アルモーディア(ランサー)戦は次回になります。
「そろそろバレる頃だろうな」
「何が?」
「試作マリーちゃんたちの弱点」
具体的に言えば、ゲイ・ボルクのような最大HPそのものを一撃で削り切るような攻撃には耐えられないことである。まあ、真祖共通の弱点といえばそうなんだがな。
再生お化けのぐっちゃんや、心臓に当たる瞬間に空想具現化で私自身の因果に直接介入してある程度は耐えれたり、ぐっちゃん程じゃないが再生能力の高い私ならなんとかなるが、試作マリーちゃんらはそうはいかないのだ。
「は……? 私もベースにしたのになんでそんなもの残ってるのよ?」
「ええ……だってさぁ。弱点のない生き物って可愛くないじゃん?」
「……馬鹿なの? 馬鹿だったわ……」
完全無欠、完璧最強、金剛不壊――個人的には生物に一番いらない要素だと私は思う。
マジな話、そんなものが沢山いたら、生態系が吹き飛ぶ。こう見えても私は最高ランクのガイアの抑止力である。抑止力がガイアの生物を滅ぼしては元も子もないから、今の今まで私自身が自分から真祖に手をつけることはなく、ガイアからもある程度切り離されたと言える、この特異点の中だけでやっているんだ。
「……………………ああ、そうね。お前もガイアの抑止力だったわ」
なんだその長い間は……? アルモさんは献身的で、勤続年数真祖ナンバーワンの抑止力さんなんだぞ? ぷんぷん!
「で? それの何が問題なのよ?」
「おっぱいタイツ師匠が本気になって蹴りボルグを使い始めたら無双ゲーが始まる」
広範囲にゲイ・ボルクをバラまかれて対処されたら、試作マリーちゃんではどうすることも出来ない。あの魔槍はそれぐらいイカれた代物である。寧ろ師匠は蹴りボルグの方が得意なので、恐らくは師匠ランサーでも使えるしな。
低確率即死とか付いていて、水着の方だけが使ってくるゲームとは違うのだ、ゲームとは。
「まあ、立香や
「それで何が言いたいのよ?」
「ぐっちゃん、私の前座に立香たちと戦って――」
「イ・ヤ・よ!」
話し切る前に即答された。まあ、ここまでは想定済みなので、2000年以上暖めていた秘策をここで使うとしよう。
「はーん、そうかそうか。ところでコレなーんだ?」
「――――!?」
私が懐から取り出したソレを見たぐっちゃんの目が変わり、顔を真っ赤に染めながらわなわなと震え始める。
「ずっと昔にどういうわけか手に入れてね。折角だからカルデアに戻ったら100人余りの全人類の前で朗読しようかな? きっと歴史的に超貴重な資料に他ならないからな」
「な、な、なな、なんでお前がそれを持って――」
「どれどれ、まずは私が中身をぺらりと――」
「止めろぉぉぉおぉぉ!?」
「みーちゃったみーちゃった! あ~ららこらら! じ~ん類史に刻んじゃおう!」
どうやらぐっちゃんは非常に好意的に参加してくれるらしい。よかったよかった。
ちなみに別に返すとは一言も言っていないし、内容は一字一句覚えているし、コレだけだとも言っていないので、ぐっちゃんを揺する材料はいっぱい持っている悪戯っ子なアルモちゃんなのであった。
◆◇◆◇◆◇
オルガマリーさんを伴って再び千年城に入ると、相変わらず中には沢山の試作マリーちゃんたちが定期的に巡回していた。
「なんで私があんなに沢山いてメイド服を着てるのよ……」
冷静に戻ったオルガマリーさんは、試作マリーちゃんたちを眺めて、今更ながらそんなことを呟く。
アルモさんに聞いてください。
それよりもここからどうするかが重要だ。
幸いにも試作マリーちゃんたちは視覚と聴覚はいいみたいなんだけど、行動がとても機械的だから、モノを投げて音を立てて注意を逸らしたりすれば、簡単に欺けるから侵入は簡単だった。
でも千年城の中央部に向かおうとするほど試作マリーちゃんが増えるから、それだけだと難しくなってきた。
何故か人が一人ぐらい入れそうな大きさのダンボールがその辺りにいっぱい置いてあるのが不思議だけれど、何に使うんだろうコレ?
「ふむ……そろそろ少し本気になるか」
するとスカサハさんが小さく声を上げる。何かと思って声を掛けると、ゲイ・ボルクの石突きを爪先に引っ掛け、"お前たちは先に行け"と呟く。
そして、スカサハさんはゲイ・ボルクを蹴り上げながら跳び上がると、試作マリーちゃん数体に目掛けて、空中でオーバーヘッドキックをするようにゲイ・ボルクを投擲した。
「
次の瞬間、無数の槍が試作マリーちゃんらに降り注ぎ、全身を襲った。そして、試作マリーちゃんらはバタバタと倒れていき、塵のように消える。
スゴい……あんなことも出来るんだ。
しかし、それと同時にこの周囲にいる試作マリーちゃんら全てに気づかれたようで、遠くから多数の靴が鳴る音が聞こえ、メイド服が目に入った。
「なんだ、コッチでも殺れるのか。こんなことなら隠れることもなかったな。さあ、行け! 私もすぐに行く!」
「うん、わかった!」
この場はスカサハさんに任せ、私たちは千年城の中央部へと急いだ。
◆◇◆◇◆◇
中央部へと続く道を走り抜けると、位置的に正面大扉の裏側に到達する。そこは左右に並んだ石柱と、非常に高い天井に、横幅の広い玉座へと続く一本道が特徴的で、千年城の広大さがよく分かる造りだった。
これまでの場所とは明らかに毛色が違い、アルモさんが近いと思わせる。また、一本道の一番奥の場所には、扉の代わりに、とてつもなく濃い
「随分と遅い到着だな」
すると手奥の石柱の影から一人の女性が姿を現す。それは冬木で一緒だったAチームのひとり――芥ヒナコさんだった。
「アルモーディアはこの先だが――」
ヒナコさんは、紺色のセーターのような服の上に黒い衣装を纏っていて、ピアスをしている。そして、黒い手袋をした手にはそれぞれ中国の剣に見えるものを握っている。
「故あってここは通さん。先に進みたくば、私を倒すことだ。人間ども」
『アルモーディア程じゃないが、少なくとも試作マリーちゃんたちとは比べ物にならない! 数値上はかなり真祖に近いぞ! 間違いない、芥ヒナコは真祖の吸血鬼だ!』
オペレーターが変わったのか、Dr.ロマンが叫ぶように言葉を発した。それにヒナコは明らかに嫌悪感を露にした表情を浮かべる。
「フン、あんな真性の怪物と私を一緒にするな。アルモーディアに比べれば、アレが無駄に生み出している女中もどきも、私自身も足元にも及ばん。そも私は吸血鬼ではない!」
特に最後の部分で、ヒナコさんから赤黒い炎のような魔力が溢れ出した。どうやら吸血鬼という部分が特に、癪に障ったみたい。ついでに全体的にとてつもなく不機嫌そうに見える。
「お前らに……」
ヒナコさんは顔を俯きながらも剣をこちらに向けて、震える声で呟く。その様子は尋常ではない。
「お前らにわかるものか……ッ!」
そして、ヒナコさんは顔を勢いよく上げると、怒りと嫌悪と羞恥心で顔を赤く染めながら言葉を吐き出した。
「"
それは余りに拍子抜けな動機かつ、どんな風に捉えていいのかわからなくなるものであった。
「ねぇ、気のせいかしら立香、マシュ? 恋文とか言ったわよね……?」
「わ、私にもそう聞こえました!」
「私もー」
『真祖ってアレなの? 小さな物事をイチイチ大きくしなきゃ気がすまない種族だったりする?』
再び、通信機から真剣なような呆れたような様子のダ・ヴィンチちゃんの声が響く。その感想はその通りだけれど、ヒナコさんはスゴく真剣に怒っているので、突っ込まない方がいいんじゃないかな。
「藤丸立香ぁぁ! アルモーディアはお前の使い魔だろう!?」
いや、そこでそれを言われても……アルモさんは基本的に超が付くぐらいの自由人だし……。
や、ヤバい……マシュとオルガマリーさんと私だけじゃ、明らかに尋常じゃない魔力を放っているヒナコさんに勝てる気がしない……!
ど、どうすれば……そうだ!
「芥ヒナコさん! 私がアルモさんに恋文をちゃんと返すように言って聞かせますから! どうか剣を納めてください!」
「――――――!?」
その言葉にヒナコさんの怒りが若干収まり、理性の光が灯ると共に表情がやや緩む。
「いえ……ダメよ……人間はいつだって裏切るじゃないッ! どうせお前もそうだ!? アルモーディアと私をハメる魂胆だ!」
うわ、この人スッゴくめんどくさい拗らせ方してるなぁ……そんなつもりないんだけど。何もかも初耳だし。
「そんなことしません! そもそも、あのアルモさんがちゃんと恋文を返してくれる確証はあるんですか!?」
「そ、それは……」
ちなみに私的なアルモさんは"これあげる"と言って差し出して来て、"あーげた"とかいって上に上げたりする悪戯を普通にやるようなお茶目な人だけど、スカサハさんの話を聞く限り、相当周到で執念深く陰湿な人だ。
そんなアルモさんが、ヒナコさんの恋文なんて面白過ぎるモノを、これ一回だけで終えるとは到底思えない。
「た、確かに……アルモーディアならもっと酷い使い方を――」
お、結構いい反応。これなら戦わないでもなんとかなるかな?
『なんだ、殺らんでいいのか?』
するとヒナコさんの真後ろから声が響く。そして、浮き出るようにその場にスカサハさんが現れた。
いつの間にかスカサハさんが圏境を使いながら合流していたみたい。まさか、少し判断が遅ければヒナコさんが貫かれていたのかな……?
「お、お前は……!?」
「お初にお目に掛かる。影の国の女王スカサハだ。噂はアルモから聞いているぞ。"虞美人"という人間社会嫌いだが、人間そのものはそこまで嫌いでもない精霊種の吸血種の友人がいるとな」
「はぁ!? アイツ他人にそんなこと言ってたの!?」
「虞美人……虞美人さんですか!? 項羽と劉邦で出てくるあの虞美人さんのことでしょうか!?」
「か、カルデアにずっと真祖がいたなんて……」
ああ、そう言えば千年城の表札にそう書いてあったし、アルモさんもぐっちゃんと呼んでいたなぁ。そういうことか。
何故かマシュの食い付きがとてもいい。項羽と劉邦っていう本のタイトルは知ってるからマシュは読み込んでいたりしたのかな?
「そういうお前もアルモーディアから聞いているわよ」
「ほう、なんと?」
「紫ババア」
「よし、殺す」
アルモさん……流石にそれは酷すぎるよ……。
「あの虞美人さん!」
「……なによ?」
芥ヒナコ――虞美人さんはぶっきらぼうながら返事をしてくれた。それが少し嬉しい。
「アルモさんから恋文は取り戻して見せるので、剣を納めてくれませんか? お願いします!」
私は兎に角、頼み込んだ。出来ればアルモさんの友達と戦いたくなんてないから。
暫く虞美人さんは私を見つめた後、大きな溜め息を吐いてから剣を消す。
「止めだわ……まるで私が悪いみたいじゃない」
それだけ言うと虞美人さんは何処かへと歩き去って行った。何故か私には彼女が、アルモさんと同じように優しい人に思え、今度はちゃんと話したいとも思っていた。
「ふむ、アルモへ少し面白い仕置きを思い付いたぞ」
そう言うとスカサハさんは指を立ててルーン魔術を起動する。勿論、その顔には青筋が浮いており、笑顔ではあったけど美人なことも相まってものすごく怖かった。
◇◆◇◆◇◆
「ん? 随分と早かったな」
師匠が圏境で入ってきてもわかるように設置した防犯装置代わりの霧の壁を通過して来た者がいたため、声を掛ける。
それから作業を止めて一度だけチラッと見ると、ぐっちゃんの第一再臨の服装が見えたのでぐっちゃんだろう。靴の音が響き、作業をする私の背後で止まったのがわかる。
「まだ、立香たちは来ていなかったか? まあ、それならそれで仕方ないな」
「………………」
「後、ちょっとで出来上がるからな」
ちなみに今私はマリーちゃんの再臨素材的なものを作っている。これが終わったら
「………………」
「なんで喋らないんだぐっちゃん? そりゃあ、ラブレターを盾にしたのはあんまりよくはないと思っては――」
次の瞬間、私の胸を大変見覚えのある赤い魔槍の矛先が貫いた。位置的にぐっちゃんが放ったとしか言えない状態である。
「………………あれぇ?」
私は半ば放心しつつも、体を傾けながら首を後ろに回してぐっちゃんを見た。
まさか、師匠からゲイ・ボルクで突き刺すように言われたのだろうか? ぐっちゃんの逆襲である。
「久し振りだな、馬鹿弟子よ」
だが、その声は正しく、師匠そのものであった。そして、私がぐっちゃんだと思っていたモノは――。
"ぐっちゃんの服装に身を包み、眼鏡をして髪をお下げに纏めた影の国の女王ことスカサハの姿"であった。
これはあれかな……? ランダムマイルームで1番目に来た鯖に2番目に来た鯖の服を着せるっていう奴かな?
うん、流石は見た目だけは目が醒めるような美女。スーパーケルト人な中身を考えなければ、惚れちゃいそうなぐらい似合ってる。ルーン魔術で化けやがったなコイツ、髪も黒く染めているし。
すると次の瞬間に浮遊感を感じ、投げられたのだと理解する。初撃で縫い付けられ、体が思うように動かせないため目だけで追うと、既にぐっちゃん師匠は別のゲイ・ボルクの発射態勢に入っていた。
その表情はビックリするほど清々しい笑顔を浮かべつつも、背後に怨霊か何かのようなどす黒い何かが見える。未だかつて、あそこまで私に対して師匠がキレた姿を見たことがない。
うーん……まあ、あれだね。これはとりあえず――。
「
一回、食らっとくか。
※今回の後書きはほんへに全く関係ありません。
~書いてる合間に流行に乗ってみた~
・女子高生化診断
2年B組 姉を名乗る不審者ちゃん
身長…163cm
髪…青くてくるくる
目…黒くてぱっちり
得意科目…保健体育
バスト…C
特徴…キレると黙る
性格…くらい。あかるい子とおっとりした子とは相性よし
…………なんで普通に不審者みたいなスペックなんですかね……(試行回数1回)。
この小説はこんな女の子が書いている小説だと思ってください(迫真)