ライオットブラッド調査レポート   作:遠雷

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久々に筆がのりにのった6000文字とか人生初な気がする。

私がこの大会に参加しないという選択肢はあるだろうか?いやない。(反語)
【第一回】ライオットブラッド小説大会(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=233607&uid=296388)

てかこれこの作品で出場していいのかね?と思ったらランキングから外れるけど出場自体は可能らしいので参加しておきます。気が向いたら短編一本書くかも?


名もなき暴徒と黄金の暴血・参

 深夜零時少し前、私は新宿の繁華街の奥にある先日も訪れた行きつけのライオットブラッド料理を提供するカフェを訪れていた。

 

 店内に私以外の客は無く、店ももうじき閉まるちょうどいい塩梅の時間。そこで私は注文したほろ酔い程度に酔える日本酒のレジスト(マスターの熟練の技が光るこの店の裏メニューの中でも珠玉の一杯である)をグイっと飲み干し、話を切り出した。

 

「ねえマスター貴方なんでしょ? あのライオットブラッド・エルドラドを作った牛鼠は」

 

 グラスを拭いていたマスターの手が一瞬止まったが何事もなかったかのように再開した。

 

「はて? 何のことでしょう。それとライオットブラッドに「エルドラド」などという商品はございませんよ?」

 

「しらばっくれないでくれよマスター。これほどのレジストを作れるマスターがエルドラドの存在を知らない筈が無いでしょ」

 

「ライオットブラッド・エルドラド」

 あの動画で僅かに映された黄金に輝くライオットブラッドはいつしかそう呼ばれるようになった。理想(シャングリラ)では無く、確かにそこに在った黄金(エルドラド)として名付けられたソレは、数多の暴徒が今尚求め続ける生ける伝説と化している。ライオットブラッドの中級者程度であれば誰でも知っているこの事を「実は既に合法堕ちしてるんじゃねえの?」とすら言われる神懸かった闇の服用法を操るマスターが知らないなんて有り得ない。

 

「……ふう。……いいでしょう少しお待ちを」

 

 そう言ってマスターは店の外に出ると閉店と戸締りを行い店内に戻って来た。

 

「では話をしましょうか。常連の……いや、名無しの暴徒さん」

 

「ああ、よろしく頼むよ。マスター」

 

 ~~~

 

「では、先ずなぜ私が牛鼠だと思ったのです?」

 

「まず第一にあんたは神懸ったライオットブラッド配合スキルがある。暴徒掲示板でもこのレベルの配合が出来るのはバーテンダーさんぐらいしか居ないってよく言われてるぞ」

 

「それは光栄ですねえ。それで、それだけでは無いのでしょう?」

 

「勿論。今のは私が今まで思っていた疑問に過ぎません。理由は他にもいくつかあります」

 

「ほう。聞かせてください」

 

「まず何と言っても貴方の年齢だ」

 

「年齢? あの動画の投稿者はどう見ても20代か30代。10年経とうと私とは合わないのでは?」

 

「ごめんマスター。結構前に私マスターの免許証見ちゃったんだよマスター今30代だろ?」

 

「……よく老け顔と呼ばれるので隠していましたがご存知でしたか」

 

「ああ、だが年齢だけが決め手じゃない。もっと露骨な答えがここには在った。いや寧ろ露骨すぎて今の今まで気付かなかった」

 

「それは?」

 

「この店の名前【カフェ・ミノッシュ()ラット()】ここまで露骨だといっそ清々しいな」

 

「フフフ。でも意外とばれない物なんですよ」

 

「てことはマスター?」

 

「はい。認めましょう。正直余りにも穴だらけな推理ですがここに来た時の貴方の様子からしてリボルブランタンあたりを多量接種してカフェインの神に導かれたのでしょう。であれば隠しておくのも無粋という物です。改めて、私こそが「ライオットブラッド・エルドラド」に至りし最初の暴徒、列聖された方々からはアルケミストの称号を賜っています」

 

「アルケミスト。初めて聞くな」

 

「私が表舞台に上がるのを好まないのを分かってくれているので黙ってくれているのですよ。貴方にもそれはお願いしてもよろしいですか?」

 

「ああ、あんたの事は吹聴して回らない。約束する」

 

「ありがとうございます」

 

 それから私はマスターに多くのことを尋ねた。

「ライオットブラッド・エルドラド」とは何なのか。あの時投稿された動画は何だったのか。あの時何があったのか。

 

「私がアルケミストである事にたどり着いた方にはお話しているのですが、……ここではあまりよろしくありませんね。どうぞ上へ」

 

 そう言ってマスターは私を二階へと案内してくれた。

 二階はどうやら簡易的な居住スペースらしく生活の痕跡が見て取れた。ちゃぶ台を挟んでマスターが話始める。

 

「私が「ライオットブラッド・エルドラド」に至ったのは本当に偶然なんですよ。ある日、いつもの様に自作ライオットブラッドを作っていて色々と適当に混ぜ込んでいたんです。その時ですかね、換気を忘れていてIHを使っていたので呼吸困難で死にかけるということは無かったんですが大量の気化したライオットブラッドを吸い込んでしまったんですよ。それも合法堕ちすれすれの量を」

 

「ちょっと待ってください。ライオットブラッドは経口摂取が一番効いてそれ以外の呼吸や静脈注射はあまり効果が無いと聞いているんですけど……」

 

「ええだから大鍋一杯分のライオットブラッドを自作しました」

 

「   」

 

 えぇ……? 真面目そうな顔して何言ってんだこの人……。そういえば暗くて良く見えなかったが、あの動画に映された鍋はよくよく考えてみれば大鍋だったかも知れない。

 

「合法堕ちに近づいて感覚が余りにも鋭敏化された所為か、脳が情報のシャットアウトを求めて意識が朦朧としたんですよ。鋭敏な感覚とそれを抑えようとする意識の低下に苛まれる中、私は最後の力を振り絞ってあの動画を投稿したんですよ。そして目を覚ました時には全てが終わっていました」

 

「終わっていた?」

 

「何者かに鍋を持ち去られていたんですよ。ご丁寧に全く同じ製品の最新モデルが入れ替わる様に置かれていました。そして材料に使った諸々と同じ分のお金が」

 

 なんか唐突にホラー染みてきたぞ? 

 

「でも材料分のお金が帰って来たならもう一度作れば良かったんじゃないですか? レシートとかを基にすれば揃えることはそう難しくは無いでしょう?」

 

「ええ。私もそう思ってそうしようとしたんです。でも出来なかった」

 

「出来なかった?」

 

「自分が何を買ったのか全く思い出せなかったんですよ。確かに買った筈なのに何を買ったのか、どこで買ったのかすら」

 

「なにそれこわい」

 

 某財団でも来たんだろうか……? 

 

「でも倒れる前の私は挫けていませんでした」

 

「というと?」

 

「完成した黄金のライオットブラッドの上澄みを空の空きビンに移して隠しておいたのです。さしもの侵入者も酒瓶の中にエナドリを隠すとは思わなかったようです。そして私はどうにかして酒瓶三本分のオリジナルライオットブラッドを隠し通すことに成功したのです」

 

「三本も隠し通せたんですか?」

 

「ええ。元々が大鍋で作っていたものだったお蔭で多少減っていても気付かれなかったみたいです」

 

 と、ここまで聞いていて気になった事がある。

 

「あの、もしやあるんですか? あの、伝説の「ライオットブラッド・エルドラド」が」

 

「ええ。あれからごくまれにエルドラドの製作者が私だと気づく方が訪れて来るのでその度にこれをチマチマと振舞っているのです」

 

 そう言ってマスターはゴトッっとちゃぶ台の上に酒瓶を一つ置いた。見た目はそこらの酒屋で簡単に買えそうな酒瓶である。だが、その内に揺らめく金色の液体がただの酒では無いと教えてくれる。

 

「そ、それが伝説の「ライオットブラッド・エルドラド」……!」

 

「ネット上でエルドラドの名が定着するまで私はこれを八塩折之酒と呼んでいたがね」

 

「エルドラドが定着しているので私はエルドラドと呼ばせて貰います」

 

「ええ。構いませんよ。……それで、飲みますか?」

 

「是非!」

 

 千載一遇とはこの事だろう。ここを逃せば一生涯飲めないと言っても過言ではない。何せ十年間もあればチマチマ飲んでも酒瓶三本分程度ならとっくに尽きていてもおかしくない。ともすれば今目の前にある瓶がラストかも知れない。

 

「では」

 

 用意されたのは小ぶりの陶器製のぐい飲みが二つ。

 八塩折之酒と聞きこんなもので飲めばそれは正しくエナドリでは無く酒ではなかろうかと思うのだが細かい事を気にしてはいけない。

 

 トクトクトクとぐい飲みに注がれたエルドラド。その量は市販されているライオットブラッドの半分にも満たない量だ。だが、溢れ出るカフェインがこれ以上はヤバい(合法堕ちする)と教えてくれる。

 

「で、では頂きます」

 

「ええ、どうぞ」

 

 金色に輝く液体の入ったぐい飲みを傾け、一口喉に流し込む。

 

「!?!?!?」

 

 脳内で何かが弾けた様な感覚。これ本当にカフェインの効果なのかと言いたくなる程に意識が冴え渡る。感覚が鋭敏化し、知覚が拡張される。バックドラフトを圧倒的に上回る全能感に満たされる。

 

「ところで、ライオットブラッドにまつわる話でこんな話をご存知ですか? 五番目の闇の服用法ティアドロップ」

 

 それは確か以前掲示板で一瞬だけ話題に出ていた話だ。詳細は書かれていなかったが、相当な危険性を孕んでいるとかなんとか。

 

「ティアドロップは禁忌とされています。作り方自体はライオットブラッドを濃縮したものを別verのライオットブラッドと混ぜる服用方法と簡単な物です。で何故これが禁忌とされるのか。「混血は魔を呼ぶ」そう呼ばれる所以があるのですよ」

 

 マスターが言っていることは理解出来る。だが、なぜ今この話をする? 

 

「わかりませんか? 八塩折之酒を飲んで脳の回転率も極限まで極まっているでしょう?」

 

「何を? ……! ……まさか! まさか! まさか!」

 

 超速回転した脳が答えを導く。大鍋一杯のライオットブラッド、当然それを作るにはライオットブラッド一本では足りない。何本も何本も継ぎ足した筈だ。それにマスターはさっきこう言った。「大量の気化したライオットブラッドを吸い込んでしまった」と。それはつまりその大鍋はかなり簡易的とは言え蒸留されている(・・・・・・・)! 

 

混血は魔を呼ぶ

 

 その言葉が脳裏を反響する。

 

「理解したようですね」

 

 脂汗が止まらない。私は今、一体何を呑んでしまった? 

 

「では、ご覧ください」

 

 マスターが立ち上がり窓を開けた。新宿の明るすぎる夜景が燦然と輝いている。

 

「何を……?」

 

「ほら、もっと()()()()()()ください」

 

「え、ええ。……!?」

 

 その瞬間を私は一生涯忘れないだろう。

 背中から黒い羽根を生やした女が空を飛んでいる。頭からヤギのような角を生やした男がさも当然の様に町中を歩いている。空は無数の空飛ぶ異種族に埋め尽くされ、それぞれが楽しそうに何かをしている。あの客引きの男は目の前のサラリーマンに生えている竜の如き尻尾が見えていないのだろう。

 

「これは……?」

 

「世の中我々が思う以上に神秘に満ち溢れているということですよ」

 

「ええ、その様ですね」

 

 思わずへたりこんでしまった私にマスターが声をかける。

 

「わかっていると思いますがこれも……」

 

「わかってます。他言しません」

 

「どうもありがとう」

 

「彼ら彼女らは何者何ですか?」

 

 私は目線があった満面の笑みを向けてくる空飛ぶ少女に手を振り返しながら尋ねる。

 

「さあ? 私も詳しいことは全く知りません。ですが彼らは夜の種族と呼ばれているらしいですね」

 

「夜の種族ね」

 

 確かに彼らの姿は話に聞く悪魔や夢魔と呼ばれる類の物にそっくりだ。

 正しく夜の種族なのだろう。

 

「さて、最後の答え合わせと行きましょうか」

 

「え?」

 

 答え合わせ? マスターが牛鼠であることは既に明らかとなった。伝説のライオットブラッドを呑むことも出来た。おまけに世界の裏側についてちょっとだけ知ることが出来た。これ以上に何があると言うのか。

 

「あなたはこのお店の看板をご覧になりましたか?」

 

「ええ。破城槌を持ったミノタウロスと黒い鼠が描かれてましたよね」

 

「はい。ミノタウロスと破城槌は言わずもがなのライオットブラッドを示しています。では真っ黒な鼠は一体なんでしょうか?」

 

 鼠だと? ライオットブラッドシリーズに鼠が描かれた製品は存在しない。そして鼠とはいえ黒の理由は? 待て、鼠、黒、方位、北、玄武、北を司る神……大黒天、七福神! 

 

「まさか!?」

 

「改めまして私、ガトリングドラム日本支社で開発部の長を務めております。そうですね、()()に倣って大黒天とお呼び下さい」

 

「な!?」

 

 馬鹿な! 日本支部幹部だと!? 一体何故そうなった! そして何故それを私に名乗る! 

 

「だ、だけど貴方は全身黒ローブでは……」

 

「私は入った経緯が経緯ですのであの装備を着るのは烏滸がましいと思うのです。故に会議以外ではローブを纏わない様にしているのです」

 

「な、なる程」

 

 一体彼にどのような経緯があったらこうなるのだろうか。

 

「貴方に私の真の正体を明かしたのは友好の証と思ってください。これからも末永く当店をご利用して頂ければ幸いです」

 

「それは別に構いませんが……」

 

「おっと失礼します。どうやらここが嗅ぎ付けられた様ですね」

 

「は?」

 

 一階からガッシャーン! という音が響き、ガタガタガタと誰かが慌ただしく侵入してくる音がする。

 

「な、何が……」

 

「ライオットブラッドの秘密を狙った産業スパイですかね。それとも例の所の調査員が来たか。一人は日本支部本社で堕としましたが先日捕まえたのを除けば、まだ四人いる筈ですからね」

 

「一体何の話を」

 

「巻き込んでしまってすいません。あとは彼女にお任せします」

 

 いつの間にかちゃぶ台を囲う人間が一人増えていた。いや、これは少なくとも人間じゃ無い。全身が影の様に真っ黒でのっぺらぼうと言うよりも黒子に近い。

 

「彼女が貴方を家まで安全に送り届けてくれるでしょう。あとの処理はこちらでやっておくのでお任せください。ああ、今日のお代はツケておきますね」

 

「は、いやちょっ!」

 

「ではお願いします」

 

「Εντάξει」

 

「なんて?」

 

 その言葉を最後に私の意識は途切れた。

 

 ~~~

 

「……っは!?」

 

 気が付けば私は自宅の布団の中にいた。

 

「……夢オチ?」

 

 いやそんな馬鹿な。あれは確かに……夢と言われた方が納得する荒唐無稽さだったな……。

 

 “グシャ”

 

「ん?」

 

 枕元にメモが置いてある。

 

 ──────────────────────────

 

 今回の一件で貴方は私の正体を知りました。つきましては当店の裏メニュー【ヤシオリ】の注文が可能となりました。機会があればご注文下さい。 大黒天より

 

 ──────────────────────────

 

「……ははは!」

 

 夢じゃ、無かった! 

 

 

 

 ~数日後~

 

 あれから私は特に以前と変わらない生活を送っている。今日も今日とてブラックな職場で働き、最近よく遊んでいるVRゲームのクランメンバーのヤシロさんに転職相談にのって貰い一日を終えた。

 

 ただ、偶に無性に辛くて生きているのが苦しくなったそんな時、私はあのカフェに訪れては【ヤシオリ】を一杯頂いている。流石はアルケミストにして大黒天。なんとあの動画の後に自力でもう一度エルドラドに到達したらしく、ガトリングドラム社から少量の販売を認められたらしい。

 

【ヤシオリ】を呑んで見上げた空を飛び交う彼らのことをぼんやりと眺め、時たま軽く挨拶をする。たったそれだけのことで私はまだまだやれると思えてくる。世界の裏側に隠れ、人々に忘れ去られようと精一杯生を謳歌して輝く彼らを見ていると、無性に大丈夫だと思える。そんな気がするのだ。




【参考文献】
・シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜
・設定鍵インベントリア:シャンフロの諸々
・蟲師6巻:野末の宴
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