もしも一花の好感度が最初から高かったら   作:神光の宣告者

2 / 8
主人公が嫌われるのはよく見るけど四葉みたいなタイプは珍しいよね

「そんな……無理……こんな人が私達の家庭教師だなんて。」

「いたー!!こいつがストーカーよ!!」

「ええっ上杉さんストーカーだったんですか?」

「二乃早とちりしすぎ。」

 

高級感あふれるマンションの最上階でようやく俺の家庭教師の生徒、中野五月を捕まえた俺は絶望の底へと叩きつけられることになった。

まさか今日出会ったこいつら全員が俺の生徒だと……!?

だから相場の5倍か。

世の中そんなにうまい話はないという社会の厳しさを知れた17歳の夏だった。

 

「き、君が私達の家庭教師……やった。」

 

一様にみんな俺に怪訝な目を向けている中で小さくガッツポーズをしている姿が目につく。

ん?アイツは学校で会った五月のドッペルゲンガーじゃないか。

五つ子だったらそりゃ似てるわな!

妙に納得できたが目下の問題は一切解決してない。

 

「一花あんた大丈夫?なんか顔赤くない?」

「えぇ!?そ、そんなこと……あるかなぁ。な、夏だしね。」

 

一花と呼ばれた少女は両手をブンブンと振って否定する。

あそこまで嘘だと分かるのはある意味逆に凄いのではないだろうか。

顔も真っ赤だし目も泳いでいる、典型的な嘘をついている人の特徴を全部持ち合わせた彼女の様子が少し面白い。

 

「夏って言っても流石に赤すぎない?……ていうか凄い汗じゃない!?熱でもあるんじゃない。」

「え!?ちょ、ちょっと二乃!やめてよ……。」

「さぁ早く家入って寝て寝て。」

「いや、だから……。」

 

ニ乃と呼ばれたツインテールの子が一花を無理やり家に押し込もうとしている。

とても姉妹思いの優しい奴のようだ。

今はあらぬ勘違いから敵視されているが一旦誤解を解けば素直に授業に参加してくれるかもしれない。

そんな淡い希望を抱いていた俺の懐に器用に入り込むと悪魔のような笑みを浮かべて耳元で囁いた。

 

「このまま一花に付きまとうんだったら普通の生活は送れないと思いなさい。」

 

夏なのに背筋に悪寒が走る。

な、なんだ今のは……?

明らかに素人の目付きじゃなかったぞ。

 

「そういうことだからさようなら〜。」

 

二乃はそう言うとドアを勢いよく閉めようとする。

ゆっくりとドアが閉ざされて行く。

足を入れるしかない。しかし普段運動していない俺にそんな瞬発力があるはずもなく……

伸ばした足はドアに引っかかることなく重い音を立ててドアは閉まった。

 

 

 

……終わった。

 

 

 

広いマンションの廊下のど真ん中で崩れ落ちる俺。

せっかくの割のいいバイトだったのに何やってんだ!?

家で俺の帰りを健気に待っているであろうらいはの姿を思い浮かべて絶望しながらトボトボとマンションを去る。

次のバイトは何にしよう。ケーキの売り子とか良いかもな。

そんな事を考えながら現実逃避をしていた俺を神が不憫に思ったのか救いの手が差し伸べられた。

「う、上杉くんまだ居る?」

「お、お前は……」

「さっ、早く入って。今はみんな部屋にいるからバレないよ。」

 

女神がそこにいた。

 

「一花、抱きしめていいか?」

「は、はあっ!?」

 

 

バタン

 

 

見えかけた希望がまた失われた。

あれ……。またミスった?

 

「び、びっくりした……。」

 

 

この後また一花に開けてもらって無事に入れました。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「さー他のみなさんをまずは集めに行きましょー。」

 

色々あってなんとか家の中に入れたのだが、入れてくれた一花は何故か部屋に逃げ込んでしまった。

そしてニ乃、三玖、五月も当然俺から逃げて部屋にすっこんでいる。

結局初回授業にちゃんと参加してくれたのは0点少女こと、四葉だけである。

 

「5人を集めるところから始めるとはな……。」

 

先のことが思いやられ頭痛を感じる。

二階の姉妹の部屋の前に到着する。

奥から五月、四葉、三玖、二乃、一花の順番らしい。

仕方がない。多少骨は折れるが1人1人説得していくしか方法は無いみたいだ。

隣でニコニコ笑っている四葉は屈託のない笑顔で俺を勇気付ける。

 

「大丈夫ですって、五月はすごく真面目な子です。余程のことがない限り……『嫌です』」

 

汚物を見るような目で拒否された。

0勝1敗

 

「三玖は私たちの中で一番頭がいいんです。上杉さんと気があう……『嫌』」

 

正座で説教された。

0勝2敗

 

「ニ乃は人付き合いがとっても上手なんです。たくさんお友達がいるので上杉さんもすぐ仲良く……『……』」

 

そもそも部屋にすらいなかった。

不戦敗

 

 

「だ、大丈夫です。まだ一花が残ってます。」

 

わかってはいたことだが誰も俺に教わろうとしてくれない。

これは最初から詰んでるのではないか……。

 

「一花か……あいつならお願いすれば来てくれるかもしれない。」

 

四葉以外の4姉妹で唯一まだ嫌われてない気がする。

他の3人はひとまず後回しにしてまずは2人だけでも勉強を教えよう。

 

一花の部屋の前に到着すると部屋の中が何やら騒がしい。

ゴトゴトとまるで泥棒が家捜しをしているような音がしてくる。

 

「……入ってもいいんだよな?」

「た、多分大丈夫です。」

 

俺は若干緊張しながらドアノブに手をかける。

段々と部屋の全貌が明らかになっていく。

散乱した洋服。うず高く積まれた紙袋、その中心には黒い下着が……

 

「まだ駄目!!」

 

半分ほど開いたドアがまた閉じられてガチャリと鍵がかけられた。

 

「あそこに人が住んでるのか?」

「一花は外だと完璧なんですけど、家の中だとちょっと……」

「もー、余計なこと言わなくていいから。」

 

ドアから首だけを出して顔を膨らまして四葉に抗議している。

やっぱりその顔は五月にそっくりだ。

 

「掃除は終わったのか?じゃあ勉強を始めよう。」

「んーと、あと10時間くらいかかりそうだから先に2人でやっててくれる?」

「おい。10時間後にはもう俺は帰っている。片付けなんていつでもできるだろう。」

 

強引にドアをこじ開けようとする。

 

「あっ!?ちょっと待って。」

いくら俺が非力だと言っても男と女だ。

ドアは呆気なくこじ開けられる。一花の手を引っ張ってリビングへと連れていこうとして止まる。

 

「お、お前……。」

「あはは。ラフな格好だからちょっと照れる。」

 

一花が身につけているのは細い肩紐で吊るし肩を露出する形状の袖なしの女性用の上半身用下着、通称キャミソールである。

慌てて目を逸らす。

こいつ男がいるのにこんな格好でいるなんて、倫理観はどこに捨ててきたんだ!?

 

「そ、その格好じゃ勉強できないから早く服を着てこい。」

「もー勉強勉強って。せっかく同級生がこんな格好でいるのにそれでいいの?」

 

口調こそ余裕ぶってるが顔は真っ赤だし、声も震えている。

緊張してるのがバレバレだ。

家庭教師である俺が生徒に手を出すわけがなかろう。

とはいうもののこの状態は流石に目に毒だ。

一花の体の線がくっきりと見えて……いかんいかん。

色恋沙汰など勉強の邪魔でしかない。

 

自分のブレザーを脱いで一花の頭から雑に被せた。

よしっ、一花の体は隠せた。

 

「風邪引くから早く服を着替えてこい。先に始めるぞ四葉。」

 

ここで狼狽えてしまっては一花のペースにはまってしまう。

できるだけ平静を装ってリビングに向かった。

 

「あ、はーい。待って下さーい。」

 

四葉の大きな声のせいで一花の最後の呟きは上手く聞き取ることができなかった。

 

「もう……変なとこ優しいんだから。」




★原作との違い

・一花が最初から落ちているため二乃の殺意高め
・四葉だけじゃなく一花も勉強に前向き
・順調に一花の好感度が上昇中
・風太郎の思考に可愛いが追加され始める
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。