TS光堕ち真祖アルモちゃん   作:ちゅーに菌

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不死狩りアルモちゃん

 

 

 

「ふぅ……」

 

 大分、リツカニュウムを補給出来たのでそろそろ人理修復(ほんだい)に戻ろう。いつの間にか、近くの瓦礫に腰掛け、立香ちゃんを膝に乗せて抱き締めつつナデナデしていたが、慣れているようにそのままの状態で立香ちゃんは大人しくしているので、周りにいる人間――とりあえずオルガマリー・アニムスフィアを一瞥した。

 

「ひっ……!?」

 

 とてもよい反応が返って来た。無防備なマリーちゃんの机をバシバシ叩いて驚かしたくなる。

 

「…………!」

 

 次にマシュちゃんを眺めると、しっかりと視線を交えてくる。寧ろ、眉毛を立てて気を引き締めた様子で返してくるので、根っからの真面目さが伝わってくると言えよう。

 

「おい、Dr.ロマン。どうせ聞いているんだろう?」

 

『うぇっ!?』

 

 すると近くの通信機からDr.ロマンの声が響き、大きなリアクションで驚いている様子であった。しかし、マリーちゃんほど反応が面白くない。

 

 ぐっちゃんとクーちゃんは別にいいや。一番話になりそうなのでロマニと話すことにしよう。

 

「知らん仲でも無いだろうに……私の声に聞き覚えはないかな?」

 

『え…………………………ああ!』

 

 ロマンそう呟いてから数秒間が空く。そして、思い出したかのように声を張り上げた。

 

『立香ちゃんの使い魔の人と同じ声だ!?』

 

「そう、あの時は見せてなかったけど、今はこの通り――」

 

「アルモさん……暑い……」

 

「ん? そうか?」

 

 話の途中で膝の上で私が抱き締めている立香ちゃんがそんなことを呟いたので、ふと辺りに目を向ける。周囲はあちこちから火の手が上がっているわけで当然、ただの人間には熱い温度なのだろう。しかし、アルモお姉ちゃんが来たからにはもう安心だ。

 

「じゃあ、ちょっと空想具現化する(マブる)か」

 

「あ……違――」

 

 次の瞬間、私が発動した空想具現化によって周囲の炎が跡形もなく消え去る。そして、温度が徐々に下がっていき、20度ぐらいの適温で止まった。それから髪を撫でる程度の断続的なそよ風が起こり、立香ちゃんを涼しくする。

 

『こ、この環境変化と計測器の値は……空想具現化(マーブル・ファンタズム)!? そ……それにこの波形が意味する神秘年代と情報はまさか――!』

 

「あ、自己紹介がまだだったな。私はアルモーディア。ただの真祖アルモーディアだ。今は立香の使い魔をしているよ」

 

 自己紹介は大事。コミュニケーションの基本だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真祖の創造主にして、型月(タイプ・ムーン)――"朱い月のブリュンスタッド"からしても、その真祖は興味を引かれるものであった。

 

 真祖の名は"アルモーディア"。朱い月が、最も初めに生み出した真祖のうちの一体であり、性能上は他の真祖と全く同様の真祖である。

 

 アルモーディアが最初に他と異なっていたところは、真祖では稀な女性である点ではなく精神面であった。彼女は他に比べれば遥かに表情や表現が豊かであり、生まれた瞬間から既に人格が形成し終わっているような状態だったのである。

 

 とは言え、その時点ではそれだけの話。大量に創造したため、一体ぐらいバグを持つ個体がいても何もおかしくはないだろうと、朱い月は特に修復や処分する必要性も感じなかったため、そのまま放置しておくことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 そして、朱い月の興味を再び引いたのはそれから数十年程経った頃。真祖らの居住地から離れた場所で、アルモーディアが一人で何かを行っていたことを、偶然に朱い月が発見した時のこと。

 

 

『い、いや……ブリュンスタッド様……その……しゅ、修行をしておりまして……空想具現化のです、はい……』

 

 

 朱い月が何をしていたのか問い詰めたところ、アルモーディアはそのように溢した。その言葉に朱い月は非常に驚く。

 

 何せ、元から有り余るほど種として完成し、再生により肉体は決められた形へと戻るため、肉体を鍛えることがほとんど意味を成さない完全な生命体である筈の真祖のアルモーディアが、己の能力を更に向上させようとする貪欲な意思と精神を持っていたからだ。

 

 実際にアルモーディアの空想具現化は、生み出された当時より1%程だが性能の向上が見られた。微々足るものではあるが、確かに成長しており、種として完成しようとも個としてはまだまだ進化の余地があることを予感させる。

 

 

 

 

 

 そして、本格的に朱い月が興味を抱いたのは、それから真祖の感覚で、かなり年月がたった頃。近年、アルモーディアが世界各地を巡っているとのことで、朱い月が暇潰しも兼ねて、直接彼女を訪ねたところ――。

 

 

『すいません弟子にしてください! なんでもしますから!』

 

 

 朱い月が見たものは、山奥に住む筋肉隆々の老人に対し、全力で土下座しているアルモーディアの姿であった。それも後世に語り継ぎたい程、誠意に溢れた綺麗な土下座である。

 

 

『え…………嘘? ぶ、ぶぶ……ブリュンスタッド様ぁ!? こ、これ、これも修行の一貫で――』

 

 

 朱い月は目の前の光景が理解しきれず、よく似た別人なのではと考えていたが、いち早く気づいたアルモーディアが慌てふためいたため、本人だと理解した。

 

 その後、アルモーディアによると空想具現化だけでは足りないと感じたらしく、少し前から人間の武術を修得することにしたとのことである。

 

 武器を使うのは範囲が広過ぎる上、武器は体と違って替えや、戦闘中の再生が難しいとのことで、徒手武術に絞っているとの話も聞いた。しかし、朱い月は正直なところ、人間の武術など真祖が覚えたところで意味があるのかと理解し兼ねていたが、そんな様子を見たアルモーディアは指を立てながら当たり前のように呟く。

 

 

『じゃあ、ここはひとつ。私の技を受けてみませんか?』

 

 

 数秒後、朱い月はたった一撃の掌打により、全身が麻痺したような感覚を味わうと共に地面に転がされた。

 

 倒れながらも朱い月の思考は独立しており、真祖の身体能力によってとんでもない速さと威力でもって放たれた武術に感心を示す。

 

 そして、朱い月はアルモーディアの戦闘力を再計算し、ある結論に達したため、彼女に任務を与えた。

 

 

"試しに魔王を処断してみろ"と。

 

 

 ちなみに、これは創造主に対して一切容赦の無い打撃技を叩き込んだアルモーディアへの意趣返しではない。朱い月ともあろうものが、そんな度量の狭いことをするわけがないのだ。だが、彼女はせめて投げ技を使うべきであっただろう。タイプ・ムーンだって痛いものは痛いのである。

 

 

 

 

 

 僅か2日後、アルモーディアは魔王と対峙していた。

 

 魔王とは吸血衝動に負け、血を吸った堕ちた真祖である。そもそも真祖は吸血衝動の抑制に力の70%を使っているため、魔王は元の力を出せているだけなのだが、実質上、真祖の約3倍の能力を持つのである。

 

 当然ながら、アルモーディアの肉体的な能力は魔王の3分の1以下であり、鍛えられた空想具現化に関しても、精々半分程度であった。

 

 アルモーディアはまず、自身の気を同化させて自然そのものに溶け込ませることで、魔王の目を欺いた。そして、接近し、魔王の体――引いては真祖の体で、星からのバックアップを受ける器官及び吸血器官に掌打を繰り出し、その際に自身の気を魔王へと通して、器官及び経路を再生が行われない程度に破壊及び麻痺させて一時的に機能を停止させたのである。

 

 これには遠くから眺めていた朱い月も舌を巻いた。元々、この戦いは原付スクーターと大型バイクでレースをするようなものだ。それに対し、アルモーディアが出した答えは大型バイクの燃料タンクに穴を開けてガソリンを抜くようなものであったからだ。

 

 そこからは紙一重ながら一方的だった。

 

 如何に魔王が3倍の身体能力から爪を振るおうと、アルモーディアはそれを打ち払う、受け流す、避ける、逸らすなどで一度も直撃せず、逆にカウンターを入れて反撃することで、攻撃を繰り出した筈の魔王が面白いように削られていく。

 

 空想具現化に関しては、アルモーディアは魔王の半分ほどの性能を持つため、魔王と言えども補給路を制限された状態で、星からのバックアップを受け、また防御に徹している彼女の空想具現化を突破することはほぼ不可能であった。

 

 だが、まだ魔王には超越した肉体と再生能力が残っている。故にアルモーディアは魔王が肉体を一度に全て再生させない程度のダメージを与え続け、その上で魔王の器官の停止を維持しなければならない。

 

 そして、10日間――240時間に及ぶ激闘を戦い抜いた末、数えるのも億劫なほど体のあらゆる箇所を破壊され続け、遂に再生能力を失った魔王は、その瞬間を心待にしていたアルモーディアの一撃により、たった一度の殺害のみで死亡した。

 

 大業を終えたアルモーディアは顔を真っ青にして、肩で息をしたが、手傷をほとんど負っていない。そのため、朱い月はもう2~3体続けて魔王を処断出来るのではないかと評価していた。

 

 死んだ魚のような目になりながら、うわ言のように"生きてた……私まだ生きてた……うふふ"と繰り返すアルモーディアに対し、朱い月は労った後、肩に手を置き、彼女ならば任せられると、笑みを浮かべながら告げる。

 

 

 "その力で現在いる魔王と今後現れるであろう魔王を処断せよ"と。

 

 

『……………………………………マ?』

 

 

 口を大きく開けて表情を失った顔で、ただ一言呟かれたアルモーディアの言葉の意味はよくわからなかったが、朱い月は了承と受け取った。

 

 そして、アルモーディアは朱い月に認められ、正式に魔王を狩る真祖となったのである。

 

 その後、アルモーディアは、真祖を狩る真祖として運用されるアルクェイド・ブリュンスタッドが他の真祖らによって造られる時代までの長きに渡る空白の間、朱い月より与えられた魔王を狩る役割を全うしたという。

 

 

『おっ酒♪ おっ酒♪ うぇひひひー♪ きもひぃ~♪』

 

 

 ちなみにそれまでは、一切酒を口にすることすらなかったアルモーディアが酒浸りになったのもそれと同時期だったりする。

 

 

 

 

 

 それから朱い月がそれなりに年月を経たと考える程時間がたった頃。いつしか朱い月は、自身が新しい器で再誕した後、アルモーディアを己の右腕に据えることも吝かではないと考えていた。それほどまでに彼女の種としての限界を思ってもみない方法で破ってみせた様は新鮮に映ったのであろう。

 

 そして、朱い月は真祖の寿命と言える吸血衝動について思考を巡らせる。無論、アルモーディアにも他の真祖と同じそれが備わっており、彼女の場合はどう見積もっても後、1000年程度で限界を迎える状態であったからだ。

 

 それではあまりに時間がないと、朱い月はアルモーディアを実験と称して呼び出し、何も告げずに眠らせた上で手術を施行した。それにより、彼女の吸血衝動は改善し、通常の真祖より数十から数百倍以上、吸血衝動の蓄積が遅い体質へと変化した。

 

 吸血衝動を除くのは自身が新たな体を持ってからでも遅くはない。そう、朱い月は考え、ただ寿命だけを伸ばした。これにより、アルモーディアの体について知るのは朱い月だけの秘密である。

 

 それは気まぐれか、親心か、それ以上の何かだったのか。今となっては知る由もない。

 

 

 

 

 

 朱い月がキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグによって討滅されたのは、それから僅か数日後の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルモーディアって…………"不死狩りのアルモーディア"……?」

 

 カルデアの所長。オルガマリー・アニムスフィアは唖然とした様子でポツリと呟いた。

 

「じょ、冗談でしょ……不死狩りって言ったら最古の真祖で、アルクェイド・ブリュンスタッド以外で唯一、魔王を殺せる程の異常な力を持った真祖じゃない……!」

 

「相変わらず、私に対する人間の認識ひでーな……まるで化け物みたいじゃないか」

 

 立香を膝に乗せてぬいぐるみのように抱き締めているアルモーディアは"アルモちゃんは、長生きなだけのふつーの真祖なんだぞ。ぷんぷん!"と呟くが、オルガマリーは耳に入っていなかった。

 

(あれ……? 待って、確か不死狩りはアイツの使い魔だって――)

 

 その時、オルガマリーの脳裏には様々な情景が浮かぶ。

 

 まずは管制室で行われたオルガマリーの説明会で居眠りしていた藤丸立香に平手打ちをして、ファーストミッションから追放して放り出したことを思い出す。それから、この冬木で凡人のマスターだのなんだのと散々罵倒した挙げ句、全て立香に任せっきりのこの状況を再確認した。

 

「わぁ……そんな風に消えれるんですか!?」

 

「うん、圏境っていう方法だよマシュちゃん。まあ、実はちょっとだけ空想具現化も使ってズルしてるんだけどね。ちなみにカルデアにいた時も、これでずっと立香の隣に居たんだよ。立香とマシュちゃんの会話も、"所長の説明も全部見てた"んだ。レイシフトに巻き込まれてからは、別の場所に飛ばされたみたいで、何故か一緒に飛ばされてたヒナちゃんと途中であったキャスターとここまで――」

 

(――――――――え……?)

 

 オルガマリーが考えていると、いつの間にかどこかから現れたAチームの芥ヒナコと、キャスターとおぼしきサーヴァントが増えており談笑を始めていた。カルデアの所長としてはレイシフトしていたことや、無事に生きていたことに言及するべきなのだが、彼女はアルモーディアから発せられた何気ない一言に衝撃を受けていたため、それどころではない。

 

(全部見てた……最初のアレを……)

 

 そして、更にオルガマリーは立香に対して明らかに異常な愛情を持って接していたアルモーディアの様子を思い出す。

 

 それと同時に自身が立香にした行いと、客観的に見てあまりに不甲斐ないレイシフトしてからの自身の行いの数々が頭を過った。

 

「…………?」

 

 気がつけばオルガマリーは真っ青な表情で、アルモーディアを見ており、彼女は見つめて来るオルガマリーに疑問符を浮かべつつも愛想笑いを返した。その様子は妙に人間染みている。

 

 しかし、動物にとって笑みとは威嚇である。また、アルモーディアほどの美女であれば、その愛想笑いでさえも相応の美しさであり、それゆえに般若面のように幾つかの表情に取ることが出来た。

 

 そして、オルガマリーが笑みから認識したアルモーディアの表情は"怒り"である。そう考えた瞬間から、オルガマリーにとって彼女は絶望と恐怖の権化と化した。

 

(――――――――――)

 

 オルガマリーの意識は完全にキャパシティを越え、円の外側から感覚が無くなっていくように白く塗り潰されていく。

 

 その結果――。

 

 

 オルガマリーは白目を剥き、口から泡を吹きながら崩れ落ちるように倒れてしまった。

 

 

「え…………? え……?」

 

 無論、一番驚いたのは、"やっぱり旧所長可愛いなぁ……ちょっとイジメたい"などと考えながら見つめていたアルモーディアである。

 

「ちょっと、所長に何したのアルモさん!?」

 

「え……? いや、聞いてよ立香。ホントに何もしてないんだよ……? マリーちゃんが勝手に倒れたんだ。ひょっとして貧血とか、てんかんとかの持病あるの……? だったら助けな――」

 

「お前に限ってそんなわけねぇだろ……どうせ空想具現化でお嬢ちゃんの口元の酸素濃度でも弄りやがったな? メイヴの軍勢丸々昏倒させたときみてぇに」

 

「クーちゃん!? 私そんなエグいことしないよ!? 集団でボコボコ(リンチ)にされなきゃ!」

 

「うわ……お前そんなことしたことあるの……? 引くわ……」

 

 そして、立香、クー・フーリン、芥ヒナコによるアルモーディアへの糾弾が始まり、マシュとDr.ロマンはどうしたらいいかわからず、困惑するばかりであった。

 

 

 

 

 






※真祖を狩る真祖は職業ではないため履歴書には書けないので、アルモちゃんの職歴はアルバイトのみです。



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