TS光堕ち真祖アルモちゃん   作:ちゅーに菌

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 これにてイベントの本編はほぼ終了したので、後はオルガマリーちゃんの宝具Lv上げと、再臨素材回収となります。


穿て!ゲイ・ボルク・オルタナティブ! ~千年城にて姫は籠る~ その6

 

 

 

 スカサハとアルモーディアは最初と同じように互いに持つ二本の魔槍を打ち合わせたが、今度は全く異なる展開になる。

 

「――!?」

 

 身体強化と魔槍の強化をしている筈のスカサハの両手から、双槍がほぼ同時に弾き飛ばされたのだ。

 

 技量負け――というわけではない。技量ではスカサハが数段上であり、アルモーディアが同じ双槍になったからといって技量面では覆せる筈もない。だが、現実はスカサハは手元から魔槍を失い、一時撤退を余儀なくされていた。

 

 距離を取った状態で、他の魔槍を手元に出現させながらスカサハは驚いた様子で、手元とアルモーディアを交互に見つめる。

 

「あんまりこういうことしたくは無いんだけどな。今日は出し惜しみ無しだ」

 

 アルモーディアは静かに佇み、小さな溜め息を吐くと更に口を開く。

 

「私はまず師の模倣を徹底的に覚えてから、それを多少発展させる。で、それをしていると色々と思うところが出て来るんだ」

 

 アルモーディアはスカサハと全く同じような型で双槍を回す。それを見たスカサハは瞬時に気づいた。

 

「まさか、私の槍術を……改善したのか!?」

 

「そ……案外武術っていうのは、どんなに極みに達しようと――いや、極みに達したからこそ、本人には絶対に気づけないような癖や無駄や弱点があるもんだ。究極の型なんて私に言わせれば存在しないからな」

 

 それは長い時を極限まで他者から学び、模倣することに努めた者だからこそ、可能なある意味の極地であった。

 

「それらを徹底的に省き、改善した上で、本人のそれらを徹底的に突きながら殺り合ったらどうなると思う?」

 

「クク――ふははは! 負けるのか! この私がよりにもよって私の槍で!」

 

 つまり、有り体に言ってしまえば、アルモーディアはスカサハにガンメタを張っているのである。到底、師事した師に対してしか使えないような、ある意味で外道としか言い様のない戦法であろう。

 

 だが、そもそも師が極めた武術は、あらゆる敵を殺すことに最適化されたモノといっても過言ではない。つまりは改善というよりも、師にしか使えない改悪に等しい。

 

 その上、それは同時にスカサハのように不死者が相手でない限り、人間の寿命を優に超える習得期間から、全くの無意味とも言える。

 

 それこそ、遠い未来に再会出来るとでも確信していなければ。

 

「面白い! では私が胸を借りる番だな!」

 

 スカサハはもう一度アルモーディアに攻撃を仕掛けて打ち合うが、結果は同じ。最終的にアルモーディアがスカサハの双槍を打ち払い、止めの突きを行うが、それはスカサハが後方に飛び退くことで避けられる。

 

 更にスカサハは攻撃を続行し、無駄とも言える行為を愚直なまでに何度も繰り返した。その反面、アルモーディアは技量の差からスカサハを掠める程度しかダメージを与えられていないため、スカサハに手傷を与えるには至らない。

 

「……ん?」

 

 そして、暫く打ち合いが続いた後、アルモーディアは違和感を覚えたようにポツリと呟く。

 

「……まさか」

 

 そして、何かに気づいたのか、アルモーディアの表情から余裕が消え、スカサハへの攻撃が目に見えて増える。しかし、守手に回りつつもアルモーディアと打ち合いを続けるスカサハへの有効な攻撃にはならない。

 

 そして、幾度も双槍を崩されながらも遂にスカサハの槍がアルモーディアの頬を掠める。頬から流れる血を少し眺めてからアルモーディアは溜め息を吐いた。

 

「戦いの最中に私の槍術を覚えるとか、どこの熱血漫画の主人公だよお前!?」

 

「くははは! 楽しいなアルモ!」

 

「これだから天才は……! 私が何十年掛かったと思ってるんだ!?」

 

 スカサハはアルモーディアが振るう槍術を更に取り込み、己の槍術を更なる高みへと昇華していたのだ。それも敵と打ち合う最中にである。こればかりは才能以外の言葉で片付けようのないことであろう。

 

 互いの双槍はアルモーディアの優勢から拮抗へと傾き、それもやがて時間経過と共にスカサハの優勢へと徐々に傾く。

 

 そして、遂にその時はやって来た。

 

「ぐがぁ……!?」

 

 アルモーディアの双槍がスカサハによって、大きく逸らされた直後、アルモーディアの胸に貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)が叩き込まれたのだ。

 

 魔槍は三度、アルモーディアの心臓を貫通し、その命を削り取った。

 

「…………なーんてな」

 

 その直後、アルモーディアはほくそ笑みを浮かべる。

 

 

 

「"偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)"」

 

 

 

 それは激しい閃光となってスカサハを襲う。

 

「ぐぅッ……!?」

 

 スカサハはアルモーディアから飛び退いて十分に距離を取った直後に、膝を折ってしゃがみ込むと、アルモーディアの胸に空いた穴の位置と全く同じ場所を手で押さえた。

 

 そして、呼吸を荒げ、額に汗を浮かべながら、直立不動でスカサハを眺めているアルモーディアに言葉を吐く。

 

「アヴェスタの逆写し……自身が受けた傷をそのまま相手に返す原初の呪いか……!?」

 

「その通りだ。ゾロアスター教の経典、アヴェスタの偽書。報復という原初の呪い。人間の人間による人間のための教典にも関わらず、人間には使いこなせないという困ったちゃんだな。だが、真祖が使うとこうなる」

 

 アルモーディアは胸に刺さる魔槍を引き抜き、適当に放った。

 

 抜くときに傷の状態を共有しているスカサハから小さな悲鳴が上がったが、それをアルモーディアは気にした様子はなく、逆に少しひきつった表情で溜め息を吐く。

 

「まあ、そうなんだけどさ……当然のようにルーンで軽減して生き残らないでいただけます?」

 

「流石に今のは貴様が笑わねば危うかったぞ……!」

 

「私のせいかー……」

 

 胸を抑えていたスカサハは、アルモーディアの胸の穴が再生によって完全に塞がったところで、元の体調へと戻る。それと共に立ち上がって魔槍を構えた。

 

 偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)は自身に付けられた体の傷を相手に共有させる宝具であり、彼女の傷がなくなれば効果は消える。すなわち、アルモーディアの反撃は失敗したと見ていいだろう。

 

「まあ、コレクターとしては、ギルくんなんかと比べると烏滸がましいけどさ。こんだけ生きてるんだから、伝説の時代から存在している宝具(ノウブル・ファンタズム)を私がなんとなく収集していても別に不思議じゃないだろう?」

 

 そう言いながらアルモーディアは、どこからともなく黒々とした暗い魔力を放つ古めかしい写本を手元に出す。そして、写本を弄ぶようにくるくると回した後、写本は彼女の体へと、溶けるように透けて姿を消した。

 

「どっかのカルデア(最新)仕様の最弱のサーヴァントと同じく、私は何度でも同じ対象にヴェルアヴェれるからよろしくね」

 

 アルモーディアは床に散らばる自身の魔槍と、手に持っていた双槍の片方を消し、利き手の魔槍だけを残した。

 

 アルモーディアが城の壁へと手をかざすと、次の瞬間には抉り取られたかのようにポッカリと巨大な穴が開き、深く黒い夜空に大きな満月が浮く景色が映し出された。

 

 そして、アルモーディアの服装が冬木で着ていたものと同じ白いドレスへと変わる。

 

「人間と違って、私にとっての本気は手段を選ばなくなること。もう、城内で殺れない程度には手段を選ばない。だから、続きはお外でやろうか?」

 

 そう言うとアルモーディアは壁の大穴から外へと飛び出し、それを追ってスカサハが出て行ったことで、立香らも後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼。近くにいると死ぬよ?」

 

 月夜の草原に降り立ったアルモーディアは周囲にいる幻想種らにそう呼び掛けた。

 

 アルモーディアを直接見た幻想種らは皆一様に驚きつつ彼女を少し眺めてから、ほとんどは肉食獣を前にした草食獣のように彼女から一目散に逃げていく。

 

 そして、そうではない一部の幻想種は、この特異点の主たるアルモーディアへと襲い掛かった。

 

「邪魔」

 

 アルモーディアが爪と共に空想具現化を振るう。すると襲い掛かった幻想種の一体がいた空間そのものが、隙間なく切り裂かれたかのように破壊される。

 

 結果的に攻撃範囲からはみ出していた体の一部分だけが地面に転がり、訳もわからずに死んだことだろう。他の襲い掛かった幻想種たちは、虫でも叩くような呆気ない末路を目にし、あまりにも隔絶した実力差を理解したのか、攻撃を止めると共に、最初に避難した幻想種と同じように逃げていった。

 

 アルモーディアはそれらは追わず、地上から10m程の場所で浮遊しながら己から少し距離を取って対峙するスカサハらをただ眺めていた。

 

『げ、幻想種をイチコロじゃないか……もう、あれマップ兵器か何かだよ!? 人間が挑んでいいものじゃないって絶対!』

 

 一部始終を通信機越しに目の当たりにしたDr.ロマンは、人間として当たり前の感想を溢す。アルモーディアは紛れもない真祖の吸血鬼。そもそもの規格が違うのだ。

 

 故に今まではスカサハに、引いては人間に合わせて戦っていたに過ぎない。

 

「魔王相手以外に、ここまでお前が力を示すのは初めて見るな」

 

「アルモさんはケルト脳じゃないから、必要なときに必要な分しか、力を使わないのさ。それに駆け引きが効かない程、相手に過剰な攻撃を仕掛けるのは暴力と何も変わらん。人間の土俵で戦うのは私なりの敬意だよ」

 

 そう言うとアルモーディアは、恭しく礼をしながら言葉を吐く。

 

「さあ、これよりは正真正銘、真祖アルモーディアだ。化け物らしく行こうじゃないか。ふふーん♪ 師匠以外はもっと離れた方がいいよ」

 

 そして、鼻唄交じりにこれまでとは明らかに違う空想具現化をゲイ・ボルクに纏わせると、そこにいるものたちに警告する。

 

 そして、それを察したスカサハが立香らから、跳んで数十m程距離を取ったところで、そこに目掛けて魔槍が振り下ろされた。

 

 次の瞬間、爆弾でも起爆したかのような轟音と共に、スカサハの背後の地面が氷砕船が一直線に通り過ぎたかのように激しく抉れる。横幅10m強、縦幅1000mを越え、それだけで対城宝具に匹敵するような一撃である。

 

 しかし、それは対城宝具ではない。

 

「まだまだ、こんなものじゃない」

 

 幾度となく、同じ規模の攻撃がスカサハへと向けて振り下ろされ、横薙ぎぎで繰り出され、突きが見舞われる。アルモーディアにとって、これらは全てジャブでしかないのだろう。

 

「~♪」

 

 そして、スカサハのように槍を回転させながら、ゆっくりと回り始めれば、アイスクリームディッシャーでアイスクリームを丸く取るように、アルモーディアを中心に半径1000m以上の地面が抉り取られる。

 

 半分程で回転を止めたため、ポッカリと空いた4分の1の円の空間がふたつ広がっており、スカサハはそこに追いやられていた。

 

 このままでは埒が明かない上、地面そのものが無くなり、アルモーディアへの攻撃がほぼ不可能になると見たスカサハは、赤い稲妻のように駆けながら、アルモーディアへと接近する。

 

 そして、間近まで迫りスカサハが魔槍を放とうとした瞬間――アルモーディアは自らの魔槍を天高く放り投げると、スカサハの双槍の切っ先を自ら掴み、腹部へと突き刺した。片方は心臓程ではないが、人間ならばかなり重要な臓器が集中している場所。もう片方は損失すれば激痛を受ける場所である。

 

「しま――」

 

偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)

 

 その真意に気づいたスカサハだったが、既に遅く、アルモーディアの報復が発動し、原初の呪いがスカサハを襲う。

 

 更にアルモーディアは、報復によって怯みながらも魔槍を抜いて下がるスカサハを見据え、目を細めながら唇を震わせた。

 

「ぶっ飛べ」

 

 次の瞬間、アルモーディアの空想具現化による光が収縮し、一気に外側へ向けて放出され、激しく爆散すると同時に周囲を覆い尽くす。それはスカサハが退くよりも遥かに早く発生し、光が呑み込んだ。

 

 そして、爆発が晴れたところで空に投げられた魔槍が戻り、アルモーディアはそれを掴み取ると、肩を竦めながら口を開く。

 

「ふーん……今のを避けるか」

 

「――クク、流石は最古の真祖だな……私もまだまだ人間だったということだ……」

 

「純粋な体捌きとバトルセンスだけで、アレで死なない奴が人間なわけないだろ……」

 

 そこにはアルモーディアの空想具現化の爆破範囲の中で、ダメージの密度が薄かった場所に留まり、肩で息をしているスカサハの姿があった。それ相応にダメージは受けたようで、頭部から多少の血を流し、腹部を押さえていた。

 

「ぐ……」

 

「だが、これで終わりだ」

 

 アルモーディアが宙に爪を立てた手をかざし、子供が空を掴むようにスカサハを握ると、スカサハの周囲のみ重力が十数倍に働き、手に握られたかのように体を拘束される。

 

「潰れろ」

 

 そして、その言葉と共にアルモーディアはかざした手の中のモノを握り潰すように掌を閉じた。

 

 

 

 

 

「緊急回避!」

 

 

 

 

 だが、割り込むように挟まれたその言葉によって、アルモーディアの攻撃は風を切り、空間そのものを握り潰すだけに止まる。

 

 そして、その少し離れた位置にスカサハの姿があり、その隣には避難していた筈の藤丸立香とその仲間の姿があった。

 

 アルモーディアが目を丸くする中、立香は更に応急手当を使用してスカサハを回復させる。それから立香はアルモーディアに向き合うと笑顔で言葉を吐く。

 

「水を差してごめんねアルモさん。けれど、私はスカサハさんのマスターだから、一緒に戦わないといけないと思うんだ」

 

「……ああ、なるほど」

 

 それはサーヴァントを持つマスターなら至極真っ当なことであり、どこにも疑問を挟む余地のないことであった。

 

 そして、アルモーディアは立香の笑顔を見つつ、魅入られたかのように思考を巡らす。彼女はこれだけ危険な相手の前にひとつしかない小さな命で立ち、双方を満足させてあげたいと言わんばかりで自身がどうなるかなど、まるで気に掛けている様子はない。

 

 そして、この恐ろしい怪物に、まだそんな笑顔を向け、まるで人間のように見てくれるのかと。

 

「立香……だからこそ……私は君を」

 

 アルモーディアは嬉しげに呟きながら片手で顔を押さえる。その際に立てた爪が少し顔を傷付けるが、特に気にした様子はない。

 

 アルモーディアが意識を戻した頃には、立香がスカサハへと瞬間強化を掛け終わっていた。

 

「正真正銘……これで最後だ。アルモーディア……!」

 

「全く、仕方がないな……」

 

 スカサハが両手で一本のゲイ・ボルクを構え、ある限りの魔力を注ぎ込むのを見て、アルモーディアも自身の持つゲイ・ボルクにあらん限りの空想具現化を纏わせ、肉体が引き千切れる程に魔槍を引き絞る。

 

「令呪を以て命じる……重ねて命じる……最後も重ねて命じる……"頑張って"スカサハさん!」

 

「ああ……マスターにまで背中を押されては仕方ないな!」

 

 かつてこれほどまでに曖昧な令呪三画の使い方があっただろうかと考えるほど漠然とした指示だが、スカサハはそれを何よりもの声援と受け取り、魔力のブースターとしてもただ一撃のゲイ・ボルクの威力が数段引き上がる。

 

 そして、アルモーディアにはスカサハの霊基が不自然に引き上がるのを感じていた。アルモーディア以外には気づかないが、彼女もまた死力を尽くしていた。

 

 そして、互いの魔槍は全く同時に放たれる。

 

 

 

貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)!」

 

抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)!」

 

 

 

 投擲された互いの魔槍は赤い稲妻となり、交わることなく真横を通り過ぎ、それぞれの対象へと殺到した。

 

 アルモーディアは片手でスカサハの魔槍を包み込むようにかざすと、数m手前でピタリと停止する。しかし、あくまでもあらゆる現象・事象・因果律を無視し、無理矢理止めているようで、魔槍はガタガタと震え続けながら毎秒数mmずつでも進み続ける。

 

「マシュ! 止めて!」

 

「宝具、展開します……!」

 

 当然ながら魔王さえ超えた純粋な真祖の中で最大の能力を誇る、アルモーディアの空想具現化から放たれたゲイ・ボルクによる一撃は、当たれば数kmを丸々吹き飛ばすようなレベルまで達している。

 

 そのため、立香はマシュへ、仮想宝具疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)を展開させた。

 

「ぐぅぅぅ!?」

 

 しかし、その想像絶する威力は、冬木で騎士王が放った約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)を遥かに超え、凄まじい衝撃で展開されたロード・カルデアスを押し込み、中央に突き立つゲイ・ボルクを中心にひび割れが広がる。

 

「よくやった! 盾を引け!」

 

 その間にスカサハはアルモーディアのゲイ・ボルクに多数のルーンを刻み込み何かを行った上で、マシュを引かせた。

 

死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)!」

 

 展開された城門にアルモーディアのゲイ・ボルクが飛び込み、事なきを得る。どうやら、アルモーディアはスカサハのゲイ・ボルクを抑え込むことに空想具現化を回しており、こちらまでは能力を回せないようだ。

 

「まだ、6本あるぞ?」

 

 するとアルモーディアはもう一本魔槍を取り出す。あれを6度も止める力はこちらに残されてはいないだろう。

 

「オルガマリーさん!」

 

「ええ……やってみるわ! 擬似魔術回路構築――」

 

 するとオルガマリーはアルモーディアと同じように空想具現化を使ってみせる。空想具現化で魔術回路を模したモノを体内に作りながら、思い出すのは自身が人間の頃に使っていた単純な攻撃魔術。

 

「ガンド!」

 

 それは北欧に伝わる一工程の魔術であり、相手を指差す事で体調を悪くして病気にし、最上位のモノは物理的な破壊を伴うという一種の呪術であったが、それはフィンの一撃などという言葉が生温いものである。

 

 ガンドのような性質を含み、ロードが発生機序を一から組み立て、理論立てして空想具現化で再現された全力のそれは、最早呪いを含む極大の光線以外の何物でもなかった。

 

「ワーオ、流石は私とぐっちゃんの愛の結晶。ヤバい性能だ」

 

 そう言いながらアルモーディアは魔槍を離すと、止められているスカサハの魔槍と同じように止める。

 

 アルモーディアとオルガマリーでは、空想具現化の能力に3倍以上の開きがあるため、この結果も当然と言えるが、オルガマリーが放ち続ける限りは、アルモーディアの両手を抑え込んでいた。

 

「ふふふ……ハハハハ! 懐かしいなぁ! 魔王を相手にしていた頃は、いつもこうやって守手に回ってさァ! アッハハハハ!」

 

 アルモーディアは攻撃を止め、空想具現化を全て守手に回す。元々、彼女の本領は攻撃ではない。魔王に対する耐久と、死なずの防御にその半生のほとんどを費やしてきた彼女は、守りの空想具現化の方が遥かに得意であった。

 

 単純にそれをする相手が、いつしか消えてしまっただけなのだ。

 

 そうして、アルモーディアが持久戦に入ろうとした直後――。

 

 

 

「空よ! 雲よ! 憐みの涙で命を呪え!」

 

「――――!?」

 

 

 

 解放された禍々しい魔力によって空が深紅に染まり、そこから鉄の雨のような呪詛の嵐がアルモーディアを襲ったことで、手元を狂わされ、行動が止まり、全身を激しく撃ち抜かれる。

 

「長いのよ! さっさと倒れなさい! ほんっと、大人げないんだから! いい加減納得しなさい!」

 

「――――――ああ、その通りだな……」

 

 アルモーディアは最初はスカサハを納得させるつもりだったにも関わらず、いつしか自身が納得するまで戦っていたことに気付き、目的がすり替わっていたことに気付かされる。

 

(武人でも何でもない、虞に諭されるとは……私もまだまだか……)

 

 そう思いつつアルモーディアは自嘲気味に笑い、両手で受け止めている攻撃を見つめ、それらを甘んじて受けようと空想具現化を解こうとし――。

 

 

 

「アルモよ。まだだ」

 

 

 

 何故か大量に耐爆性能を高めるルーンを立香らと自身の周囲に張り、マシュに再びロード・カルデアスを張らせているスカサハに呼び止められ、そちらを眺める。

 

 するとスカサハは笑顔かつ無言でアルモーディアの後方を指差す。釣られて真後ろを見てみれば、そこには開門されたゲート・オブ・スカイが佇んでおり、その中央にはアルモーディアがついさっき投げたばかりのゲイ・ボルクの切っ先が生えていた。

 

 幾重もの因果レベルで行動を縛るルーンと、門の位置、発射角度。その全てはたったひとつの回答を示しており、アルモーディアは能面のように感情を失った顔になる。

 

 そして、スカサハに向き直り、溜め息を吐いた上で口を開く。

 

 

 

「そういうとこだぞ!」

 

 

 

 その直後、アルモーディアの背に城門から射出された自身のゲイ・ボルクが突き刺さり、衝撃によって激しく怯んだことで、空想具現化の防御を失う。それによって、再び起動したスカサハのゲイ・ボルクが胸に穿たれる。

 

 そして、オルガマリーが放ったガンドに似た光線が直撃し、数百m以上、上空へと吹き飛ばされ、最後に自身のゲイ・ボルクに込められた自らの力が爆散した。

 

 後に残るのは、空と地を塗り潰す程の赤黒い破壊の光ばかりであった。

 

 耐爆のルーンと、ロード・カルデアスで爆破をやり過ごしたスカサハは、晴れやかな顔付きでポツリと呟く。

 

 

 

「なに、どうせアルモは何をしても死なん」

 

 

 

 結果的にスカサハに荷担した立香だったが、その事に少しだけ後悔をしたときは既に後の祭りであった。

 

 また、その一部始終を見た虞美人は後に"やっぱり人間ってクソよ……"と語ったという。

 

 

 

 

 







~アルモーディア(ランサー) 絆4(第三スキル)~

アルモちゃんスーパーモード!:RankA+++
 最古の真祖アルモーディアが自身に対して全力で付与する空想具現化による身体強化と、星からのバックアップの複合スキル。アルモーディアの元来の気質のためか、非常に防御寄り。空想具現化を自身以外に使用出来なくなる代わりに身体能力を数段引き上げ、使用中何故か光る。アホみたいな名前と様子からは想像もつかないほど、凄まじい能力であり、これの発動中は人間には対処のしようがない程。ちなみにスキルランクは真祖で比べた場合の彼女の空想具現化能力の高さに準じ、平均はA~A+程度であり、A+++ともなれば通常時で魔王にさえも凌駕する。
 また、アルモーディアと同じく空想具現化を用いる魔王に対して使用する場合は、空想具現化を投げ捨てる自殺行為に等しいため、使用する相手を選ぶ上、そもそも空想具現化は自身以外に使った方が遥かに使い勝手がよく、より強力なため、半ばネタのようなものである。
 ちなみに他への攻撃に転化した場合、耐性スキル全てがそのまま反転し、元来周囲の自然へ使うスキルのため上昇値が上がり、自身の攻撃が全体攻撃と化すのだが、面による攻撃のため、あまりに攻撃が単調になり、武術家として、相手への敬意も何もなくなるため、よほど憎らしい相手以外には基本的に使いたがらない。


・自身の攻撃力をアップ(5T 30%)+防御力をアップ(5T 30%)+Artsカード耐性をアップ(5T 30%)+Busterカード耐性をアップ(5T 30%)+Quickカード耐性をアップ(5T 30%)+宝具耐性をアップ(5T 30%)+毎ターン終了時NP獲得状態を付与(5T 5~10%)+毎ターン終了時スター獲得状態を付与(5T 5~15)+毎ターン終了時HP回復状態を付与(5T 5000~10000) CT7~5

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