TS光堕ち真祖アルモちゃん   作:ちゅーに菌

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 イベント中ですが、アルモさんがダウンして、ちょうどよかったのでこの話を挟みました。この小説は30%ぐらいこの展開を書きたくて書いた小説だったりいたします。





人妻アルモちゃん

 

 

 

『おや……小さな魔術師のお客さんだね?』

 

 それは全くの偶然だった。たまたま気分転換に散歩をし、気紛れにいつもとは違う散歩道を歩きたくなり、なんとなくいつもよりも長く歩いていたかったことが重ならなければ、起こることは無かっただろう。

 

 雪が降る昼下がり、凍りついた湖畔の端の一角。高い木々に三方を囲まれ、林に入ってみなければ中の景色を確認出来ない場所で、座れるほどの高さの滑らかな岩に、腰掛けながらそれはそこにいた。

 

 ボリュームがあり、ふうわりとした膝以上に長い黄金のような金髪。

 

 深紅に染まり、一目で人間のそれではないとわかり、宝石すら霞む妖しい光を宿した瞳。

 

 女性にしては高めの背で、凹凸がハッキリとしながら、全く無駄のない理想の女神像のような体。

 

 そして、血色のよい白い肌を包むように纏われた、雪よりも白いドレスは雪景色の中で、ダイアモンドのように鈍く輝いて見えた。

 

 それはまさしく生きた至高の芸術であり、女神と呼ぶことさえも烏滸がましいと感じるほどに完成されている。

 

『おいで、お姉さんは本物の怪物だけど怖くないよ』

 

 その言葉に少女はハッとしながらも、気づけば光に引き寄せられる虫のように女性の前に立っていた。

 

 女性は笑顔で少女の頭を撫でる。それだけで少女は天にも昇るような思いになった。

 

 少女は美しい怪物――アルモーディアに恋をしたのである。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『おろ、また来たんだ?』

 

 それから少女は時間を見つけては足繁くアルモーディアの元へと通った。

 

 アルモーディアは何故かいつもそこにおり、まるで何かを待っているようだったが、そんなことは構わず、少女は彼女と他愛もない会話をする。

 

 少しでもアルモーディアの話を聞きたい、少しでも彼女と一緒にいたい。まだ魔術師としては幼いながらも、恋を自覚した少女は己の可愛らしい欲望のままに行動していた。

 

 そして、魔術師らしく狂った価値観を植え付けられつつある少女だが、愛という価値観だけはアルモーディアの過去の体験談や、愛抜きには語れない人間と人間との物語を聞き、少しだけ凡そ人間らしい価値観を持つ。

 

『さて……今日はこの辺りにしようか』

 

 そして、ある程度の時を共に過ごすと、決まってアルモーディアは彼女からお開きにした。少女のことを思ってか、自身のためかはわからないが、少女が彼女に会うのは密会に近いため、少女も仕方なく名残惜しげに引き下がる。

 

 そして、帰って行く少女の背に手を振った後、アルモーディアはポツリと呟いた。

 

『待たせて悪かったね。今日も遊んであげるよ』

 

 次の瞬間、どこにいたのか彼女と対峙するようにひとりの男性が現れた。

 

 その手には黒鍵を挟んでおり、一目で聖堂教会の代行者であり、その上、人間としても生きた英霊のような実力者であることが見て取れる。

 

 次の瞬間、男はアルモーディアへと黒鍵を投擲し、彼女はこともなげに、その全てを素手で粉砕した。

 

 

 

 

  

◇◇◇

 

 

 

 

 

『おや? これはタイミングが悪かったね』

 

 アルモーディアとの奇遇から1ヶ月ほど経ったある日。

 

 いつものようにアルモーディアの元に少女が向かうと、そこにはひとりの男性の人間が倒れ伏していた。それは壮年の老人であり、胸にポッカリと空いた穴が2度と立ち上がることはないと示している。

 

 少女は黒魔術を教え込まれて育った魔術師であり、日頃から獣や人間の腹を割き、臓物に接吻を行うような魔術であるため、それ自体に特に思うことは無かったが、辺りに散らばる折れた黒鍵と、男が身に纏うカソックに目が向き、所属を理解すると共に嫌悪の眼差しを向けた。

 

 その様子に"魔術師らしいなぁ……"と呟きながら、アルモーディアは口を開く。

 

『彼は埋葬機関の人間だ。少し昔から私を何度も殺しにくる奴だったよ』

 

 アルモーディアは殺した人間のことを語る。

 

 その男は数十年間で幾度となく、アルモーディアに襲い掛かってきた、聖堂教会の必要悪である埋葬機関の代行者であった。

 

 アルモーディアとしては、暇潰しにもってこいの相手であり、毎回遊び感覚で戦って追い返していたらしい。

 

 そして、少し前に孫娘へと地位を譲ってからは、めっきり見掛けなくなったが、ここ最近になって突然、毎日のように襲撃に来るようになったため、一時的に居住地から場所を移し、この景色のいい奥地に暫く滞在していたそうだ。

 

 そして、たった今、もう滞在する理由がなくなったところであろう。

 

 その話を聞いて少女は憤慨し、魔術の材料にしてしまおうと死体に近づく。しかし、アルモーディアはそれを手で制した。

 

『その体を黒魔術に使うのは止めた方がいいよ』

 

 少女はアルモーディアに情が湧いているのかと聞いたが、彼女は肩を竦めつつ、死体の方に目を向けた。

 

『末期癌だ。病巣の臓腑はあまり役には立たないだろ? その上、残り少ない寿命を更に削って無理矢理、体を動かしていたから全身は余すとこなくボロボロさ。それ使うぐらいならその辺のカラスでも捕まえた方がマシさね』

 

 その言葉の通り、老人の体は無惨な程に壊れ尽くしていた。そのまま戦っていたのだから、埋葬機関というものは人間の化け物揃いな上、彼はその中でも最上位だったのだろう。

 

 尤も所詮、真性の怪物には届かなかったようであるが。

 

『全く……馬鹿だよねぇ。概念武装も外典も持たずに来やがってさ……。なんてったって生涯の最期の幕を、こんな不良真祖に下ろさせるんだか……』

 

 そう言いながらアルモーディアは老人の頭の前で屈み、その顔を覗き込む。

 

 その表情はとても穏やかであり、まるで眠るように息を引き取ったように見えた。到底、生涯追い続け、遂に届かなかった怨敵へと向ける死に顔からは程遠い。

 

『ばいばい、名も無きナルバレック』

 

 その者にも名はあろう。寧ろ、呼んだ名こそが名前の筈だが、何故かアルモーディアはそう呟くと、そっと頬に触れる。

 

 次の瞬間、老人の骸は空想具現化により発生した熱のない柔らかな炎に包まれ、焼けるのではなく、ほどけるように、雪の降る空へと消えて行った。

 

 それを少しだけ寂しそうに見つめるアルモーディアの横顔を見て、少女の胸を渦巻くのは、哀悼でも憐憫でもなく、彼女にそんな表情をさせた老人への激しい嫉妬であった。

 

 "私があの人にあれ以上に慈しむ顔をさせたい"と、少女の胸にあったのは純粋で身勝手な独占欲である。そして、同時に才ある魔術師として頭のよい少女は、それが己では叶えようもないことだということも理解していた。

 

 あの老人は自分よりも、もっとずっと純粋に強く、また遥かに高い地位を持ち、その全てを超えた先で最期に選んだ理想の結末が、きっとこれだったのだから。

 

『なんだい?』

 

 アルモーディアがここから居なくなるのは明白だろう。だから少女は真祖の吸血鬼である彼女に、あの老人には絶対に出来なかった頼みをした。

 

 "私をあなたの死徒にして欲しい"と。

 

『それはできない』

 

 そして、その返答はこれまで、一度もなかったアルモーディアによる明確な否定だった。

 

 少女は行き場のない喪失感から、血が吹き出るほど頭を掻きむしりたい衝動に駆られて手を伸ばしたが、その前にアルモーディアが少女の手を掴んで止め、彼女の瞳を見たことで落ち着きを取り戻す。

 

『人間は人間の社会で生きるモノなのだから、身の丈にあった生を謳歌すべきだよ。この世界に死徒の社会はないのだからね。完全な不死者(真祖)半端な不死者(死徒)もただの爪弾き者さ』

 

 そう言うアルモーディアはこれまでと同じように朗らかな笑顔だったが、目だけは一切、笑っておらず、濁った血液のようであり、底冷えするような恐怖を宿していたのだ。

 

『まあ、それを差し引いても苦痛だよ。過度な長生きなんてさ。自分はそのままなのに他の全てが、老いて壊れて死んでゆく――いや、そうは言ったが、それは嘘だな。私はもう、そんな感覚はほとんど無いんだ』

 

 子供にしてはいけないことを言い聞かせるように、はたまた教訓を語るかのように、アルモーディアは明るい声で、手振りを交えなから説明する。

 

『うん、私みたいに長生きし過ぎるとね。周りの者が死ぬことすらも、ただの摂理としてしか捉えられなくなるんだ。君と話して楽しいのは本当、会えて嬉しいと思うのも本当だ。けれど、今この場で死のうと、10年後、100年後に死のうとも、私はきっと同じ感想を抱く。"ああ、残念だったなぁ"ってさ。ただ、それだけなんだ』

 

 そう言ってパチンと手を軽く叩く。それからはこれまでと同じようにアルモーディアの目も笑ったものへと戻った。

 

 それを聞いて少女は矛盾を感じた。先程、老人へと向けた表情は決してそれだけではなく思える。だとするのなら、きっとアルモーディアは今際の別れに、己がどんな顔をしているのか、あれだけ長い生涯を送りながら知らないのだろう。

 

 誰でもない自分の顔を自分で知ることはできないのだから。

 

『まあ、"私以外の不死者に望まれたり"、"私が信念を捻じ曲げるほどの者"ならば話は別だけど……今のところ君にはそこまでの魅力はない』

 

 アルモーディアはバッサリとそう言い切る。

 

 同時に少女は絶望した。結局、少女がどれほど彼女を想おうと石壁を叩くようにアルモーディアは動じないのだ。彼女の隣は、人間という己の身では余りに遠かった。

 

 そんな中、少女は考える。せめてどんな形でも他にアルモーディアと長く居れる方法を。

 

 そして、考えた末に少女は、ダメで元々で側面を変えたアプローチを仕掛けた。

 

『使い魔ぁ?』

 

 ただ、死徒になりたいのではなく。アルモーディアの使い魔として置いて欲しいと願ったのだ。魔術師として才能はある自身ならば、きっとそれなりに使えるだろうという旨も添えて。

 

『ふーむ……この先1000年ぐらいは使える使い魔か……それは考えたことなかったなぁ』

 

 意外にもアルモーディアの反応は好感触であった。さっきのように目の色が変わった様子もない。

 

『実はアルモさんにはちょっとした夢がありましてね。実は可愛いかったり、綺麗だったりする女の子の使い魔が常々欲しいんですよ』

 

 アルモーディアは"黒レンみたいに!"、"白レンみたいに!"と続けて言う。女性にその内容は理解できないが、少なくとも非常に前向きに検討されているということは理解できた。

 

 そして、アルモーディアは"まあ、レンは別にアルクェイドの使い魔なわけじゃないが、それはそれ、これはこれ"と、ひとりで呟いてから、更に言葉を続ける。

 

『ただこの世界で死徒は本当に肩身が狭いよ? 月姫と比べて、fateの流れを組んだFGO(こっち)だと、およその計算で、魂のキャパシティが数十倍は優れてないと、まず死徒になれない上、なっても人間に少し色がついたレベルのクセに、デメリットは据え置きだからね。それで得られるのが、魂を腐らせながらの高々1000年か、2000年程度の延命だ。親との関係もマルチ商法染みてるし、ぶっちゃけ割と本気で死んだ方がマシなんじゃないかと思うよ?』

 

 まるで諭すようにアルモーディアは言いながらも少女の回りを歩きつつ見て回る。その様子は少しだけ嬉しげであり、使い魔という言葉にかなり惹かれているように見える。

 

『ふむふむ……見た目は私好みだし、そこまでの意思があるのなら友好の証にこれを渡しておこう。これもまた戯れさ』

 

 そう言ってアルモーディアはどこからともなく、赤い液体の入った一本のアンプルを取り出す。そして、それを少女へと手渡した。

 

『23歳か24歳くらいになっても、まだ私の使い魔になりたいなんて酔狂な事を願うのなら……そのアンプルを使うといい。抜き出した私の血を少し改良したもので、才能さえあれば、即座に死徒化出来る優れものさ。ただ、死徒になれるかは天のみぞ知るといったところ。なきゃ、即死したままだから使うときはそれ相応の覚悟で使えよ? まあ、やったモノをどう使っても君の自由だ。永遠に劣化しない精霊種の血液という事で黒魔術の魔術触媒にも最適さ』

 

 それだけ言ってアルモーディアは少女を撫でる。少女はアンプルを握り締めつつも、名残惜しそうに彼女を見つめた。

 

『まあ、そうでなくて、また普通に会いたければ――はい、私の名刺。携帯番号と現住所が載ってるから気軽に、通話もリア凸も歓迎さ』

 

 それを渡すとアルモーディアは少女から離れ、静かに消えて行った。

 

 少女は暫くしてから、いつの間にか雪が降り止んでいたことに気がつき、空を見上げると雲間から覗く晴れやかな青空が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべ……あの娘のことすっかり忘れてたぁ!?」

 

 ちょっと昔を思い出した夢を見た私は布団を跳ね退けて起き上がる。

 

 うん、お目覚めバッチリ、グッドモーニング。

 

「何やってんのよお前……」

 

 するとまず始めに部屋にいるぐっちゃんと目があった。部屋を見渡せば、一昔前のラブホテルのような内装ではないので、千年城ブリュンスタッドではないことがわかる。

 

 ならばカルデアだろう。まだ若いし、いけるし(師匠)にぶっ飛ばされて気絶したまま運び込まれたようだ。

 

「カルデアの方々は私を拘束したりしなかったみたいだな。いい人たちだ」

 

怪獣VS怪獣(あんなもん)見せられて、お前を拘束しようなんて思うわけないでしょうが……」

 

 埋葬機関辺りから早朝第七聖典(ななこ)とか、リアルにされた経験があるのだが、心配されそうなので口を紡いでおこう。

 

「それで? ぐっちゃんがここにいるのはどうし――」

 

「……うるさいわね! 暇潰しよ、暇潰し!」

 

 それだけ言ってぐっちゃんは足早に部屋から去って行った。

 

 まあ、恐らくは私が寝ている内に人間が採血などをして、私を悪用しないように目を光らせていたのだろう。全く……度しがたいほど、不死者に向いていないレベルのいい娘である。

 

 とりあえず私も知り合いを探すために外へと出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おはよう。アルモさん!」

 

「おはようございます。アルモーディアさん!」

 

 第一カルデア村人は、オレンジとナスビのカップルだった。世界って狭い。まあ、今カルデアはリアル世界が100人の村だったら状態なんだがな。

 

「おはよう二人とも、ロマニだの、レオナルドだのが、私の話を聞きたがっているかも知れないが、このカルデアに知り合いがいることを今の今まで忘れていたので、ソイツを回収したい」

 

「知り合いですか……?」

 

 マシュちゃんが少しだけ怪訝な顔をする。まあ、私のことを立香ちゃんの言葉だけで信用するのも難しいだろう。その上、こんな話である。それにこの頃のマシュちゃんは微妙にキャラが定まりきっておらず、割と毒を吐く娘だった覚えもあるな。

 

「珍しく機械や情報系にも明るい魔術師だったからな。マリスビリー・アニムスフィアを通じて、カルデアに送り出した知り合いと言えばいいか?」

 

「そ、そうなのですか……?」

 

 まあ、実際は使い魔だったり、それ以上だったりするわけだが、それを言っても間違いなく信じてもらえないので、とりあえずはそれでいい。

 

 実を言うと、マリスビリーと私は面識がある。というか、寧ろ私は何もしていないのだが、向こうからやって来たのだ。

 

 自分で言うのもなんだが、真祖と言えば私なぐらい世界では浸透しているので、ぐっちゃんより先に私のところにマリスビリーが来たのはある意味、当然だろう。

 

 無論、全てを知っている私としては、マリスビリー時代のカルデアがグレー過ぎるため、断ったが、彼も異様なぐらい食い下がってきた。

 

 よほどに受肉した精霊の生体情報が欲しかったのか、それ以外に何かあるのかはわからないが、仕方なく話の流れ的にも妥当だと思って、ぐっちゃんの位置情報や、ぐっちゃんへの殺し文句などをリークしたのである。

 

 つまり、この世界では私のせいで、ぐっちゃんはカルデアに行ったのだ。勿論、この事は墓まで持っていこう。あらやだ、私の墓遠すぎ……?

 

「――――――――という女性だ」

 

「誰?」

 

「え? あの方ですか……?」

 

 何故かマシュちゃんは目に見えて狼狽していた。そこまでアイツは………………うん、何かやらかしたり、何もしなかったりしてないだろうな?

 

 立香ちゃんは勿論、知らない。逆にアイツが知ったら絶対、立香ちゃんに何かすると思うので、今から釘を刺したり、首輪を付けに行くのだ。いや、それで足りるだろうか……? まあ、立香ちゃんならアイツとも仲良くなれるだろう、たぶん。

 

「はい、知っております。カルデアではBチームに所属しています」

 

「Bチームの人なの?」

 

 立香の呟きに心で納得した。

 

 多分、アイツは魔術基盤の関係でカドックくんと同じぐらいか、それより低い魔術師だが、才能としては数段は優秀だと思われる。

 

 しかし、人間性というただの一点が非常に問題があるのである。まあ、黒魔術の魔術使いは皆あんな感じなのかも知れないが、風評被害であって欲しい。

 

「となるとコフィンか。ありがとう二人とも」

 

「アルモーディアさん? 待っ――」

 

 私は圏境で隠れると、コフィンを目指して走り出した。また、ぐっちゃんと同じパターンになるとはあまり考えていなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 圏境を解いて、私の感覚器で探ると、マスター候補らを凍結してあるコフィンの中で、ひとつだけ反応の違うモノを見つけた。なのでそれを抉じ開けて中身を引きずり出す。

 

 それは怜悧な美貌を持つ女性であった。体のあちこちに損傷が見られるが、コフィンの外に出しておけば時期に再生するだろう。死徒だもの。

 

 彼女は長い私の生涯で、死徒にした唯一の人間である。死徒で使い魔になりたいなんて言われたの初めてだっからな。まあ、一人ぐらいならと思ってしまったのだ。

 

 また、彼女は使い魔になると同時に、私を真祖と知っていながら求婚された場合、あまり断らないということを知っていたのか。求婚してきたのである。

 

 されちゃったら仕方がない。1000年から2000年ぐらいなら別にいいだろう。もう現代だしな。この先の時代に私の知る英霊もいない。

 

 ちなみに私は同性でも結婚する。法律やら宗教なんて、真祖には存在しないし、そもそも子供を作れないので私的には、どちらでもそう変わらん。元々、事実婚みたいなものだ。

 

 しかし、結婚は結婚なので、ちゃんと指輪を互いに作ったりしているため、彼女の左手の薬指には指輪が嵌まっていた。私は指ごと落としかねないので、彼女の見ていないところでは付けていないが、目を醒ます前に付けておこう――よし。

 

「………………ぁ……」

 

 それからすぐにフラフラと死体のような彼女は立ち上がると、私を見据える。そして、こちらに手を伸ばしてきたので、手を掴みこちらに抱き寄せた。

 

「君の好きにしていいよ」

 

 そう言うと彼女は私の首筋に噛み付き、肉を食い破りながら血を啜った。私の体はそれ以上の速度で再生し、彼女の体もみるみる再生していく。授乳をした時もこんな感覚だったなぁと、微妙にズレたことを考えていた。

 

「ぷはぁ……」

 

 再生してからも食べていた気がするが、満足したのか彼女は私から口を離す。彼女は眼鏡越しに蕩けたような瞳で私を見ている。

 

 そして、妖艶な笑みを浮かべ、私の首筋から顔に掛けて舌を這わせてから口を開いた。

 

「来るのが遅いわよ。私、寂しかった……」

 

「ごめんごめん」

 

「じゃあ、今日はあなたの心臓と肝臓を食べたいわ」

 

 我が伴侶ながら死徒に順応し過ぎだと思う。最早、私は焼き鳥の部位感覚なのではないだろうか。まあ、存在を若干忘れてたので、それぐらいで済むなら安いものだろう。

 

 なんだかんだ、私としては彼女の性癖なんて可愛いものだ。汚いのは生理的に嫌だが、グロいのは特に問題ない。

 

「アルモさん! やっと見つけ――」

 

「アルモーディアさん勝手なことは――」

 

「ちょっと! 勝手に入っちゃ――」

 

 すると追い付いてきた立香ちゃんとマシュちゃんと、何故か増えたロマニが走って部屋に入り、抱き合う私と彼女を見て停止した様子だった。

 

 まあ、よく考えれなくても、私は首筋を中心に自分のもの。彼女は口の辺りが私の血でべったりである。喰われているシーンを見られなくてよかったと思うべきだろうか。

 

 とりあえず、紹介はしておかないとな。

 

「紹介しよう。彼女は私の使い魔で、私の死徒で、今は私の伴侶でもある――」

 

 一旦、言葉を区切り、彼女をもう少し強く抱き締める。彼女の銀髪が私の鼻に迫り、黒魔術師特有の血腥(ちなまぐさ)い匂いがした。

 

 

 

 

 

「"セレニケ・アイスコル"だ」

 

 

 

 

 

 十数秒間、3人は固まった後。特にマシュちゃんとロマニに叫ぶほど驚かれ、何とも言えない気分になった。

 

 彼女、可愛いくて綺麗だと思うんだけどな、私的には。

 

 

 

 







※セレニケさんはこの小説のサブヒロインです(迫真) 作者は悪くない……作者の大好きなセレニケさんがヒロインの小説が読みたいのに誰も書かないのがいけないのです(責任転嫁)




~うちのペロニケさんの属性~
・アストルフォきゅんペロペロ
・サディスト
・ルーマニアのSさん
・変態女王様
・少年愛者
・拷問好き
・同性愛者 New!!
・マゾヒスト New!!
・人妻 New!!
・死徒 New!!
・アルモちゃんペロペロ New!!



~カルデアに集結した藤丸立香以外のマスター候補~

・アルモーディア
 サーヴァントに指示を出す前に自分が動いているタイプなので、サーヴァントがやることがなくなる。基本的に昔から一匹狼なので、指揮能力などはピカピカの初心者マークな上、本人の性質的に確実に才能はなく、慣れた頃にはとっくに人理が滅んでいるマスター。
解決策:指示の必要性の皆無なサーヴァントと契約する

・虞美人
 恐らくAチームとBチームを含め、一番ポンコツなんじゃないかと間幕で判明し、マシュが初めて敵で出て、シールダーのチャージが4カウントなことも判明したぐっちゃん。サーヴァントを自分で羽交い締めにしてスタンさせるマスター。
解決策:項羽と契約する

・セレニケ・アイスコル
 ペロニケさん。黒陣営のユグドレミニアで、原作だとアストルフォをペロペロすること以外は特に何もしていないマスター。
解決策:ペロペロできないように無機物のサーヴァントと契約する



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