突然、こんなタイミングで連載を再開してもきっとバレませんでした。
ナッちゃん見て思いましたが、まだ未実装ですけどこの主人公汚いときこさんの妹みたいですね(罵倒)
※このカルデアはまだ1部です
陛下と真祖
「ぅ…………ん……」
私は誰に言うわけでもなくそんな事を呟きながら起床し、目覚ましの時刻を確認して顔をしかめる。
このカルデアという施設において朝日の光というものは、あまり拝めず太陽光を模した人工の明かりに照らされているに過ぎないが、そんなことは寝起きの怠さに比べたら些細なことでしかない。
真祖の身体でも寝起きの怠さだけは一向に変わらないため、少し夜更かしして起きたら正午過ぎで1日の半分を無駄にしたような気がする人間のそれの気分を只今味わっているところだ。
いやぁ……まるで、6年と半年ぐらい塩漬けされていたような感覚だな。不思議ふしぎ。まあ、短いね。
「あ゛ぁー……よく寝たぁ……」
まあ、本来真祖の吸血鬼は夜行性なのに無理矢理人間同様の昼生活をしているせいだろう。
当然ながら夜行性の生活をした方が肉体的にも精神的にも楽なのだが、大多数の人間に合わせた方が生活しやすい。
しかし、別段昼夜逆転――もとい夜昼逆転したところで肉体的には眠気と化粧の乗りぐらいにしか影響しないので、こんな生活を少なくとも有史以来ずっと続けているアルモちゃんなのである。肌の張りはいつでもピチピチアルモちゃんだ。
「ねむねむ……」
そう言えば寝起きの瞼が上がらないような眠気とは、眠気ではなく目の乾きであり、目薬を差すと秒で眠気が飛ぶ事もあるらしい。ちなみに私は試しても無駄だった。単純に昼型真祖にしているのがいけないのであろう。
私は寝惚け眼を擦りつつベッドから抜け出すと、それまでのパンイチスタイルから空想具現化によって白ジャージを纏い、ついでに髪を後ろ手にヘアゴムで縛る。ふわふわヘアーのアルモちゃんはこれで後ろがもっふもふである。
それから部屋の端に配置された小さめの机に向かうと、その上に乗っているラジカセの再生ボタンを押し、音楽が掛かる前に部屋の中央に立った。
『ラジオ体操第 1ー!』
「ふわぁ……」
やはり日本人の朝といえばこれである。軽い運動をすることは大事なのだ。
しかし、カルデアの広いところで私が運動していると、体育会系や好戦的なサーヴァントたちが何処からともなくわらわらと沸き、なんやかんや腕試しのセルフグレイルウォーが発生し、最終的に立香ちゃんやダ・ヴィンチちゃんに何故かアルモちゃんが一番怒られるのだ。ショッギョムッジョ。
『イチ、ニィ、サン、シィ、ゴォ、ロク、シチ、ハチ――』
「よしっ……」
やはり朝の目覚ましと言えばこれである。目というか、身体が目覚める気がする。
尚、ラジオ体操をババ臭いとか、おばあちゃんやんとか言った奴は、漏れなく伝説の木の下に埋まって貰うよ。
もちろん、第2までやる予定で徐々に元気よく体操していると部屋の扉をノックされる音が耳に入った。
「…………? はいはい、今開けますよー」
はて? 扉の脇にはしっかりインターホンが付いている筈である。そのため、電子ロックの扉をノックする輩なぞはよほどに機械に疎い者か、召喚され立てホヤホヤか、古風で融通を利かすのが少し苦手な英霊ぐらいのものだろう。
そんな事を思いつつ扉を開け――。
「……………………」
黒と青を貴重に白を取り入れたローブに近い服装をし、毛先が青に変わるグラデーションをした銀髪と、それだけ切り取ると大変場違いなクソデカ黒リボンをした女性――もとい魔女。
私にとってまあまあ古めな友人である"
ならばニムエっちなのかと問われれば、アイツの性格上、天地がひっくり返る程度ではまず人理修復なんぞに手は貸さないと思われるため、瓜二つの姿の他人である事が理解できるからだ。世界が滅びるならそれをツマミにしている。
まあ、私が認識できないレベルのいつかのカルデアなら不可能でもないかもしれないが、現実的に言えば答えはひとつしかない――ブリテン異聞帯こと妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェにおける異聞帯の王の女王モルガンなのだろう。
知っている姿の者が知らない者であると思うと少しだけ寂しくはあるが、まあ別にニムエっちに会えなくて寂しいかと問われれば、そんな事も特にない程度に会おうと思えば会える友人なので別に関係ないか。ニムエっちが消えるときは世界ごと私も消えるだろうしな。
「………………」
「………………」
さて、流石に面を喰らってしまったせいで、私の方から声を掛けなかった事が災いして互いに喋らない時間が過ぎる。
「ちょっと失礼」
さて、幾ら何でもブリテン異聞帯こと妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェにおける異聞帯の王の女王モルガン――長過ぎるので縮めて異モルガンとは接点が無さ過ぎる。そもそも弊カルデアはまだ1部だぞ? シナリオどないなっとんねん。
私は、モルガンちゃんに満面の笑みを浮かべながら扉を閉めた。
恐らく扉の開け方が悪くて、平行世界やら異聞帯にでも繋がってしまったのだろう。アルモちゃんはスーパー魔法使いだったのかも知れない。もう一度、開ければそこには正しい来客の姿がある筈だ。
そして、今度はゆっくりかつ繊細、あるいは大胆に開ける。その先にはいつもの景色が――。
「………………?」
そこにはキョトンとした様子で小首を傾げているモルガンちゃん陛下がいた。ニムエっちなら絶対にしないであろう表情差分に腹が捩れそうになるから止めて欲しい。
「入って、どうぞ」
「――っ……! 失礼します……」
まあ、兎に角こんな別嬪さんを玄関前に立たせておくのは私の沽券に拘るので彼女を招き入れる。アルモちゃんは吸血鬼だろうが構わず敷居を跨がせちまうんだぜ?……ああ、私、吸血鬼だったわ。
「座って座って」
「あっ、その……」
とりあえず、モルガンちゃんの背中に回り込んで押し、部屋にあるティーテーブルに座らせる。あの女の嫌なところと妖精のカスなところの煮凝りみたいなニムエっちとそっくりな娘がオドオドしてるのがもう面白過ぎる。ちなみにアルモちゃん的にはニムエっちとオーロラどっちがアレなのかと言えば生態として同情できる分、オーロラの方がマシである。
私はニムエっちもとい汎モルガンを知っているというか、現在進行系で友人である。ぐっちゃんかそれ以上の親友と言ってもいい。狡猾、悪辣、淫蕩、殺したいだけで死んで欲しい訳ではなかったが揃った型月詰め合わせの困ったちゃんであり、それと全く同じ顔と身体をして可愛らしい少女のようなモルガンちゃんこと異モルガンが来たのだ。
この感情は言わば――メイヴちゃん現象……ッ!!
正確にはスカサハを知っているメイヴちゃんがスカディに会ってしまった現象である。今なら彼女に大いに共感できよう。きゃわわ。
「アイスティーしかなかったけどいいかな?」
「いえ、お構いなく……それより話を――」
モルガンちゃんが何か話を切り出すよりも先に最高速度で紅茶と茶菓子を添えておく。洋菓子は作り置きのフェナンシェだが、これで問題ないだろう。ペナンシェ様でもペペローニ様でもペロペロ様でもない。
「アイスティー……?」
「翌々考えたら冷やすの面倒かったから普通にホットにした」
「…………そうですか」
"そう言うところは変わりませんね"とこちらが聞けば理由のわからないことを呟きつつ、出されたモノに口を付けるモルガンちゃん。
うーん……やっぱいるんだろうなぁ……異聞帯アルモちゃん。むしろ、ゴキブリ並みを遥かに超える生存力と生きた化石っぷりなアルモちゃんがいない訳が無いというかなんというか……それと多分彼女側に着くだろうなという確信もある。分岐の年代的に南米異聞帯ぐらいじゃないか? 私が居なさそうな異聞帯って?
「あっ……」
まあ、そんなことよりお茶とお菓子を食べて表情が少し綻んだモルガンちゃんの方が大事なんですけどね。ニムエっちにやっても当たり前って顔されますしおすし。
「美味しい……」
「私の知るニムエっちと味の好みは同じなようだね?」
「っ……!」
はてさて……そろそろ現実と向き合うとしよう。彼女はモルガン――っぽい妖精娘であり、私の知る純度100%モルガンであるニムエっちとは、ちょっとうんとえっと……色々な配慮で比べられないです、はい。
それはそれとして彼女が態々私に尋ねて来たということは、汎人類史やこの世界での私とモルガンの関係を考えれば、枝分かれした世界のひとつと言えど自ずと答えは出る。何よりも私の知る彼女なら私に対してはしないであろう遠慮や憂慮に満ちた表情だけでわかるだろう。今、カルデアスちゃんのことは考えないぞ。
「私は君を知っているけれど、君は私の知っている君ではないし、君の知っている私もきっと私じゃない。それでも君にとって私は友人だったんだろうね。そして、君の世界と運命を共にした筈だ。だって、私ならきっとそうした……私というガイアの精霊は、真祖はその世界を愛したんだから」
「………………」
「お月様は何でも知ってるんだぜい?」
「ふふっ……本当に変わらないのですね」
だから話し辛そうに躊躇いながらも言葉を紡ごうとした彼女の言葉を遮ることにした。ただ、私に会いに来ただけの可愛らしい少女の相手はそれで十分だ。
「ではひとつだけ……もしこの状況になったのなら、こう言えばいいとあなたに言われました」
これまで見て来たモルガンの中で、飛び切りの微笑みを彼女は浮かべる。
「また……友人になっていただけますか?」
友人の言葉を無下にする気なんて、無論私には更々無かった。
よし! じゃあ、無礼講だからちょっと飲むぞー! えへへへへー! なら今日はアイスティーにしようかなぁ? 私も飲みたくなっちった!
◇◇◇
「おっ、立香ぁ! えへへ……今日も可愛いねぇ! 昨日よりも数ミクロ大人になって益々アダルティーなマイエンジェルぅ! すーはー……ぷぁ……あー、キマる。やっぱり酒タバコとか趣向品ってあるからいけないんだと思うわけよ? つまり立香は罪、ギルティ、わかるこの罪の重さ? これはもう罪に罪を重ねるしか無いってわけよ? と言うわけで……一緒に冷凍した七面鳥、丸々油で揚げようぜー! ひっく!」
「アルモさん、朝から飲んでる……エミヤに怒られるよ? えっ……モルガンさん……?」
「…………あなたは何も見ていません。いいですね?」
異聞帯のモルガンちゃん――長いのでモルちゃんと意気投合した私は、とりあえずアイスティー片手にカルデア案内でもしようと食堂に来たところ立香が居たので、ハスハスしてから立香も巻き込む事にした。毎日のリツカニウム供給たすかる。
「飲んでないよ? 仮に飲んでたとしても酔ってないし、大丈夫だからねぇ? 今日はただのアイスティーだよ、アイスティー」
「あはは、アルモさんのせいで私お酒には詳しくなっちゃったんだ。ロングアイランド・アイスティーのことでしょ?」
「おおっ! 日々、博識になる立香は素敵だねぇ! まあ、硬いこと言いなさんな。迷惑は……たぶん掛けるけど被害はそんなに出さないからねぇ――ヨシっ!」
とりあえず、アイスティーを飲み干しつつ、新しいアイスティーの材料になる酒のボトルとレモンやコーラを厨房から異空間に放り込む。
そして、食堂の隅に半切りのドラム缶を置き、そこに並々と油を注いでから空想具現化で瞬時に高温にする。ふと、振り返ると厨房にいる今日の担当の子たちが目を丸くしていた。その中にはエミヤもえんまちゃんの姿もない。まあ、だから決行するんですけど。
「へへっ、へへへ……!」
そして、冷凍された七面鳥を取り出すと、その場が静まり返った。
「賢いアルモちゃん知ってるよ? 突然その場が静まり返る意味は"どうぞ続けてください"だよね? よい子は真似しちゃダメですよ?」
「いや、アルモさんちが――」
「アルモーディ――」
「ほいっ」
次の瞬間、ドラム缶に冷凍七面鳥が投げ入れられ――水蒸気爆発の火柱が上がると共に飛び散った燃える油で私の白い芋ジャージと白玉肌に火が付き、辺りをゴロゴロと転げ回る。
「ああぁぁぁあぁぁぁぁ!?」
「………………」
「………………」
ああ! 立香とモルちゃんに多分ゴミを見るような目で見られてる! 堪らん! うお、アッチい!?
「モルちゃん! あなたのお友達の真祖が燃えてるんだよ!? 何か言うことないの!?」
「なら望み通り、消し炭にしてやろうか……?」
あっ、酷い! でもニムエっちっぽい! でもでもモルちゃんに言われていると思うともっと滾る! 気持ちいぃ! えへへへー!
「モルガンさん……アルモさんって昔からこうなんですか?」
「…………ええ、概ねこのような奇行ばかりしていましたよ」
どうやら妖精國の私も似たようなことをよくしていたらしい。なんてわんぱく系知的美女なのだアルモちゃんは……?
「亜瑠母様……?」
見知った声が聞こえたのでそちらを見ると、食堂の入り口に立つえんまちゃんが、無表情佇んでおり、その深淵のような輝きを失った瞳と目が合う。
どうやらシフトには入っていなくとも食度に足を運んでいたようだ。よく見たら既に抜刀しており、とてもこわい。
「やばたにえん」
「あなた様ほどの料理人が、食べ物で遊ぶなんて……ゆるせまちぇん!」
「アルモさん、昨日は大根でマハーナーガ作ってたのにね」
「こっ、こういう調理法なんだよ! というか別に料理人じゃないし、そもそもアメリカじゃ日常茶飯事だ――」
だいたい、私に言わせれば大根を竜の形にするのも冷凍した七面鳥を油にぶっ込むのも変わらん。どっちも食い物で遊んでることに変わりはないし、人間はその辺りに優劣を付けたがるから面倒くさい。要するにアルモちゃんに言わせれば、高級フレンチは食べ物で遊んでるマナー講師だからデートはラーメン屋で良いってこと!
え? どのみち食べ物では遊んでた? それはそう。
言い訳の途中で斬撃が飛んで来たため、それを片手で打ち払いながら空想具現化で火の始末を行いつつ、多少揚がった七面鳥を油の中に手を突っ込んで救出する。
「じゃーねー! 立香ばいびー! あいらぶゆー!」
「ええ……」
そして、生焼けの七面鳥を異空間に収容してからモルちゃんを抱えてその場から逃げ出した。
◇◇◇
「火加減はいい感じだね」
とりあえず、えんまちゃんを撒いて隠れ家に避難し、中途半端に揚がった七面鳥を程々に油を張った中華鍋に入れ、油を定期的に掬って掛けながら今度は普通に揚げていく。冷凍したままやらなければ地味な絵面だろう。
「あっ……あのー……」
そもそも油にぶん投げることを目的に下味を付けてから冷凍した七面鳥である。故にえんまちゃんに言ったことは特に間違っていない。アルモちゃんはそう嘯いた。
それはそれとしてまだカルデア1日目だからなのか、借りてきた猫のように大人しく炬燵に入っているモルちゃんは非常に微笑ましい。
しかし、年中炬燵出しっぱなしにして……良いと思ってんのか? カルデアの外を見てみろ! ブリザードだぞっ! ……ほな適切か。
「いや……あの……なんで急にヒメの部屋で揚げ物を……?」
私とモルちゃんにより、炬燵の隅に追いやられた妖怪フレンドのひとりである刑部姫ことおっきーが何か言っているが、この娘はいつもこれぐらいの扱いだから別にいい。
「モルてゃ、紹介しよう。彼女はおっきー。頼めば通販で何でも取り寄せてくれるから覚えておくといい」
「なるほど」
「いや、QPは取るからね!?」
"手数料も取るよ!?"などと続けて吠えているが、頼めばやってくれるみたいだ。ユニバース時空の方に繋ぐのちょっと面倒くさいから正直ありがたいんだよね。やっぱり陰キャは押しに弱いし、求められるとなんだかんだ言って頑張って答えてしまう。元クソ陰キャのアルモちゃんが言うのだから間違いない。つまりアルモちゃんは押しに弱い。未亡人の時に求婚されたら結婚するしな、うんうん。
まあ、おっきーって正直引き籠もりかつオタク趣味なだけで、逸話からして厚かましいし、別に陰キャではないよねとアルモちゃん思うわけだが、それを本人に直接告げない分別ぐらいは私にもあるのだ。
「そもそも誰なのその……何処かの女王様みたいなアルトリア族の人は……?」
「んー? モルガンだよ。ほら、よく話してたじゃん?」
「あー……ブリテンからの付き合いの? なるほどねー…………え゛ッ!?」
ホント反応が面白くて好きだよおっきー。ちなみにアルモちゃんはカルデアにいる人外娘とはだいたい友達である。尚、人外娘の範囲には神霊含む。
「そんなことより、ほら揚げ鶏」
「なんでセブン商品になるのさ? しかも七面鳥だし……いや、旨っ……! ナニコレ旨っ!?」
「脂質、濃い味、肉々しさ、作り方の雑さ。ジャンクフードってのはこうじゃないとねぇ。ほらアイスティーもあげる」
「わぁ、ありがと……ぷはぁ……ってお酒ッ!? おー……効くぅー……」
「キャハハハハ! 出された酒は確り飲む辺りおっきーも妖怪で何よりだねぇ」
「…………(もぐもぐ)」
まあ、健康に良いわけないんだけどさ。直接脳に響くような旨いもんはそういうもんなんだよ。それにしても出されたものを無言でもぐもぐしているモルちゃんが可愛い。
◇◇◇
「モルてゃ……これ、なんだと思う?」
「……苗木でしょうか? 妖精國では見たことのない植物ですね……アルモーディアの自作ですか?」
「これね、ミキプルーンの苗木」
「…………みき?」
モルちゃんに陰の者の象徴であるおっきーを紹介し、深く考える頭を犠牲にQOLが爆上がりするアマゾネス・ドットコムについても教えたので、次の場所に来た。
ここはカルデアにある私の職場のひとつである農場であり、何時ぞやの生アルモチャンを切っ掛けに作る羽目になった実験農場だ。
テラフォーミングまでするのは定期的に掛け直しをする必要がある点でダルかったので、カルデアが用意出来るマトモな生育環境で採れるようにした作物や果樹を育てているから、ここで採れる野菜や果物は早ければ数日で収穫出来る。
「まあ、植物は種から改良して作ったし。管理人も造ったからアルモちゃん未だかつてない程の出血大サービスだね」
「管理人を造った……?」
ちょっと前に特異点作った時、廉価版の真祖の吸血種にワルキューレの制御機構を付けて量産したんだけどさ。全体的に思ったほどの出力にならなかったから逆に考えたんだよねー。
真祖部分が足を引っ張ってるんじゃないのかって。下手に性能を下げて出力したせいで、そもそも真祖にする意味がない。というか、結果的に廉価版と言うよりも出来損ないに近いから1体以外は真祖風の吸血鬼みたいなものだったし。まあ、これはあれだね。そもそも原型の片割れのアルモちゃんが元は汎用の真祖だからいけなかったんだろうね。
だから今度はワルキューレを基盤に機能として空想具現化を取り付けたワンオフ機にすることにした。その成果がコレだ。
するとやたら広く面積が取られたカブ畑でカブを撫でる作業をしていたワルキューレが立ち上がると、薄ら笑いを浮かべながら歩いて私の前まで来た。
そのワルキューレの容姿は瞳やインナーカラーを赤黒く染め、身体を十代後半程まで幼くして頭の羽根を付け直したブリュンヒルデのような姿をしている。
「紹介しよう。最強の農業用ワルキューレのミストさんだ」
「ミストと申します。カブ、大好きなんです」
農業用ワルキューレのミストちゃんは、そのよく出来た身体を眺めて苦虫を噛み潰したような表情になっているモルちゃんに野菜のカブを差し出す。
モルちゃんはカブは受け取らずに小さく溜め息を吐いていたので、私がもう少しだけ説明を付け足すことにする。
「ブリュンヒルデのデッドコピーに私の空想具現化の機能を積んで、私が研究し終えてる古今東西の魔術をインストールしたワンオフ機だよ」
「農業用……?」
「農地の管理は空想具現化が一番楽で、細かな調整は魔術でした方がやりやすいでしょう? 後、どうせ造るなら最高の物がいいじゃん?」
「悪いところも変わりませんね……」
なんだか、とても酷いことを言われている気がするが、アルモちゃんにはご褒美である。
え? ブリュンヒルデなんてどうやってコピーしたか? バカにしないでよね! アルモちゃんこう見えてもモノすごく頭いいんだからぁ!
ちょっと真面目な話、私は真祖で唯一ブリュンスタッド様の研究助手であり、当然ながら神代やそれ以前の時代はそちらの方に90%以上のリソースを割いていた。北欧の神造兵器の模倣ぐらい出来ないと思われる方が心外だ。故に徒手武術を含め他のことは真の意味で趣味である。
だから悪の組織とかで非道な実験してる博士みたいなタイプの筈だったのだが、その環境が固まる前にブリュンスタッド様が倒されちゃったから今のアルモちゃんは、こんな芯がなんなのかブレまくることが芯になってるようなわけわからん存在になっちゃったてことだよね。
まあ、そもそもと神代が終わってから現代までの僅かな時間は、私の生涯で換算すれば0.1%にも満たないので、お人間さんたちは気分が良くて燃え尽き期なアルモちゃんの外面しか見えていないというのはあるかもねぇ。
神代も終わって研究に関してはもうやることも意欲もない。故にこういう夏休みの自由研究染みたモノを与えられるとちょっと本気出したくなってしまう程度のことしかしないミステリアス、インテリお姉さんなアルモちゃんなのだ。
え? 他人の迷惑? 我真祖ぞ? 神より格上にして幻想種の頂点ぞ?
ちなみに完成お披露目の直後、ワルキューレちゃん達にフクロにされてボコボコのボロ雑巾にされ、シグルドの次に嫌われるようになった。カルデアの要望に従っただけなのに酷いよね、プンプン。
更に蛇足として、この件からカルデア側が私に大規模な依頼することはあまりなくなった。カルデアのお人間さんたちはみんな善性に溢れていて素晴らしい限りだな。
「あなた……とても似合いそうですね。おひとつどうぞ」
するとじっとモルちゃんを見ていたミストちゃんが少し頬を高揚させながら無音でモルちゃんに近付き、何かを掌で形成すると顔に手を伸ばし――普通にそれを手で制されたが、握られていたモノにモルちゃんは困惑しているようだ。
「眼鏡、掛けて、ください」
「ぐっ……なんだコイツは……!?」
「素材の味が強過ぎた」
ミストちゃんは魔術で作った眼鏡をモルちゃんに掛けようとゆっくり力を込め続けており、それがバーサーカーなモルちゃんと普通に拮抗しているどころか、若干押している辺りよく造れたと生産者のアルモちゃんはご満悦である。
暫く可愛い小競り合いを眺めていたが、モルちゃんの痺れを切らしそうな雰囲気をニムエっちの経験から察知した私は、流石にミストちゃんを止める。
具体的に言えば、ミストちゃんに私が頭を近付けると私の顔に眼鏡を掛けてきた。あっ、丸眼鏡だこれ。分かってるぅ!
「どうモルてゃ! 似合う!?」
「…………ええ、智慧があることと知的な外見であることに相関性はないということがよく分かりましたよ、アルモーディア」
「眼鏡、似合いますね……うふふ」
なんだかモルちゃんにも酷いことを言われた気がするが、とりあえずキュウリを何本か収穫してから農業区画から出て行き、モルちゃんの知らなそうな子たちのとこに行くことにしたアルモちゃんであった。
◇◇◇
その後――。
「モルてゃ、友達のテノちだよ。立香の家をしている」
「女に家と書いて嫁……私の好きな言葉です、ね」
「…………お前の周りには満足に会話ができる者はいないのか?」
「ちなみにテノちはアルモちゃんのことをお城だと思っている」
「現代の最新設備を備えた月の古城ブリュンスタッドに数多の幻想種が保養に集う楽園……これはもう姉妹都市と呼ぶしかありません、よ」
「おい、止めろ。そのまま話を進めようとするな」
「立香捕まえたぁ! 全くもうかくれんぼなんて恥ずかしがり屋さんなんだからぁ! えへへ……今日も可愛いねぇ! 昨日よりも数ミクロ大人になって益々アダルティーなマイエンジェルぅ! すーはー……ぷぁ……あー、キマる。やっぱり酒タバコとか趣向品ってあるからいけないんだと思うわけよ? つまり立香は罪、ギルティ、わかるこの罪の重さ? これはもう罪に罪を重ねるしか無いってわけよ? お姉さんと好き好きしようねぇ!」
「たすけて」
「あっ、いた。ほらモルてゃ、ランサーのアルモちゃんだよ。略してヤリモちゃんだね」
「うわぁ……」
「おっぱいタイツ師匠が、何時ぞやの特異点での出来事を座に刻みに戻ったせいで、なんか召喚できるようになってしまったんだ。ちなみにクラスはランサーじゃなくて立香の姉としての側面が切り出された感じのアルターエゴだよ。ああ見えて、狂化スキルも精神汚染スキルも持ってないよ。怖いよね」
「私は何を見せられているのですか……?」
「みてないで、たすけて……」
「そのアルモちゃんなんかキモいから好きじゃないんだけどなぁ……」
「なんだお前ら! お姉ちゃんから立香を取り上げるの!? ならもう死ね……
「おい、馬鹿止めろ。大人げなさ過ぎるだろ」
「はぁ……対抗術式でテクスチャの展開を遅らせます」
「ありがとうモルてゃ。誰か手を貸せカルデア中に張り巡らされる前に袋にする」
「手伝いが必要でしたか? あ、ですか?」
「……………………おのれときこさん……がくっ……」
「格だけ無駄に高い流石のアルモちゃん分霊も過去改竄デメリット押し付け概念攻撃には勝てなかったか。ランサーなら勝ってただろうにな。アルターエゴだもんな」
「勝利しました。あ、いえ、勝利しています?」
「ありがとうときこさん……!」
「ええ、めが……お姉さんに任せてくださいね!」
「立香はいいよね、ときこさん引けて……ぽち。先生はニ天したのに」
「なんですか……その明らかに可笑しな女神――」
「そそそ、彼女はときこさん、マイ・フレンド。立香が名付けちゃった怪異みたいなものだ。もう、助からないゾ」
「神に名付けを……?」
「あれ? 私、そもそもいつときこさんなんて名付けて……そもそも召喚――」
「おっと、少し緩んだか」
「それ以上いけない。巻き直しとくね。ええと……こんな感じか」
「――セカンドサーヴァントときこさん……アルモお姉ちゃん……」
「よしっ」
「……大丈夫なのですか? 運命線など弄って?」
「害するならぶち殺してるから大丈夫。認識をちょっとだし、立香に利があってデメリットが無ければ私は何でもいいのさ。楽しいし」
「……汝は少し妹に似ているな」
「にゃはは! ……ん? それ褒めてるよね? ね?」
◇◇◇
「アルモちゃんの友達を少し紹介できたね!」
「友人は選んだ方がいいのでは?」
「ははは、選んでるからモルてゃとも友達なんだよ?」
「ふふっ、アルモーディアは変わりませんね。ぶち殺すぞ?」
「お仕事でした、ですね」
夕方になったので、私とモルちゃんはときこさんを連れてレイシフトをしていた。
というのも酒だけは空想具現化したくない私の我が儘であり、カルデアで密造した酒をレイシフトで過去に持ち込み、マブって熟成環境を整え、それを更にときこさんの能力で過去に飛ばして即回収することにより、熟成を正規の手順でスキップするためである。
「ではやりましたね? あっ、やります。えいっ!」
この時代では確実に人の手の入っていない秘境などに酒樽を持ち込んで、それをたった今過去に飛ばすと、その場には持ち込んだ時より30年ほど煤けた酒樽が現れると言うわけだ。
「うぇへへ……過去最高……!」
「えっへん!」
「まさか、酒のためにだけ女神の召喚を……?」
「いや、ちょっと何言っているか分からないねときこさん?」
「はい、ときこさんはただ少し過去に明るいだけのお姉さんですヨー?」
お酒に関してだけは私はカルデアで暴れる、いや暴れた(過去形)のでカルデア側も仕方なく認めているのだ。そしたらときこさんはいつの間にかカルデアにいた都合のいいサーヴァントである。不思議だなぁ……。
「はぁ……」
なんだか、夕方に差し掛かりモルちゃんがだいぶ疲れた様子だったので、カルデア探索を切り上げて正解だったな。なんて気配りの出来る女なんだ……私は時々自分が怖い。
「ところで、立香を我が妻と呼ぶのは当てつけかな?」
「…………何にでも首を突っ込むのはよくはないクセですよ? 他人の前で呼んだことはない筈ですが……まあ、あなたならそれぐらいしてくるでしょう。次は怒りますよ?」
本当に優しいなぁ……モルちゃんは。これがニムエっちなら口を吹き飛ばされ、呪詛で蓋をされているところである。
それはそれとして丁寧語での笑顔の青筋は本当にヤバそうだからもう止めよう。アルモちゃんはリスク管理も出来る女なのだ。
「ふっ……いいのかな? 立香に対してそんな冷笑したようなスタンスで? 立香と接してみろ……飛ぶぞ?」
「ええ、飛びましたね」
「なんですか……? 巫山戯たことを……如何にアルモーディアと言えど、そんなことはあり得ませんよ」
あー、こんなこと言っちゃってこの娘……本当に可愛いんだからもう……絶対後で棚に上げるでしょ。そう言うところはニムエっちとそっくりだと思うもの。
まあ、1年……いや、半年は持ったらいい方じゃないかな? エヘヘ、モルちゃんがノリノリになったら立香を左右から挟んだりするのが今に楽しみだ――――…………ん? んん……? おおっ! おおー! 20cmはあるぞ!?
「でっかぁ!? すげー! みてみてモルてゃ! スゴいの拾った! あげる!」
「フフッ……アルモーディア、そんな童のような。いったい、何を私の手に乗せて――」
「カギムシ!」
「――――――――」
「あらあら?」
その圧倒的なビジュアルと脚の多い生き物の感覚をモルガンが認識した刹那、アルモーディアはカギムシごとロードレス・キャメロットの緑光に呑み込まれる。
ちなみにカギムシは空想具現化で守られ、ときこさんは肉体を過去にズラして躱し、アルモちゃんは酒樽を死守したため直撃した。
その場には全身から魔力の煙を上げて地面に倒れ伏す私と、涙目で腰を抜かしているモルちゃんと、カギムシを手に乗せているときこさんが残されたという。友人になんてことするんだ。
「薄目で見たらハベにゃんみたいなビジュアルで可愛かったでしょ!?」
「――ッ!? 今すぐトトロットに謝りなさい……ッ!!」
「いい虫ですね。古代を感じます。カンブリア紀でした」
蛇足だが、これらのやり取りは無論、カルデア管制室に観測されており、来たばかりのモルちゃんのイメージアップに多少役立ったそうな。やったぜ。
帰カルデア後――。
「あっ、アルモさーん。えっ、どうしたのボロボロで?」
「ちょっとレイシフト先で強くて素敵な女王様に爆破されてね」
ちなみにときこさんは気に入ったらしく持って帰ってきた立派なカギムシをビオトープに置きに行くというので既に別れた。
カルデアに緑が足りないと思ったアルモちゃんという匠の遊び心により、カルデアの使用していない区画を丸々ビオトープにしたりしているのだ。最近、過去からときこさんが生き物を持ち込むせいで大変なことになっているらしい。なんだよあのアンモナイト?
「それより、どうかしたの?」
「ああ、召喚サークルからヒュドラ・ダガーと一緒に手紙が出て来たんだけど、アルモさん宛の手紙だと思うから渡しに来たよ」
"中身は見てないからね"と言って立香は私にやや古めかしい外装の手紙とヒュドラダガーという星3礼装にしては大分物騒なマナプリを渡して来る。
…………? わざわざ、カルデアの召喚機を使って手紙を捩じ込めるような存在の時点でかなりアレだが、それに私宛? はて?
まあ、一応、呪いとかレジストしてと……どれどれ――?
《抱いた女と同じ容姿の小娘に現を抜かすとは良いご身分ですね。さぞ、倒錯的で快感だった事でしょう? 我が友、アルモーディア……誰があなたのご友人か教えて差し上げましょうか?》
ヒエッ……。ご友人のサプライズ!? 花は何処だ……謝らなきゃ……!
「……知識としては知っていましたが、凡人類史の私とそういった関係に……? 正気ですか?」
「ちょっとニムエっちのご機嫌取りに星の内海辺りまで行って来まーす……」
んもー、嫉妬深いんだからぁ……でもそれがいい。
というか放蕩に関してはマジで言われる筋合いはないというかぁ――あっ、耐性貫通して呪い来るっ! オ゛ッ……!
「アルモさーん!?」
「アルモーディア!?」
〜 1ヶ月後 〜
「アルモーディア……」
「なにさ、モルてゃ?」
「我が妻のためにすごい城を建てたいのですが……」
「1ヶ月は幾らなんでもチョロ過ぎるだろこの娘」
心配になるわ。*1
Q:なんでずっと投稿してなかったの? ブッ殺すよ?
A:"赤い月のブリュンスタッドが誇る最強の真祖であり片腕"
FGOやら月姫やらが進むに釣れてアルモちゃんの設定が当初想定していた1000倍ぐらい強くなってしまったからです……。もう、アルモちゃんにはイベントとかで管巻いてて貰いましょう。ころさないで……。
作者に一言
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毎秒投稿しろ
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体に気を付けて毎秒投稿しろ
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アルモちゃんのバレンタインイベは?