残酷な世界で生きる意味。   作:ひーなー

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どうも。ひーなーです。
いつもより早く投稿出来たかな?
今回はちょっと長めです。
キリトが木綿季の全てを知ります。

では、本編どうぞ。


絶剣の正体

家を出てからどれくらい時間が経っただろうか。

時計を見ると午後1時13分を指していた。

 

「もうすぐか...」

 

信号待ちをしている。俺は色々なことを考えていた。

ユウキは病気なのか。

そんなはずはない。

だってあれだけ元気だったから。

きっと風邪が悪化したとかそんな所だろう。

でももし重病なら...いや、ユウキに限ってそんなこと。

こんなことを1時間もずっと考えていた。

もちろん、いくら考えても結論が出るはずはない。

信号が青になり、アクセルを踏む。

バイク特有の音を鳴らし、目的地へ向かう。

その途中もずっと考えたが、やはり何もわからなかった。

 

「ここ...が...」

 

目的地に着いた俺は唖然していた。

そこにはとてつもなく大きな病院が建っていた。

建物自体はあまり古くはないようで、窓ガラスも手入れされていて、太陽の光を反射させていた。

俺は駐車場にバイクを止め、心の準備をして受付に向かった。

ドアが俺に反応してウィーンと音を立てて自動で開く。

ドアが開くと病院独特の匂いが俺を包んだ。

この匂いが俺は案外好きだ。

入って左側に面会用の受付を見つけ、深呼吸をして歩いた。

 

「すいません」

 

「面会ですか?」

 

「はい。でも相手の名前が分からなくて。」

 

「え?どういうことですか?」

 

「えっとユウキって名前だと思うんですが...」

 

「それだけでは分かりませんね...」

 

すると突然担当をしてくれていた若い女性の後ろから声がした。

 

「あ、あの!」

 

少し歳をとったおばあさんだった。だがそこからはとても優しい雰囲気が漂っていた。

 

「は、はい、なんでしょう」

 

「あの、失礼ですがお名前を教えていただけませんか?」

 

「はい。桐ヶ谷です。桐ヶ谷和人。」

 

「また失礼なことを聞いてしまいますが、キリト、という名前に聞き覚えは...」

 

「VRMMOで使ってるアバター名がキリトです」

 

個人情報を晒してしまった。声は抑えたが、これでユウキに会える可能性があるならそれでも構わないと思った。

 

「本当に...来てくださったんですね...」

 

すると後ろの女性は目に涙を滲ませた。

少々お待ち下さい、と言い残し彼女は扉の向こうへ消えていった。

受付の担当だった若い女性に椅子で待って頂いて大丈夫ですよ、と言われたのでお言葉をに甘えて座らせてもらうことにした。

正直体力はほぼ限界だった。

学校から走って帰宅し、バイクに乗って1時間以上かけてここまで来た。

その間は休憩はなく、ただユウキの事だけを考えてバイクを走らせていた。

するとそこに若い男性が話しかけてきた。白衣を身にまとい、眼鏡をかけた医師だった。

 

「こんにちは。紺野木綿季さんの担当医の倉橋です。初めまして。桐ヶ谷和人さん。」

 

「こ、こんにちは、桐ヶ谷和人です。初めまして。」

 

「細かいことは別室ですお話致しますので、ついてきてくれますか?」

 

ここまで来て断る理由なんて何も無い。

 

「はい。案内よろしくお願いします。」

 

「分かりました。では、ついてきてください。」

 

そう言うと倉橋さんは方向を変えて歩き始めた。俺はその後ろについていく。

 

「今日はどちらからいらしたんですか?」

 

「えっと埼玉の川越から、バイクで。」

 

「そんな遠いところから...わざわざありがとうございます。」

 

「いえ。この位のことなんて全然。」

 

自分なりに誤魔化したつもりだが、その道のプロを黙せるはずもなく、

話をしたあとでゆっくり休んでください、と言われてしまった。

ここで抵抗しても意味が無いので素直になれ聞き入れ、休ませてもらうことにした。

 

「ここです。ここの椅子におかけ下さい。」

 

俺が手前側の椅子に座ると、倉橋さんはその前に座った。

 

「あ、あの、早速で申し訳ないんですがユウキはどこに?」

 

「まぁ待ってください。桐ヶ谷さん、メディキュボイドって知ってますか?」

 

「はい。これでも将来はIT系を目指しているので、聞いたことはあります。」

 

「メディキュボイドがどんなものかは?」

 

「そこまでは知りません。」

 

「メディキュボイドは簡単に言ってしまえばナーヴギアとアミュスフィアを足して2倍にした様なものです。」

 

「ナーヴギアとアミュスフィアを...?」

 

「はい。ナーヴギアの超高性能な構造でアミュスフィアの安全性と楽しさを合わせ、ナーヴギア使用に伴う危険性を排除させ、手軽さや容姿、そして身の自由を捨てたもの、と言った方がよろしいでしょうか。」

 

「そんなことが...ですが身の自由を捨てた、というのは具体的にどういうことですか?」

 

「文字通りです、全く身動きがとれず、常に寝たきり状態。会話はメディキュボイドに内蔵されているスピーカーによって出来ます。前のみなら見ることも可能です。ですがそれ以外は全く何も出来ない状態です。」

 

「そんな...」

 

あのユウキが。天真爛漫で人当たりが良く、誰にでも優しくしていたユウキのリアルは...

 

「桐ヶ谷さん。ここから先の話は今話したことよりもより残酷で、冷酷で、無慈悲です。ここで聞くのを辞めておけばよかった。聞かなければよかったと思うかもしれません。君はそれでも、ユウキくんの全てを聞きますか?」

 

俺は迷った。

だがすぐに気付いた。

俺はなんのためにここに来たのか。誰を知り、誰を見るためにここに来たんだ。決まっている。ユウキだ。ユウキという1人の少女の事を知るためにここまで来たんだ。

 

「聞きます。」

 

俺は倉橋さんの目を見て、はっきりとそう言い放った。

 

「分かりました。...彼女は病気です。しかもかなりの重病...。」

 

「っ...」

 

分かっていた。こんな大きな病院で大事な機械まだ使っている患者の容態が軽い方がおかしい。

けどいざ担当医の口からそれを聞くと心のどこかにあった間違いであって欲しいという望みが消えてしまったようで余計に苦しかった。

 

「ユウキくんの病名は後天性免疫不全症候群、AIDSです。」

 

「エイ...ズ...」

 

これは俺でも聞いたことがある。詳しいことは分からないが、難し病気だと言うことは知っている。

 

「AIDSも、早期発見や薬の投与などで予防、発症を防ぐことが出来ます。皆さんが思っているより恐ろしい病気ではないんです。ですがユウキ君が感染した物は薬物耐性型でした。ユウキ君は生まれてきた時、血液が足りなくて輸血用血液製剤で輸血をしました。ですがそこにはHIVのウイルスが既に。そこから彼女の長い長い闘病生活が始まりました。初めは学校にも言っていたのですがHIVキャリアである事が知れ渡り、いじめに発展しました。症状は薬の投与により安定していたのですがそれは次第に悪化し、そしてAIDSを発症しました。それから三年間、彼女はずっと仮想世界にダイブし続けています。」

 

「三年間....俺たちよりも一年も長く....」

 

もしあれからさらに1年も長くダイブし続けていたら俺は今頃...

そんな考えが頭をよぎった。

 

「そ、そうだ。ユウキには姉がいるのでは?」

 

倉橋さんは少し驚き、姉のことについて喋り始めた。

 

「そうです。ユウキ君にはたった一人の姉がいました。藍子さん、という名前でした。とても優しく、面倒見のいいお姉さんでした。いつも元気に走り回るユウキ君を見つめながらそれとなく守ってあげているような。そんな立派なお姉さんです。」

 

「いました...ってことは...」

 

「はい。藍子さんとその両親ももう他界してしまいました。メディキュボイドは藍子さんがユウキ君に命懸けで繋いだものなんです。」

 

俺は黙ってしまった。

あまりに残酷すぎる。友人や家族を失い辛い病気に15年間も戦い続けている。文字にするのは簡単だ。だがよく考えてみるととてもまともな精神でいられる様なものなんかではない。

 

「先生。ユウキの本名を。教えてくれますか...」

 

「木綿季。紺野木綿季さんです。」

 

紺野木綿季。紺野木綿季。俺は心の中で何回も何回も唱えた。決して忘れることはないであろうその名前を。

 

「木綿季に...会わせてもらえますか?」

 

「分かりました。ではエレベーターを使うのでこちらへ。」

 

そう言って歩き始めた倉橋さんに俺はついていく。エレベーターに乗り込み、上へと登っていく。

 

「桐ヶ谷さん。1つ大事のことを言い忘れていました。」

 

「は、はい。なんでしょう?」

 

「メディキュボイドは視覚や聴覚がない方でも仮想空間では見たり聞いたりすることが出来ます。ですがそれはただそれだけであり、それ以上の効果は何もありません。心のケア程度にはなるかもしれませんがそれが病気の回復に直接的に関わることはほぼないと言っていいでしょう。桐ヶ谷さんもお気づきではありと思いますがメディキュボイドが一番注目されている分野は終末期医療です。」

 

俺は全身が凍ったように動かなくなった。終末期医療。その言葉が意味すること。それはあまりにもわかりやすい。

エレベーターが目的の階に着いたことを知らざる音がなり、俺の硬直は解けた。

少し歩いたところで倉橋さんは立ち止まった。

そこには【第一特殊計測機器室】と書いてあった。

心無い文字が俺の心をさらに打った。

 

「このガラスの先はエア・コントロールされた無菌室なので入ることは出来ません。了承して下さい。」

 

すると倉橋さんは手元のタッチパネルを操作する。すると真っ暗だったガラスが透明になり、そこには夥しい数の機械と一際大きい機械の上に横たわる小さな少女がいた。

 

「先生...これ子が木綿季なんですか...」

 

「はい。そうです。」

 

俺はただその場に立ち尽くすことしか出来なかった。

状況を理解するのに時間がかかってしまった。

俺はゆっくりと歩きだし、ガラスの向こう側にいる木綿季に向かって言った。

 

「木綿季、なんで急にいなくなっちまったんだよ。」

 

喋れるはずの木綿季は何も言わない。

 

「これでも俺結構心配したんだぞ?シウネー達にお前のこと聞いても誰も教えてくれなかったよ。」

 

「.....」

 

「俺は君ともっとたくさん話がしたい。お前が知らないところだって連れてってやりたい。だからさ、木綿季。なにか話してくれないか?」

 

「.....」

 

「ごめんな。勝手に来ちゃって。俺は君を苦しめるようなことはしたくない。君が嫌なら俺は諦めて帰るよ。」

 

「待って...!」

 

「っ!」

 

「木綿季?木綿季なのか?」

 

「うん。ボクだよ、キリト。」

 

「良かった...久しぶりだな、木綿季。」

 

「うん。久しぶり。キリト。」

 

「ごめんな。お前の許可も取らずに来ちゃって。」

 

「ううん。ボクは嬉しいよ。ちょっとびっくりしちゃったけどね。ここじゃ話しにくいし、あっちに行こうか。」

 

「いや、でも向こうに行くなら一旦家に帰らないと。1時間ちょいで帰れるけどどうする?」

 

「倉橋先生、キリトに隣のアミュスフィアを使わせて上げてください。」

 

「分かりました。ではこちらへ。」

 

「は、はい。ありがとうございます。」

 

「それじゃ後でね、キリト。場所はボク達が初めて会った場所ね。」

 

「あぁ、了解した。後でな。」

 

そう言って俺は隣の部屋に案内された。




ここまで読んでくださってありがとうございます!!!!

全てを知りましたね。
原作から台詞は自分なりに弄りまくりました。
次回からは原作からちょっと離れていきます。お楽しみに!

では!
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