【完結】神刀ノ巫女   作:兼六園

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獅童真希と謎の刀使

 特別祭祀機動隊本部に案内された勇人、姫和、可奈美、そして沙耶香の四人は、夜間に行われた荒魂と刀使の戦闘の映像を見ていた。

 

「……これは?」

「昨夜遅く、愛知県内で撮影された映像だ」

 

 姫和の問いに、長船の学長・真庭紗南が答える。映像の中では、百足型荒魂と戦っていた刀使たちの前に、突如としてフードで顔を隠した者が現れていた。

 

「もしかして、この人がノロを奪ってるって言われてる……?」

「そうだ。知っているようだな……人の口に戸は立てられないか」

 

 可奈美が呟いた言葉に紗南はそう返す。

 ノロ強奪の件を五條いろは学長の()()()()で耳にした勇人と姫和は、横目で互いを見合って苦笑をこぼした。

 

 ──映像で繰り返される百足型荒魂の頭を切り上げる謎の刀使の動きを見て、おもむろに沙耶香が小さな声をあげる。

 

「……この人、御刀を持ってる」

「──なるほど、隠していた理由はこれか」

「どういうこと?」

 

 姫和の声に可奈美が反応し、腕を組んで立っていた勇人が顔を近づけて耳打ちした。

 

「上の連中は刀使の内部犯行の線で睨んでるってことだろ。あの時の事が事だからな」

「監理局の信頼も地に落ちたものだ」

「……まあ、そんなところだ。わかってるだろうがこの件は口外無用だからな」

 

 紗南が二人にそう言うと、当然の疑問を沙耶香が問いかける。

 

「……秘密なら、どうして私たちを?」

「この太刀筋を見てほしいからだ」

「──なるほど、本当に必要なのは剣術馬鹿(かなみ)だけだったか」

「勇人さん? ……まったくもう。えーっと、この動きは……神道無念流かな」

 

 あっけらかんとした顔で、あっさりと流派を見抜いた可奈美と、その呟きを聞いた勇人は、百足型荒魂をあっさりと倒せる程の実力者は一人しか居ないと判断する。

 

「……獅童さん?」「──真希か」

 

 首をかしげる可奈美と顎に指を当てた勇人が口を開くのは、全くの同時だった。

 

 

 

 

 

 ──沙耶香が遠征で田舎に行っている薫の応援に駆り出された数日後、鎌倉の施設の一角にある訓練所に三人の刀使が居た。

 勇人、姫和、可奈美は、お互いを敵とした一対一対一の三つ巴で立ち合いをしている。

 

 可奈美と御刀を打ち合う勇人の背後で、柱を迂回して姿を隠しながら接近する姫和。

 一瞬だけ八幡力を起動する器用な動きで可奈美を押し返し、勇人は振り返って、切っ先が両刃という珍しい造りの御刀・小烏丸を受け止めた。

 

 刃物が擦れ合い、カリカリという耳障りな音が響き──やがて二人は同時に力を抜く。

 

「……ふぃー、こんなもんか」

「なかなか耐えられるようになってきたな」

「勇人さん、今までは一回の立ち合いで五回は写シ剥がれてたもんね~。今日は三回?」

「二人が厳しすぎるんだよ」

 

 腰に付けた帯刀用の装備によって背後に垂直に立てられた鞘を手元に持ってきて、それぞれが御刀を鞘に納める。それから休憩後に機動隊本部の食堂に向かうと、見覚えのある金髪の少女がこちらに向けて駆け寄ってきた。

 

「かなみん、ひよよん! ただいまデース!」

「おっと」

「は──ぐえっ」

「むぎゅおっ!」

 

 すっ、と一歩下がった勇人がそれとなく二人を押すと、飛びかかってきた少女──仲間の刀使、古波蔵エレンに可奈美たちは抱き付かれた。

 

「ヘイ、ユートもカモン!」

「えー……はいはい、久しぶり」

 

 勇人は渋々といった様子で、エレンとハグをする。背中を二三度軽く叩くと、満足そうに笑みを浮かべた。エレンの異様なまでの人懐っこさに毒気を抜かれた勇人は、食堂の隅に集まっていた当時の仲間たちを見つける。

 

「見慣れたメンバーだな」

「おう勇人、久しぶり」

 

 薫が気だるげに反応し、その場に集まっている沙耶香と舞衣が意識を向けてくる。

 エレンを連れてやってきた可奈美と姫和も集まって話を交わし、暫く振りの日常的な会話を聞いて勇人は口許を緩めていた。

 

「はい、可奈美ちゃんの分の課題、預かってきてるからね」

「うえー」

「頑張れよぉ」

「薫、私たちの分の課題も長船から届いてるんデスからね」

「おいおい、散々コキ使ってるんだから免除してくれよ……」

「それとこれとは別」

 

 ピシャリと沙耶香に一括され、薫は机に突っ伏した。それからおもむろに顔を上げると、首をゴキゴキと鳴らしながら口を開く。

 

「……んじゃ、部屋行くぞー」

 

 

 

 

 

 ──勇人の分として用意された部屋に詰め込まれた七人のうち、沙耶香を中心にした六人は、『本日の主役』と書かれた襷を肩に掛けた沙耶香へと、クラッカーを鳴らしていた。

 

「誕生日おめでとう。いやまさか今日が沙耶香の誕生日だとは思ってなかった」

「オレが計画したサプライズパーティだ。どうだ驚いただろ」

 

 いそいそとクラッカーの中身を回収しながらそう言った勇人に続いて、発案者の薫がにやりと笑う。その横で、舞衣がケーキを箱から出して机に置いている。

 

「このケーキ、姫和ちゃんのおすすめの店で買ってきたんだよっ」

「やはりチョコミントケーキの方が良かったのではないか?」

「……これ沙耶香ちゃんのだから……」

 

 姫和の真面目な問いに、舞衣は苦笑をこぼしながら返す。ベッドに腰かけている薫は、真顔で姫和に向けて口を開いた。

 

「チョコミント好きなの、お前だけだから」

「そんなことない」

「誕生日に歯磨き粉食わされる沙耶香の身にもなれってんだよ」

「歯磨き粉ではない!」

 

 語気を荒らげる姫和を珍しいものを見る目で一瞥する勇人は、つつがなく行われた沙耶香の誕生日会を一歩引いた位置で見守る。

 全てが終わったあと、一転して真面目な空気になった中で、薫が一拍空けて切り出した。

 

「──例のノロを強奪してるフードの刀使だが、やはり正体は獅童真希だったぞ」

「そうなのか?」

「ああ。オレたちが向かった先で、部下がやられていて、ノロもなくなっていた。その場に居たあいつは間違いなく獅童真希だ」

 

 薫の任務の応援に向かってた沙耶香もその現場を見ているのか、頷いて肯定する。

 だが、その言葉に反対したのは、別の場所で謎の刀使に襲われていたエレンと舞衣だった。

 

「ちょっと待ってください! 私とマイマイも長久手でノロを奪ったフードの刀使と戦いましたが、あれはマキマキじゃなかったデスよ」

「うん。獅童さんって神道無念流だったよね。あの人は別の流派だったと思う」

「具体的には?」

「すみません勇人さん、そこまでは……。でも御刀は二振り、つまり二刀流でした」

 

 勇人の声に申し訳なさそうに返す舞衣。それを見て、パンと手を叩いた薫が締め括る。

 

「まぁ獅童だったら見ればわかるだろう。ということは、フードの刀使は一人じゃねえ。少なくとも二人居るってこった」

 

 それから、薫は心底面倒くさそうに、重いため息をついてから続けた。

 

「──しゃあねえ。紗南(おばさん)に聞くか」

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