ネタ系ローカルアイドル since 2019   作:松浦南北

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前回の続きです。諸事情により投稿が遅れました。


通勤型雷神(シティー・サンダー)・後編

土曜日午前11時半、沼津駅にて。今ここで曜ちゃん、月ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃんと5人でバスを降りたところ。

 

えっ?なんでこんな時間にここにいるのかって?それは…。

 

〜※〜

 

土曜日の朝に、通勤型雷神(シティー・サンダー)を見に行くのにまず私は由美ちゃんに電話で聞いてみた。

 

「もしもし、由美ちゃん?」

 

『千歌ちゃん、どうしたの?』

 

「今日通勤型雷神(シティー・サンダー)を見に行くんだけどどの列車に乗ればいいのか分からなくて」

 

通勤型雷神(シティー・サンダー)か…。それは…12:06沼津市発の名古屋南行快速に乗るべきです!確かその列車の3号車から12号車まで(*1)が通勤型雷神(シティー・サンダー)だったはず。まあせっかくだし六番町おいでよ』

 

「ありがとう!」

 

〜※〜

 

というわけで、10時半待ち合わせで沼津駅に着いたらこんな時間になっていた。

 

「緊張するずら…」

 

「だよねぇ」

 

みんな緊張している。なぜなら真の爆音車両に乗るから。鼓膜が破れることも覚悟の上である。

 

「とりあえず、沼津市駅に出よう」

 

「「「「うん!」」」」

 

中部高速鉄道の沼津駅は東阪本線ではなくて沼津港線の駅。沼津港線は沼津市駅で東阪本線と接続しているため、そこまで出ることにした。

 

「まもなく、2番線に普通列車新居町行が2両で参ります。危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください」

 

ところがやってきた沼津港線の車両は…。

 

「これもまた爆音車両じゃん!!」

 

G4600系2両編成。沼津港線はホームが4両編成までしか対応していないため、2両編成はよく来る(*2)。そしてこのG4600系も爆音車両で、車体設計が通勤型雷神(シティー・サンダー)と全く同じ。違いはVVVF音がごく僅かに静かなこと、モータ出力が320kWと若干小さいこと、そして何よりパンタグラフがついていないことだけだ。パンタグラフがついていない分、エンジンもずっと回しっぱなし。そのため、こちらにも渾名がついている。それは…

 

 

 

通勤型転用雷神(カントリー・サンダー)」。

 

 

 

梨子ちゃんは言う。

 

「もう1本後にしようよ」

 

すると曜ちゃんが言った。

 

「今これ逃すと次は1時間後にしか来ないから乗るよ!」

 

月ちゃんと花丸ちゃんは、

 

「これが…中部高速鉄道の気動車…」

 

「前照灯が白い…車内照明も新しそう…はぁ〜♥未来ずら〜♥」

 

夢中だね…。

 

そんなこんなでとりあえず乗って沼津市駅に向かう。

 

〜※〜

 

12:04、沼津市にて。

 

「まもなく、2番線に快速名古屋南行が12両で参ります。危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください」

 

やってきたのは…あれ?前面が通勤型雷神(シティー・サンダー)とは違う…。

 

梨子ちゃんは言う。

 

「ちょっと千歌ちゃん!通勤型雷神(シティー・サンダー)じゃないじゃない!」

 

今度は曜ちゃんがこう言った。

 

「いや待って!やっぱり…3両目から全部通勤型雷神(シティー・サンダー)だよ!しかも新生Aqoursラッピングの第4編成だよ!!」

 

「えぇ〜っ!?中部高速鉄道は用意が早いなぁ〜!!」

 

そんなこんなでみんなで乗り込む。もちろんグリーン車の6号車や7号車ではなく、3号車に乗る。金欠になるからね。

 

車内で月ちゃんが聞いてきた。

 

「1号車と2号車は結局何だったのあれ?」

 

「あれはね…」

 

皆さんにも説明しましょう。

 

1号車と2号車はハイデッカーバイモード電車なの。この2両の形式名・編成名はD2400系D2445Fで、2両ともグリーン車。1957年製で、全長は22mと中部高速鉄道標準規格型より長い(*3)。また、エンジンはG-DMP48HZ(*4)を1台搭載する(*5)。台車は3軸ボギー・2軸ボギー・3軸ボギー(*6)の合計8軸で、1号車はすべて動力軸、2号車はすべて付随軸。モータは出力400kWのPMSM・G-MT85P形(*7)。そのため、この車両にも渾名がついている。その渾名は…

 

 

 

マンモス気動車」。

 

 

 

そしてこの車両も通勤型雷神(シティー・サンダー)より酷い爆音モンスターで、機関車並の爆音(*8)を出すのだ。

 

「えぇ〜っ!?そうだったの!?」

 

月ちゃんも驚いている。

 

そりゃそうだろう。原設計は機関車だから。

 

〜※〜

 

3時間後、ついに!

 

「まもなく、名古屋南、終点です。お忘れ物のないように願います。この列車は車庫に入ります。引き続きご乗車できませんのでご注意ください。名港線、江南関線ご利用の方は、ホーム中央の階段をご利用ください。まもなく、名古屋南、終点、6番線の到着です。We will soon arrive at Nagoya-Minami, the last stop. Please change here for the Meiko and Konan-Seki Line. Thank you!」

 

VVVF音とエンジン音、そして吊り掛けサウンドが響く。ブレーキ音が身にしみる。ドアが開く。

 

「この列車はこの駅までです。ご乗車になれませんのでご注意ください」

 

すると由美ちゃんからLINEが。

 

〈そのまま乗り続けてね。俺は車庫で待ってるから〉

 

〈りょーかい!〉

 

そして発車ブザーが鳴る。ドアが閉まる。ブレーキが緩解する。発車するとまたVVVF音などが響く。

 

車庫に到着すると、エンジンが止まった。乗っていたのは3号車だったので、前方の乗務員扉から出ることができた。

 

降りた先には…。

 

「やっぱり由美ちゃんだ!」

 

「どうも!みんなもこんにちは!」

 

「「「「こんにちは!」」」」

 

「ところでどうして俺に聞いたの?仲喜くんや勇輝くんにも聞けたじゃないか」

 

「今日暇そうにしてたから」

 

「…バレたか、エヘヘ…」

 

とりあえず、今日は何をやるのかというと…。

 

「とりあえず今日は車庫に停まっている車両を見せてあげたいと思います。スクールアイドルには初公開だから楽しみにしてね!」

 

「ありがとう!」

 

というわけで、最初に紹介するのは…。

 

 

 

中部高速鉄道G5000系電車。

 

 

 

由美ちゃんによると、この形式は1962年に一挙に100両が製造された日本初のオールステンレス車両で、2016年から廃車が始まったが、製造から57年が経過した2019年4月現在でも半数以上が現役であるとのこと。未更新車は既に存在せず、2回も更新工事を受けた車両まで存在するとか。この編成はG5049Fで、登場当初からバイモード車両となっているらしい。2042年3月末に引退することも決定していて、この編成とトップナンバーが最後まで残るという。

 

次に紹介するのは…。

 

 

 

南国急行鉄道3000系電車。

 

 

 

由美ちゃんによると、この形式は1962年から1989年にかけて336両が製造されたオールステンレス車両で2020年3月末の引退が決定しているとのこと。初期製造分は吊り掛け駆動の抵抗制御だったが、1978年製造分から電機子チョッパ制御で、1989年の最終増備車は直角カルダン駆動のVVVFインバータ制御が採用されたとか。この編成は3152Fで、吊り掛け駆動・抵抗制御の4次車。平成の終わる4月30日に運用を離脱するらしい。

 

その次に紹介するのは…。

 

 

 

中部高速鉄道DP101形ディーゼル機関車。

 

 

 

由美ちゃんによると、この形式は2016年に登場した2車体連接かつ日本最大級の電気式ディーゼル機関車で、全長44m・重量432.0t。軸配置はCo' Bo' Co' +Co' Bo' Co' の16軸。エンジンはG-DMX135Z(*9)を2台搭載する。モーターは三相交流誘導電動機のG-MT128形(*10)を16基搭載する。この機関車1機あたりの出力は20MWとなる。とてつもなく巨大かつ出力も大きいのでついた渾名は…

 

 

 

マンモス機関車」。

 

 

 

また、バイモード機関車版のEP101形や、1車体両運転台版のDH61形などバリエーションは様々で、過去には同じ設計で軸配置をCo' Co' Co' +Co' Co' Co' の18軸とした電気式原子力機関車のNR111形の製造計画も立ち上がったが、これは問題があって廃案になったという。そしてこのDP101形も爆音モンスターであるとのこと。

 

次に進みたいところだが、突然後ろから声がかけられた。

 

「千歌さん、曜さん、梨子さん、花丸さん、月さん、なぜここに…?」

 

「もしかして…えぇ〜っ!?ダイヤさん!?」

 

「驚かれるのは心外ですわ!実は私も勇輝さんに『名古屋南の車庫に来ませんか?』と呼び出されてここに来たのですわ。ところで由美さん、勇輝さんはいつ来られるんですの?」

 

「もうすぐ来るはずですので待っててもらっていいでしょうか?」

 

「…わかりましたわ」

 

待つこと2分。勇輝くんはやってきた。

 

「ダイヤさん、遅れて申し訳ありません」

 

「勇輝さん!大遅刻ですわよ!!私は30分もここで待っていましたから!!」

 

ダイヤさんそんな前からここにいたの!?

 

そんな驚きもあったが、説教は10分以上続いた。

 

説教が終わると勇輝くんとダイヤさんは2人で車両探検に行ってしまった。

 

とりあえず最後に紹介してくれる車両を見に行こう。

 

最後に紹介するのは…。

 

 

 

2代目Aqours Express(*11)となった中部高速鉄道G3600系電車。

 

この編成名はG3616Fで、機器類は他の車両と共通なことから、この編成は通勤型雷神(シティー・サンダー)6号という別名までついている。今回はこの車両の後ろに2両編成のG4600系が連結されている。

 

由美ちゃんは言った。

 

「とりあえずこの車両に乗ろう」

 

梨子ちゃんは言う。

 

「どうして?」

 

「これからこの編成は17:14発の快速東京行に充当される。今17:00だもんでもうすぐこの車庫を出るからさ」

 

「今日はもうこの車庫を離れるんだね…」

 

月ちゃんは悲しそう。そこで花丸ちゃんはフォローする。

 

「時間も時間だから仕方ないずらよ」

 

「そうだね」

 

すると由美ちゃんは言った。

 

「名古屋南駅に戻ったら大事な話があるからね」

 

何だろうね…?

 

そんなこんなでエンジンがかかる。汽笛が鳴る。VVVF音などを響かせながら列車は発車する。

 

〜※〜

 

名古屋南駅到着後、由美ちゃんは話し出した。

 

「大事な話とは今から言うこと。世の中には完璧を求める人もいるけど、完璧なものなどはない。むしろ完璧を求めてはいけないんだ。大切なのは自分が満足するかどうかだよ。

以上」

 

このとき私はハッとした。

 

確かに、通勤型雷神(シティー・サンダー)は爆音モンスターであるという大きな問題点を抱えていた。しかし、実際に乗ってみると爆音はあまり感じられず、国鉄のキハ181よりは静かだった(*12)。

 

それに気づいた私はこう言った。

 

「ありがとう!なんか、自分の了見の狭さに気づいたよ」

 

「そう言ってくれると嬉しいです」

 

そして、この後はどうするかをみんなで決めることに。月ちゃんは言った。

 

「いっそのことカラオケ行かない?」

 

満場一致で決定。この後、6人でカラオケを3時間楽しみ、中部高速鉄道本社に一泊させてもらった。

*1
通勤型雷神(シティー・サンダー)は10両固定編成。

*2
東阪本線の快速も一部が2両編成。ただ、普段は2両編成は増結用として使われる。

*3
中部高速鉄道標準規格型は車体長19.5m・全長20m。

*4
メーカー名XDO-10。V型16気筒インタークーラー付直噴ターボS/Cディーゼルエンジン。排気量47984cc・出力5440ps(4000kW)・回転数1600rpm。

*5
過去には別のエンジンを使用していたが、黒煙裁判により交換された。

*6
3軸ボギー台車はG-DT86・G-TR306系で、2軸ボギー台車はG-DT85・G-TR305系。いずれも円錐積層ゴム式ボルスタレス空気バネ台車。かつては別の台車を使用していたが、問題があって交換された。

*7
かつては直流モータを使用していたが、これも老朽化により交換された。

*8
115dB位かな?

*9
メーカー名XDO-06。W型24気筒インタークーラー付直噴ターボS/Cディーゼルエンジン。排気量134976cc・出力8160ps(6000kW)・回転数1600rpm。

*10
端子電圧2200V・出力1250kW・回転数1600rpm。

*11
Aqours Expressは3代存在する。初代は中部高速鉄道G11900系3連3本を改造したもので、2020年3月末の引退が決定している。3代目は私たちが乗ってきた新生Aqours号のこと。

*12
JR東海のキハ25並にうるさかった。




次回は未定です。

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