前回のサンダース戦から一気にとんで、黒森峰戦のラストになります。アニメでの最終話になるので、まだガルパンを見たことが無い方はネタバレ注意です。
ふと、夏の日の事を思い出す。
あれは、まほとみほがまだ幼かった頃だ。永遠に続くのではと思うほどの青空の下を、自身が操縦するケッテンクラートで駆けていた。後ろにみほとまほを乗せて。
時々ガタンっ!と大きく揺れると、その度にみほは大きな声を出して驚いて、まほは「あうっ」と可愛い声を出していた。
『もうちょっとで、駄菓子屋さんだよ』
『私アイス食べたーい!』
『私も』
『はいはい。じゃあ、しっかり掴まってな!』
『『うひゃあ~!』』
姉が多忙なため、少しでも寂しい思いをさせまいと、あの頃は頻繁に外出していた。そして、2人のその笑顔にとても癒されていたものだ。
駄菓子屋のベンチに座る2人は、ソーダ味のアイスを美味しそうに食べる。自分はオレンジ味だ。するとみほの嬉しそうな声が聞こえた。見れば、彼女の手には「当たり」の文字が入ったアイスの棒が。
『りほお姉ちゃん! 当たった~!』
『ラッキーじゃないか! 交換しに行ってきな』
『うん!』
みほが嬉しそうに駄菓子屋のおばちゃんの所に行く。一方のまほは、残念そうなシュンとした顔をしていた。
『外れだった……』
『ありゃりゃ……。残念だったねぇ』
そこへみほが戻ってきて、まほの前にアイスを差し出す。
『お姉ちゃん。半分こしよ!』
『し、しょうがないな』
嬉しそうな顔をしておきながら、しょうがないと言うまほ。彼女は意外と負けず嫌いなのだ。
2人で一本のアイスを食べる光景に、りほは笑みを浮かべたのだった。
まほの乗るティーガーⅠと、みほの乗るⅣ号戦車が一騎討ちをする。その様子を、りほはモニター越しにハラハラと見守る。
「頑張れ……頑張れ……!」
どちらか一方を応援している訳ではない。彼女の応援には、「2人ともベストを尽くせ」という思いが込められていた。
みほが勝たなければ、大洗女子学園は廃校になる。それでもりほは、2人を応援していた。
決勝戦前の事だった。生徒会長の杏に呼び出しを受けたりほは、衝撃の事実を知った。
学園艦の統廃合政策。学園艦を解体して数を減らすことにより、経費を削減するという政策。その対象として、大洗女子学園が選ばれていたのだ。
学園艦の解体とは、事実上の廃校を意味する。その事に気付かない程、りほも馬鹿ではない。
『免れる条件は、戦車道全国大会で優勝することか……』
『黙っていて申し訳ありません。ですが、生徒たちにプレッシャーを与えたく無かったんです』
杏が頭を下げ、続くように副会長の小山柚子と広報の河嶋桃が頭を下げた。
りほは、三人を責めなかった。「どうして早く言わなかった」と言っても、既に過去の事だ。責めるよりも受け入れて、大会に臨んだ方が良い。
『事情はよく分かった。安心しな! アタシが持ってる技術を全部使って、戦車たちを万全な状態にしといてやるよ!』
『本当に……ありがとうございます……!』
3人が再び頭を下げる。りほは、「こりゃ忙しくなるな」と心の中で苦笑しつつも、より気合いを入れた。
モニターの中ではティーガーⅠとⅣ号戦車による激しい攻防が繰り広げられ、整備班と回収班がいるこの場所も、スタッフ全員が固唾を飲んで見守っていた。
そして……砲撃の音と煙が、2両を包み込んで見えなくさせる。
「どっちだ!?」
班の誰かがそう言った。りほは黙ってモニターを見つめる。
煙が晴れると、ティーガーⅠから、撃破判定の白旗が上がっていた。
《黒森峰女学園、フラッグ車、行動不能!》
《大洗女子学園の勝利!!》
一瞬の沈黙、そして観客からの大歓声。
スタッフ達も歓声を上げる中、りほだけは呆然としていた。
「は……え、あ……?」
「姐さん、やったッス! 大洗女子学園の優勝ッスよ!」
姐さんと呼ぶ後輩が、りほの手をとってブンブンと大きく振る。
この時に初めてりほは、大洗が、みほが勝ったのだと理解した。
「は、ははは……勝ったのか……勝ったのかぁ……!」
笑いと共に、涙が溢れ出す。その様子を見た後輩が、彼女を一人にさせる。
「みほもまほも……本当によく頑張った……! 本当に、大きくなったんだねぇ……」
自分の中では、2人はまだ幼いつもりだった。
だが、今は違う。まほは西住の名を背負う者として成長し、みほは己の戦車道を見つけた。
2人は、十分に成長している。そしてこれからも成長し続けるだろう。
「……おめでとう。2人とも」
りほは涙を流しながらも、2人に拍手を送った。
読んでいただき、ありがとうございました。
次回から劇場版に入る予定です。