もしも一花の好感度が最初から高かったら   作:神光の宣告者

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『フータローのバカ』

「金魚すくいだぁ!」

「私がらいはちゃんのために取ってあげましょー」

「行こ行こっ!」

「ちょっと待って下さいっ。四葉、らいはちゃん。」

 

ゲーセンで出会ってまだ1時間もたっていないのにもう四葉はらいはと仲良くなっている。

四葉のコミュ力の高さは前々から知ってはいたが流石に高すぎではないかと恐怖さえ感じる。

五月はらいはと四葉を……主に四葉を心配して後をついて回っている。

まるでお母さんのようだ。

五月が母というのは妙にしっくり来て納得してしまう。

五月が母なら俺と三玖は祖母祖父といったところだろうか。

 

「それで、なんでお前たちはデパートに来てたんだ?」

「3人とも早めに準備ができたから買い物にでも行こうって話になっただけ。」

「そうか。」

 

三玖との会話はいつも途切れ途切れになりやすい。

お互いによく話す方ではないから仕方がないのだが不思議と気まずくはない。

 

「ところで、二乃はどうしたんだ?」

「二乃は後から合流する。」

 

姉妹の中で一番家族を大事に思っている二乃がこの場にいないのが少し不思議に感じた。

いくら家庭教師といっても家の事情にまで首を突っ込むべきではない。

これ以上は追求せずに別の話題を探す。

 

「そう言えば今日は花火も上がるらしいが日本で最初に花火を見たのは誰か知ってるか?」

「……」

 

おかしいな……。

普段の三玖なら声を弾ませながらドヤ顔で徳川家康の一生について語るはずだが今日はそんな様子は一切ない。

今日は会ってからずっと元気がない。普段もあまり元気がある方ではないのは確かだが。

 

「お腹でも空いてるのか?」

「別に空いてない。」

 

いつも通りの抑揚のない声だ。

五月じゃあるまいしそれはないか。

 

「じゃあ、体調が良くないのか?」

「いつも通り。」

 

端的にピシャリと言う。

これも違うみたいだ。

 

「姉妹喧嘩でもしたのか?」

「べ、別にしてない……よ。」

 

doubt

どうやら姉妹の誰かと喧嘩しているようだ。

本当に三玖は分かりやすい。

おそらくまた二乃とでも喧嘩したのだろう。

こいつら姉妹は見た目がそっくりのくせに中身は微妙に違っていて喧嘩ばかりだ。

もしかしたらその原因は俺なのかもしれないが今は違うということにしておこう。

 

三玖に目を移すと三玖は顔を赤らめてモジモジとしながら時々こちらの様子を伺ってくる。

しかし目が合うと慌てて逸らされてしまう。

まるでモグラたたきでもやっている気分だ。

 

「何か俺の顔についてるか?」

「いや、その……。」

 

また三玖は口をつぐんで俯いてしまった。

これでは拉致があかない。

 

「別に話したくなければ話さなくていいが、話すと案外楽になることもあるぞ。」

 

三玖は驚いたように目を見開いて顔を上げる。

あまり他人の家庭の事情に首を突っ込むべきではないのはわかっているがこうもあからさまに聞いて欲しいアピールをされると無視するわけにもいかない。

 

「……意外、フータローに話す相手なんているんだ。」

「残念だったな。生憎俺には俺のことを心配してくれてる世界一可愛い妹がいるのだ!」

「相変わらずだね。」

 

三玖は目を細めてクスクスと楽しそうに笑う。

非常に失礼で腹立たしい誤解だが三玖が少し元気になったので良しとしよう。

ひとしきり笑った三玖はいつもの無表情に戻ってたどたどしく言葉を繋げた。

 

「もしもね、フータローは一つしかない妹の欲しいものと同じものがどうしても欲しくなったらどうする?」

「迷わず妹に譲るな。」

 

当たり前だ。

妹が喜ぶ顔が見れるならどんなものでも喜んで渡そう。

 

「どうしても欲しいものなんだよ。」

「その時にならないと分からないが、多分それでも俺は妹に譲ると思うな。」

「そっか……。」

 

そう言ってまた三玖は暗い顔になって俯いてしまう。

最近、三玖に勉強を教えていくうちに分かった事なのだが三玖はその雰囲気とは真逆でとても繊細な人間だ。

こういうタイプには頭ごなしにこうしなさいと一つの解き方を押し付けるのは得策ではない。

 

「でもこれはあくまで俺の考え方だ。三玖が納得できないなら姉妹と戦うのも悪くは無いんじゃないか。欲しいものは実力で手に入れる。お前の好きな戦国武将たちはみんなそうだろ?」

「そっか……。」

 

そう呟くと三玖はまた黙り込んでしまう。

また話し出すまで辛抱強く待ち続ける。

『鳴かぬなら鳴くまで待とう』の精神だ。

 

どれほどの時間がたっただろうか?

永遠にも思える沈黙を乗り越えて三玖は何を思ったのか急に駆け出すと俺の前に回り込んで手を広げてドヤ顔を向けてくる。

 

「ねぇ、フータロー……?」

 

どういう事だろう?

これも何かの戦国時代の逸話にちなんだ行為なのだろうか。

俺の日本史知識を総動員するが該当するものは見当たらない。

 

「ど、どういう事だ?」

「……フータローのバカ。」

「なっ!?」

 

急に罵倒された。

勉強を教えるようになって三玖のことを少しは理解したつもりだったがまだまだ分からないことだらけだ。

 

俺が頭の上にはてなマークを浮かべていると、どこから現れたのかひょっこりと四葉が現れる。

 

「上杉さん!女の子が普段と違う格好をしていたらちゃんと褒めてあげないといけないんですよ。」

「なにっ!?……なぜ褒めなければいけない?」

「ブー上杉さんのオシャレ下級者。」

 

四葉に言われて五月、四葉、三玖を改めて見ると3人は確かに浴衣を着ていた。

3人とも違う色の浴衣を着ているが3人ともまぁ、似合わなくはないと思う。

 

「オシャレっていうのは我慢が付き物なんですっ!だから上杉さんは頑張った私達を褒めなければいけないんですっ!」

「お、おう……。」

 

あまりの四葉の勢いに押されて思わず後ずさってしまう。

そういうものなのか……。

 

「ゴメンね、みんなお待たせー。」

 

俺たちの元に駆けよってくるもう1人の姉妹。

その声を聞くと三玖は何故か『ビクッ』として四葉の後ろに隠れてしまった。

三玖が喧嘩してるのは二乃じゃなくて一花なのか?

曲がりなりにも長女としてしっかりしている一花が姉妹と喧嘩している姿はあまり想像できない。

 

一花は昼の私服とはまた違う鮮やかな青の浴衣に身を包んでいた。

一花は四葉たちと合流した後、一旦家に帰り浴衣に着替えてきたらしい。

頭の中で四葉のオシャレ講義の内容が思い出される。

あっ!これ授業でやったところだ!

 

「一花、その浴衣似合ってると思うぞ。」

「えっ!?あ、ありがとう。そんな直球に褒められると思ってなかったからお姉さん照れちゃうな……。」

 

一花は指を合わせてモジモジとしている。

なんだその動きは、まるで芋虫みたいだぞ。

そんな事を思っていると右足に激痛が走る。

驚いて見ると、下駄の尖った部分で俺の足を踏んで更にグリグリと食い込ませてくる。

 

「い、痛いっ!!やめろ、やめてくれ三玖。」

 

三玖は顔を真っ赤にして涙目で睨んでくる。

どこからどう見ても怒っている。

 

「フータローのバカっ!」

 

三玖はそう言うと聞いたこともないほど大きな声で怒鳴って、ズンズンと一人で祭りの雑踏の中を進んでいってしまった。

 

四葉がやれやれといった顔で俺を見てくる。

なんか馬鹿にされている気がして腹が立つな。

 

「上杉さんはナンデカリシーの人なんですね!」

「それを言うならノンデリカシーだ。」

「そんな事はどうでもいいので早く行ってください。」

「……らいはを頼む。」

 

四葉に頼むのは若干心配な気もするが五月たちといるし大丈夫だろう。……そう信じたい。

 

「まったく手のかかる生徒たちだ。」

 

三玖を追って人でごった返す祭りの雑踏の中へと向かって行った。

俺が三玖の後を追った数十秒後、一花も祭りの雑踏の中へと消えていった。

 

「四葉、五月、らいはちゃんお願い。私も三玖の様子見てくるね。」




★原作との違い
・いろいろ違う

原作崩壊がかなり進んできたのでこの形式の後書きは今回で終了します。
三玖の受難が続いていますけど作者は決して三玖が嫌いなわけではありません!!
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