もしも一花の好感度が最初から高かったら   作:神光の宣告者

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三玖がデレた件について

夕陽の射し込む屋上で俺は三玖の到着を仁王立ちで待っている。

 

朝の一花の様子を見るに何か俺に接触をしてくるのではないかと案じたのだがそれは杞憂に終わった。

驚くほどすんなりと屋上に到着して5分以上経っているのだがまだ三玖は姿を現さない。

まさか、本当にイタズラだったのか?

 

踵を返して戻ろうとした時に屋上にもう1人の少女が姿を現わす。

 

「待った?フータロー。」

 

屋上の扉を勢いよく開けて三玖がやってきた。

急いで走ってきたのか息が少し上がっていて、顔も紅潮している。

そういえば一花も時々こんな顔にになっているなぁと、関係のない事が頭に浮かんでしまう。

 

「い、いや今来たところだ。」

「あのね。どうしても言いたいことがあるの。あ、あ、あ……」

 

三玖は少し上目遣いで目を輝かせてこちらを見る。

三玖はこんな表情もするのか……、普段ミステリアスな奴過ぎてギャップが凄すぎる。

 

「朝倉義景と織田信長!」

「……は?」

 

予想外の単語が飛んできて気の抜けた声を出してしまう。

三玖は問題集を一冊終わらせた後のような達成感に満ちた顔で一人でうなずいている。

俺を置き去りにして納得しないでくれ。

瞬時に俺の脳細胞がフル回転で今の単語の意味を検索する。

 

「……か、金ヶ崎の戦いか?」

「そう。朝、分からないって言ってたから。」

 

朝の分からないは違う意味なんだけどな!

まぁ、金ヶ崎の戦いが分からなかったのは確かにそうなんだけど。

ここから三玖は普段からは想像できないほど早口でまくしたてる。

 

「金ヶ崎の戦いは1570年に起きた、織田信長と朝倉義景との戦闘のひとつで金ヶ崎の退き口または金ヶ崎崩れとも呼ばれてて、戦国史上有名な織田信長の撤退戦!!」

 

こんなに目を輝かせて生き生きと話している。

一体何が三玖をそうさしているのだ!?

 

「それでこの撤退戦が……はっ!?」

 

三玖は我に帰ったのか急に口を閉ざしてしまう。

この早口は好きなものを話す時に現れる代表的な特徴だ。

つまり三玖はいわゆる歴女というやつなのか……。

 

「せ、戦国武将が好きなのか?」

 

三玖は恥ずかしそうに手で顔を覆っている。

 

「う、うん。きっかけは四葉から借りたゲーム。野心溢れる武将たちに惹かれて本もたくさん読んだ。」

 

少しハニカミながらも嬉しそうに話す三玖を見ると確かに戦国武将を好きなのがよくわかる。

しかしその顔が急に曇る。

 

「でもクラスのみんなが好きな人はイケメンな俳優や美人なモデル、それに比べて私は髭のおじさん……そんなの変、だよ。」

 

確かに変な奴!

……と切り捨てるのは簡単……だが

 

「変じゃない!自分が好きになったものを信じろよ。」

「……!!」

どうやら俺はまたとないチャンスを手に入れたようだ。

『武将』は勉強から逃げているこいつと『日本史』を繋ぐ唯一の接点。

このチャンスを逃す手は、ない……!!

 

「な、なんか話し足りないなー。そ、そうだなぁ。次の授業は日本史を中心にしよう。俺は前回の日本史のテスト、学年トップだ。お前の知らない事をたくさん教えてあげられるぞ。」

 

三玖は一瞬言葉に詰まったが胸に手を当てて覚悟を決めたのかその重い口を開いた。

 

「……っ嫌だ。」

「え?」

 

なんでダメ?

今の流れは完璧に授業に参加する流れだっただろ!?

 

「だって金ヶ崎の戦い知らなかったよね。」

「う、そ、それは……。」

 

虹彩の消えた目で見下される。

あ、二乃に似てる……じゃない!!

このままでは開きかけた心の扉がまた閉ざされてしまう。

 

「ま、待ってくれ。なら俺と(いくさ)しろ。」

「え?」

 

確かに今朝の俺だったら三玖には太刀打ちできなかったかもしれない。

しかし今の俺は違う。

授業中も全部利用して図書室にある戦国武将の本を全部網羅した。

今の俺に死角はない。

 

「やだよ。」

「なんだ、唯一の特技で負けるのが怖いのか?」

 

俺の煽りで三玖は顔を膨らます。

あ、五月に……

 

「……いいよ。淡河定範みたいにフータローを返り討ちしてあげる。」

「悪いが、俺は色仕掛けでは落ちないぞ。」

 

腕まくりをして構える。

 

「5問の問題に答えられたら授業を受けてあげる。」

「望むところだ。」

「第1問、金ヶ崎の戦いの退却戦で朽木元綱を説得したのは誰?」

「松永久秀だ。おそらく日本史で始めて爆死した人物だろうな。」

「そうなの!!あの織田信長や豊臣秀吉が稀代の悪党として恐れた……っ第2問。」

 

三玖は目を輝かせて詰め寄ってくる。

距離が近い!?

シャンプーと緑茶のような和の香りが混ざった不思議な香りで不覚にもドキッとしてしまう。

 

「織田信長の妹の市と浅井長政が政略結婚して生まれた浅井三姉妹三女の名前は?」

「江だな。」

「じゃあ第3問、市と結婚した柴田勝家の滅んだ戦いは?」

「賎ヶ岳の戦いだ。」

「第4問、賎ヶ岳の戦いで市と3人の娘は死んだ、丸かバツか?」

「バツだな。市は娘たちを逃した後に自分は城に残って柴田勝家と共に死ぬ道を選んだ。」

 

第4問までは完璧に答えていく。

どの問題も教科書には載っていないマニアックなものばかりだったが今の俺の敵ではない。

 

「どうした、こんなものか?」

 

勝ち誇って思わず顔がにやけてしまいそうになるのを必死に隠す。

 

「さ、最後の問題、浅井三姉妹の茶々、初、江の内豊臣秀吉の子供を身籠もったのは誰?」

「茶々だ。もともと茶々は豊臣秀吉を憎んでいたのに最期は豊臣家のために死んだのは何とも不思議な運命だよな。」

 

知ってるアピールをするためになるべく多くの周辺知識を並べていく。

さぁ、これで全問正解だ。

大人しく授業に出てもらおう。

ゆっくりと一歩ずつ三玖に近づいていく。

 

「俺の勝ちだな。さぁ、大人しく俺の授業を受けてもらおうか!」

「や、やだ。来ないで。」

 

三玖に一歩近づくごとに三玖も一歩ずつ後ずさりしていく。

やがて三玖の背中に落下防止のフェンスがぶつかる。

三玖は目をウルウルと潤ませて必死に俺から距離を取ろうとしているが、もうこれ以上下がることはできない。

 

「大人しく観念しろ。」

「い、いやぁ。」

 

……あれ?

なんか俺すごい犯罪者みたいなことしてないか。

ただ授業を受けさせるだけの筈なんだが。

頭の中でそんな事を考えていると何も無い屋上で蹴つまずいてしまう。

咄嗟にフェンスを掴んで転倒を回避する。

危うく顔から突っ込むところだった。

 

「あ、あの……フータロー。」

「ん?……はっ!?」

 

今の自分の状況を冷静に分析すると俺はフェンスを掴んで体を支えている。

そしてフェンスと俺の間には三玖がいる。

つまり……

 

 

壁ドンというやつか!!

 

 

あの少女漫画とかいう人々を恋愛するように洗脳する悪魔の書でよく描かれている口説き方と記憶している。

 

「と、取り敢えず……離れて。」

「わ、悪い。」

 

一端三玖と離れる。

正直恋愛などさほども興味は無いのだが上目遣いで泣きそうになっている三玖は……いや何でもない。

全く最近の俺はどうかしている。

 

「急にされたから驚いた……。でも嫌いじゃない……かも。」

「ん、どうした?」

「な、何でもない。」

「そうか?今何か言っただろ。」

 

手を残像が見えるほどブンブンと高速で動かしている。

こんな機敏な動きもできるのか。

 

「そんな事ないから!!それよりも早く日本史教えてよ。」

「ハハハっ、ついに観念したか。」

 

よしっ、これで四葉と一花に続いて三玖も攻略した!

残る問題児はあと2人……なんだか急に終わりが見えて来た気分だ。

俺は上機嫌で足取り軽く屋上から帰ろうとする。

 

「フータロー!」

 

突然強い風が吹いた。

夕陽に照らされて長い髪をなびかせた三玖は普段の様子からは想像も出来ないほどの笑顔で俺に言い放った。

 

「私がフータローのお江になってあげようか?」

 

何も言えなかった。

三玖の言葉が聞き取れなかった訳ではない、意味はよく分からないがそれよりも絵画のような三玖の姿にただただ魅入ってしまったのだ。

 

「……ど、どういう意味だ?」

「分からないならいいよ。……今は。」

 

そう言うと三玖は俺の追い抜いて先に屋上から去ってしまった。




★原作との違い

・風太郎の日本史知識がさらに豊富に
・三玖との戦国クイズ対決勃発
・ラブコメ主人公のようなベタな壁ドンで三玖の好感度がベタに急上昇
・夕陽の三玖に見惚れて風太郎の三玖の好感度20%up

展開の都合上三玖が簡単にデレてしまってますけど許してください。
ここまではある程度原作に沿った展開になってたけど、夏祭り編からは物語が大きく変化します。
今後の展開のヒントを少し出すと三玖の告白で使ったお江という人物は非常に嫉妬深かったという説があったりなかったり……
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