War Robotsー宇宙からの侵略者ー   作:K.Miho

3 / 5
旅立ち_2

 ランスロット、ガラハッド、ガレス一家が城へと到着する頃、レオ国王のもと、すでに円卓会議は始まっていた。

 

「それでは、どうすれば良いのだ。我々は何をしなければならないのか、みなも分かっておろう。近隣諸国から支援が断られた今こそ、我らが先頭に立って奮起するべきではないか」

 

 ランスロットらが会議室に入ると重々しい空気が流れていた。

 

「ああ、ようやく来たか。そこに座ってくれ。今後について話しているがどうにもまとまらなくてな」

「ん? 何を話し合う必要がある。みなで武器を取り討伐しに行くだけでないか。もたもたしている暇はないぞ。さぁ、みなの者支度をしろ。今日中に出発だ」

「……。」

 

 しかしいくら待てど返事は返ってこない。

 

「脳筋おやじめ」

 

 息子のガラハッドがぼそっとつぶやく。討伐に行くのを渋る気持ちは当然だ。やつはアメリカという強国をつぶした。そんな所に好き好んで行く者なんてそうそう居ないであろう。

 

「わ、私は最近動きが鈍くなってのう。もうそろそろ引退したいのじゃよ」

「俺は家族が居るから」

「自分も店を空けるわけにはいかないから……」

「俺は膝に矢を受けてな。行きたい気持ちはやまやまなんだが」

 

 円卓の騎士たちはそれぞれ討伐を断る言い訳を申し訳なさそうに口を揃えて言ったがそれらは見え透いた嘘だ。動きが鈍くなったと言った奴は先日闘技大会に出場していたし、店を空けるわけにはいかないと言ったやつの店も閑古鳥が鳴いている状態なのだから。しかしランスロットは疑うということを知らなかった。

 

「そうか。それでは仕方がないな」

 

 ガラハッドは父の声から何か嫌な予感を察知して後ずさりをしたが、すでに遅かった。

 

「私と息子のガラハッド、そして弟子のガレスが討伐に行く」

「はい、ランスさん! 僕はどこまでもついていきます!」

「よし、良い意気込みだ!」

 

 ランスは普段弟子は取らない主義だが、ガレスの純粋に強くなりたい気持ちに負けたのである。昔の自分を見ているようで、放っておけなかったのであろう。

 

「おい、ガラハ、どこに行く!」

「げぇ、何で俺まで行かなきゃならないんだよ。今、War Robotsっていうボードゲームで忙しいんだよ」

「お前がいつも不良友達とやっているあれか。あんなものいつだってできるではないか。」

 

 War Robotsとは人間が行っていたチェスのようなもので、6つのコマを動かして敵を倒していくボードゲームだ。現在ロボットの世界で流行っている。

 

「国王、とにかくそういうことですので私とガラハッド、ガレスで討伐しに行きます」

「うむ、ただ敵はかなり厄介だ。いくらこの国最強のお前だからといって一筋縄ではいかんぞ」

「それはそうかもしれませんが、私が行かずに誰が行くのですか」

「うーむ」

 

 急ぐにこしたことはないが近隣諸国にも支援を断られた手前、お前たちだけで行ってこいとは言えない。大切な国民を無駄死にさせるわけにはいかない。

 

「国王!」

 

 円卓の騎士の一人が声をあげた。膝に矢を受けたものである。

 

「デストリア長老に知らせてみてはいかがでしょうか。きっとこの国で一番長生きしている長老ならば何か良いアイデアがあるかもしれません」

 

「そうだな。それでは早速長老の所に私が赴こうか。最後にもう一度聞くが、気が変わって討伐に行っても良いというものは居るか」

 

 相変わらず返事はなかった。

 

「まったく……何が円卓の騎士だ。」

 

 国王は小さな声で愚痴をつぶやいた。

 

「そうだ、ランスよ。少し良いか」

「もちろんです。何なりとお申し付けください」

「それでは私の部屋へと来てくれ」

「承知致しました」

 

 

 ランスロットは国王に無言で部屋まで案内された。やはり事態は深刻であり重々しい雰囲気には変わりない。

 

「さてだ。本当にお前たちだけで出発するのか? 騎士たちをもう少し説得するべきではないか?」

「しかし国王……」

「二人の時は"国王"はよしてくれ。昔からの仲だろう、ランスよ」

「レオ……」

 

 実はというと、ランスロットとレオはその昔、ここらでは最強とも言われたロボットだった。もちろん日常は平和そのものだったので、最強のロボットというのは実践とは程遠い闘技場の中での話である。レオはそれを危惧してランスロットに忠告している。

 

「お前は確かに闘技大会の中では最強だった。俺は結局一度も勝てずにいつも2位だっけか」

「はは、もう何年前になるのだろうか。懐かしいものだな」

 

 ランスはしみじみと言った。この時ばかりは先ほどのずっしりとした空気が少し軽くなったような気がした。

 

「それでランス、お前はこの国の軍事を任され、俺は多少治世の才能があったゆえ政治を任されたわけだ」

「うむ」

「話を戻すが、さすがにお前であれど、侵略者に勝てるとは言い難い。あのアメリカが落とされたのだ。最低でも分隊で行動すべきだ」

「分隊か。確かに現在は俺とガラハとガレスだからな。もう少し欲しいところか」

「そうだな。俺から円卓の騎士たちをもう一度説得してみようか」

 

 話がまとまったところで、「国王、国王!」という声とともに扉が勢いよく開いた。二人はちょうど扉の前で立ち話をしていたものだから、勢いよく開いた扉はレオの左腕にガコーンという鈍い音を立てながらぶつかった。

 

「あ、あ、あ」

 

 伝令のものが「しまった」という顔をして慌てふためいているのが見て取れる。

 

「まったく、いつもノックをしてから入室しろと言っているだろう。まぁた塗装が剥げてしまったではないか」

 

 レオはあきれたような声でそう言った。しかし本気で怒っている様子はなかった。

 

「それで、要件はなんだ」

「はい、実はデストリア長老が侵略者の情報を聞きつけてすでに城へと来ております」

「なに、急いで行かねば」

「はい、こちらに待たせております」

 

 そう行って伝令は国王の前を歩きだした。

 

「ではランスロット、頼んだぞ」

 

 レオは国王らしく威厳を込めてそう言った。

 

「しかと承りました。国王様」

 

 ランスロットも礼儀を正した。職務上の上下関係はあろうが二人の友情は変わらない。それはまるで太いツルをしっかりと絡ませて成長するアサガオのような絆であった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。