こっちを主体にしていきたい(願望)
気づいたら不思議な空間にいた。──言葉にすればそれが一番相応しいと思う。
ドーリア式の柱(ギリシャの神殿とかで見るアレ)が道を作るように並んでいる。この先に行けと言われているような気がしてその道を進んだ。柱が並ぶ道をしばらく歩き続けていると大きな扉に辿り着いた。
『いいよ。入ってきて』
扉の向こうから自分を招く声が聞こえたので、扉を押すと自然に開いていった。
そこにいたのは少女とも少年ともとれる中性的な外見をした子供が椅子に座っていた。自分の状況も疑問だが、なんで子供がこんな場所にいるんだろうか?
「やあ、はじめましてだね
その子供は自分のことを女神ヘラと名乗った。
……女神?それが本当ならどうして自分はこの場所に?
いや…なんとなくだけど理解した。それと同時に喪失感が少し胸をしめつけた。
「もう!無視は良くないよ!ちゃんと喋れるようにしてるんだからちゃんと会話しようよ」
「あ、ごめ…じゃなくてすみません。ちょっと考え事してたんです。……死んだんですね…俺は」
「うん…残念ながらね…。死因は言わないでおくよ。今の状態の君には耐えられないだろうから……」
自分はいったいどんな死に方をしたんだろうか?むしろ気になってしょうがない。でも耐えられないって言っていたから、きっと凄く衝撃的な死に方だったのだろう。気を使ってくれた女神様に感謝しなければ。
「死因がアホらし過ぎて羞恥心が耐えられないだろうからねぇ…」
「え?今アホらしいとか、羞恥心がどうたらとか聞こえたんですが?」
「気のせいじゃないかな?──それじゃあキミのこれからのことを説明するね。一度しか言わないからよく聞くんだよ?」
女神様の説明を要約すると、
1,記憶を消去して赤子から始める。
2,異世界へ行って魔王を倒す旅に出る。
ちなみに2を選択した場合、転生特典がつくらしい。そうでもしないと平和ボケした人じゃ速攻でお陀仏なんだとか。
説明するときに女神様がやたらと二番を薦めてくるのだが、これでは言外に二番にしてくれと言っているようなものだ。少しポンコツ入ってるのかなこの女神?とゆう自分の思いをよそに話はどんどん先へと進んでいった。
「──とゆう訳でボク的には異世界に行って活躍したほうがいいかと思うんだよ。ほら、キミだってゲームとか漫画のような主人公に憧れたりするだろ?いや別に無理にとは言わないよ。君の好きなように選ぶといいからね。さあ!どうするんだい?」
「……異世界行きでお願いします」
「本当かい!?いやぁ、最近は異世界に行きたくない子が多かったからか人口がどんどん減っていって困ってたんだよ。それで特典は何にするんだい?このカタログの中から選ぶのも良し。自分で希望するのも良しだよ」
絶対、
顔色を輝かせる女神様にどこか残念感を感じつつも、手渡されたカタログに目を通していく。
最強の魔剣、無限の魔力、伝説級のアイテム等々、一通り目を通すがコレといった目に止まるものはなかった。だから第二の選択肢を選ぶことにした。正直こっちのほうが本命ではあったのだが。
「決まりました。メタルギアライジングとゆうゲームがあるんですが、それに出てくる主人公──雷電の装備一式でお願いします。ちなみに最初の装備ではなく、バイザーが着いてる黒い方で」
「うん、ファンタジー感ゼロ!とゆうかサイバーパンクの方に行っちゃったね!でもボク的にはおあつらえ向きだから全然オッケーだよ!キミ以外にも似たような特典貰っていった子もいるからね。…ただ全員魔王軍に寝返っちゃったケド……」
「oh......」
度し難い…(アビス感)
とゆうか全員寝返るとか最悪な状況じゃないか。もしかして何人かデスペラードの五人衆のうちのどれかを選んだのかな?
寝返り確定じゃないか(偏見&絶望)
「じゃあ今から特典あげるから動かないでね。あ、ちなみに装備は不便が無いように着脱式にしといてあげるよ」
そう言いながら女神様は自分に手を向ける。すると自分の体が淡く光ったと感じた瞬間には既に終わっていた。ご丁寧に姿見鏡まで用意してある。
「かっこいいけど……、コスプレにしか見えない…」
「ま、まぁそのうち見慣れると思うから大丈夫だよ。──それじゃあ話を戻すけど、今からキミを異世界へ送るけど出来れば頑張って魔王を、更に欲を言えばキミと似たような特典の子達をどうにかして欲しい。もし、魔王を倒したあかつきには何でも一つだけ願いを叶えてあげるよ」
一つだけだが、何でも叶えてくれる。欲深い人には物足りないのかもしれないが、自分にとっては喉から手が出るほど魅力的な報酬だった。打倒魔王を目指すのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、入ってきた扉とはまた違う場所に扉が現れた。この扉をくぐれば異世界へ行けるとゆうことなのだろうか。
チラリと女神様に視線を向けると笑顔で手を振っていた。
「行ってらっしゃい。キミに女神の加護があらんことを祈ってるよ。まあボクが女神なんだけどね」
「ありがとう女神様。不詳ながら早坂空雷、行ってまいります!──なんちゃって…」
「慣れないことはやらないほうがいいよ?まあボクもキミにはある程度は期待してるから頑張ってね」
そこはもう少し気の利かせた言葉が欲しかったよ…。
期待とは外れた返事に肩をおとしながらも、自分は異世界行きの扉へと入った。
◆❖◇◇❖◆
「さ〜て、面白いことになってきたなァ…」
先ほどまで無邪気さが残る雰囲気が完全に消え去り、そこにいるのは残酷な程に絡まった一人の少年の運命を楽しむ冷酷な笑みを浮かべる女神ヘラ。
「まさか彼が来るとはね……なかなか縁が深いじゃないか。……いや、だからこそ…なのかな?」
仲間と共に歩むか、はたまた独りの道を歩むか。どちらにせよ彼は旅に出るだろう。そしてその途中で襲いかかる試練に彼はどうなるのだろうか?
──己の運命を呪い、復讐の鬼と化すか
──それとも心が壊れ、廃人に成り果てるのか
──もしくはそのどちらでもないナニカになるか
彼がどうなろうと、きっと行き着く結末は一つだけ。
これはHAPPY ENDで終わるような甘っちょろい物語などではない。
「楽しみだなぁ…。特典も彼らと同じ作品のものだったし、……面白そうなキミはボクのお気に入りに登録しちゃった。こんなことするのはなかなかないんだよ?──だからさ」
彼にとってこの物語はきっと──
「ボクを楽しませてよ。──空雷クン?」
理不尽で残酷な悲劇でしかないのだから──。
◆❖◇◇❖◆
「おぉ〜....、ここが…。よく異世界系のアニメとかで見るだだっ広い草原──ザ・異世界って感じ。……夢じゃない、本当に雷電の格好のままだ凄ェ!」
扉を通り抜けて最初に出てきた景色は、広がる草原。アニメや漫画、ゲームを楽しむ遊び人にとって一度は夢見る異世界。その夢が叶った嬉しさと自分の好きなサイボーグ忍者の本格的な装備を手に入れられた感動でテンションがうなぎ登りだ。
「そして後ろには凄くデカいカエルが三体!いやぁ、流石異世界。世界も違えば生き物の大きさも違うってか!参っちゃうねこりゃアッハッハッハ!」
ひとしきり笑ったあと、大きく息を吐いて背中のコンテナに収納されている高周波ブレードに手を伸ばす。ご丁寧なことに背中のアームがコンテナを移動させて取りやすい位置までもってきてくれた。非常に便利でよろしい。
「敵性エネミーにしては可愛い見た目してっけど……まぁファンタジーな世界なら仕方ないか。それじゃあ──」
コンテナから高周波ブレードを抜いて格好がさまになるように構えた。自分の意志に連動して、顔の左右に着いているパーツが顔の前へとスライドしてバイザーとなる。オーグメントモードが起動して分析を始めた。
本当に雷電のようだと思わず顔がにやけてしまう。異世界初の戦闘はこのセリフから始めよう。ここからが自分のスタートラインだ。
「──ゲーム開始だッ!」
Mission,2 後輩
「俺は早坂空雷─気軽にソラって読んでくれ!よろしくなカズマ!」
「うっす!これからご指導お願いしますソラさん!」
「アレ!?私の立場は!?ねぇ!?」