。


出会い編
ぶつかりそうになるとかいうベタな展開っていいよね


周囲の学生が談笑しながらのらりくらりと歩いている廊下を彼らの3倍の速度で歩く。

周りの学生は俺のことなど気にも止めずに無為に高校3年間という貴重な時間を浪費している。

しかし俺は違う。移動中にも勉強を怠らない。

 

右手に単語帳を左手には英語の長文問題を持ちながら休憩がてら昼休みの出来事を思い起こす。

 

食堂でやけに突っかかってきた女には腹が立ったがまぁそんな事はいまさらどうでもいい。

それな事よりも何億倍も重要な事が起きたのだ。

なんと長年我が家を悩ませてきた借金問題がついに解決できるかもしれないという電話がらいはから掛かってきた。

新たにすることになったアルバイトは家庭教師である。

相手は金持ちのご令嬢らしく賃金は相場の5倍だという。こんなうまい話があるはずがないと少しは警戒したが嬉しそうに話すらいはの声を聞いていたらそんな事はどうでも良くなった。

このチャンスを逃す手はない。

例えヤバいバイトだったとしてもらいはの為なら仕方がないと受け入れよう。

強い決意とともにそのアルバイトを受けた。

 

「we were meant for each other」

 

この文は直訳してはいけないみたいだな。

文章の内容から察するに……

 

「うわぁ!?」

 

突然視界に少女の姿が映る。

それを認識した時には既に手遅れだ。

俺はその少女と真正面から衝突する……はずだった。

しかしその衝突は奇跡的に回避することができた。

どちらかと言うと少女が回避してくれた。

勢い余った俺は派手に階段を転げ落ちた。

 

「大丈夫?」

 

痛む顔をさすりながら声の主を見上げて驚愕する。

なぜならさっきまで目の前で喧嘩していた昼食に1000円以上かけるセレブが目の前にいるのだ。

確実にさっき別れた筈なのだが……。

 

「な、なぜお前がここに……。しゅ、瞬間移動でもしたのか!?」

「?」

 

よくよく見ると髪型がさっきのあいつとは違う気がする。

彼女は不思議そうな顔で俺を覗き込んでくる。

この様子から察するに彼女は別人である可能性が高い。

 

「べ、別人なのか?」

「んー誰の事を言ってるのかはわからないけど、多分君が思っている子と私は別人だと思うよ。」

「そ、そうなのか……。」

 

話が通じているのかは分からないが本人がそう言うのだからそうなのだろう。

彼女は余裕のある笑みでこちらを下から見上げてくる。

なんとなく居心地の悪い俺は目をそらす。

 

「それでどうして君はそんなに急いでいたの?」

「別に急いでいた訳ではない。歩きながら勉強していたから不注意になってただけだ。すまなかった。」

「ふーん、そんなに勉強ばっかして楽しいの?」

「ああ。少なくとも今、お前と話しているよりも有意義だと思う。」

「その言い方はちょっと傷つくな……。」

 

そう言ってムッと膨れた彼女の顔は食堂の子そのものだ。

他人の空似にしては似過ぎている気がする。

この現象には覚えがある。

俺は自分の脳内の本棚からドイツ語の棚を引っ張り出してくる。

 

「Doppelgänger」

「なに?」

「ドッペルゲンガーだ。簡単に言うと今この学校にはお前と全く顔の同じ人間がもう1人いる。もしお前がそいつと出会うと死ぬから気を付けろよ。」

「……。プっ、アハハハっ!」

 

彼女は突然お腹を抱えて笑いだした。

自分が死ぬと言われているのに何がそんなに面白いのだろう?

 

「君面白いね。ただの優等生くんだと思ってたから意外だよ。」

 

目尻に涙まで溜めながら大層面白そうに笑っている。

廊下中に響き渡った笑い声のせいで廊下にいた生徒たちが俺たちに注目する。

普段はテストの時くらいしか注目されない俺が1日に2回も注目されるなど人生初のことだ。

 

ペースを崩された俺は逃げるようにその場を離れようとする。

 

「ま、まぁそういうことだから気を付けろよ。」

「あっ!ちょっと待って。」

 

走り出そうとする俺の手をその少女は咄嗟に掴んだ。

 

「手から血が出てるよ。」

 

彼女はスカートのポケットから飴玉や髪留めで構成された個体を無造作に取り出してその中から絆創膏を引っ張り出した。

意外と大雑把なところもあるみたいだな……。

 

「ほら、手出して。」

「いや……こんなのはかすり傷だ。」

「いいのいいの。お姉さんに任せなさい!」

 

絆創膏を貼ってはくれたものの微妙に傷の位置からズレていて全然傷が塞がっていない。

 

「もう大丈夫だよ。優等生くんっ。」

「お、おう。」

「私の名前は一花だよ。漢数字の一にお花の花で一花。覚えやすいでしょ。よろしくね。」

 

そう言って笑う彼女がとても可愛らし……

いや、断じてそんなことはない。

色恋沙汰など時間の無駄でしかない。

どうやら今の俺はおかしいようだ。

おそらく新しいバイトが決まったせいだ。そうに違いない。

 

「おいっ、忘れ物だぞ。」

 

その場を去ろうとする彼女を今度は俺が呼び止める。

表紙に『弱震アリ』と書かれた紙の束を彼女に渡す。

見た感じ何かの台本だろうか。こいつは女優か何かでもやっているのか。

んー、テレビを見なさすぎて一切わからん。

 

「あ!ちょっと勝手に見るなんて酷いなーってキャっ!?」

 

台本を取り返そうとした彼女は足を踏み外して階段から落ちそうになる。

考えるよりも先に体が動いた。

すんでのところで彼女の腕を取り抱きとめた。

意図せず彼女と抱き合う形になってしまった。

彼女の顔が目と鼻の先にある。

普段女性との関わりなど一切ない俺にとっては始めての経験だ。

女性特有のシャンプーのような香りが鼻腔をくすぐる。

 

「き、君が悪いんだからね。……返してくれるかな?」

 

余裕ぶったことを言っているが声が上ずって震えていて怒っているのがバレバレだ。

人を泥棒みたいな目で見やがって、助けてあげたのに心外だ。

俺はささやかな仕返しをすることにした。

 

「意外とドジだな。」

「ん〜〜〜!!」

 

その少女は顔を真っ赤にして強引に俺から離れると逃げるようにその場から走り去って行った。

どうやらそうとう頭にきたらしい。

 

「なんだあの失礼な奴は。」

 

これが俺と彼女……一花との始めての出会いだった。

 

ーーーーーー




★原作との違い

・一花の姉な一面を知り合う前に見て風太郎の一花への印象が少し改善
・風太郎の殺し文句を言われたため一花の風太郎に対する好感度➕10000%
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