2019年のある日、私はなぜかダイヤさんに恩田へと呼び出された。これは嫌な予感がする。
恩田に着くと、来ていたのはダイヤさんと由美ちゃんだけだった。
ダイヤ「今回あなたたちをここに呼び出したのは訳があります。さて、千歌さん、答えてください」
私「もしかして、ここでライブを開いてほしいとか」
ダイヤ「ブッブーですわ!!!あなたはそれでも鉄道を語れるんですの?片腹痛い!片腹痛いですわ!
それでは由美ちゃん、答えてください!」
由美「実は…昨日をもって東急8500系の希少編成8642Fが廃車回送になってしまったんです!!」
私「8642Fって、どこが珍しいの?」
ダイヤ「それも知らないなんて、まだまだですわね」
私「教えてくれないの!?」
由美「いやいや、説明しましょう」
そして説明が始まる。
〜※〜
東急8500系は最終的に10連×38本と5連×4本が作られました。
東急8500系は基本的には界磁チョッパ制御です。
しかしながら、最後に作られた10連にはVVVFインバータ制御の試作車・量産車が2両ずつ組み込まれていました。
これが8642Fです。
このため、2020系への置き換えが始まった昨今、この編成は2種類の制御装置が編成内に混在していたため、早期に廃車対象となってしまい、昨日をもって恩田の工場へと廃車回送となってしまったのです。登場から数えると32年。この編成は寂しく運用を終えました…。
〜※〜
由美ちゃんは泣いていた。私ももらい泣きした。落ち着いてから、
私「とりあえずその編成見たいよ!」
ダイヤ「そこにいますわよ」
見上げると、そこには銀色に輝く車体が広がっていた。
まだまだ現役で走れそうな風情が漂うが、これが廃車解体になってしまうと聞くだけで悲しくて涙が止まらない。
ダイヤ「ところで由美ちゃん、私たちと8642Fだったらどちらを大切にされるんですの?もちろん私たちですわよね?」
ダイヤさんはヤンデレになっていた。由美ちゃんは慌てふためくこともなく言った。
由美「そりゃ君たちに決まってるじゃないか」
ダイヤ「だからといって、お別れの挨拶をしないのはどうかと…」
由美「そうだな…」
そして3人で山口百恵の「さよならの向こう側」を歌う。
ああ、なんて切ないんだろう。
そういえば鴨長明も言っていた。
ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ泡沫はかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と住処とまたかくのごとし。
と(*1)。
無常観を感じた瞬間だった。
そして最後に私たちは涙して言った。
私「8642F、32年間、お疲れ様でした!!」
3人「お疲れ様でした!!ありがとう!!」
8642F。ついに廃車が決定して私も悲しく思っています。よって書くことにしました。
緊急特番も次回は未定です。
【追記 9/29】
8/21までに8642Fは全車解体のために搬出されました。