真祖アルモーディア(ランサー)戦その1です。区切りがいいので、ちょっと短めです。
スカサハさんから宝具による攻撃があるまで待てと言われたので、霧の前で暫く待っていると、宝具の発動特有の体から魔力を持っていかれる感覚を覚えたので、意を決してアルモさんとスカサハさんがいると思われる部屋の中へと侵入する。
そこは驚くほど広い大広間で、奥にはひとつの大きな玉座があり、部屋の中央には多数の術式が折り重なるように空中に浮き、地球儀のような形を成している何があった。
そして、術式の地球儀の前で二本の魔槍を構え、虞美人さんと同じ格好のスカサハさんが佇んでおり、その視線の先を辿ると、地に伏すアルモさんがいた。
「アルモさん……」
アルモさんは胸に大きな穴が空いており、ぐったりと体を投げ出して瞳を閉じている。それは眠っているようにも見えたが、彼女を中心に床を染める鮮血がそうではないことを表している。
これがジャージ姿じゃなくて、冬木で着ていた白いドレスだったら、さぞ絵になったんだろうなぁ……。
「………………いつまで寝ているつもりだ?」
死んでいるのではないかとも少し考えたが、スカサハさんがそう呟いた直後、アルモさんの目が見開き、その場で宙返りをするように立ち上がる。
そして、唇に人差し指を一本当てながら、すがるような潤んだ目で言葉を吐いた。
「一回じゃダメ……?」
「ダメだ、許さん」
「影の国の女王の宝具開帳を受けてもほぼ無傷だなんて……」
オルガマリーさんの呟きは尤もだろう。アルモさんの胸にはまだ穴が空いていたが、それも急速に塞がり始める。どうやらスカサハさんが前に言っていた"神秘が浅い"というのはこういうことだと、実際に見て理解した。
当たってはいるが、その程度ではアルモさんの死には遠く及ばないのだろう。
「仕方ないな……」
胸の穴が塞がったのとほぼ同時にアルモさんは、ゲイ・ボルクを一本取り出して利き手に持つ。そして、首を鳴らすと、ゲイ・ボルクを持っていない方の手の爪を立てる。
「んじゃ、久し振りに戦ったり殺されたりしようか」
「望むところだ」
その言葉の直後、アルモさんとスカサハさんが同時に距離を詰め、互いのゲイ・ボルクが衝突した。数回打ち合うが、手数と純粋な技量で圧倒的に上回るスカサハさんが直ぐにアルモさんを防戦一方に追い込む。
「なんだ? 影の国に居た頃より鈍っているな」
「半世紀はろくに武術使ってないって……のッ!」
言葉と共に空間に亀裂が入ったと錯覚するような、赤く巨大な斬撃の軌道が見える。スカサハさんはそれを斜め後方に飛び退いて避け、爪を振り抜いた様子のアルモさんだけが残される。
「やっぱり武器は性に合わないなぁ……爪でいいじゃん」
「これはカルデアに戻ったら修行のやり直しだな、覚悟しろ馬鹿弟子よ」
「ファッ!?」
ああ……確かにこれは槍いるのかと思っても仕方ないかもしれないと私も思った。
何せスカサハさんがいた場所には、部屋の壁まで直線に数十mに渡る爪痕が刻まれており、その一撃の威力と範囲がとんでもないものだということが理解できる。
「本物の真祖の吸血鬼ってあんなに化け物なの……?」
「あんなのを真祖の基準にするんじゃないわよ」
「芥ヒナ――虞美人さん!」
するといつの間にかオルガマリーさんと私の間に虞美人さんがいた。相変わらず顔をしかめているが、さっきよりは幾らか柔らかい表情に見える。
「普通の真祖なら人間に頭を下げてまで武術なんて習わないし、空想具現化の修行もしないし、あんなにアーパーじゃない」
「誰がアーパー吸血鬼だ!」
何故か話を聞いていたアルモさんがスゴく食い付いてきた。口ではそう言っているが、何故かアルモさんは言われてとても嬉しそうな表情に見える気がするのは気のせいかな?
「お前、真面目にやる気ないだろう……?」
「逆に聞きますけど、あると思ってるんですか?」
スカサハさんと対峙しながらも、明らかに気怠そうな様子を見せているアルモさん。寧ろ攻撃を体で全て受け止めて気が晴れるならそれでいいと言い出しそうな雰囲気だ。
「仕方ない……マスター、少し耳を貸してくれ」
「え?」
明らかにアルモさんにやる気がないと感じたのか、スカサハさんは私の隣に来ると耳打ちしてきた。
えっ、そんなのでいいの?
「えっと……アルモさん」
「何さ、立香?」
「アルモさんのカッコいいところがみたいな! がんばれ♡ がんばれ♡」
「――――――」
ちなみに後で聞いた話だけれど、がんばれ♡ がんばれ♡とはスカサハさんにシゴかれる戦士たちを眺めながら、高笑いしつつよく言っていたフレーズらしい。ちゃんと、応援するなんてアルモさんは優しいなぁ。
するとアルモさんの全身から赤黒い魔力の波動が溢れ始めた。その大きさは虞美人さんと比べることすらままならないような莫大なもので、空間そのものが塗り潰されたように錯覚する。
そして、服装がいつものスカサハさんと同じような白い戦装へと変わった。
「立香あぁあぁぁぁぁ! いいぞ、いいぞ、いいぞぉぉ! 立香ァ! アルモお姉ちゃんのちょっといいところ見せてあげようじゃないか!」
「……!?」
何故かその様子に一番驚いているのは、スカサハさんに他ならなかった。
「…………マズいな、やり過ぎた。よもやここまで引き出させるつもりはなかったのだが……」
「バカでしょアンタ!? アルモーディアは私なんか比べ物にならない出力を持っているのよ!? その上、星からのバックアップを受けているんだから、本気にさせたらこの特異点が更地になるわ!?」
どう見ても様子のおかしいアルモさんに、スカサハさんも虞美人さんも明らかな動揺を見せている。
「――ク、だがそれもまたよい。行くぞ!」
そう言ってスカサハさんはアルモさんへと駆け出し、再びゲイ・ボルク同士が交錯した。
◇◆◇◆◇◆
戦局が傾いたのは一撃で判明した。今度は数合打ち合ったスカサハが押されたのである。
理由は非常に単純で、前と比べてアルモーディアが数倍の力と速さでゲイ・ボルクを振るったからだ。その威力は、スカサハが避けたゲイ・ボルクの余波で、触れていないにも関わらず幾度となく床が大きく抉れる程だ。
スカサハとある程度打ち合える技量を持つアルモーディアの攻撃は、最早スカサハですら逸らせる領域を越えており、受けるのではなく、退きながら避けることを選択させるには十分過ぎたのであろう。
一旦、スカサハがアルモーディアから距離を取ったところで、アルモーディアが真剣な眼差しを向ける。
そして、アルモーディアは、利き手に持つ魔槍以外に持つ魔槍を、どこからともなく出現させて地面に放り投げた。その数は手のモノも合わせて全部で"7本"だ。
これが予備が欲しいとの理由で、アルモーディアがスカサハから授けられた全てのゲイ・ボルクである。
「何が予備だ……その全てを使うのか?」
「海獣の骨だなんて、"自然"なモノはこれ以上ないぐらい真祖にお誂え向きの武器だからな。全力で真祖らしく戦わせて貰おう」
そして、全ての魔槍に赤黒く鈍い光が灯り、地面にあった6本の魔槍全てが浮き上がると、アルモーディアの爪を立てた腕の側に並ぶ。
次の瞬間、スカサハへと爪を向けると、6本の魔槍が弾丸のように射出された。
「くっ……」
アルモーディアの魔槍が縦横無尽に空を駆ける中、スカサハも同じように3倍以上の本数の魔槍を宙に浮かべて迎撃した。
しかし、最古の真祖の空想具現化で操られた魔槍は、スカサハの魔槍を木の葉か何かのように弾き飛ばして、直進する。
「
スカサハはそのままでは終わらず、アルモーディアの魔槍が当たる寸前で影の国の城門を前方に召喚し、魔槍を飲み込み、一時的に無力化しようとした。
しかし、魔槍は城門の直前で空間に縫い付けられたかのようにピタリと止まる。数センチや数ミリの単位で空想具現化を操れるような異常な精度を持つ真祖にしか不可能な芸当であろう。
瞬時に城門を残してその場から飛び退くスカサハ。その刹那、赤い斬撃によって城門は縦に真っ二つに裂かれる。
「流石に早々倒されてはくれないな。まあ、それこそこちらが興醒めだが」
それはアルモーディアが爪を振るって放たれた斬撃だった。今の彼女が放つ全ての攻撃はAランク以上の宝具相当の攻撃と言えよう。
遠距離は爪の斬撃、中距離は浮かぶ魔槍群、近距離は利き手の魔槍。それは恐ろしい程無駄がなく隙のない、人間のように冷酷で遊びがないにも関わらず、真祖にしか不可能な槍術であった。
「――クク! アルモ! これがお前の本気か……これが全力か!」
「さて、どうかな。まあ、少なくとも誰に見られても恥じない程度には本気だな」
「では私も貴様を獲らせて貰う!」
その言葉と共に、スカサハは持ちうるルーン魔術を動員し、あらん限りの身体強化と、己の持つ二本の魔槍へ強化を施す。そして、サーヴァントの枠組みであり、限界である霊基そのものが、二回り以上引き上がったのも見て取れた。
「なんだそのろくでもない外法は……」
「貴様の真祖もどきを狩るついでにリソースを少し拝借してな。霊基そのものをこの場で補強した」
「……師匠、あんた死ぬ気あんの?」
「ならば殺してみろ!」
その言葉と共にスカサハがアルモーディアへと飛び込み、即座に反応したアルモーディアは空想具現化で操る6本の魔槍で迎撃した。
だが、スカサハはそのまま直進し、3本の魔槍をスレスレまで惹き付け、空想具現化の精度を上回る体捌きのみで躱し、残りの3本を強化された肢体と魔槍でもって後方へと受け流しながら直進する。
更にアルモーディアが迎撃に爪を振り下ろそうとした直前に、空中にいるスカサハが片方の魔槍を放ち、アルモーディアの肩を刺し穿った。
即座に刺さった腕の神経まで貫かれていると判断したアルモーディアは、利き手に持つ魔槍をスカサハへと投擲し、利き手の爪を立てると己の魔槍の刺さる肩を切り裂いて引き千切り、刺さったスカサハの魔槍を持つ。
「な……!?」
だが、次の瞬間、アルモーディアは利き腕に投擲された魔槍が突き刺さったことで動揺する。何故ならそれは、自身が真祖の力で投擲した魔槍に他ならなかったからだ。
見れば片方の魔槍を手に残しながら、空中で魔槍を投擲した体勢のスカサハが見えた。
スカサハはアルモーディアが彼女に向けて放った魔槍を躱した上で掴み取り、絶妙な速度と角度で回転し、アルモーディアの投擲の勢いをそのままに返したのである。
それは天才としか言い様のない、途方もない絶技であった。当然、突き刺さる魔槍は寸分の狂いもなく、節と神経を穿っており、アルモーディアの利き腕も沈黙する。
「――突き穿つ!」
「がぁ!?」
結果的に両腕を破壊され、対処法を失ったアルモーディア。その胴体にスカサハの魔槍が突き立ち、空間に縫い止めた。
そして、後方に飛び退き、新たな魔槍を構え、宝具を解放したスカサハは魔槍を構える。
「
投擲された全力の投擲は赤い稲妻のようにアルモーディアを貫いた。
◆◇◆◇◆◇
「………………なにあれ化け物?」
「ギリギリ人間です、たぶん……」
スカサハさんが空想具現化と魔槍を使うアルモさんを倒す一部始終を目撃した虞美人さんは、呆然としたようすでそう呟いた。
「あの……眼鏡ズレてますよ芥――虞美人さん」
「アルモーディアが関わる人間はみんなあんな風なの……? なにそれ……まさかカルデアのサーヴァントはみんなあんな奴らなんじゃ――」
「わ、わわ、私あんなのと戦わせられるなんて絶対ムリムリムリ――」
マシュが気に掛けるが、虞美人さんがブツブツと呟きながら一人の世界に入ってしまった。ちなみにオルガマリーさんは放心して魂が抜けたような状態になっている。
なのでスカサハさんに声を駆けようとすると、手で動くのを制された。
「まだだ、アルモはこんなものではない」
スカサハさんのその言葉の直後、地に伏したアルモさんが起き上がり、千切れた片腕が血と共に宙を舞って繋がり、腕と胸の傷口が凄まじい速度で再生する。
そんな中、2本のアルモさんのゲイ・ボルクが手元に飛び、それらを握り締める。スカサハさんと同じように双槍の構えになった。
「いいね、楽しくなってきた」
「――クク、私もだ」
対峙するスカサハさんに双槍の片方を突きつけながらそう溢すアルモさん。対するスカサハさんもとても愉しそうな様子をしており、互いが気の置けない関係だということがなんとなく読み取れる。
アルモさんはさっきとは異なり、双槍と体に薄く赤く淡い光りを纏うだけで、それは大樹のように堂々としながら、静かに澄み切った水面を連想させるような優しげなモノに見えた。
「じゃあ、第2……いや、第3ラウンドだな」
その言葉の直後、三度二人の魔槍は交錯した。
これ、まさかとは思うけど、二人でじゃれあってるだけだったりなんじゃないよね……?
・真祖アルモーディア(ランサー)戦
1ゲージ目20万←Break!
2ゲージ目80万←Break!
3ゲージ目200万←イマココ
4ゲージ目500万
倒し方:
師匠の即死確率が上がり、ほぼ確定即死になっているので、1回NPを貯めてゲイ・ボルク・オルタナティブしたら、3ターン令呪を1つずつ使ってゲイ・ボルク・オルタナティブすれば誰でも余裕で勝てます。
使用スキル:
武芸百般(徒手):RankEX
・自身の攻撃力をアップ(3T)+スター集中度をアップ(3T)+クリティカルを威力アップ(3T)+無敵貫通を付与(3T)+回避を付与(1T)
ストーキング:RankA+
・自身のNPを増やす+NP獲得量アップ
使用宝具:
・敵全体に超強力な防御無視攻撃<オーバーチャージで威力アップ>+HPを10000減らす(デメリット)
※HP10000以下で使用時、HPは1残らず0になる
絆3 マテリアル(第1・第2スキル説明):
武芸百般(徒手):RankEX
アルモーディアの持つ他の真祖と最も異なる点。彼女はどういうわけか真祖であるにも関わらず、遥か古代から人間が用いたあらゆる徒手武術を極めており、そのためなら人間に頭を下げて学ぶことも辞さなかった。
そんな彼女を他の真祖は嘲笑い、蔑んだが、己の才能に頼らず、時間と反復により極地まで鍛えられた武術を用いるアルモーディアのみが魔王を討伐した。
・自身の攻撃力をアップ(30~50% 3T)+スター集中度をアップ(300%~600% 3T)+クリティカルを威力アップ(50%~100% 3T)+無敵貫通を付与(3T)+回避を付与(1T) CT7~5
ストーキング:RankA+
またの名を圏境。気を使い、周囲の気を感知し、自己の気配を消すことにより、姿を存在ごと消失させることによる驚異のストーキングスキルである。
ちなみに彼女の場合はストーキングした対象に悟られずに全てを遂行し、過程から成果まで自身の中だけで自己完結するため、スキルランクが異様に高い。彼女曰く、相手に悟られるようでは三流とのこと。
ちなみに何故かNP関連が上昇する理由は、立香の私物などを回収し、モノではない何かを得ているからであろう。
・自身のNPを増やす(30→50%)+NP獲得量アップ(3T30→50%) CT7~5