〜2階建て車両、ハイデッカー車両。僕はそれらの車両に昔から憧れていた。
でも僕は歩けないから階段や段差をあがることができない。そのせいで2階建て車両やハイデッカー車両に対してより一層憧れを抱くようになっていた…。
あの3つの列車に乗るまでは…〜
これは足が不自由な僕を満足させた3つの列車を紹介するだけの話である。
まずは長野県を走るあの車両から。
【1.長野電鉄1000系「ゆけむり」】
この車両は元を辿ると小田急ロマンスカー10000形「HiSE」だった。展望席以外はハイデッカーというのが特徴だったが、そのハイデッカーがバリアフリー化の仇となって、2005年に長野電鉄に8両が譲渡された以外は2012年までに廃車となった。
長野電鉄に譲渡された車両は、1000系と形式変更され、「ゆけむり」と名乗り、バリアフリーに対応できるように改造をした。その方法に僕は息を呑んだのだ。
この列車に乗ったのはダイヤ先輩の友人の由美および俺の幼馴染の花丸と一緒に長野に行ったときだ。
この旅は名古屋から始まった。
花丸「ねえ碧、長野に行こうよ」
僕「なんで?」
由美「マルちゃんが乗りたい電車があるって」
僕「じゃあ行くぞ!」
名古屋から特急しなので約3時間、長野到着。
善光寺口から出てすぐのところに駅の入口がある。
エレベーターで降りて、改札を抜け、ホームに入ると、2番線に4両編成の特急列車が止まっていた。
この列車が「ゆけむり」である。
花丸「はぁ〜!未来ずら!未来ずらよ!由美ちゃん!」
由美「ちょっと待てよ。こいつ34年ものだぞ?」
そう。この車両は1989年製。現在は2023年なので、小田急時代から数えると34年になる。
ドア幅は700mm。改札では一度乗車を断られたが、そのせいだろう。しかし、僕の車椅子の幅は63cmなので無理矢理乗車した。
もちろん、車内のハイデッカー部分には乗ることはできない。では、どこに乗車するのか?その答えが驚きだった。
なんと!先頭部分の展望席がハイデッカーではないのでそこに乗り込むことになったのだ!
僕「これはすごいよ!!」
由美「だろ?」
乗り込むと、まもなく発車した。
〜※〜
善光寺下までは地下区間で、展望席からの眺めも良くない。
しかし驚いたのはそれからだった。
善光寺下から地上区間に出る。
朝陽から単線になる。
その次に注目したいのは、須坂駅。かつてはここから屋代線が伸びていたらしいが、2012年に廃止になってしまった。
その跡が今でも残っている。
僕「あれが…旧屋代線か…」
花丸「まるで平泉の『夏草や 兵どもが 夢の跡』みたいずら…」
その次に注目したいのは信州中野駅。ここからもかつては木島線が伸びていたが、こちらは2002年に廃止になった。
すでに旧木島線は跡形もない。
信州中野駅を出ると連続勾配を登り続ける。まるで僕が車椅子で坂を登るように。
その頃。
由美「そうだ。せんべい食べないか?」
僕「ありがとう。じゃあかりんとうあげるよ」
由美「サンキュ」
塩せんべいは美味しい。いつか買いに行きたいものだ。
そんなこんなで湯田中着。
この日は、温泉旅館に泊まり、1日を過ごした。温泉は気持ちよかったなぁ〜。
次の列車を見てみよう。
【2.近鉄50000系「しまかぜ」】
この車両は2013年の式年遷宮に向けてその観光客増加対策として製造された車両で、まだ登場から10年位しか経っていない。また、全席がプレミアムシートで、乗るには特別料金が特急料金に加えて必要である。
この車両に乗ったのは梨子さんとその友人である仲喜と一緒に伊勢神宮に行ったときだ。
この旅も名古屋から始まった。
梨子「たまには伊勢神宮に行ってみようかな」
仲喜「おっ!いいね!」
向かった先は…、
近鉄名古屋駅である。
JRの改札口から直接行くことはできるが、僕が階段を登り降りできないということもあって、一旦改札を出なければならなかった。さらに改札を出たあと、近鉄名古屋駅直通のエレベーターを探すのに大変だった。
〜階段を登れないってなんと不便なんだ…〜
近鉄名古屋駅に着いて、ホームに入ると、5番線に青と白のツートンカラーの列車が堂々たる風情を醸し出して止まっていた。
この列車が「しまかぜ」である。
梨子「これは素晴らしい!空の青、海の青にも染まるブルーだわ!!」
僕「高級感溢れる車両だな」
当然だが、6両編成のうち、ハイデッカーの1号車と6号車、2階建て車両の4号車には乗ることができない。また、3号車は四日市-伊勢市間のみの利用客だけ乗車できるということで閉鎖されていた。つまり、僕たちが乗れるのは2号車か5号車ということになる。
僕たちは5号車に乗ることにした。そしてまもなく発車。
3列シートはゆったりしている。しかし、車椅子のまま乗車したため、読書灯はつけられない。
それでも僕は前日に買った本を取り出して読む。
仲喜「おっ、それ『一輪の花に憎しみを』じゃないか。俺それ高校のときに劇でやったんだよね」
僕「そうだったの?」
仲喜「しかし犯人が…」
僕「おっと!それ以上のネタバレはやめてくれ!!」
仲喜「失礼失礼」
四日市を出ると伊勢市に到着する。しまかぜともここでお別れ。
伊勢神宮は外宮、内宮の順に巡る。
仲喜「碧くんは何を願ったんだい?」
僕「俺はこれまで知り合ったみんなが平和に暮らせるように願ったよ。梨子さんは?」
梨子「私はピアノがもっと上手になるように願ったわ。そういう仲喜くんは?」
仲喜「俺は中部高速鉄道の永久たる繁栄を願った。これまでの400年以上の歴史を潰すわけにはいかないからな」
僕「みんな個性的だなぁ」
全員「あはは…」
こうして帰路につく。この日は名古屋駅で解散となり、終わりを迎えた。
最後を見てみよう。
【3.中部高速鉄道G3600系電車(3代)】
この車両はどこから見ても通勤型電車だ。2018年末の登場で、登場からわずか4年程度しか経っていない。当初はG24900系を名乗っていたが、2代目G3600系の全廃に伴い現在の形式となった。
これに乗ったのは沼津から新居町駅にダイヤ先輩と行ったときだ。
ダイヤ「碧くん、新居町駅に行きませんか?」
僕「いいっすねぇ」
こうして中部高速鉄道の沼津駅に移ると、銀色に緑帯の通勤型電車らしき車両が止まっていた。
この車両が3代目G3600系である。
ダイヤ「やっぱり中部高速鉄道はこうでないと」
僕「そうっすねぇ」
中部高速鉄道は白または銀色に緑帯と相場が決まっていると僕も思う。かつてはカラフルな列車が走っていたとか走っていなかったとか。
当然だが、10両編成のうち、2階建て車両の5号車・サロG3650形には乗ることができない。それ以外の9両には乗ることができるが、プレミアムな雰囲気で旅をしたいと言うことで、4号車のサロG3640形を選んだ。
ドア幅は1mと今回の車両の中で一番広い。そのため楽々と乗れた。
車内は登場から4年しか経っていないが、わずかに古さを感じる。
僕「そういえば今回特別料金払ってなかったような…」
ダイヤ「大丈夫ですわ。私が払っておきましたから」
僕「ありがとうございます!」
そうしてまもなく発車する。
〜※〜
列車はいくつかの峠を越えていくつもの駅に停車し、新居町駅に向かう。モータのついた車両が10両中4両と少ないのだからこれも凄い。
日切駅周辺にはデルタ線があった。ここから異世界を越えることができるというのだから驚きだ。
新居町駅到着後は、由美とその弟の聡平に出会った。
僕「由美!聡平も久しぶりだな」
聡平「碧くん久しぶり♪」
由美「ダイヤちゃんも一緒だね」
ダイヤ「久しぶりに中部高速鉄道を見直すことができて良かったですわ。ありがとうございます、由美ちゃん、聡平さん」
2人「いえいえ」
このあと僕たちは新居町駅で夕食をとり、駅の近くのホテルで泊まった。浜名湖の周辺は絶景だ。
さて、いかがだっただろうか?このようにハイデッカーや2階建て車両に乗れなくても僕を満足させてくれる車両が存在するのだってことがこれでわかった。今後も新たな鉄道人生を開拓していこうと思う。
〜※〜
さて、由美に見せよう。
由美「いいんじゃない?」
こうして投稿が決まり、ハーメルンにて公開となった。
今回協力してくれた特別ゲストの仲喜、由美、聡平には感謝の念しかない。
次回は未定ですが、しばらく休載します。次の投稿もいつになるかはわかりません。
【1/9追記】
以降は、とある事情によって特別コラボ企画は9〜50を欠番とし、51から新たに付番します。また、渉矢さんとの特別コラボ企画もとある事情で取りやめとなりました。