もしも一花の好感度が最初から高かったら   作:神光の宣告者

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姉の様子がおかしい件について

「三玖、今日遅かったよね?どうしたの。」

「何でもないよ、一花。」

「ふーん。そーなんだ。」

 

 

中野家のリビングには私と一花と二乃の3人がいる。

四葉はバスケ部の練習に付き合っているみたいだ。

運動などとは無縁の生活を送ってきた自分にとっては四葉の運動神経の良さは正直ちょっと羨ましい。

一方の五月はいつも大体部屋にこもっている。今日も勉強でもしているのだろうか。

五月は私たち五つ子の中で一番真面目で勉強にもしっかり取り組んでいる。

本来はフータローと一番相性がいいように思うけど何故かとても仲が悪い。

まぁ……私にとっては都合がいいんだけど。

 

「ねぇ、一花?あんた告白とかよくされてるわよね。」

 

「っ!?」

 

二乃の言葉は私ではなく一花に向けられたものだったが激しく動揺してしまう。

今の私は告白という言葉にとても敏感になってしまっているみたいだ……。

 

「だ、大丈夫、三玖?」

「う、うん大丈夫。」

 

照れ隠しで頬をかきながら誤魔化す。

2人とも不思議そうな顔をしているけどどうにか誤魔化せたみたいだ。

そっと胸をなで下ろす。

「何回かされた事はあるけどどうしたの?」

「私は告白なんかした事ないからどんなものなのかなって思って。」

「どんなって……。私もしたことなんて無いからよく分からないけど。」

 

一花は少しハニカミながら微妙な笑い声をあげる。

意外だ。

一花は昔からモテてていたからこういう色恋沙汰には慣れていると思っていた。

一花がこの様子なら案外私にもチャンスはあるのかもしれない……。

希望のような物が見えた気がして小さくガッツポーズをする。

 

「じゃあさ、もし一花が告白するならどんな感じでするの?」

「わ、私が!?」

 

一花は明らかに動揺している。

一花の頭の中に浮かんでるのはやっぱり……。

そう思った途端に心の中がチクリと痛む。

今の痛みはなんだろう?

私はフルフルと頭を振って思考を無理やり止めた。

 

「そうだなー、私だったらまずは周りの人を味方につけるかな。」

「外堀を埋める。大阪冬の陣だね!」

「……なにそれ?」

 

うーん。一花には上手く伝わらなかったみたいだ。

 

「成る程ね。断れない状況を作るか……。あんた中々怖い事考えるじゃない。」

「そうかな?好きな人を手に入れる為なんだからそれくらいしないと安心できないよ。」

 

少し憂いを帯びたその顔はどこか大人びて見える。

想像よりも狡猾な一花の手口を聞いて震え上がった。

やっぱり私とは明らかにレベルが違うんだ。

そう思うとさっき見えていた希望がまた見えなくなってしまった気がする。

私は小さくため息をつく。

 

「それじゃあ三玖ならどんな告白がしたいの?」

 

急に飛んできた質問で思わず飛び上がってしまう。

こんな反応ばかりをしていたらいつか2人にバレちゃう……。

 

「わ、わたしは……。」

 

どんな告白がしたいかというかもう既にしちゃってるんだけど……。

屋上での事を思い出して顔が熱くなってしまう。

 

「わかった!!」

 

私の言葉を遮るようにマンション中に聞こえるんじゃないかというくらい大きな声で二乃が叫ぶ。

 

ま、まさか告白のことバレた!?

 

二乃はニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべてわたしの顔を見てくる。

 

絶対にバレてる!!

 

「あんた……思いつかないんでしょ。」

 

あれ?

 

「あんた女子力皆無だし、こんなダサい服着てるし、男子と恋した事なんて無いんでしょ。全くやっぱりアンタはダメダメね。」

 

二乃の得意げな顔はかなりムカつくけど、バレてないみたいだから一安心だ。

 

「そ、そうかも……。」

「ふふーん。」

「ところでさ、二乃は私達にそんなこと聞いて誰かに告白でもするの?」

 

ここまで攻めてばかりだった二乃が今度は攻められる番だ。

一花がニヤニヤとしながら二乃に詰め寄る。

明らかに面白がっている時の顔だ。

それなのに二乃は少しも照れた様子もなく何かを決意したようにはっきりと言った。

 

「まあね。ちょっと堕としたい人がいるのよ。」

「「落としたい人!?」」

 

二乃に好きな人がいるなんて初耳だ。

少し嫌な予感が頭をよぎったけどまぁ……それはないかな。

フータローと二乃は仲が悪いしそれに二乃は面食いだし。

 

「それでそれでいつ告白するの?」

 

一花は目を輝かせて聞いている。

妹の恋バナを聞くのがとても楽しいらしい。

 

「そうね、夏祭りの日に決行しようと思ってるわ。」

「そうなんだ〜。じゃあ今年は5人で花火は見れないね。」

 

残念そうにつぶやく一花の口元が僅かに笑っていたように見えたのは気のせいだろうか。

 

「それは心配しなくていいわよ。花火までにケリをつけてくるから。」

「「おー!」」

 

自信満々で言う二乃がカッコよく、そして少し羨ましく思ってしまう。

 

「じゃあ花火を見ながらみんなで慰めてあげないとね。」「何で私が振られる前提なのよ。」

一花と二乃はいつものように軽口を叩き合って楽しそうに笑っている。

やっぱり、さっきの一花の笑いは気のせいだ。

私はそう思い込んだ。

 

「それじゃ、私はもう寝るわ。おやすみ〜。」

 

さっきまでうるさいくらいに話していたかと思ったら今度は勝手に部屋に帰っていく。

ホントに二乃は台風みたい人だ。

二乃はフワフワとあくびをしながらゆっくりと自分の部屋へと消えて行った。

 

 

「「……」」

 

 

二乃が居なくなった途端にさっきまでの騒がしい雰囲気とは一変して気まずい沈黙が流れる。何となく一花と顔を合わせづらい。

 

「ねぇ。」

 

この沈黙を破ったのは一花からだった。

私は無意識に身構えてしまう。

 

「な、なに?」

「今日の放課後さ、屋上にいたりしないよね?」

 

その顔はいつもの見慣れた優しい一花とはかけ離れていた。

目を細めて隅から隅まで観察されているような気になる。

『嘘なんてついても簡単に見抜くわよ』と言わんばかりの気迫が感じられる。

 

「ど、どうして?」

「ちょっと気になっただけだよ〜。」

 

不自然に明るい声が逆に不気味に聞こえる。

背筋が凍るような感覚に思わず身震いする。

 

「三玖はさ、本当に好きな人いないの?」

「えっ?」

 

『いない』と嘘をつけば簡単だった。

でもその言葉は私の口から発せなかった。

どうしてもその言葉が言えなかった。

 

「……」

「このまま隠したままでいいの?隠したままだったら他の人に取られちゃうよ。」

 

 

一花の言葉で頭の中に嫌な想像が浮かぶ。

 

浴衣姿の一花とフータローが微笑み合って一言二言言葉を交わしている。

そして一花は照れたように自分の髪を撫でている。

それから二人は手を繋いで……屋上に行って花火を……見て……そ、して……

 

 

「絶対にイヤ!!」

 

 

自分でも驚くほど大きな声で叫んでしまっていた。

これじゃあ二乃の事を言えない。

 

 

「三玖は誰が好きなの?」

「わ、私は……、わたしは、」

 

頭が真っ白になった私は何も言うことができなかった。

気付くと目から涙が流れていた。

 

「うーん、泣かせるつもりは無かったんだけど、その程度の覚悟ってことかな?」

 

一花の言葉はただ恋をしただけのわたしの心をとても深くえぐった。

嗚咽が漏れてしまう。

どうしてこんなに涙が出るのだろう。

 

「私、わたしは……。」

 

今の私はその先の言葉を紡げなかった。

その先を言えるだけの自信や覚悟がなかった。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

部活から帰ってきた四葉が動揺している。

それも無理はない。泣きじゃくっている私、その私を見下すように立っている一花、どこからどう見ても普通ではない。

 

「お帰り四葉。何でもないよ、いつもの姉妹喧嘩だよ。」

 

恐ろしいほどに明るい声で一花は四葉に話しかける。

 

「そんな様子には見えないんですけど……。」

「本当に大丈夫だって。ほら早く着替えてきな、疲れたでしょ。」

「でも……」

「そこに夜ご飯あるから、二乃が作ったやつ。」

 

四葉の言葉を遮るように一花は喋り続ける。

四葉は一花に押されて不思議そうな顔をしながら自分の部屋に戻って行った。

 

「今日の勉強の復習がしたいから今日はもう部屋に行くね。おやすみ、三玖。」

 

一花はそう言うと自分の部屋へと帰って行ってしまった。




★原作との違い

・風太郎を巡って一花と三玖の関係が悪化
・二乃が誰かを『堕とす』予定
・三玖が一花に遠慮して恋に奥手になる

次回、多くの爆弾を抱えてついに夏祭り編に突入……!
四葉と五月の出番は……もう少し先です。
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